対称性の因果律

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数学月間SGK通信 [2018.03.06] No.209
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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前号で述べた平面のデジタル化の2つの様式について,図を掲載しておきます.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/70/18435170/img_0_m?1519856943
左図は,正6角形のタイル張りで,デジタル化された平面の対称性は正6角形と同じ.
右図は,正4角形のタイル張りで,デジタル化された平面の対称性は正4角形と同じ.
これらの例のように,デジタル化され(タイル張りされ)た平面は,もはや連続でも等方でもなくなります.
それぞれの単位タイルのより,それぞれの周期と異方性が生じているのがわかるでしょう.

■数学月間勉強会(第4回,3月29日)予告
さて,206号の復習に戻りましょう.
色々な電子デバイスは,結晶という舞台で起こる電子や光子のパフォーマンスを利用しています.
結晶という舞台で観測される現象の対称性には,それが起きた舞台=結晶の対称性が反映されているはずです.
この因果律は,Pierre Curieの原理(19894)と呼ばれます.
”特性の対称性(点群)をG_{p},結晶の対称性(点群)をG_{cryst}とすると,
G_{p}⊃G_{cryst}である”というのがこの因果律です.
原因となる場=結晶の対称性は,すべて,結果=特性に反映されなければならないが,
原因以上の対称性が結果に生じることは妨げないということです.
実際に場=舞台である結晶の対称性より,その結晶で観測される特性の対称性か高いことは,
色々な現象で観測されています.例えば,結晶で起こるX線回折像の点群G_{X}は,
結晶構造の点群G_{cryst}と対称心Iとの直積G_{X}=G_{cryst}×I(Friedel則)になり,
結晶構造に対称心がない場合でもX線回折像の点群には必ず対称心があります.
さらに,このFriedel則以上にX線回折像の対称性が上昇する特殊な結晶構造があることも知られています.
まず,現象の対称性が舞台と同じ対称性であるG_{p}=G_{cryst}として,
色々な現象の対称性分類に群論を適用してみましょう.
その道具として群を行列で表現することが必要になります.
群の表現は,分子の形対称性から,分子の内部振動モードや,
分子軌道の電子エネルギー状態などを知ることに応用できます.

数学月間勉強会(第4回,来たる3月27日14;30開催)は,群の表現を扱います
ご参加お勧めします.