数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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STEM教育(ステムきょういく)とは、"Science, Technology, Engineering and Mathematics" すなわち科学・技術・工学・数学の略語で,AIやArtも加えてSTEAM教育といわれる理数教科の統合教育であります.STEM教育は,米国で2003年ごろから始まりました.近年,日本でもSTEM教育の必要性が叫ばれるようになりました.これらの科目の中で統合的に数学を教える試みが重要ですが,まだ成功しているとはいえません.われわれが訴えている数学月間の視点は,STEM教育へも貢献できるものと思います.
数学はあらゆる文化・学術の基盤で,科学,工学,産業,芸術,医学,経済など,社会のあらゆる分野を数学が支えています.しかしながら,一般市民,特に,生徒・学生とその両親は,数学学習を敬遠する風潮にあり,これが数学力の低下をもたらしています.米国の「数学月間」MAM(Maths Awareness Month)は,議会上院が決議し、続くレーガン大統領の宣言(1986年4月17日)により国家的な行事として開始されて今日に至ります.米国MAMは,数学系の学協会が参加するJPBM(Joint Policy Boad for Maths)が,毎年,社会を反映した数学テーマを選定し,毎年4月に種々の数学イベントを展開し,国民からの事後評価も受けます.皆が知りたい時局の数学を,種々のレベルで学習できるウエブ・サイトが充実し,そこにエッセイや論文が集積され,そのテーマの数学を基礎から最先端まで,学生が独習できる優れたガイドになります.MAM期間には,一般から専門家まで,小学生から大学生まで,いろいろなレベルのイベントが全国で展開されます.レーガン宣言で国家的行事のMAMを決断した背景には,国民の数学力が低下し,米国の産業力も低下するとの焦りがあったといわれます.日本も同様な状況にあり,国家的行事の数学月間が望まれます.
社会のさまざまな分野と結び付けて数学を知るという数学月間はSTEM教育と精神は同じです.その活動も数学愛好者内にとどまっているのでは意味がなく,社会に横断的に呼びかけ活動し,「社会と数学の架け橋」になることが必要です.多くの方々が数学月間の会に参加されることを願っております.
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数学月間SGK通信 [2018.11.13] No.241
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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いろいろな多面体の見える万華鏡(立体万華鏡と仮に呼ぶことにします)を作っています.
アルミ板やプラスチックの鏡は像がきれいに映りますが
ミラー紙を用いても,ここで取り上げているような立体万華鏡は良好に作れますので.
チャレンジしてみてください.
球面正多面体は,アラブの数学者,アブル・ワーファ(1000頃)に始まります.
球面正多面体{p,q}は,球面正p角形が,頂点でq個集まっているもので,
球面正p角形の1つの内角は2π/qです(図D).そして,球面p-多角形の辺はすべて大円であることに注意しましょう.
ここで例に取り上げるのは,正12面体に相当する球面正12面体=球面{5,3}多面体です.
メビウスは多面体万華鏡を発明します(1850)が,これは,球面p-多角形を.
2p個の球面直角3角形に分割することを使います(図A).
分割された3角形の角度は,π/p,π/q,π/2,このような直角3角形を(p,q,2)のように記述します
万華鏡は,3角形(赤く塗った)の各辺となる大円を鏡にすると得られます.
Aは,メビウス万華鏡になり,正5角形の面を10個の直角3角形に分割しています.
Bは,正5角形の面を5個の2等辺3角形に分割しています.Bには,Aに存在した鏡映対称面が1つ消えています.
Cの赤く練った正3角形の周囲の辺の大円を鏡に置き換えて万華鏡を作れば,正20面体の映像が見えます.
それぞれの映像写真は続きに
■正12面体像の見える万華鏡
・左図は,この展開図(直角3角形ーピラミッド万華鏡)による正12面体の映像で,正5角形の面が10分割されています.
・右図は,正5角形の面の1/5が万華鏡の内部(非対称領域)にあるような万華鏡による映像です.
次の写真は,やはり正5角形の面の1/5が万華鏡の内部(非対称領域)にあるような万華鏡ですが,
展開図に示す光の窓になる部分が円形であるため,球面正12面体の映像が見えます.
・
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数学月間SGK通信 [2018.10.16] No.237
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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フィボナッチ数列というのは,1,1,2,3,5,8,13,....のように続く数列です.
この数列のn項a(n)は,a(n)=a(n-1)+a(n-2)と再帰的に定義できます.
フィボナッチ数列は,様々な分野の思いがけないところで出現します.
この再帰的な機構が支配している現象が様々な分野にあるからです.
集合S(n)={1,2,3,....,n}を考えます.この集合の上の置換を考えます.
置換の結果は,n個の文字の順列になりますから,n!個の置換があります.
さて,文字が始めの位置から移動しない,あるいは,たかだか隣への移動だけが許される
と制限してみます.つまり,どの文字も1つおいた隣以上の移動はしない置換だけを対象にします.
このような置換を,「距離1の置換」と呼ぶことにします.
具体例(次の図)を示すので,「距離1の置換」とは何かは理解できるでしょう.
Qestion
S(n)上の「距離1の置換」の数をa(n)個とします.n≧1に対してa(n)を求めなさい.
Answer
S(1)に対しては,a(1)=1
S(2)に対しては,a(2)=2
S(3)に対しては,a(3)=3
であることを,確認してください.
次は,a(n)=a(n-1)+a(n-2)が成立することを証明します.
・S(n)の最後のnを動かさない「距離1の置換」の数は,S(n-1)上の「距離1の置換」の数a(n-1)と同じ.
・S(n)で最後のnを動かすとすれば,nの行先はn-1で,空いたnの位置に来れるのはn-1しかありません.
従って,この場合の「距離1の置換」の数はS(n-2)上の「距離1の置換」の数a(n-2)と同じです.
さて,S(n)の最後のnが動くか/動かないかは互いに背反の事象ですから,
両者の和 a(n-1)+a(n-2)がa(n)に等しくなります.(証明終わり)
この式の形は,フィボナッチ数列の定義と同じ形ですから,
a(n)は,第1項が1,第2項が2から始まるフィボナッチ数列になります.
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数学月間SGK通信 [2018.10.30] No.239
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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フィボナッチ数列F(n)は,
1,1,2,3,5,8.13,21,34,.....のような数列です.
F(n)=F(n-1)+F(n-2) と再帰的に定義されます.
このような数列は,いろいろな所に現れます.
得られた数列が,フィボナッチ数列であることを証明するには数学的帰納法を用います.
今回は,その典型的な例を取り上げましょう.
■抵抗ラダー回路
ラダーとは梯子のことで,梯子型に抵抗を並べた回路を,抵抗ラダー回路といいます.
例えば,次の図は3段のラダー回路です.
A-Bの端子(入力側)から見たインピーダンスをZ_i,
C-Dの端子(出力側)から見たインピーダンスをZ_oとします.
この3段のラダー回路は,A-B側(入力側)にR1の抵抗があるが,C-D側(出力側)にはないので,
左右対称ではありません.入力側から見たインピーダンスと出力側から見たインピーダンスの比から,
減衰率Z_i/Z_o≡Aが定義されるが,A>1なのでアッテネータ(減衰器)として使えます.
抵抗値をすべて同じR1=R2=1とすると,
ラダーの段数mを増やしていくと,減衰率A(m)=F(2m+1)/F(2m-1)は,2/1,5/2,13/5,34/13,...と
フィボナッチ数列が出てきます.
(参考)計算は以下をご覧ください.証明は数学的帰納法を使う練習になります.
■ラダー回路の応用例
ラダー回路は,アナログ信号が入力されたときに,そのアナログ信号の大きさを,瞬時に8水準に分類する(8ビットのデジタル化)回路(これを8ビットのAD変換といいます)に使われたりもします.
次の図をご覧ください.
コンパレータが7個並列に並んでいますね(カスケード結合).
入力信号の大きさを8水準に分類するのは,
7個のコンパレータの働きで,
その境界値となる7段階の基準電位をそれぞれに供給します.
この7つの基準電位を発生するのが,
一番左の直列に並んだ抵抗ラダー回路です.
nビットのAD変換には(2^n)-1個のコンパレータと基準電位がいります.
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数学月間SGK通信 [2017.11.07] No.192
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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与えられた任意の角の3等分は実在しますが,定規とコンパスだけでは,
これを作図できないということは多分ご存知でしょう.
以下は,ギリシャの幾何学者達が熱心に研究した不可能作図問題です:
(1)与えられた正立方体の2倍の体積の正立方体を作れ
(2)与えられた円と同じ面積の正方形を作れ
(3)任意に与えられた角を3等分せよ
もちろんこのような図形は実在しますが,作図手段を,「定規とコンパスだけを有限回使って」と制限して作図ができるか?という問題です.
■長さa, bの2つの線分が与えられたとき,直線定規とコンパスだけを用いて,
加法a+b,減法a-b,乗法a・b,除法a/b,開平√a
の作図が可能なことは,以下の図をご覧ください.
⇒定規とコンパスで作図できる長さ
これ以外の作図(例えば,立方根の作図)は定規とコンパスでは出来ません
(証明は難しいのでスキップ).
(1)ではx3=2(a3)だから,2の立方根の作図が必要
(2)では,x2=π(r2)だから,πという無理数の開平の作図が必要
(3)では,x3-3x-a=0という角3等分の方程式の根であるxの作図が必要です.
[ただし,aは,与えられる角度Ω(cosΩ=a/2)により決まる]
例えば,Ω=90°(a=0)のときは,x=√3の作図になり,これは可能です.
しかし,一般角の場合,この3次式の解には3乗根が入ってきますので,作図は出来ません.
注)この角3等分の方程式の導出は以下の図をご覧ください.
⇒任意の角度の3等分方程式
例として,Ω=60°(a=1)のときは,x3-3x-1=0となり,
p+q√r (p,q,rは有理数)の形の解を持たないので,
角の3等分の作図は(定規とコンパスでは)できません.
ある折り紙の本に正5角形の作り方がありました.
複雑な手順なので整理して原理だけ説明しましょう.
正5角形の中心角72度を作るミソは,以下のようです.
これで,Θは72°になることを証明できますか?
答,72°になりません.
約71.56...°です.
この折り紙手順で作れる角度は,72°に非常に近いので
実際の折り紙工作では非常に良い方法といえるでしょう.
でも,幾何の命題としては正しくないのです.
話は別になりますが,
正5角形を,コンパスと直線定規で作図できます;
例えば http://www.natubunko.net/zukei/png/penta03.png
ここから図を引用しましょう.
さてそれでは,この作図を
折り紙の手順で追いかけてみましょう.
折り紙の手法で,「円を描く」というのは,可能でしょうか?
コンパスの使い方には2通りあます;
1)所定の長さを所定の方向にとる.
2)2つの円の交点を求める
(与えられた2点から,それぞれ与えられた距離だけ離れた点を求める).
このうち,1)は折り紙手順で可能ですが,2)は折り紙手順では不可能です.
折り紙の手順で,正5角形の作図を追いかけてみると,(4)の段階で,2つの円の交点を求めることが必要になります.折り紙ではここができません.
でも,全く違う折り紙手順があり,正5角形が作れたりしないでしょうか?
皆様,挑戦されて,発見したら教えてください.
例えば,定幅紙(帯)を用いて,図のような折り紙を折ることができます.
どうしてこのように折り紙で正5角形が作れるのかを解析する必要があります.試みてください.
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数学月間SGK通信 [2018.07.02] No.226
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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暑い日が続きます.皆様お変わりありませんか.
夏休みは数学月間(7/22-8/22)の季節です.毎年,月間初日の7/22に
数学月間懇話会を実施して来ましたが,今年は1月遅れの8/22に実施します.
どうぞお気軽にご参加ください.
■7月の予定
このメルマガの届く7月2日朝は,娘のボトルシップの個展を見にイギリス,サンダーランドに出発の日です.
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10216317238867252&set=a.1776604738559.2105958.1342581912&type=3&theater
サンダーランドでは帆船レースもあります.
その後,イギリス国内を旅行します.そのため,インターネットのアクセスポイントが確保できない場合もあり,7月のメルマガ残り4回は発行できないかも知れません.その時はお許しください.
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■今年のとっとりサイエンスワールドは:鳥取(7/29),米子(8/5),倉吉(9/2)です.7/29,8/5の材料は発送しましたが,私が参加できるのは9/2の回です.
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■数学月間懇話会(第14回)のお知らせ
●場所:東大駒場キャンバス,数理科学研究科・002号教室
●日時:2018年8月22日,14:00-17:00
●参加費無料.直接会場にお出で下さい.
●主催:数学月間の会,日本数学協会
●問い合わせ:sgktani@gmail.com
●プログラム:
1.企業での数学活用の実際,渡邉好夫(リコーICT研究所AI応用研究センター,技術顧問)
2.エントロピーと対数,対称性,宮原恒昱(首都大学東京名誉教授・客員教授)
3.パズル玩具と数学の接点-「解ければ終わり」ではもったいない,秋山久義(数学遊戯研究家)
●17:30より構内カフェテリアにて懇親会(飲食は各自払い)
皆さんのご参加をお待ちします.
今年は,例年(7月22日)とちがい8月22日です.ご注意ください!
■口上(企画意図)
(1)googleやamazonなどが典型ですが,色々なデータが収集され予測に使われているのは,皆さんも実感されていることでしょう.このビッグデータの時代に,企業もデータサイエンスに無関心ではいられません.
その一方,機器の設計では,動作原理のシミュレーションなどで物理に立脚した数学モデルが企業でも活躍します.数学が技術を支えているのが具体的に実感できるでしょう.
(2)天才ボルツマン(オーストリアの物理学者)の墓碑には,S=k・log(W)と刻まれているそうです.Sはエントロピー,Wは状態のとり得る”場合の数”,log(W)は”場合の数”の対数をとること,
kはボルツマン定数です.対数をとると,log(A・B)=log(A)+log(B) のように,積が和になり,”場合の数”の積は,エントロピーの和に対応させられます.
だからここに対数がでてくるのですね.ボルツマンは1906年自殺しました.
分子の実在も証明されない時代に,気体分子運動論,統計力学を築いた天才は受け入れられませんでした.あと1年頑張っていればよかったのですがね.
(3)パズルやマジックの多くは,数学に深いかかわりがあります.
試行錯誤して,答えが見つかればそれで終わりとするのが普通です.
でもそれでは勿体無い.正解が発見でき,本質に肉薄した所にいるのだから,
その奥にある数学原理が発見できるでしょう.2010年没のマーチン・ガードナーの著作が懐かしいですね,おいでになれば,珍しいパズルグッズにも触れることができます
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数学月間SGK通信 [2018.08.07] No.227
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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暑いです.皆様お元気でしょうか.
このひと月に日本では色々なことが起こりました.
皆様の方では豪雨被害や台風被害は大丈夫だったでしょうか.
7月は私はひと月間お休みをいただきましたが,
お休み前のメルマガで予定をお話したように,
イギリス,サンダーランドの国立ガラスセンターで開催された,
ボトルシップ(ガラスの中のガラスの船)の綾子の個展と講演を聞きました.
アン王女もボトルシップの個展に訪問されましたので,
私はパパラッチのように写真を撮りました.
帆船レースは54隻が参加し,サンダーランドからデンマークまでの
レース1では,MIR(ミール=平和丸,ロシア)が1番だったようです.
およそ3日で横断します.
これらの詳細は,私のブログのイギリス旅行記3-6に書きました.
https://rdsig.yahoo.co.jp/blog/article/titlelink/RV=1/RU=aHR0cHM6Ly9ibG9ncy55YWhvby5jby5qcC90YW5pZHIvMTg2MTA0MjUuaHRtbA--
その後,イギリス各地を見学して回りましたので,
詳細はブログのイギリス旅行記の続編をご覧ください.
■お知らせ
とっとりサイエンスワールドは,9月2日のin倉吉を残すのみとなりました(私は参加します).
数学月間懇話会(第14回)は,8月22日,14時から東大駒場で実施します.
興味深い講演が3つあります.お気軽にご参加ください.
■
写真はイギリスで見聞した面白い形,セパタクロウのボールの形です.
このおもちゃは,サンダーランド博物館で売っていました.
6色のリングが組み合わさってできています.
リングを切ってばらして再組み立て直してみました.
思ったより樹脂が固くて編み難く扱いにくいです.
テープを編んでセパタクロウのボールを作った方が楽でした.
さて,このボールは,正5角形と正3角形からできており,
頂点のまわりに,3角形,5角形,3角形,5角形の順に集まっていますから
シュレフリ記号で[3,5,3,5]半正多面体です.この多面体には対称心があります.
点群は正12面体群の対称性です.
この模型自体が5回対称軸による色が保存される軌道からなり.正12面体には6本の5回軸がありますから,6色の軌道が組み合わさってできています.
5回回転軸は5色の循環と1色の保存と結び付き,3回回転軸は3色づつ2組の循環と結び付きます.
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数学月間SGK通信 [2018.08.14] No.228
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今回は,クラッグサイド城での見聞を紹介します.
クラッグサイドCragsideというのは,Nothunberland 国立公園内, Newcastleから北北西50kmの付近にあります.
アームストロングWilliamArmstrongの居城.アームストロング(1810-1900)はニューカッスル出身の発明家でアームストロング社を設立しました.
水力を動力とする回転機,クレーンの発明.アームストロング砲や戦艦造船事業です.
日露戦争時の戦艦,三笠など皆アームストロング社製です.金剛などの主砲もアームストロング社製.
日本は,弩級戦艦(ドレッドノート型)の造艦をイギリスから学ぶが,その後,超弩級の大和などを作るようになる.
日本の建艦技術の先生である.購入した戦艦の改装は何度か行われたが,装甲板にドリルの歯がたたず鋼材の硬さに舌を巻いたという話をどこかで読んだ記憶がある.
Cragside城の内部は,リフトを始め調理装置まで,さまざまな器具の動力に水力による回転が伝達されている.
自己の開発したメカ技術の実用化テスト場のようでもある.
クレーンで成功したのだが,建物にも動滑車を使ったメカが使われている.
アルキメデス螺旋(写真)は,水路の落差で螺旋軸を回転し水力発電機を回す.
あるいは螺旋軸を電力で逆転すれは揚水もできる.
実験室の展示には静電気発電や不思議な実験装置の展示があり面白い.
■クラッグサイドCragsideで見たモザイク模様
これら(5つ)はすべて同じ対称性(P4mm)に分類されます.一般に壁紙模様の対称性(平面群)は17種類ありますが,クラッグサイドでは.P4mmの模様ばかりが使われていました.
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■訃報
数学月間設立に尽力された片瀬豊氏が,8月8日に亡くなりました.
通夜:8月18日,6時から
告別式:8月19日,11時から
いづれも,横浜港南台,くらしの友にて
(くらしの友の住所は)
神奈川県横浜市港南区港南台4丁目24-10
なお,8月22日の「数学月間懇話会(第14回)」は故人の遺志を引き継ぎ予定通り実施します.
場所:東大駒場キャンバス,数理科学研究科・002号教室
日時:2018年8月22日,14:00-17:00
参加費無料
1.企業での数学活用の実際,渡邉好夫(リコーICT研究所AI応用研究センター,技術顧問)
2.エントロピーと対数,対称性,宮原恒昱(首都大学東京名誉教授・客員教授)
3.パズル玩具と数学の接点-「解ければ終わり」ではもったいない,秋山久義(数学遊戯研究家)
いずれも問い合わせ先:sgktani@gmail.com
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数学月間SGK通信 [2018.08.21] No.229
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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参考
9月2日は,とっとりサイエンスワールドin倉吉(未来中心にて)に行きます.
今年の万華鏡は,去年のものより少し高級になり3枚鏡です.
きれいですよ.お近くの方どうぞご参加ください.
今日の話題は,多面体の見える万華鏡です.
reciprocalという言葉があります.経済などでは,互恵的とか対等とかいう意味で使われます.
結晶学では,結晶格子crystal latticeに対して,逆格子のことをreciprocal latticeといいます.
両者の関係は,多面体でいうと,面を頂点に,頂点を面に変換した多面体
(これを双対dualな多面体という)の関係と同じです.
例えば,シリコンの結晶格子は面心格子で,ディリクレ胞を描くと菱形12面体です.
シリコンの逆格子は体心格子で,ディリクレ胞を描くと{6,6,4}半正多面体,いわゆるケルビン立体です.
結晶格子中のデリクレ胞と逆格子中のデリクレ胞は,このように互いに双対です.
格子に対して逆格子reciprocal latticeとはうまく名付けたものです.
もちろん,対称性はどちらも同じ,正6面体の対称性です.
作製した万華鏡は,左から覗くと菱形12面体が,右から覗くとケルビン立体が観察され,両者の対称性は同じであることを理解するのに役立ちます.
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数学月間SGK通信 [2018.08.28] No.230
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今年の夏は特別暑いですね.皆様お元気でしょうか.
7,8月は超過密なスケジュールでしたが,何とか乗り切れそうです.
8月22日の数学月間懇話会(第14回)は,お陰様で無事実施できました.
残るは9月2日のとっとりサイエンスワールドin倉吉(未来中心)です.
お近くの方,ぜひご参加ください.私は万華鏡で参加します.
今年の万華鏡は,ちょっと見ると昨年と同じと思う人もいそうですが,
実は3枚鏡に進化しているのです.今年の万華鏡を作れば,昨年より
ずいぶんきれいな映像であることがわかるでしょう.
このようなタイプ(ブリュースタ)の万華鏡は,これでゴールです.
来年の万華鏡からは,多面体万華鏡のシリーズに変えたいと思っています.
ぜひ,今年の万華鏡を作りに来てください.
ひまわりの花の中心の種の部分や,松ぼっくりを裏から見ると
時計回りの螺旋と反時計回りの螺旋が見えるでしょう.
それらの螺旋の数は,隣り合うフィボナッチ数であることが知られています.
今日は,フィボナッチ数の話です.
オスのミツバチは未受精卵から生まれ,メスのミツバチは受精卵から生まれるそうです.だから,オスのミツバチには母親しかいません.メスのミツバチには母親と父親がいます.
いま,1つのオスのミツバチに注目して,このミツバチの祖先が何匹になるか,
世代ごとに遡ってみましょう.
原点になるオスのミツバチを世代1とします.
遡って,世代nのミツバチの数を(a(n),b(n),t(n))と表記しましょう.
a(n)はメスのミツバチ数,b(n)はオスのミツバチ数,t(n)はミツバチ総数です.
世代1では,オスのミツバチ1匹なので,
(a(1)=0,b(1)=1,t(1)=1)です.
オスのミツバチには母親しかいませんから
親の世代(世代2)では,(a(2)=1, b(2)=0, t(2)=1)になり,
さらに遡り祖父母の世代(世代3)で,メスのミツバチ1匹が生れたのだから,
(a(3)=1,b(3)=1,t(3)=2) です.
この調子で遡っていきます:
いつも次の関係が成り立つことがわかるでしょう.
a(n-1)=b(n)
a(n-1)+b(n-1)=a(n)
t(n)=a(n)+b(n)
これらの関係を整理して,
a(n-1)+b(n-1)=a(n-1)+a(n-2)=a(n)
t(n)=a(n)+b(n)=a(n)+a(n-1)=a(n+1)
が得られます.
これは,メスのミツバチの数は,世代を遡るとフィボナッチ数列で増大する
ことを示しています.
n世代のミツバチ数は,一つ遡ったn+1世代のメスのミツバチ数と同じとも言えます.
1世代から遡って8世代まで,ミツバチ総数t(n)を並べて見ましょう.
1,1,2,3,5,8,13,21,....
これはフィボナッチ数列です.
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数学月間SGK通信 [2018.09.04] No.231
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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9月2日はとっとりサイエンスワールドin倉吉(未来中心)でした.
7月は私は不在だったので,参加するのは今年は倉吉だけでした.
他会場は,材料のみの提供で,先生方やボランティアの高校生にお願いしました.
前夜の20時50分発のバスで出発し,当日の朝7時に倉吉到着です.
会場の倉吉,未来中心(なしっこ館)で,8時過ぎから準備に入り,
いよいよ10時開場です.良い天気の日になりました.
2日(当日)の来場者は1,226人との発表です.
倉吉会場の万華鏡は100人を予定しましたが,3回目のクラスで使い切り,
その後の4,5回は,予備の材料をかき集めて対応しました.
結局,150人(約30人クラスを5回)を超す盛況でしたが,
4,5回目は混雑しすぎて指導の声が届かず困りました.
材料切れでお断りした方々には申し訳ありません.
左側は今年(2018年)の万華鏡の映像.右側は昨年(2017年)の万華鏡の映像です.
万華鏡の外観はほとんど同じなのですが,覗くと,映像はずいぶん違うでしょう.
今年の万華鏡で,頂角が15度の2等辺3角形の3枚鏡の万華鏡のゴールです.
ちなみに,昨年の万華鏡は2枚鏡の万華鏡でした.
去年の万華鏡 今年の万華鏡
来年の万華鏡は多面体の見える万華鏡も含めて,いろいろ考慮中です.
ご希望などお寄せください.
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数学月間SGK通信 [2018.09.11] No.232
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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参考
ロンドンの記事
多面体の6角形の面
関西では台風大雨の被害,北海道では地震の被害と,重なりなした.
皆様いかがでしょうか.お見舞い申し上げます.
北海道の地震では,泊原発が停止していたのは不幸中の幸いでした.
もし稼働中だったら制御棒が挿入でき停止できたとしても,
燃料の冷却には非常用電源だけでは持ちません.福一の再現になるところでした.
今年は異常に暑い夏でした.私の家に来ていたシジュウカラさんたちは全く姿を現さなくなっていたのですが,9月8日になってまた戻ってきました.暑い夏はどこか山の方にでも避難していたのでしょう.無事で良かった.
今回はイギリス旅行で見たものの話です.
ロンドンに寄ったのは,7月16,17日の2日だけ.16日(月曜日)の昼にロンドン着.ブリティッシ・ライブラリーと大英博物館見学.あまり見学時間はありません.
館内も非常に暑い.その後トラファルガーまで2階建てバスに乗る.
16日はKings crossに泊まる.
マルクスは大英博物館の読書室で毎日過ごしたそうだ.記録が残っている.
■
地下鉄の通路のバイオリニスト.サウンドオブミュージックの演奏ですが,上手いので募金しました.上手いわけですここで演奏できるのはオーデションに合格した人だけだそうです.私も下手なバイオリンを奏くので,この方に関心をもちました.なぜここで演奏しているのか質問したかった.伴奏もなくただ一人.こんなところでバイオリンに出会うとは意外でした.
17日(火曜日)は,V&A(Victoria & Albert)Museum(今日も非常に暑い日であるが,5階は天井ガラスでまるで温室).その後,自然史博物館見学.
東日本大震災のコーナーがありました.床が横揺れする地震の体験ができます.
地震を体験したことがあるかを問うアンケートの投票ボタンがありましたが,この地の人の7割が地震の体験がないようです.
■さて,街を歩いていて面白い建物を見つけました.
黄金比だらけのペンローズタイリングや面白い多面体のオブジェです.
この建物はよくわかりませんがロンドン大学と関係ありそうです.この多面体の形は,なかなか面白い.正5角形が12個と6角形(正ではない)が30個でできています.
正5角形が12面でできている「正12面体」の各面(正5角形)に厚みを持たせて,
側面が台形で囲まれた「厚みのある正5角形の面」で正12面体を作り,側面の台形は隣の面の台形とつないで平面上の6角形にします.なかなか美しく面白い多面体ですが,3つの6角形が出会う頂点があります.もし,6角形が正6角形なら3つ出会う頂点は平坦になってしまいますから,この図形の6角形は正6角形ではありません.
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数学月間SGK通信 [2018.10.09] No.236
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今年の数学月間懇話会の講演の1つは,パズル玩具と数学の接点-「解ければ終わり」ではもったいない-秋山久義氏でした.
この講演で取り上げたパズルの1つに「クロスバー・パズル」があります.秋山氏のプレゼンを引用し,
このパズルを紹介しましょう.
クロスバー・パズルというのは,8枚の板よりなり,
板には5の溝が切ってある櫛形をしています:
5つの溝のうち1つは深く,1つは浅い.残りの3つの溝は中間(半分)の深さです.
8枚の板は,シリンダー錠のように,溝の配列が全部異なります.
この8枚の板を縦/横に組み合わせ,完成図のような形に組み上げて下さい.
縦/横(直交)に組み合うときに,深い溝には浅い溝を組み合わせなければできません.
中間の深さのもの同士が組み合わなければやはり行き詰ります.
全部組み上げるのはとても難しいです.ご挑戦ください.
[ヒント]
ラテン方陣というのは,5つの数字を並べて.縦/横のどの列にも,同じ数字が出てこないような並べ方です.
クロスバー・パズルでは,深い溝と浅い溝が,縦/横の列に1つずつあるのが必要条件です.
ラテン方陣とクロスバー・パズル,この両者は似ていると思いませんか!
このラテン方陣から出る解は,ここに示したグラフの解(4つ)以外にもあるし,
ラテン方陣は,この他にもまだあります.従って,解はこの4つ以外にたくさん(多分,24通り)あります.
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数学月間SGK通信 [2018.09.25] No.234
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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フィボナッチ数はいろいろな所に現れます.
230号に続きThomas Koshyの著書からの引用です.
今回はフィボナッチ数と音楽の関係です.
フィボナッチ数は次のように定義される
F(n)=F(n-1)+F(n-2).F(1)=1,F(2)=1として数列を作ると
1,1,2,3,5,8,13,.......が得られる.
ピアノの鍵盤は,フィボナッチ数と音楽のつながりを魅惑的に可視化している.
鍵盤上で1オクターブは,2音の間の音程で,高音の周波数は低音の2倍になっている.鍵盤でいうと,1オクターブは,5つの黒鍵と8つの白鍵,合わせて13の鍵で構成される;図.この5つの黒鍵は2つのグループをなしている;一方は2鍵よりなるグループ,他方は3鍵よりなるグループ.
1オクターブに入る13の音は,西洋音楽で最も一般的な音階であるクロマチック音階(半音階)を作る.クロマチック音階に先行して,2つの他の音階;5音からなるペンタトニック音階と8音からなるダイアトニック音階があった. お馴染みの"Mary had a Little Lamb” と “Amazing Grace” は,ペンタトニック音階を使い演奏できる.また, “Row, Row, Row Your Boat” のメロディーはダイアトニック音階を使い演奏できる.
長6度と短6度(それぞれ,6つ離れた音,および5+1/2離れた音)は,耳を最も喜ばす2つの音程である.長6度は,例えば,音CとAから成る:それぞれの音は,1秒当たり264と440の振動数である;図.264/440 = 3/5は,フィボナッチ比であるに注目しよう.
短6度は,例えば,1秒当たりの振動数330と528の音であるEとCから構成される. それらの比もフィボナッチ比である: 330/528 = 5/8.
[自音の音程は1度という.1オクターブの音程は8度である.]
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数学月間SGK通信 [2018.09.18] No.233
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆様お変わりありませんか.
AI人工知能,ビッグデータ解析という分野がどんどん人間に近づいていて,
気持ちが悪いですね.基礎になる”ベイズ確率”は,別途言及しようと思っています.
「千倍変わると世の中が変わる(新しいパラダイムになる)」というのが,放射光の高輝度化を推進する根拠に,千川純一先生がよく言われていた.いろいろの技術でこの裏付けがなされる.肉眼→光学顕微鏡→電子顕微鏡.光学顕微鏡で初めて細菌が見えるようになった.電子顕微鏡で初めてウイルスが見えるようになった.光学顕微鏡でウイルスを見ようとしたって無駄なことだった.濾過性病原菌という言葉が生きていた過去の時代のことだ.人→ジェット機→?,トランジスタ→IC(微細化のスピードはムーアの法則に乗って進んだ),コンピュータの速度もどんどん速くなっている.千倍の技術革新で全く新しいパラダイムに突入するが,千倍を達成するのは容易いことではない.計算速度が速くなればAIもどんどん人間に近づいて行くのは間違いない.
機械は絶対に人間の心がわからないという人もいるが,人間だって自分をわかっているとは言えない.少なくとも,村上春樹程度の小説は,AIが書くようになると私は思います.
そして,行着くところはシンギュラリティなのか?そこまで行着けないのか?
人間が誰もいなくなっても,今と同じ世界が続いているなら,私という存在はいったい何なのだろうか.これは,選挙のたびに私が感じることです.私たちの投票が開票されていないのに,結果が分かっているとは何と理不尽なことか.
ロンドンの街で面白い建物を見つけました.
黄金比だらけのペンローズタイリングや面白い多面体のオブジェです.
この建物はロンドン大学と関係ありそうな建物です.右の多面体の形は,なかなか面白い.正5角形の12面でできている「正12面体」の各面(正5角形)に厚みを持たせて側面が台形で囲まれた「厚みのある正5角形の面」で正12面体の面を置き換えるとできます.側面の台形は隣の面の台形とつないで平面上の6角形にします.なかなか美しく面白い多面体ですね.
この多面体は,正5角形12個と6角形30個でできていて,頂点周りがすべて均一ではなく,6角形が3つ集まる頂点と,正5角形と2つの6角形が集まる頂点の2種類があります.もし,6角形が正6角形とすると3つ集まると平面になるので立体になりません.6角形は平面でないかあるいは角度が歪まざるを得ません.
7月17日,ロンドンへの追加写真
◆地下鉄の通路のバイオリニスト.サウンドオブミュージックの演奏ですが上手いので募金しました.上手いわけですここで演奏できるのはオーデションに合格した人だけだそうです.
◆黄金比だらけのペンローズタイリングや面白い多面体のオブジェです.ロンドン大学と関係ありそうな建物です.
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数学月間SGK通信 [2018.06.26] No.225
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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球面正12面体像の見えるメビウス万華鏡を作って見ましょう.
まず,完成した2つの万華鏡像をご鑑賞ください.
(A)左の万華鏡像
球面正12面体の1つの面(球面正5角形)の1/10が非対称領域にある(万華鏡内の)物体です.正12面体全体の1/120が非対称領域です.
(B)右の万華鏡像
球面正12面体の1つの面(球面正5角形)の1/5が非対称領域にある(万華鏡内の)物体)です.正12面体全体の1/60が非対称領域です.
両万華鏡ともに,球面正12面体の映像が見えますが,それぞれの球面正5角形の面の分割数を観察すると異なることがわります.
左の万華鏡(A)は,右の万華鏡(B)の半分です.
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数学月間SGK通信 [2018.06.19] No.224
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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正12面体や球面正12面体は,正5角形(あるいは,球面正5角形)の面12枚が囲んでできる立体です.
3枚鏡の組み合わせで万華鏡を作り,正12面体や球面正12面体が見える万華鏡を作りましょう.
正12面体の点群(対称性)を生成元する3枚の鏡に,次のものを選びます.
(Aタイプ)1つの正5角形の面を10個の直角3角形に分割し,
その領域を中心から見込む3角錘が作る万華鏡.
(Bタイプ)1つの正5角形の面を5つの2等辺3角形に分割し,
その領域を中心から見込む3角錘が作る万華鏡.
(A) (B)
作製したそれぞれの万華鏡で見られる映像を対応させて掲載します.
正12面体映像の正5角形の面を比較観察してください.
Aの映像では直角3角形10個が正5角形面を作っていますが,Bの映像では2等辺三角形5個が正5角形の面を作っているのがわかります.
■正12面体および球面正12面体の見える万華鏡(Aタイプ)の作り方
ミラー紙(厚さ0.25mm以上が良い)に次の展開図を描きます.青色の部分を使います(赤線に沿って光の窓を作ります).赤線の円は球面正12面体像が見える窓,赤線の直線は正12面体像が見える窓で,どちらかを選びます.辺OHがつながるように3角錐(鏡面は三角錐の内側)を組み立てます.完成した万華鏡は△KAHから覗きます.
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数学月間SGK通信 [2018.06.05] No.222
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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夏を思わせる日があったと思うと寒い日もあります.
梅雨入りもまじかでしょう,皆様どうぞご自愛ください.
今日は,対数について実用上の役割を見てみましょう.
関数としての対数の微積分は,数学では避けられませんが
常用対数表や計算尺はコンピュータ時代に影が薄くなりました.
しかし,対数は数字の桁を表示することなので,色々な現象のスケールの定義が
対数を用いてなされます.社会や科学の色々な分野で対数が係わることになります.
■対数の発明
ネイピア(スコットランド)は,1614年の著書で対数を提唱しました.
大きな数字の間の乗算は面倒です.
対数を用いれば,掛け合わせるそれぞれの数の対数をとり,それらを加算し,
対数表の中にこの数を探しだし,対数をとる前の数を求めればよい.
積の対数は,それぞれの数の対数の和になるから,乗算が加算に変る.
log(A・B)=log(A)+log(B)
コンピュータのない時代の科学技術計算に,対数表は不可欠だった.
16cの天文学者は対数表で大いに助かったことだろう.
あのニュートンも対数表を用いて計算したに相違ない.
ビュルギ(スイス)も,ネイピアとほとんど同時期に対数を用いているらしい.
計算尺の発明は,ウイリアム・オートレッド(英)1621年と言われる.
対数をとると,乗算が加算に変わる原理は,次のようなことです.
例えば,16や32を2のべき乗で表すと,16=2^4, 32=2^5なので,
16x32=512の計算は,つまり,2^4x2^5=2^9 は,
4+5=9のように,べき乗の可算になります(指数法則).
2を底とする対数をとると,log16=4,log32=5,log512=9であるので
べき乗の可算4+5=9から,log16+log32=log512となります.
このように,対数を仲介することで,積を和に変えることができます.
ここでは,2を対数の底として説明しましたが,対数表の完備しているのは底10の
常用対数です.常用対数は,10進法に相当しています.
注)底は1でない正数.対数が定義できるのは真数が正数のとき定義される.
■対数の応用
対数は科学の様々な分野のスケールに用いられる.例えば,エントロピー.ペーハーpH,
デシベルdB,地震マグニチュード,恒星の等級,...等々.
人間の感覚感度は,べき乗スケールで変わった方が自然なようです.
例えば,
・エントロピーSと,状態のとり得る場合の数Wは,
S=k・log(W),kはボルツマン定数.
・ペーハーpHは,水溶液の水素イオン濃度の対数です.
純水の水素イオン濃度は10^-7なので,中性のpH=-log(10^-7)=7
・デシベルdBは,ゲイン(増幅率)の対数をベルBと言い,その10倍をデシベルdBと言います.
100倍のゲインならlog100=2B=20dB.
・地震のマグニチュードMは,地震のエネルギーの対数です.
マグニチュードが1段階変わればエネルギーは約32倍になります.
・恒星の等級には,実視等級と絶対等級があります.実視等級は,一番明るい星たちを1等星,
肉眼でやっと見える星たちを6等星に区分したことに始まります.
1等星と6等星では明るさが100倍違いましたので,結局1等級違えば明るさは100^(1/5)=2.51・・倍違います.
絶対等級というのは,恒星までの距離を考慮し,恒星がすべて10パーセク(32.6光年)の距離にあるとして,
実視等級を換算し直し,地球からの距離にはよらぬ恒星本来の明るさを表します.
この換算には,明るさは距離の2乗に反比例することを使います.
ハワイ島には3つの主な火山があり,北がマウナケア,中央がマウナロア,南東がキラウエアです.5月に噴火しているのはキラウエアの東端ブナ地区の一部です.ホットスポットからマグマが上がり,地殻プレートは西に移動していますので,活動はだんだん東に移ります*注.
注)
ハワイが乗っている太平洋プレートは,東太平洋海嶺(アメリカ大陸の西側に沿ってある)から生まれて,日本海溝で沈みます.海嶺はマントル対流の上昇箇所にできる山で,ここを中心に,東西にプレートが送り出されます.東に送り出されたプレートは米国大陸の下に潜り込み(サンアンドレアス断層=地震の巣),西に送り出されたプレートは日本海溝で沈みます.マグマの発生源は上部マントルのホットスポットにあり,移動するプレート(地殻)を通り抜けてマグマが上がって来ます.プレートが西に動いているので,火山の活発な場所は,地上で見ると東に動くように見えます.
マウナケア,マウナロアは4,000mを越す山ですが,キラウエアは活動中で標高もまだ1,000mちょとです.マントル上部からマグマが上昇して来ますが,海洋底の地殻は薄いので,マグマだまりで地殻成分を融かす暇がなく,ケイ酸塩成分の少ない流動性の高い玄武岩質のまま穏やかに噴火し溶岩流となります.セントへレンズ山や富士山の様な内陸部では,マグマのケイ酸塩成分が少し増えますから粘性が上がり爆発的な噴火があります.写真(玄武岩basalt)は,私が昔採集したマウナケアのKapa'ahu溶岩です.溶岩流の筋跡が見えます.白っぽく見えるのは,リューサイトKAlSi2O6の小さい結晶です.この溶岩は気泡が抜けて穴だらけ状態(アア溶岩)とは違い,かつ,リューサイトも結晶化しているので,溶岩流の内部でゆっくり固まったものと思います.
モーリーの定理:「3角形の各内角の3等分線の交点(最初に出会う3点)が作る3角形は,常に正3角形である」
1899年にフランク・モーリーによって発見されたこの定理の証明はとても難解です.一般角の3等分自体が,定規とコンパスで作図不可能ですから,この定理の証明も困難そうです.この定理の背景に不可能作図の角度の3等分があるので,この定理は盲点だったのでしょう.ユークリッドの時代に発見されても良さそうな初等幾何の定理なのに,発見は最近百年の出来事です.
■Frank Morlay(1860年英国生まれ.ケンブリッジ卒業.1887年より米国定住)学生時代から始まるThe Edcational Timesへの数学問題(主として幾何学)掲載は,50年にわり,60題を越す.1900年,ジョンズ・ホプキンス大,数学教授
米数学協会Bulletinの編集,ジョンズ・ホプキンス大では the American Journal of Mathematicsの編集を30年間務めた.
http://jwilson.coe.uga.edu/EMT668/EMAT6680.F99/Estes/morley/morley.html
■モーリーの定理の証明は,モーリー後も,いろいろな人が,さまざまな方法で証明しました.三角関数を使ってM. Satyanarayana,初等幾何学的にN. Naranjengar(1909), Alain Connes(1998), John Conway などなど....
数学では,定理を発見し証明するのは価値がありますが,すでに証明されている定理でも,別の方法で証明することは重要です.特に,その証明法が飾りを削ぎ落し定理の本質を暴き出すものであれば非常に価値が高い.皆様もこの定理に挑戦ください.
■ Taylor and Marr(1914)は、2つの幾何学的証明と1つの三角関数を使った証明を提示しました.
この定理を広げて,さらに美しい驚くべき結果も得られています.内部の正3角形に加えて、外部に4つの追加の正3角形があります(Wells 1991).
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数学月間SGK通信 [2018.06.12] No.223
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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練習問題
(左図)直角3角形の各辺上に半円形が描いてあります.これらの面積に以下の関係があります.青い半円+黄緑の半円=オレンジの半円
ピタゴラス(3平方)の定理,a^2+b^2=c^2 (a,bcは直角3角形の辺長で,cは斜辺)が成立するのだから,当然ですね.
(右図)青い月形+黄緑の月形=三角形の面積(ピンク)を証明しなさい.
■解説
直角3角形で成り立つピタゴラスの定理はa^2+b^2=c^2(ただし,cは斜辺の長さ).この関係を面積で表現すると,それぞれの辺を1辺として描いた正方形の面積の関係であることはご存知でしょう.今度は,それぞれの辺を直径とする半円を描いたものが左の図です.それぞれの半円の面積は,piを円周率とし,(pi/8)・a^2,(pi/8)・b^2,(pi/8)・c^2ですから,ピタゴラスの定理を各辺を直径とする半円の面歳の関係だと言ってもよいのです.ピタゴラスの定理は2乗和の関係で,2乗と言えば面積ですから,例えば,それぞれの辺の上に正3角形を描いて,それらの面積の間に成り立つのがピタゴラスの定理ということもできます.
さて,ピタゴラスの定理から,左図の半円の面積に関して,
青い半円+緑の半円=黄色の半円
が成立します.
右図をご覧ください.左図の黄色の半円は,右図でcは白い円の直径ですから,じっと見ると,ピンクの直角3角形が,この白い半円に入っていることがわかるでしょう.面積の関係は,青い半円+緑の半円=白い半円 です.
結局,青い半円と緑の半円と白い半円の巨通部分を減じると,
青い三日月+緑の三日月=ピンクの直角3角形
の関係が得られます.
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数学月間SGK通信 [2018.05.08] No.218
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■皆様,連休をどのようにお過ごしでしたか.私は,数学月間のHPの改装を進めています.
当分は,現状HPの方 http://sgk2005.sakura.ne.jp/ を訪問ください.
5月5日は,友人の出るハーモニカの発表会を聞きに行きました.
ファミリー和谷クロマティック・ハーモニカ発表会(ルーテル市ヶ谷センター)です..
オルガン,手風琴のようでもあり,オーボエ,フルートのようにも,時にはバイオリンのようにも聞こえる音色.
ジプシー風,タンゴ風の曲想に似合いながら,四重奏も合奏も協奏曲もこなせる凄いポテンシャルのある楽器です.
フルートでも難しい速いパッセージの超絶技巧に感動.和谷奏扶先生はハーモニカ音楽の開拓者.
目からうろこの発表会でした.
■数学月間懇話会(第14回)のお知らせ
●場所:東大駒場キャンバス,数理科学研究科・002号教室
●日時:2018年8月22日,14:00-17:00
●参加費無料
直接会場にお出で下さい.
●主催:数学月間の会,日本数学協会
●問い合わせ:sgktani@gmail.com
●プログラム:
1.企業での数学活用の実際,渡邉好夫(リコーICT研究所AI応用研究センター,技術顧問)
2.エントロピーと対数,対称性,宮原恒昱(首都大学東京名誉教授・客員教授)
3.パズル玩具と数学の接点-「解ければ終わり」ではもったいない,秋山久義(数学遊戯研究家)
●17:30より構内カフェテリアにて懇親会(飲食は各自払い)
皆さんのご参加をお待ちします.
今年は,例年(7月22日)とちがい8月22日ですご注意ください!
■企画意図の口上
(1)googleやamazonなどが典型ですが,色々なデータが収集され予測に使われています.
皆さんも日ごろ実感されていることでしょう.このビッグデータの時代に,
企業もデータサイエンスに無関心ではいられません.しかし,ビッグデータの以前から,
機器の設計にあたっては動作原理のシミュレーションなどの数学モデルが企業でも使われておりました.
数学が色々な分野で技術を支えているのが具体的に実感できるでしょう.
(2)天才ボルツマン(オーストリアの物理学者)の墓碑には,S=k・ln(W)と刻まれているそうです.Sはエントロピー,
Wは状態のとり得る”場合の数”,ln(W)は”場合の数”の自然対数をとること,kはボルツマン定数です.
対数をとると,ln(A・B)=ln(A)+ln(B) のように,積が和になりますので,
”場合の数”の積は,エントロピーの和に対応します.だからここに対数がでてくるのですね.
ボルツマンは1906年自殺しました.分子の実在も証明されない時代に,
気体分子運動論,統計力学を主張した天才は学会に受け入れられませんでした.
あと1年頑張っていればよかったのですがね.
(3)パズルやマジックの多くは,数学に深いかかわりがあります.
試行錯誤して,答えが見つかればそれで終わりとするのが普通です.
でもそれでは勿体無い.正解が発見でき,本質に肉薄した所にいるのだから,
その手順を整理してみると,その奥にある数学原理が発見できるでしょう.
2010年没のマーチン・ガードナーの著作が懐かしいですね,
おいでになれば,珍しいパズルグッズにも触れることができます.
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数学月間SGK通信 [2018.05.01] No.217
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆様,ゴールデンウイーク(この頃あまり使われないようですが)の真っただ中
良い休日をお過ごしでしょうか.私は数学月間の会のウエブサイトの改装の準備中です.
公開までにまだ日にちがかります.
桜が咲き始める3月末から,顔見知りのシジュウカラさん達が姿を現さなくなりました.
しじゅう来ていたのにぱったり来なくなり心配になりますが,これは毎年のことです.
林の奥の方ではシジュウカラさん達の良い鳴き声がさかんに聞こえます.巣にいて
きっと忙しいのでしょうね.
シジュウカラさん達がまた来る日までに,百日紅の葉はすっかり茂っているでしょう.
◆前号でフィボナッチ数列と対数螺旋の話をしましたが,図を示しておきます.
フィボナッチ数列を1辺とする正方形で平面を埋めていくと,螺旋ができます.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/91/18506991/img_0_m?1525098033
◆互いに隣り合うフィボナッチ数は互いに素です.
[F(n+1),F(n)]でF(n+1)とF(n)の最大公約数を表示することにします.
[F(n+1),F(n)]=[F(n)+F(n-1),F(n)]=[F(n-1),F(n)]
この関係はn=1のでも成り立ち[1,1]=1ですから,隣り合うフィボナッチ数はいつも互いに素です.
◆話は変わりますが,合同式についてちょっと触れます.
a=b(mod n) と書いて,aはnを法としてbに等しい(合同)と読みます.
つまり,a-bはnで割り切れるということです.
この関係を使うと整数全体をnで割った時の余りが,0,1,2,・・・,n-1のn個のグループに分類できます.
例えば,(mod 3)の時には,すべての整数を3で割った時の余りで3つのグループに分類できます.
余りが0,1,2のグループ(集合)です.集合の名前を余りで表記し,
それぞれ0,1,2としますと,次の性質があることがわかります.
0+0=0,0+1=1,0+2=2,1+1=2,1+2=0,2+2=1
3つのグループ0,1,2は,加法で群を作るようです.
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数学月間SGK通信 [2018.04.24] No.216
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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下の写真は,先日紹介したロマネスコです.
以下の動画も参照ください.
https://www.facebook.com/scifri/videos/10154643456998403/?t=0
向日葵の花の芯やロマネスクを見てると螺旋が見えてくると思います.
右回りの螺旋が見えたり,左回りの螺旋が見えたりします.
目がちらちらしますが,それぞれの螺旋の数を数えて見ましょう.
多分,ロマネスコでは,左回りの螺旋が13,右回りの螺旋が21見えてきたりします.
向日葵でも同様です.1,1,2,3,5,8,13,21,34,...はフィボナッチ数列で,
向日葵の花の芯,ロマネスコ,松ぼっくり,パイナップルなどなどで見られる
螺旋の数は,13,21などのフィボナッチ数です.
このような配列が成長により生まれる仕組みは次のようなものです.
中心で一定の時間間隔で次々に島が生まれるとして,
生まれた島は植物の成長と共に一定の速度で周辺方向に広がりながら押し出されて行きます.
ただし,島を押し出す方向が,360°/φだけ回転します(φ=1.6180・・・の黄金比).
円周を黄金比で分割しながら,その方向に向きを変えて生まれた島を押し出していく仕組みです.
このようにすると島の配列に螺旋が生じ,螺旋は対数螺旋になります.
なぜ円周を黄金分割しながらその方向に島を押し出すのかわかりませんが,
混み具合が均等になるので,成長の自然の原理でしょう.
植物が数学をしているわけではありません.
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数学月間SGK通信 [2018.04.17] No.215
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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内閣支持率が30%を切るところです.30%を切ると一気に崩壊に向かったり,
サンゴ礁の環境保全臨界量(自己組織化臨界)があったり,このような現象は良く知られています.
俗にいう,「泥船から逃げる」と「勝ち馬に乗る」のせめぎ合いのバランスです.
このような二者択一の転換点(tipping point)の数学モデルが,米国数学祭り
(4月19日のオンラインQ&Aで)取り上げられるようです.
文化や環境などのシステムの定常状態が急激に変わる点が転換点です.
復元しようとする力と変えようとする力のバランスで方向が決まります.
米国の国民行事,数学祭のニュース(2018年4月)の情報です.
ワシントンDCで,2019年開催されるNational Math Festivalまであと1年!
4月19日(木)午後2-3時(東部時間)に,以下のオンラインQ&Aがあります.
「何でも聞いてください:Tipping Point 転換点と惑星地球」,
Dr. Mary Lou Zeeman (Bowdoin College)
https://www.facebook.com/nationalmathfestival/
さて,4月は新年度でいろいろ行事があります.皆様の方でニュースがありましたらご連絡ください.
今年の数学月間懇話会(第14回)は,8月22日の開催で企画しています.以下は数学と離れ私の近況です.
◆4月14日は,合同大施餓鬼会に参加しました.法話は古河の一向寺の峯崎住職がされました.人生の意味についてです.
「人の存在は他者から与えられる」当たり前の事が当たり前でなくなるのを自明性の崩壊という.
今まで何とも思わなかったことが,幸せだったなと気づくのは,自明性の崩壊によりその存在に気づいたからだ.
ミラーニューロンとよばれる脳神経細胞は,他者の行動を見たり,声を聞いたりしたことを,
自分自身がまるで同じ体験をしているように感じるという.
「他者との関わりがあって自分が存在する」のです.仏となった死者からの視線については,
次回お話されるそうです.
◆4月16日は,市村清新技術財団の50周年記念式典がありました.
たくさんの懐かしいOBの方にお会いできました.今年の産業賞7件,学術賞7件の表彰がありました.
どれも興味深い技術成果ですが,例えば,学術賞の功績賞で,全身透明化による全細胞解析の実現,
上田泰己(東大)には,ギョッとしてしまいました.透明人間ならぬマウス一匹を透明化です.
死んでいるマウス(もちろん生きてはいません)を漬けておいて透明にする処理液の技術です.
この目的が部外者には始めは良くわからなかったのですが,透明化すると,
細胞1つ1つの積み重ねが解析でき,がんが細胞をどのように伝わるかなど病理現象の研究に役立つそうです.
観察は蛍光顕微鏡によるようで,横からシート状の励起光を照射し,
照射された断面からの蛍光を顕微鏡で観測します.断層の3D画像も容易です.
サンプルが透明でなければシート状の励起光照射ができませんからね.
私はこの観察の道具に用いたシート顕微鏡の方に興味があります.
昔,走査型軟X線分光顕微鏡STXMで,化学状態のマッピングをした(3D像も得た)ことを思い出しました.
ちょっと似ている所があります.
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数学月間SGK通信 [2018.04.10] No.214
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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フラクタルとフィボナッチ数列についての以下のビデオをご覧ください.
https://www.facebook.com/scifri/videos/10154643456998403/?t=0
ここに出て来る野菜のロマネスコの写真を以下に載せておきましょう.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/73/18482473/img_1_m?1523272964
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/73/18482473/img_0_m?1523272964
不思議な形ができていますね.この形の成長の基になるフィボナッチ数列についての説明をしましょう.
フィボナッチ数列の定義は
F(n+2)=F(n+1)+F(n), F(1)=1,F(2)=1 です.
等比数列の型F(n)=r^nの一般項を求めてみましょう.
r^(n+2)=r^(n+1)+r^(n)
すなわち, r^2-r-1=0 を満たすものが解です.
この解は α=(1+√5)/2 , β=(1-√5)/2
一般項は F(n)=cα^n+dβ^n となります.
この解をF(1),F(2)に代入し,次の連立方程式が得られます.
cα+dβ=1=F(1)
cα^2+dβ^2=1=F(2)
一方,α,βは2次方程式の解だから
α^2-α-1=0
β^2-β-1=0
を用いると,連立方程式は
cα+dβ=1
c(α+1)+d(β+1)=1
となり,c+d=0 を得ます.そして,c=1/(α-β)=1/√5
つまり,一般項は F(n)=c(α^n-β^n)=(α^n-β^n)/√5 が答えです.
さて,|β|=0.618・・・<1なので,n→∞でβ^n→0
従って,n→∞で,F(n)=α^n/√5に最も近い整数です.なぜなら.F(n)は整数だからです.
隣り合うフィボナッチ数の比は,n→∞のときα=(1+√5)/2=1.6180・・・
(αは黄金数)になります.
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数学月間SGK通信 [2018.04.03] No.213
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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すっかり暖かになり桜も咲きました.
皆様も良いお花見を満喫されたでしょうか.
毎日,私の所にやって来たシジュウカラさん達もこの良い陽気に忙しいらしく
このところ無沙汰がちになりました.
さた,3月27日の数学月間勉強会,結晶空間群で物理と数学を学ぼう(第4回)は
15名の参加で,無事完結しました.
このシリーズのメインイベントは,第3回の結晶平面群(結晶空間群)の数学でしょう.
周期的な空間(=結晶空間)の数学の復習をしておきましょう.
第1回では周期を扱い,第2回では有限図形の対称性=点群を扱い,
第3回では繰り返し模様(周期的な空間)の対称性ー空間群ーを扱いました.
有限図形の対称性に比べて周期的な空間の対称性はなじみのない人が多いようです.
しかし,周期的な空間はとても重要です.結晶の中は無限に繰り返す世界です.
第4回は,点群から空間群への拡大に言及しました.
2次元の繰り返し模様(=壁紙模様)は,エッシャー〈1944頃)の作品に見られます.
(1)格子
2次元空間では,互いに独立な2つの基本並進ベクトルa1,a2がとれ,
a1,a2の整数係数の1次結合をすべて集めたT={h・a1+k・a2丨h,kは整数}を,
この平面の格子点の集合(あるいは単に“格子”)といいます.
集合Tは無限集合になりますが, 群の条件を満たしており,Tを並進群とも呼びます.
ブラべ格子とは,結晶点群の対称性を基準に,格子のタイプ分類をしたものです.(図1)
(2)点群一有限図形の対称性一
1点の周りの対称操作(点群の対称操作)を考察しましよう.
回転対称軸には,1, 2,3,4,5,6,・・・,∞回(回転対称)軸があり得ます [何もしないのは1回軸].
n回軸Cnとは,360°/nだけの時計回りの回転操作で,n回続けるとCn^n=360°=0°(mod 360°),
これは恒等操作1です.回転操作Cnからは,回転群Cn={Cn,Cn^2,…,Cn^n=1}が生成されます.
その他の2次元点群で見られる対称操作には,鏡映m [対称心-1は,2次元空間では2回軸と同じ]があります.
鏡映操作mが生成する鏡映群はm={m,m^2=1}
(注)mod360°とは360°回転したら同じものとする[360°を法として同値]という意味です.
別の例では,時計の文字盤があります.我々は13時のことを1時とも言いますが,
これは,mod12[12を法として同値]を用いた結果です.
(3)結晶点群一格子と両立できる点群一
結晶では,点群の回転対称性と並進群(格子)の対称性とが両立しなければなりません.
2,3,4, 6回軸は,それぞれに両立できる格子 がありますが,5回軸の場合はどうでしょう.
1つの5回軸が支配する局所的な作用域として正5角形タイルを描きます.
平面に周期があり複数の5回軸が配列している状態を考えると,
各5回軸は自分の局所的な作用域(正5角形タイル)内でのみ有効なのではなく,全域でも有効です.
各5回軸の局所的な作用域は,互いに他の5 回軸により変換し合い,全体として不変な配置となるべきです.
これは2次元平面を正5角形タイルで隙間なく張り詰めることと同じで,そのようなタイル張りは実現不可能です.
したがって,5回軸と両立する格子はあり得ません.7回以上の回転対称軸に関しても同様で,
結局,格子と両立できる(=結晶空間で許される)回転対称は,2, 3,4,6回軸に限られることになります
[ただし,2次元,3次元空間 での話].
(4)空間群の作り方〈2次元の場合)
2次元空間では,10種の結晶点群G:1,m,2=-1,2mm, 3,3m,4,4mm,6,6mm,
および,5つのブラべ格子T:clino-P (斜交単純格子),ortho-P(直交単純格子),ortho-C (直交C面心格子),
tetra-P(正方単純格子),hexa-P(六方単純格子)が数え上げられます.
周期的な空間での対称操作が作る群が結晶空間群で,結晶空間群Φの要素は,
結晶点群Gの要素と並進群Tの要素との積(結合)です.Φ=G×T
壁紙模様の平面群17種の構成を見てみましょう.
壁紙模様は,1つの“モチーフ”(=単位胞の中身)を無限にある格子点の上に配置して構成されています.
格子点は無限にあり,どの格子点にいても常に世界の真ん中ですから,
「格子点距離の倍数だけ移動した点はすべて同価」との見方をします.
これを“格子を法として(mod T)同値”と言います.
無限に繰り返す“モチーフ”の分布を,単位胞内の1つの “モチーフ”に還元できます.
[準同型写像で,Φ/T=G のように表現します.ただし,並進群TはΦの正規部分群であることを用いています]
この見方をさらに進めると,“モチーフ”内部の対称性を記述する結晶点群G自体も,
格子を法として(mod T)閉じればよく,G(mod T)と拡張でき,
拡張された結晶点群G(mod T)と並進群Tとの積で作られる空間群もあります.
このような夕イプの空間群には, 映進面(鏡映 + 鏡面に平行に格子距離/2の並進),
n回螺旋軸(360°/nの回転 十 軸方向に格子距離/nの並進)などの操作があります.
ただし,螺旋軸が現れるのは3次元以上の空間で,平面群にはありません.
例として,平面群P2mm, P2mg, P2ggの作り方を図示します
(注)頭のPは格子を表し,続く2mmなどが結晶点群の対称要素です.後者の2つ平面群には,映進面gが現れます.
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イメージ 2
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数学月間SGK通信 [2018.03.27] No.212
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今日,3月27日は,数学月間勉強会,結晶空間群で物理と数学を学ぼう(第4回)をやります.
14:30から,東大出版会,会議室です.ご興味おありの方はご参加ください.
群の表現とその応用例を,一気にやってしまいますので,一寸無謀です.
そこで,メリハリをつけて,基本的な考え方を理解することに全力を使うことにします.
応用例は3つ示そうと思っていますが,残り時間を見ながら消化できる程度に留めます.
用意している応用例は,以下の3つです:
(1)水分子の振動モード,
(2)シクロブタジエン分子の分子軌道エネルギー準位,
(3)ルビーの赤い色の原因の結晶場
■(1)水分子の振動モード
水分子H2Oの形は,O原子を中心に両側にH原子が結合していて,「く」の字型(ブーメランの様な形)をしています.
その形の対称性はO原子を通過する2回回転対称軸$$2_{z}$$,分子全体を載せる鏡映面$$m_{y}$$(これは,$$z-x$$平面),この鏡映面に垂直な鏡映面$$m_{x}$$(これは,$$z-y$$平面)からなります.点群の記号で書けば$$2mm$$です.
$$2_z$$は$$z$$軸を回転軸とする2回軸,$$m_y$$は$$y$$軸方向の符号を変える鏡映面($$z−x$$面),$$m_x$$は$$x$$軸方向の符号を変える鏡映面($$z-y$$面)です.
この分子の内部自由度は3(O-Hの長さが2つとH-O-Hの角度が1つ)なので,分子振動のモードは3種類あるはずです.
分子の形から,この分子振動の3つのモードは次の3つであることがわかります.
すなわち,非対称モードのB1,対称モードA1の2つです.
表の見出し行は,水分子の対称性(点群)$$2mm$$と,その対称要素{$$1, 2_{z},m_{y},m_{x}$$}です.
$$2_{z}$$は$$z$$軸を回転軸とする2回軸,$$m_{y}$$は$$y$$軸方向の符号を変える鏡映面($$x-z$$面),
$$m_{x}$$は$$x$$軸方向の符号を変える鏡映面です.
水分子を$$x-z$$面上に置いてあるとして,それぞれの対称操作を行った時に,
各振動モードで原子の変位を示すベクトルが向きを変えるか変えないかを調べましょう.
上の表で$$A_1$$と$$B_1$$の行の符号を見ると,$$B_1$$の$$2_{z}$$,$$m_{x}$$の場合に-1となっていますが,
$$B_{1}$$と記した分子の変位が,$$2_{z}$$と$$m_{x}$$の対称操作をすると逆向きになることがわかるでしょう.
$$A_1,B_1$$は点群$$2mm$$の既約表現です.点群$$2mm$$の既約表現はこのほかに$$A_2,
B_2$$の計4つがあります.点群$$2mm$$の対称操作(対称要素)は4つあり,
この群はAbel群ですので類の数も4つ.異なる既約表現の数は類の数に等しいので4つです.
この表は,既約表現の指数を記入した表です.
さて表の$$N$$は,各対称操作で動かない(対称操作が通過する)原子数です.
その次の$$χ$$の行は,3つの原子(H,O,H)×3つ($$x,y,z$$)の変位=9次元の変位ベクトルを基底として,
各対称操作の行列表現を作り,その指標を記入しました.
9次元の変位の中には,分子全体としての移動や回転の自由度があり,その指標が$$χ^0$$です.
分子内振動に関与する指標は$$χーχ^0$$で,この中にそれぞれの既約表現がどれだけ含まれるかを調べます.
これは既約表現の直交性という性質を使うと容易に計算でき,$$χ-χ^0=2A_1+B_1$$となります.
こうして,分子の形(原子数と対称性)がわかると,どのような振動モードがあるか知ることができます.
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数学月間SGK通信 [2018.03.20] No.211
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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来週27日は,数学月間流勉強会,第4回です.
東大出版会,会議室にて,14:00-17:00
お気軽に参加ください.
この勉強会(第4回)のテーマは,群の行列表現と現象の対称性です.
先週のメルマガで,ルビーの赤色の補色をCrのd電子が吸収する話をしました.
正8面体の場に置かれたCrのd電子軌道5つは,縮退が解けてエネルギー準位が2つに分かれて存在し,
これらの準位間を電子が遷移するときに光エネルギーの吸収が起こるのでした.
さて,ここで正8面体場による準位の分裂を知るには,群の行列表現の手法を使います.
数式を使わず言葉ですべて説明したいと思っていますが,このメルマガ発行時点ではまだ不十分です.
読者の方からのご意見ご質問を歓迎します.
大体,群の行列表現には,色々な定理を使い難しく面倒です.言葉で説明した授業も本も聞いたことがありません.
でも,その心は言葉で説明できるはずだと私は思っています.
専門書は完全ですが,数式も定理も段階を踏んでたくさん勉強しなければなりません.
入門書は易しいですが,読んでも結局何の役にも立ちません.
私は,よくある入門書のように言葉でごまかすのではなく,
あるいは,数式を書き連ねてすますのではなく,数式が主張しているその心を普通の言葉で表現したいのです.
残念ながらまだ企ての途中なので,今日はまだ半端に数式が出て読みにくいものです.ご勘弁のほどを.
有限群Gの各元(成分)gに,n次正則行列D(g)を対応させ,群Gの演算構造を行列の集合D={D(g)}の中で再現することを,
群の表列表現と言います.つまり,群Gの任意の2元gi, gjに対し,集合Dでも,D(gi・gj)=D(gi)・D(gj)が成立すれば,
集合Dは群Gと準同型な群をなします.極端な例は,Gの異なる元もDの同じ元1に対応させてしまう対応も,群Gの表現です.
異なるgi, gj∈Gに対して,D(gi), D(gj)∈Dも異なれば,GとDは(1:1対応)同型な群です.
f次元行列表現を得るには,互いに独立なf個の基底関数が必要です.
f個の基底関数に,群の対称操作giが作用すると,これらの線形結合に変換されます.
この変換はfxf次元の行列D(gi)で,対称操作gi∈Gの行列表現と言います.
このようにして,群Gを行列の集合Dに対応させると,群Gの構造は群Dに反映され,
行列を扱う問題になり,固有値・固有関数などの行列の理論が使えるようになります.
行列の対角成分の和χ(gi)=Tr[D(gi)]を指標と言い,行列を指標に対応させるのも準同型写像で,
行列の群を扱わずに,指標の群を扱うことでとても簡単なります.
位数gの群の正則表現というのはg個の基底関数を用いて作りますが,
群の対称操作で基底関数が不変なのは恒等操作eだけで,他の対称操作giを作用すると,
どの基底関数も別の基底関数に変換されてしまいます.したがって,指標で言うとχ(e)=g,χ(gi)=0です.
任意のn次複素正方行列Aは,ユニタリー行列Pによる相似変換(P^-1)APで
固有値が対角上に並んだ上三角行列に変形できます.
相似変換(座標変換による基底関数の変換に相当)は,同値律を満たすので,
互いに相似変換にある行列は同値,固有値は同じです.
群の表現行列に戻れば,群の元(成分)giの共役類とは,
(g^-1)・gi・g (for g∈G)なので,同じ類の元の同じ指標になります.
さて,ここで既約表現の定義をしましょう.
既約表現というのは,相似変換で行列を対角化しようとしてもできない行列表現のことです.
可約表現とは,相似変換により,ブロック行列が対角上に並んだ型に変形可能な行列表現で,
ブロックには既約表現が並びます.
与えられた群の行列表現があったときに,その行列表現を相似変換により,
対角ブロックに既約表現が並ぶようにし,その行列表現の中に
どういう既約表現が何個あるか知るのを,表現の簡約と言います.
これは,既約指標の直交関係を使うと容易にできます.
この手法を用いて,ルビーの正8面体場に置かれたCrのd電子の縮退準位の分離を知りました.
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数学月間SGK通信 [2018.03.13] No.210
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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こちらでは,河津桜は咲きましたしすっかり春らしくなってきました.
皆様のところは如何でしょうか.
今月27日には,数学月間勉強会の第4回を開催予定です.
対称性の話を3回して,4回目の27日には対称性の応用も話そうと思います.
今日は,ちょっとその予告編です.
■対称性からわかることは色々あります.
例として,ルビーの赤い色の原因の説明に使ってみましょう.
ルビーの赤い色は,コランダムという鉱物の結晶構造に関係があります.
コランダムはAlアルミニウムとO酸素で出来ています(Al2O3).
コランダムの構造は,大雑把に言うと
パチンコ玉(O酸素)を並べたシートを積み重ねたような構造で,
下3つ,上3つのOが作る正8面体の中心にAlがあります.
Alは周囲(下3つと上3つ)の6つのO(正8面体の頂点)と結合し,
各Oは,2つのAlと結合しています.
Alを囲むOの8面体は厳密には正8面体ではありませんが,
話を簡単にするため正8面体としておきます.
■ルビーの赤い色は,コランダムのAlの位置の2%程度を
Crクロムで置き換えたもので生じます.ついでに,
サファイアの青い色はFe鉄で置き換えたときに生じます.
■さて,ルビーの赤い色の説明に戻りましょう.
Alには3d軌道に電子がありませんが,Crには3d電子軌道に5つ,
4s軌道に1つ電子があります.
d電子軌道の5つは同じエネルギーですが,もし,正8面体の場に
d電子が置かれると,軌道のエネルギーは2種類に分離します.
そのため,光の吸収に関係のあるのは,エネルギー準位が分離したd電子で,
低いエネルギー状態を占めているd電子が,
緑~青の光を吸収し高いエネルギー状態に移ります.
結局,赤い光は吸収されないので,ルビーは赤く見えるのです.
■ここで,対称性の考え方が何処に使われているかと言えば,
5種類ある同じエネルギーのd軌道が,正8面体の場に置かれると,
どのように分離するかを予言するのに使えます.
■さて,ここから具体的な話をしなければなりません.
5つの3d軌道と,1つの4s軌道の計6つの関数を基底として
正8面体群の6次元の行列表現を作ります.あるいは,
正8面体の対称性の場ができればよいのだから,頂点6つに
単位電荷を基底とした表現行列から出発することもできます.
この表現を,正8面体群の既約表現に分解すればよいのです.
結果は,5つのd電子軌道は,3つのd軌道が属するT1uと2つのd軌道が属するEg,
それに,4s軌道の属する球対称のA1gに分解されます.
この計算は,行列表現の指標だけで行うことができますから,
理屈がわかれば案外簡単です.3月27日の数学月間勉強会でこの説明をします.
■ルビーの赤い色は,T1uからEgへd電子が遷移するときの光吸収の補色です.
T1uに属するd軌道が,Egに属するd軌道よりエネルギーが低いのは,
d軌道の電子雲が周りのO原子の電子雲を避けて納まっているからです.
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数学月間SGK通信 [2018.03.06] No.209
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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前号で述べた平面のデジタル化の2つの様式について,図を掲載しておきます.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/70/18435170/img_0_m?1519856943
左図は,正6角形のタイル張りで,デジタル化された平面の対称性は正6角形と同じ.
右図は,正4角形のタイル張りで,デジタル化された平面の対称性は正4角形と同じ.
これらの例のように,デジタル化され(タイル張りされ)た平面は,もはや連続でも等方でもなくなります.
それぞれの単位タイルのより,それぞれの周期と異方性が生じているのがわかるでしょう.
■数学月間勉強会(第4回,3月29日)予告
さて,206号の復習に戻りましょう.
色々な電子デバイスは,結晶という舞台で起こる電子や光子のパフォーマンスを利用しています.
結晶という舞台で観測される現象の対称性には,それが起きた舞台=結晶の対称性が反映されているはずです.
この因果律は,Pierre Curieの原理(19894)と呼ばれます.
”特性の対称性(点群)をG_{p},結晶の対称性(点群)をG_{cryst}とすると,
G_{p}⊃G_{cryst}である”というのがこの因果律です.
原因となる場=結晶の対称性は,すべて,結果=特性に反映されなければならないが,
原因以上の対称性が結果に生じることは妨げないということです.
実際に場=舞台である結晶の対称性より,その結晶で観測される特性の対称性か高いことは,
色々な現象で観測されています.例えば,結晶で起こるX線回折像の点群G_{X}は,
結晶構造の点群G_{cryst}と対称心Iとの直積G_{X}=G_{cryst}×I(Friedel則)になり,
結晶構造に対称心がない場合でもX線回折像の点群には必ず対称心があります.
さらに,このFriedel則以上にX線回折像の対称性が上昇する特殊な結晶構造があることも知られています.
まず,現象の対称性が舞台と同じ対称性であるG_{p}=G_{cryst}として,
色々な現象の対称性分類に群論を適用してみましょう.
その道具として群を行列で表現することが必要になります.
群の表現は,分子の形対称性から,分子の内部振動モードや,
分子軌道の電子エネルギー状態などを知ることに応用できます.
数学月間勉強会(第4回,来たる3月27日14;30開催)は,群の表現を扱います
ご参加お勧めします.
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数学月間SGK通信 [2018.02.27] No.208
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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2月24日,新宿ルノアールで日本数学協会の読書会があり,日本テセレーションデザイン協会の荒木義明氏が講演しました.
馴染みのない方もおられるでしょうが,普通はテッセレーションと書き,平面を分割する意味です.
コンピュータグラフィックスで立体や平面を三角網やポリゴンで表したりしますね.
あのようなメッシュを作る平面分割がテッセレーションです.
私たちは,平面のタイル張り問題といいますが,平面をタイルで埋め尽くすことを.
小学校3年生から扱うことが指導要領に載っているそうです.
敷き詰めの扱い方は,パズルと同様で親しみやすく子供たちも興味を持つでしょう.
美しい模様を作ろうとし,組み合わせの多様さや,持続的により良い価値を求めることになるそうです.
一方,このパズルをより深く追求すれば,ペンローズの非周期のタイル張りに導くことも可能です.
閑話休題.しかしながら,平面タイル張りの本質的な重要さは,周期的なタイル張りにあります.
タイル張りをやるなら,ぜひ周期性に触れてほしいと私は思います.エッシャーのタイル張り作品を見ても,
すべて周期的ではありませんか.私たちの周りには周期的な平面や空間で溢れています.
結晶の内部構造は,角砂糖を積み上げたようなブロック細工です.周期的空間は「結晶空間」とも呼ばれる所以です.
角砂糖のブロック1個が単位胞で,結晶空間は単位胞が10^20も積み重なっています.
平面の例で言ったら,正6角形を,蜂の巣のように無限に並べて,無限に広い平面を作ることができます.
このような平面は,正6角形でデジタル化された平面です.
このデジタル化された平面の対称性は,もとの正6角形1つの対称性と同じです.
同様に,正方形を並べた無限に広い平面(正方形でデジタル化された平面)の対称性は正方形の対称性と同じです.
無限に広い空間も,デジタル化するととても扱いやすくなります.
平面のタイル張りは,無限に広い平面のデジタル化に結びつくところが非常に役に立ち面白いのです.
この数学課題を美しさにつなげようとする意図は私は賛同できません.
2月13-16日にRIMS研究集会「教育数学」に参加しました.4日間にわたり討論が行われ,種々の側面から考えるべきことがらが提起されました.今日の数学の暗い状況や明るい側面などさまざまです.これからよく考えてみなければなりません.
■以下は私の感想の一部ですーーー
数学教育については,エリート教育よりも底辺全体の学力アップが重要です.
ともかく,数学を勉強することは,将来何をやるにしても無駄ではない.習った数学がそのまま役に立つというのではなく,習ってから使う時が来るまでに長期間経過していることが多く,数学は役に立たないと言う人を増やしてしまう.
国語教育とは異なる日本語教育が最重要である.クリティカル・リーディングというのは,国語教育のように記述から感情を問うのではなく,内容を問うもので,そのような日本語教育が必要とされる状況である.国会まで論理が噛み合わない(故意に,はぐらかすのもある)社会になってしまった.
共通一次試験のように多数の問いに答を当てはめるスピード対応のテストではなく,考えるテストをしたいものだ.解けることと理解する(わかる)こととは違う.わかったときの大きな喜びは,誰しも経験したことがあるだろう.子供たちにその喜びを味合わせたいものて,真の学力になる.
さて,現代はsociety5.0といわれるビッグデータ・データサイエンスの時代です.対応できる新しい数学が必要です.旧来の統計数学は役にたたず,統計の背景分野の理解やセンスの養成が必要です.
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数学月間SGK通信 [2018.02.13] No.206
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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大雪にならなければよいですね.日本海側の地域にお住いの方お大事に.
私は,今日から京都大学数理解析研究所の研究集会に参加します.
雪にならずに帰れるとよいですが,ちょっと心配です.
さて,数学月間勉強会の第4回を3月末実施の計画を進めています.確定しましたらアナウンスします.
4回目の内容は,群論の応用に関係のある群の表現の話です.
今日は,その入り口をちょと覗いて見ましょう(入口だけですので後日続編を載せます).
色々な電子デバイスは,結晶という舞台で起こる電子や光子のパフォーマンスを利用しています.
結晶という舞台で観測される色々な現象の対称性には,それが起こった舞台「結晶」の対称性が反映されているはずです.
この因果律は,Pierre Curieの原理(19894)と呼ばれます.
特性の対称性(点群)Gproperty ,結晶の対称性(点群)Gcrystal とすると,
Gproperty⊃Gcrystal
因果律の心は,原因となる場(結晶)の対称性は,すべて結果(特性)に反映されなければならないが,
原因以上の対称性が結果に生じることは妨げないということです.実際に場(舞台)である結晶の対称性より,
その結晶で観測される特性の対称性か高いことは,色々な現象で観測されています.
例えば,結晶で起こるX線回折像の点群は,結晶構造の点群と対称心の直積になることはFriedel則として知られます.
さらに,このFriedel則以上にX線回折像の対称性が上昇する特殊な結晶構造があることも知られています.
■群の表現
有限群G={a,b,c,・・・・,z}の各元aに,複素数を成分とするn次正則行列D(a)を対応させ,
群Gの演算構造を行列の集合D={D(a),D(b),・・・,D(z)}の中で再現することを,群の表現と言います.
つまり,群Gの任意の2元a, bに対し,集合Dでも,D(ab)=D(a)D(b)が成立すれば,集合Dは群Gと準同型な群をなします.
異なるa,b∈Gに対して,D(a),D(b)∈Dも異なれば,GとDは(1:1対応)同型な群です.
異なるa,bも同じD(a)に対応させる(例えば,すべて1に対応させる)ような対応(準同型)でも,
D(ab)=D(a)D(b)が成立しますので群Gの表現です.
◆表現の基底
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/87/18415987/img_0_m?1518439242
ψ_iはf次元の列ベクトルの成分です.ψ_iに対称操作G_aが作用すると,
ψ_iの1次結合に変換されます.ここに現れるf×f次元行列Dを対称操作G_aの
行列表現と言い,列ベクトルψを表現の基底と言います.
このようにすると,群Gを行列の集合Dに対応させることができ,群Gは
行列を元とする群Dを扱う問題に変えることができます.
行列表現を,どの様にして何に使うかは,第4回勉強会のテーマですが,近いうちに続編掲載します.
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数学月間SGK通信 [2018.02.06] No.205
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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私は,来週2月13~16日の京大,数理科学研究所の研究集会に参加します.4年前の研究集会のときは大雪でした.
京都でも大雪でしたが,こちらに帰ってきた夜は東京も大雪でした.今年も雪にならなければよいのですが,
なんだか悪い予感がします.この研究集会は公開ですからどなも聴講できます.
そのとき発表する内容からの抜粋を以下に転載します(省いた部分も機会があれば披露しましょう).
抜粋はしたものの,今回は長文が続きます.お読みいただけたら幸いです.
気分転換に,今年,子供たちが作る万華鏡の映像動画をリンクしておきます https://youtu.be/v9xVnCQ64Po
■数学月間流数学から教育数学への提言
私たちの数学月間は,社会が数学を知ると同時に,数学が社会を知る双方向活動であるべきだと思います.
数学研究会や同好会であれば,数学だけを論じればよいが,数学月間では数学が働きかける場に立ち数学を見ます.
抽象数学であってもそれが使われる場(対象)と連携した数学の話ならば,数学周辺の人々の共感を得ることでしょう.
数学周辺から数学をとらえる必要があるのだが,数学者はその必要性を感じていないし,
数学周辺に付随したものに気を散らすことは好まない.しかし,歴史的にも数学の発生起源は,
科学技術や社会課題にあり,その数学概念の発見にも現場の科学者たちが寄与しています.
現在でも種々分野の実験結果や法則の中に新しい数学の萌芽があるに違いありません.
教育数学においても,数学の作用する場(対象)からの数学概念の導入が望ましいと考えます.
■今年から始めた数学月間勉強会の目指すもの
(1)米国MAMは,今年から,「数学及び統計学月間」MSAM(Maths and Statistics Awareness Month)となりました.
統計学が強調されたのです.複雑系,画像識別,ビッグデータ解析,レイティングやランキングの予測などが
主要テーマとして登場するようになった背景には,圧倒的なコンピュータ利用と人工知能AIの発展があります.
現代は,衛星からスマートフォンまで大小のソースから,データがリアルタイムで集められます.
予測解析法の革新が期待でき,数学,コンピュータ・サイエンス,データ科学,統計学には実り多い時期です.
Google, Yahoo, Amazon, Facebook, Twitter等々で,私たちのさまざまな情報が蓄積され,
携帯電話も私たちの位置情報を送信しています.嫌なことですが,スノーデンの告発で明らかになったように,
個人情報,個人メールを含むあらゆる通信情報が,米国NSAにより収集(collect it all)され,
進歩したAI技術で検索や解析ができる監視社会になりました.それはともあれ,検索,解析,予測での数学の役割は重要です.
データ解析の基本は評価関数に対する最小二乗法にあり,例えば,材料中の化学状態分布図を得るには,
単成分のスペクトルを基底に1次結合を作り,最小二乗法で混合状態のスペクトルを決定(特異値分解を使う)します.
大規模行列であるがランク落ちのため不定解となる画像の推定は,至る所スパースな解という条件下で最小二乗法に持ち込み,
少ない観測点数でサンプリング定理を超越する驚くほど高解像の解が得られています.
天文学や医用画像などで適用され,MRI撮影の高速化にも寄与しています.実際,画像は大部分の領域でだらだら変化し,
急峻な変化する箇所は少ない(スパース)ので,このような圧縮センシングや画像圧縮jpgが成功しています.
離散数学はコンピュータと相性が良いわけですが,教育数学においても重要性が高いと思います.
ロマネスコの見事なフラクタル.フィボナッチでもある.これが入っている料理の写真はmossanのロール白菜でとても美味しい.
イメージ 1
イメージ 2
イメージ 3
円錐突起の数は数えてはいませんが,対数螺旋の形が見えます.各対数螺旋にそって配列する円錐突起の面積はフィボナッチ数列になっているようです.
さらに各円錐突起の中に,また,対数螺旋の構造が見えて,・・・・・・・というような入れ子構造です.このような入れ子が無限に繰り返されるとフラクタルと呼ばれます
▼対数螺旋の性質は,螺旋に沿って中心点へ進むとき,進行方向(接線)と中心を見込む角度が常に一定です.
▼1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,・・・のように続く2つの数を加えると,次に続く数になる数列がフィボナッチです
フラクタルでは,拡大しても拡大しても,いつも同じような形が見えるのです.
例えば,木の枝の伸び方とか,雲の輪郭とか,海岸線などの形です.
対数螺旋やフィボナッチ数列は,成長する形で見受けられます.
例えば,パイナップルや松ぼっくりの鱗の重なり方,向日葵の種の配列,
貝殻の成長した形などです.
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数学月間SGK通信 [2018.01.23] No.203
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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たいへん雪が積もりました.皆様のところは如何でしょうか.
私が顔見知りのシジュウカラさんたちも雪の明日は餌が食べられなくて大変です.
ヒマワリの種が見えるようにしてあげましょう.
今回は,出題ミスといわれて騒がれている物理の問題です.
問題
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/37/18386837/img_0_m?1516633230
問4を解いて見ましょう.
この設問では,議論の分かれる2つのポイントがあります.
(1)音叉から発せられる音波は,y軸の負方向(壁の報告)とy軸の正の方向では,同位相か逆位相か?
(2)壁での音波の反射は固定端か自由端か?
私の解答
(1)に関しては,A-Iの問いでは,音叉の振動が前後に対称である図があり,
音源を中心に前後で同位相の音波がでると解答させます.素直に解くならば,
問4でも音源からの音波は同位相と思うべきでしょう.
しかし,現実には,逆位相の音波も出ます(両者の音波の重ね合わせもでます).
ここで,逆位相を採用するのは,へそ曲がりだと思うのですが,間違いではありませんので,
逆位相の解答も正解としなければならず,想定した正解だけではなくなりました.
(2)音波は空気が疎密疎密・・・と繰り返される縦波です.
疎の部分は分子数は少ないが分子の運動速度は大きい.定在波ができているときは,固定端が節となり,
節と節の中央が腹です.結局,腹と腹の間隔(=節と節の間隔)が半波長λ/2です.
壁の所では分子の速度はゼロになるので,定在波の節.従って,壁は固定端です.
音源では分子の運動速度は大きいので定在波の腹です.
問4の答えは,2d=(n-1/2)λ となります.
この答えは,大学が当初想定したもので,素直な解答であると思います.
正解に加えざるを得なくなった解答は,2d=nλですが,
これは,音源の前後にでる音波を逆位相とした場合に可能です.
問5の答えは,2回の実験で測定された波長は,62cm,68cmで,平均値は65cm.
用いた音叉の周波数は500Hzと与えられているので,
音速325m/s(有効数字2桁にすると330m/s)が得られます.
■有効数字は,工学で数値計算するときとても重要です.
演算に使った数値のそれぞれの有効数字(信用できる桁数)の小さい方に合わせてきまります.
だから,普通は計算に用いるすべての数値の有効数字は揃えて計算します.
カラオケバトルで,98.716などの点か平気でつきますが,いったい有効数字はどうなんだ.
0.001の差がそんな精度の意味があるのかと思います.
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数学月間SGK通信 [2018.01.16] No.202
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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大変寒い日が続きます.風邪も流行っているようです.
皆さまにとって今日も良い日でありますように.
今日の話題の懸垂曲線にでて来るの石橋の写真は通潤橋です.
この写真を撮影したのは,12年以上前のことです.
石積の橋で,水を台地に持ち上げて運ぶために,サイフォンの原理を使うなど
優れた石工の技術に感心しました.
熊本地震でも残った堅牢さにも感心していますが
現在,石の配管の修理中と聞きます.
■インボリュート曲線
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556225/47/16380447/img_2_m?1516025270
右図をご覧ください.青い円が糸巻きで,この糸巻きに巻いてある糸を(黒い線)
ほどいているときに糸の先端が描く曲線(赤色)をインボリュートといいます.
ほどく糸の巻き始めは,青い糸巻き表面のインボリュート曲線の出発点です.
糸が引っ張られる方向は,いつもインボリュート曲線に垂直であることに注目してください.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556225/47/16380447/img_1_m?1516025270
インボリュート曲線は歯車の歯の形に利用されます.
左図のように,青い歯車と黄色い歯車がかみ合っている状態を考えて見て下さい.
歯車の形がインボリュートならば,
これらの歯は回転中いつも互いに垂直に押し合っていて理想的な歯車になります.
インボリュート曲線の方程式の作り方を,下の図に示しました.
■懸垂曲線
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556225/63/16380663/img_0?1516024764
両端で固定された密度一定のひもが垂れ下がった時の形です(下左図).
石積の橋が描くアーチもこれ(懸垂曲線の上下を逆にしたもの)
右図は円柱を5つ積んでつり合いを保っている状態.
テーブル上の左右のブロックは,一番下の円柱を両側から押しています.
円柱間は点での接触ですのでバランスをとって積むのは非常に難しいが落ち着いてやればできます.
この形は石橋と同じ懸垂曲線です
■ダイヤモンドの価値は,4C[Carat重量,Color色,Cralityキズ,Cutカット]で評価されます.ここでは,数学的に興味のあるカットのプロポーションについて述べました.ラウンド・ブリリアン・カットのダイヤモンドが最も輝くようにしたプロポーションを理想カットといいます.理想カットは1919年にベルギーのMarcel Tolkowsky(数学者でダイヤモンドのカッター)が計算しました.今なら,コンピュータもあるし,光線追跡のソフトウエアもある時代で,理想カットの形(プロポーション)を見つけることは容易でしょうが.1919年にどのように計算したのか,興味深いことです.多分,閉じ込められた光線が全反射を繰り返す光路に注目したのでしょう.
(左図)ダイヤモンドのブリリアン・カットの各部の名称を図に記載してあります.正面の平らな面をテーブル面,上半分をクラウン,下半分をパビリオンと呼びます.真ん中のガードル面に対してクラウン斜面のなす角度をβ,パビリオン斜面のなす角度をαとしました.
(右図)テーブル面の左隅Aに入った光線(赤色)が,ダイヤモンド内部を進み,後方の左パビリオン斜面で全反射され,次に,右パビリオン斜面で全反射され,テーブル面右隅Bに戻り,前方に出て行く光線もありますが,テーブル面右隅Bで一部は反射され内部に戻る光線(青色)になります.この光線は全反射を繰り返し内部に閉じ込められることになります(青色).
この図で追跡した光線は,テーブル面の左隅Aから出て,テーブル面の右隅Bに達する左右対称の光路です.ダイヤモンドの屈折率n≒2.417を用いて,この光路のテーブル面での入射角φ,屈折角γに対する屈折の式,sinφ=n・sinγ から,左右対称になる入射角φ(テーブル面の垂線と入射光線のなす角)を求めると,21°になります.というのは,左右のパビリオン間でテーブル面と平行になる光路ですから,左のパビリオン斜面での反射の法則(反射角αはパビリオン角αに等しい)から,γ=90°ー2α=8.5°となることが決まるからです.ここで,パビリオン角α=40.75°を用いました.
■屈折率の高い媒質中に光が閉じ込められるのは,全反射を起こし易いからで,ダイヤモンドの全反射の臨界角θ(入射角でいうと)は,sinθ=1/nだから,θ=24.4°(反射面から測った反射角で言うと,65.6°)です.
テーブル面の出口で反射されて内部に戻った一部の光線は,パビリオン面とクラウン面で全反射を繰り返し内部に閉じ込められます.パビリオン角α=40.75°,クラウン角β=34.50°というのは実によくできた設計です.
全反射によりブリリアン・カット内に閉じ込められた光線の経路は,一周すると,これに平行な経路に戻ることを証明するために,次の作図をしてみました.BC(赤色)の直線はダイヤモンド内部で全反射を繰り返す光線(青色)を外に引き伸ばしたものです.その代わりに,ダイヤモンドも反射面を共通にしてつないで並べました.結局,全反射を4回繰り返すと光線が平行になるということは,このように配置したダイヤモンドが4つで回転角が0に戻る(初めの向きと同じ)ことからわかります.
■カットの形を評価するには,そのカットの形を磨き直して理想カットにするとしたら,重量がどれだけ減るか(カット減点%)で表します.カット減点5%までは理想カットと見做されます.さて最後になりましたが,トルコフスキーの理想カットのプロポーションを表紙の図に示しました.トルコフスキーはガードル厚には言及せず,ナイフ・エッヂだったそうですが,現実にはナイフ・エッヂは作れず,ガードル厚は必要です.
■(注)ラウンド・ブリリアン・カットとは,58のファセット面を磨き上げた形(キューレットも1面と数えます)です.ダイヤモンドは立方晶系の結晶ですから,複屈折はありません.また,光の分散もそれほど強くなく上品です.虹色にぎらぎらするようならキュービック・ジルコニアなどの疑いがあります.
クラウン面の高さや,パビリオンの深さが最適でないと,テーブル面の中が暗くなります.
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数学月間SGK通信 [2018.01.02] No.200
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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新年おめでとうございます.良い年でありますように.
皆様は良い新年をお迎えでしょうか.
お陰様でこのメルマガも本号で200号になりました.
本年も宜しくお願い致します.
数学月間懇話会(通常は毎年7月22日に実施)は今年が第14回になりますが,
今年に限り,7月は私の都合が悪いので,8月22日に変更したいと思っています.
決まりましたらご案内を致しますのでご参加ください.
その他,いくつか私の参加するイベント予定があります,興味おありの方はご参加ください.
2月13-16日,京都大学数理解析研究所,RIMS教育数学研究集会
3月上旬,東大出版会,数学月間勉強会,第4回
さて,前号「数学月間とは何か1」の続きです.
2.数学と社会の架け橋=数学月間
数学月間活動がボランティア・ベースである以上,本意ではありませんが活動のメニューを絞らざるを得ません.
数学月間の核心を考察してみましょう.数学月間活動は,数学者のための活動(数学界を応援する)ではありますが,
数学者のための活動(数学内輪の同好会)ではありません.つまり,数学を取り巻く周辺への働きかけです.
国民の数学への関心を高めれば,畢竟,数学者のためになるのだが,現実は,
数学者たちの偏狭さと自由思考のため,献身的な協力は得られていません.
2012年から始まったフランスの数学啓蒙活動(数学週間)を見てみましょう.
数学週間は,国民教育省の企画の下,“現在の活き活きとした魅力ある数学の提示”,
“数学が日常生活で果たしている重要性の提示”などの5つの目的を掲げ,
パートナーと呼ばれる20数団体が参加して,毎年3月中旬に行われます.
毎年,統一テーマが決められます.また,“数学カンガルー”,
“国内数学オリンピック大会”なども同時開催されます.
他分野の例も比較してみましょう.日本化学会など化学4団体が,10月23日を「化学の日」,
この日を含む月曜から日曜までを「化学週間」と2013年に制定しました.
10月23日としたのは何故か? 高校の化学を思い出すと,なるほどと思い当たることでしょう.
化学週間には,全国一斉のオープンキャンパスなどがあり,意匠登録されたロゴマークを,
すべての化学啓発活動に付してビジビリティの向上を目指しています.
提案4団体だけではなく,経産省や文科省,マスコミ,企業など,
産官学一体となった本格的な活動が立ち上がっています.
化学の日イベントは,各地の高校や大学,研究所などで実施され,
月刊誌「ニュートン」,「化学」,「現代化学」,「子供の科学」などへのPR記事の掲載があります.
数学研究は孤高で周辺分野との架け橋は必要ないとの見方もありますが,
数学の影響は社会のあらゆる分野に広がり,化学の比ではありません.
数学月間活動の呼びかけは数学の外周へ向けた広い視野の横断的な活動でなければなりません.
それにもかかわらず,数学者は,抽象化されたものを洗練することに熱中し,
自ら手を染め現実から数学を抽出しようとしたがりません.物理,化学,工学,医学,社会科学,..
のどの分野であろうと形而下には関心がないようです,抽出された数学は美しいに決まっているが,
数学者はその美しさに自己陶酔し,その源泉である周辺分野への配慮がほとんどないので,
国民レベルから数学への共感を得るに至っていません.
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数学月間SGK通信 [2017.12.26] No.199
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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みなさま2017も残りわずか,やらなければならないことを山と抱えて焦っています.
どうぞ風邪など召しませんように.NHK始め大手メディアの報道姿勢には腹が立つことばかり
「輝く太陽青空を再び戦火で乱すな」国際学連の歌(1949)としみじみ思います.
それにしても,この歌の翻訳は,忠実にして簡潔,実に名訳です.
チーストイネィーバ イ ヤールカエソンッエ
の意味は,清々しい空と明るい太陽,まさに,輝く太陽青空 .
ディーモンパジャロフ ザクリーチ ネェダジム の意味は,戦火の煙で閉ざしてはならぬ
ここを,再び戦火で乱すな と訳したのはうまい.
2番,3番の歌詞も素晴らしい.今こそこの歌が必要なときです.
これを共産党の歌だなどと言っているネトウヨの方,歌詞の意味をじっくり味わって欲しい.
メルマガの読者の方にはネトウヨはいないと思いますが.
お陰様で,メルマガが199になりました.来年1月2日で200号です.
メルマガの表題になった「数学月間」について語ることはほとんどなかったと思うので
この機会に(本号と次号に分けて)初心に戻って,数学月間を語ります.
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1.数学月間活動とは何か
日本の数学月間は,片瀬豊の提案で2005年に日本数学協会が7/22-8/22を数学月間と定めたことに始まります.
数学啓蒙活動をこの時期に集中し,数学の重要性を社会にアピールする狙いです.
この活動は,片瀬豊が小林昭七からの情報で長年にわたりウォッチングして来た米国MAM
(Maths Awareness Month:1986年4月17日のレーガン宣言により米国の国家的な行事として開始され今日に至る)
に影響されたものです.日本の数学月間をこの期間に定めたのは,山崎圭次郎の発案によるもので,
22/7≒π,22/8≒eに因みます.小林昭七によると,時期限定のMAMのほかに,
米国では数学サークルという日常活動があるそうで,これもぜひ手本したいものです.
国家的な行事の米国MAMは,数学系学協会が参加するJPBM(Joint Policy Board for Maths)が,
毎年,社会を反映した数学のテーマを選定し,この期間(毎年4月)に種々のイベントが展開され,
国民からの事後評価も受けます.皆が知りたいと思う時局の数学を.種々のレベルで学習できるウエブサイトは充実し,
エッセイや論文が集積され,そのテーマの数学を基礎から最先端まで,学生が独習できる優れたガイドになります.
MAM期間には,一般から専門家まで,小学生から大学生まで,色々なレベルのイベントが全国で展開されます.
レーガン宣言で国家的な行事MAMを決断した背景には,国民の数学力が低下し,
米国の産業力も低下するとの焦りがあったと思われますが,日本も同様な状況にあり,
国家的な行事の数学月間が望まれます.数学月間発足当時は,
片瀬豊らが中心に文科省にも働きかけを行いましたが具体的な進展はなく,
大学や研究所などの主催するそれぞれのオープンハウスや講演会などが個別に行われているのが現状です.
ボランティア・ベースの数学月間の会SGKの活動は,7月23日の数学月間懇話会の主催や,
他の団体の主催する数学祭り(とっとりサイエンスワールドなど)に協力しています.
→2018/01/02の200号に続く.良い年をお迎えください!
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数学月間SGK通信 [2017.12.19] No.198
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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数学月間勉強会(第3回),12月12日は,楽しく有意義に実施されました.
ご参加のみなさまに感謝いたします.次回は来年3月頭の予定です.
決まりましたら掲示しますのでご参加ください.
■群の考え方は色々な数学分野に現れるし,群論が適用される対象も様々です.
群論を作ったのはガロア,代数方程式の解法にかかわって生まれました.
2次方程式,3次方程式,4次方程式は,解法が発見されていましたが,
5次方程式の解法はどうしても見つからなか時代です.
f(x)=x^5+ax^4+bx^3+cx^2+dx+eという5次式は,連続なグラフで,
xが負で絶対値が大きければ,f(x)<0,xが正で絶対値が大きければ.f(x)>0になるので,
f(x)=0という5次方程式は,どこかでx軸を過るので必ず解xが存在し,
そのxは係数で表されるはずだと誰もが思っていました.しかし,
係数の加減乗除と冪根で表せる解は存在しなかったのです.
根の対称性に注目し,群の理論を作り,ガロワがその証明をしたのは200年前のことでした.
これに至るまでには,ラグランジュ(1770),コーシー,アーベル,ガロア(1832)が関わっています.
■群論が生まれて活躍したのは,方程式の解法に関するものですが,
群の概念は,正多面体の対称性(シンメトリー)でも使われます.結晶の舞台でその活躍を見てみましょう.
水晶のいろいろな面の大きさは個体ごとに違うが,「対応する面どうしのなす角度を測ると,
どの水晶でも同じ値だ」ということを発見したのはステノ(1669).
この現象を,多くの鉱物で調べて「面角一定の法則」としたのは,ロメデリル(1772)です.
この法則は,「結晶の内部構造から生じている」と洞察したのがアウイ(1783)で,
彼は「結晶には単位胞が存在し.この単位胞が繰り返し並ぶブロック細工が結晶だ」と推論しました.
19世紀に入ると,結晶に座標軸(結晶軸)を導入し,結晶面に指数をつける方法が種々定義されました.
それらの方法のうち,ミラー (1801~1880〉によるミラー指数が,今日,最も広く用いられています.
「その結晶の単位胞に合った座標軸をとると,すべての結晶面のミラー指数は,
簡単な整数で表せる」=結晶面の有理指数の法則といいます.
これは,アウイの述べた「結晶=ブロック細工説」を裏付けることになります.
この時期には, 結晶面の方位(=結晶内部の原点から,各結晶面へ垂線を立てて,
結晶を中心とする単位球表面に投影した点)を,2次元平面へ写像する種々の等角投影法(ステレオ投影など)
も生まれています.
3次元の結晶点群は32種(ヘッセル,1830〉,
3次元の空間格子(結晶格子)のタイプ=ブラべ格子(1848)は14種が数え上げられ,
続いて,3次元の空間群の夕イプが230種であることが,フェドロフ,シェンフ リーズ,バーロー(1885~1894〉により,
互いに独立に数え上げられました.これは,すべてX線の発見以前の純粋な数学的業績であるのが興味深い.
結晶を応用の場にしての群論を具体的に学習をすることができます.
空間群をΦとすると,並進群(格子)Tは,空間群Φに正規部分群として含まれるので,
並進を法とした群Φ/Tは,点群Gに同型です.結晶(周期構造,デジタル化された空間)は,
群論をさまざまに適用できる良い場(舞台)です
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数学月間SGK通信 [2017.12.12] No.197
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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いよいよ本日は,数学月間勉強会(第3回)
ー「結晶空間群で,物理と数学を学ぼう」です.
予定通り実施します.どうぞご参加ください.
主催●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
日時●12月12日,14:30-17:00
会場●東京大学出版会,会議室
線路沿いの留学生会館などのある敷地内の一番奥の建物です.
東大構内ではありませんからご注意ください.
最寄り駅●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ・申し込み●sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
第3回テーマ●「結晶空間群の作り方」
数学月間勉強会の特徴は,物理と数学の両視点から数学誕生を理解できるところで,
特に初心の若い方々にもお勧めします.
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繰り返し模様(壁紙)の対称性は,平面群(17種あります)で記述されます.
平面群(あるいは空間群)Φは,周期性を表す並進群Tと点群Gを部分群として含みます.
特に,並進群Tは常に正規部分群として含まれます.
しかし,点群Gは必ずしも正規部分群であるとは限りません.
平面群の対称操作は,並進操作と点群の対称操作からなりますから,
Φ=TxGのように2つの群の積で表せます.正確に言うと,
並進群を点群で拡大すると空間群が得られます.
今回の勉強会では,2つの群の積について図解して説明します.
結晶は単位胞がほとんど無限に繰り返す内部構造ですから,
格子の並進分だけ違う点は同一と見做します.
これは,並進と点群の対称操作を結合した対称操作(映進,らせん)が空間群には存在します.
並進で格子だけ移動しても同値ということは,空間群を点群に対応(準同型写像)させることができます.
点群から空間群を作る仕組みは,準同型定理の応用で,
具体的に結晶をモデルに数学を学びます.
今回の勉強会では,簡単な点群2mmを例として,
3つの結晶平面群P2mm, P2gm, P2ggを作ります.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/15/18333515/img_0_m?1513002259
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数学月間SGK通信 [2017.12.05] No.196
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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見えない人・見えにくい人と見える人
Jazzと数学体験で交流
中島さち子・Wolfy佐野
12月3日(日)午後1時,マックス・キャロット(目白)は盛況でした.
見えない方でいっぱいです.みんな楽しんでいました.
私も隣にすわった目の見えない方の補助をしました.
間髪を入れず大きな声でリアクションするとても陽気な方でした.
私にこのイベント情報を知らせてくれた三野さんが司会をされ,
東大,数理科学研究科の中島さち子(数学者でピアノも弾く)さんや大学院の学生さん,
視覚情報支援ボランティアの方々がスタッフでした.企画責任者は三崎吉剛さんのようです.
出演の皆さんの気楽なトークに,私の隣に座り合わせた一般の参加者(見えない方)の元気なリアクションに,
まるで吉本新喜劇のようです.なごやかな雰囲気になりました.
サックスのWolfy佐野(見えない方)さんのトークも面白い.
2枚目写真のソプラノ歌手は塩谷靖子さん(見えない方)です.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/22/18324422/img_0_m?1512396191
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/22/18324422/img_1_m?1512396191
すばらしい埴生の宿とマイウエイの歌が聞けました.
音楽と数学の係りは,どんなことかと推測したとおり,色々なリズムやオクターブ音程,和音の話はありました.
しかし,根本的ことは,音楽も数学も目では見えないものが見えるという点であるということを実感しました.
その他にも今回気がついたことが色々あります.見えない方の記憶力にも感心しました.
そして,盲目の音楽家も数学者も多数いることを思い出しました.
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お知らせ
数学月間勉強会ー「結晶空間群で,物理と数学を学ぼう」
第3回が近づきました.日程が形の科学会と続きますが,
予定通り実施します.どうぞご参加ください.
主催●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
日時●12月12日,14:30-17:00
会場●東京大学出版会,会議室
線路沿いの留学生会館などのある敷地内の一番奥の建物です.
東大構内ではありませんからご注意ください.
最寄り駅●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ・申し込み●sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
第3回テーマ●「結晶空間群の作り方」
数学月間勉強会の特徴は,物理と数学の両視点から数学誕生を理解できるところで,
特に初心の若い方々にもお勧めします.
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数学月間SGK通信 [2017.11.28] No.195
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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12月12日,数学月間勉強会(第3回)が近づきました.
気軽にご参加ください.
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主催●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
日時●12月12日,14:30-17:00
会場●東京大学出版会,会議室
線路沿いの留学生会館などのある敷地内の一番奥の建物です.
東大構内ではありませんからご注意ください.
最寄り駅
●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ・申し込み●sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
第3回テーマ●「結晶空間群の作り方」
数学月間勉強会の特徴は,物理と数学の両視点から数学誕生を理解できるところで,
特に初心の若い方々にもお勧めします.
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今回のテーマは,「結晶空間群の作り方」で,このシリーズのクライマックスになります.
難しそうだと思われる恐れがあるので,きょうは,
「このテーマは我々が良く使う考え方で特殊なものではない」と感じられる予告編になります.
登場する数学は,群論でいう「準同型定理」という大変重要な考え方です.
しかし,ご安心ください.数学月間の数学では,大学の数学のように証明を長々やる野暮なことはしません.
結晶空間というのは周期的な空間のことです.繰り返し模様は,結晶空間の代表例です.
今回は,繰り返し模様の成り立ち(対称性)を調べる数学「結晶空間群」です.
繰り返し模様は,モチーフとなるタイルを張り詰めてできていますから,
繰り返し(並進)て平面を張り詰めているタイルをみんなはがして,
1枚のタイルの上の全部重ねてしまいましょう.
これで,平面全体を1つのタイルに対応させることが出来ました.
有限図形である1つのタイルの対称性は「結晶点群」で記述できます.
このように,空間(対称性は空間群で記述)を有限図形(点群で記述)に縮小するのが
「準同型定理」の働きです.もっと簡単な例を挙げると,時計です.
時間は無限に増えるのですが,時計は12時間たったらもとの位置にもどります.
12時間だけ違う時間は,同じものと見做せというルールを作れば,無限の時間を,
12時間の中に写像できます.これが「準同型定理」の心です.たとえ話だけではいけませんから,
最後に,歩道のタイルの平面(空間)群の作り方の解説図を掲載しておきます.
この説明は当日行います.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/83/18316883/img_0_m?1511795897
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数学月間SGK通信 [2017.11.21] No.194
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今日は,数学はでません(メンデルの法則は一寸数学ですが).日本の,米・麦.大豆を守って来た「種子法」についてです.
安倍政権は,TPPの一環で,種子法廃止を2017.4に成立させてしまいました.来年3月施行です.
何事も規制改革会議に決定させ,国会の審議はろくにしない仕組みは止めてもらいたいものです.
■種子法は,1952年以来,日本の米・麦・大豆を守って来ました.稲は各地で長年改良され,300の多品種があり,
その地の風土に合った優良品種を栽培奨励しているといいます.
種子法は,多国籍企業の種子ビジネスに障害になるので廃止されました.これからは
農家の種採り,交換,保存も禁止され,例えば,モンサントの限定品種に制覇される時代になるようです.
多様性が種々の原因による不作危機の保証になっているのに馬鹿なことです.
種子・化学肥料・農薬のセットビジネスが狙いです.
無精子(雄性不稔)の株を使い開発したF1品種や,遺伝子組み換え品種が蔓延る未来を止めねばなりません.
[山田正彦氏(元農水大臣,日本の種子を守る会)のIWJインタビューより]
■F1品種の作り方[たねのうた http://tanenouta.com/pleasure/879/ より]
雄性不稔とは,おしべに問題があってうまく受精できない植物個体.
雄性不稔の株を母株として利用すると,その花粉には受粉能力がないわけですから,
別の品種の父株と交互に植えておけば,間違いなく別々品種を両親とする子が生まれます.
この雄性不稔の遺伝子は,玉ねぎの突然変異から見つかり,人参やナス,とうもろこし,
そして,これまで自家不和合成を利用していたアブラナ科でも実用化されているようです.
私たちは突然変異から見つかった遺伝的におかしい野菜を食べていることになります.
ミツバチの不妊もこの花粉に原因があるという説もあるようです.
■味のよい「コシヒカリ」と収量の多い「インデカ種」のかけ合わせで生まれるF1品種のメリットは,
1年目は,両親の良いとこ取りだが,次年のその子F2は,劣勢遺伝が出るのでそれぞれの先祖の悪い所が出ます.
農家は,毎年新しい種子を買う必要がある(メーカー指定の肥料,農薬のセットを使う契約をさせられるようです).
遺伝子組み換えは危ないですが,危なそうなF1品種の安全性は30年先にならないとわからないでしょう.
昔ながらの品種改良で生まれた種子は長い歴史があり,F1品種とは違い安全で,無農薬栽培などの工夫は農家の自由です.
■日本の野菜は,種子法の適用外だったため,すでにF1品種で海外多国籍企業に90%制覇されているそうです.
日本各地の原種の苗を「手苗」というそうで,昔の農家は,これらの種を採り「自家採種」代々引き継いで栽培しました.
私は,ブログ友にもらった「ぷよ姫」さんというミニトマトを育てています.
育て始めるのが遅かったので,11月16日になって完熟した始めの1粒を食べたばかりです.
トマトはナス科で自家受粉,交雑率が低いそうです.
食べた実から種採りをしました.小さい白い種です.来年この種を撒くつもりです.
完熟したぷよ姫さん初めの1粒いただきました.種採りも教えていただき,愛ニャンコマリアさん有難うございました.白い小さな種ですね.種子はとても重要なものだということを実感できました.
■今日は,数学はでません(メンデルの法則は一寸数学ですが).
日本の,米・麦.大豆を守って来た「種子法」についてです.
安倍政権は,TPPの一環で,種子法廃止を2017.4に成立させてしまいました.来年3月施行です.何事も規制改革会議に決定させ,国会の審議はろくにしない仕組みは止めてもらいたいものです.
■種子法は,1952年以来,日本の米・麦・大豆を守って来ました.稲は各地で長年改良され,300の多品種があり,その地の風土に合った優良品種を栽培奨励しているといいます.種子法は,多国籍企業の種子ビジネスに障害になるので廃止されました.これからは農家の種採り,交換,保存も禁止され,例えば,モンサントの限定品種に制覇される時代になるようです.多様性が種々の原因による不作危機の保証になっているのに馬鹿なことです.種子・化学肥料・農薬のセットビジネスが狙いです.
無精子(雄性不稔)の株を使い開発したF1品種や,遺伝子組み換え品種が蔓延る未来を止めねばなりません.
[山田正彦氏(元農水大臣,日本の種子を守る会)のIWJインタビューより]
■F1品種の作り方[たねのうた http://tanenouta.com/pleasure/879/ より]
雄性不稔とは,おしべに問題があってうまく受精できない植物個体.
雄性不稔の株を母株として利用すると,その花粉には受粉能力がないわけですから,
別の品種の父株と交互に植えておけば,間違いなく別々品種を両親とする子が生まれます.この雄性不稔の遺伝子は,玉ねぎの突然変異から見つかり,人参やナス,とうもろこし,そして,これまで自家不和合成を利用していたアブラナ科でも実用化されているようです.
私たちは突然変異から見つかった遺伝的におかしい野菜を食べていることになります.ミツバチの不妊もこの花粉に原因があるという説もあるようです.
■味のよい「コシヒカリ」と収量の多い「インデカ種」のかけ合わせで生まれるF1品種のメリットは,1年目は,両親の良いとこ取りだが,次年のその子F2は,劣勢遺伝が出るのでそれぞれの先祖の悪い所が出ます.
農家は,毎年新しい種子を買う必要がある(メーカー指定の肥料,農薬のセットを使う契約をさせられるようです).
遺伝子組み換えは危ないですが,危なそうなF1品種の安全性は30年先にならないとわからないでしょう.昔ながらの品種改良で生まれた種子は長い歴史があり,F1品種とは違い安全で,無農薬栽培などの工夫は農家の自由です.
■日本の野菜は,種子法の適用外だったため,すでにF1品種で海外多国籍企業に90%制覇されているそうです.日本各地の原種の苗を「手苗」というそうで,昔の農家は,これらの種を採り「自家採種」代々引き継いで栽培しました.
私は,ブログ友にもらった「ぷよ姫」さんというミニトマトを育てています.
育て始めるのが遅かったので,11月16日になって完熟した始めの1粒を食べたばかりです.トマトはナス科で自家受粉,交雑率が低いそうです.
食べた実から種採りをしました.小さい白い種です.来年この種を撒くつもりです.