2015年4月の記事一覧

面積ゼロで周囲が無限大

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数学月間SGK通信 [2015.04.28] No.061
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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面積がゼロで,周囲が無限大のフラクタル図形

フラクタル図形というのは,図形を拡大していくと,
どんどん細部が見えてくるが,それらがいつも同じ図形なのです.
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/6a/Sierpinski_zoom.gif

そのような図形のうち,ポーランドの数学者シェルピンスキーの図形の作り方を見てみましょう.

(1)シェルピンスキーのガスケット
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/58/16668258/img_2_m?1429928123

正3角形から出発します.正3角形を4分割して真ん中を通り覗きます.
残った3つの正三角形をそれぞれ4分割して,それぞれの真ん中を取り除きます.
この操作を際限なく(無限に)繰り返して得たフラクタル図形はシェルピンスキーのガスケットです.
面積は0に収束し,境界の長さは無限大に発散します.

(2)シェルピンスキーのカーペット
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/58/16668258/img_3_m?1429928123

正方形から出発し,9分割し真ん中の正方形を取り除きます.
残りの8つの正方形をそれぞれ9分割して,それぞれの真ん中を取り除きます.
この操作を際限なく(無限に)繰り返して得たフラクタル図形はシェルピンスキーのカーペットです.
やはり,面積は0に収束し,境界の長さは無限大に発散します.

これらの図形は,1次元でも,2次元でもありません.
「長さがx倍になった領域に,現在の図形をy個詰め込む」という操作を繰り返したわけですが
  x^d=y (dはフラクタル次元) より,フラクタル次元は d=logy/logx です. 
フラクタル次元は,(1)ガスケット3角形では1.585・・・,(2)カーペット4角形では1.89・・・・になります.

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結晶とガラスの数学

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数学月間SGK通信 [2015.04.21] No.060
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■結晶とガラスについての話です.
まず,石英(水晶)と石英ガラスの2次元の模式図を見て下さい.
図はwikipediaから借りました.どちらも材料の化学式はSiO2で同じです.
Fig.1 結晶
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fd/SiO2_-_Quarz_-_2D.png
Fig.2 ガラス
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/19/SiO2_-_Glas_-_2D.png/240px-SiO2_-_Glas_-_2D.png

結晶とガラスの違いは一目瞭然でしょう.
そう,結晶構造には繰り返し周期がありますが,ガラスにはありません.
Fig.3に示すように,結晶には単位となるタイルがあり,これで無限平面を隙間なく張りつめることができます.
石英の例では,正6角形のタイルを,赤点の場所に置けば,無限平面を隙間なく張り尽くせます.
赤点は格子点と呼ばれます.格子は,図中に示した2つの互いに独立なベクトルa1,a2の
一次結合ha1+ka2により生成されるベクトルを集めた無限集合(並進群)の図による表現でもあります.
Fig.3 結晶構造にある並進群
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/26/16652126/img_0_m?1429350335

■結晶空間は並進周期のある空間です.結晶構造は規則正しい秩序のある構造ですから,
並進操作以外にも回転対称操作とか鏡映対称操作などあり,
構造に存在するこれらの操作を続たとき生じる対称操作全体の無限集合は”群”をなしています.
生成される対称操作はこの集合に含まれるし,すべての操作に逆元があり,
何も動かさないという単位元もあります.
結晶空間(周期のある無限空間)の対称操作の集合のなす群を結晶空間群と言います.
今日,ここで扱ったような2次元の平面群(壁紙模様)は17種類あることが知られています.
並進(格子点間の移動)で重なるものは同値と定義すると,
無限に広がる結晶構造を,単位タイルの中に押し込めることができます.数学の言葉で言うと,
「並進群を核とする準同型写像で結晶空間群は結晶点群に帰着する」ということになります.
私はこの理論が大好きでした.しかし皮肉なもので,実際に扱った材料は結晶ではなく
群論の適用ができないガラスが中心になりました.

■ガラスの構造をどう解析し記述するかというのは,今日でも困難な課題です.
結晶で活躍する群論もFourier変換も役に立ちません.ガラス(一般化してアモルファスと言う)には,
単位タイルと言うものがありません.結晶構造では,
無限にある構成原子のパラメータは単位タイルに含まれる有限個に還元することができましたが,
ガラスでは無限個の構成原子のパラメータを減らせません(実際にコンピュータで扱うのは有限個).
結晶空間は単位タイルによってデジタル化された空間,他方,アモルファス空間は連続空間(アナログ空間)です.
ガラス構造では,結晶のようにすべての構成原子のパラメータを記述するのは諦めねばなりません.
そこで古くから,1つの原子を中心に置いて.半径r+Δrの球殻上に何個の原子が存在するのか
というような確率的な記述(動径分布関数)が用いられてきました.
最近は,アモルファス構造を特徴づけるいくつかのトポロジー量を定義することもやられています.
Fig.2を見るとリングがたくさん見えるでしょう.ガラス構造の中に,何員環がどれだけ存在するかとか,
ベッチ数とか連結数などの特性量,さらにパーシステントホモロジーの計算がなされ,
これにより詳細なアモルファスの特徴量が得られるようになりました.
これらのトポロジー量は,大きな原子数のアモルファス構造のモデルから,
シミュレーションにより決定された原子の座標値のビッグデータを土台に導出されます.
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(編集後記)
今回のメルマガでガラスの構造について書こうと思ったのは,
4月16日の文科省の講演会「数学は世界を変えられるか?」で数学イノベーションの紹介例3つの内に
ガラス構造への応用トポロジー(東北大)があったからです.
この講演会の主旨は,数学と社会・諸科学の連携です(ガラス構造の研究発表ではありません).
数学連携に関する個人的感想は(メルマガ分量オーバーのため).以下のサイトに書きました:
http://sgk2005.sakura.ne.jp/htdocs/index.php?key=joth4d0ko-36

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積めば積むほど長くなる

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数学月間SGK通信 [2015.04.14] No.059
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556225/69/16381169/img_0_m?1428931802

計算することも大事ですが,このような感覚を体に身に着けることは有益です.
有限個の積み木を積んで長さの記録を競います.
無限個の積み木を積むなら,少しずつですが無限に伸びる対数曲線ができます.
(例1)発散する無限級数を体験する
  1+1/2+1/3+1/4+.......+1/n+....=∞
積み木の長さの半分を1とする.
一番上の積み木の飛び出している長さは1
その下の積み木の飛び出している長さは1/2
その下の積み木の飛び出している長さは1/3
.....以下同様にいくらでも続きます.

(例2)収束する無限級数を体験する
  1/2+1/4+1/8+1/16+........=1
総和でできる立方体の体積を1とする.
立方体の内部の1/2の体積(オレンジ)を取り除く
残りの体積から残りの体積の1/2(グリーン)つまり立方体の(1/2)^2を取り除く
その残りの体積の1/2(青)つまり立方体の(1/2)^3を取り除く
その残りの体積の1/2(赤)つまり立方体の(1/2)^4を取り除く
......以下同様にいくらでも続きます.

私達は子供の頃,積み木を積んで遊びました.そして自然に重心や釣合の感覚が身に着きました.
水遊びをして流体の性質を自然に身に着けました.
後に学校で物理学を学びますが,そのような理論を学ばずとも重力や力学の法則が身に着いていました.
身に着いていなければキャッチボールもできません.
吹きガラスの職人になるには,熔融ガラスの振る舞いを瞬時に判断できることが
身に着いていなければなりません.数学でもこのような体験は大事なことだと思います.

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正方形の辺の1/nを作る

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数学月間SGK通信 [2015.04.07] No.058
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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最近,我々のfacebook数学月間の会
https://www.facebook.com/sgk2014
に,Nishiyama氏から正方形の辺の長さの1/nを作る方法に関する
plusマガジンの以下の記事の紹介がありました.
https://plus.maths.org/content/folding-numbers?nl=0
皆様,正方形の折り紙を用いて試してみてください.
plusマガジンの記事は,下図の中に生じる黄色い2つの3角形が
互いに相似であること,直角3角形である(三平方の定理が成立)こと
https://plus.maths.org/content/sites/plus.maths.org/files/articles/2015/haga/hagak.jpg

を用いて,次の関係式を導びきます.
$$y/2=k/(1+k)$$ 
この関係式に,$$k$$の値(位置)として,得られた$$y/2$$の値(位置)を
代入するたびに,次の$$y/2$$の値(位置)が求まります.
$$k=1/2$$ → $$y/2=1/3$$
$$k=1/3$$ → $$y/2=1/4$$
$$k=1/4$$ → $$y/2=1/5$$
  ......
このようにして繰り返せば,一辺の長さの$$1/n$$まで順番に作れます.
正方形の上の辺に$$k$$の位置をとると,右側の辺に$$y/2$$に位置が決まります.
このように続けると,$$1/2,1/3,1/4,・・・$$の位置が正方形の周りを
ぐるぐる周りながら順次現れるのが大変面白いです.
https://plus.maths.org/content/sites/plus.maths.org/files/articles/2015/haga/hagaki.jpg

https://plus.maths.org/content/sites/plus.maths.org/files/articles/2015/haga/hagakj.jpg

さて,紙の形が長方形の場合は如何でしょうか?
手紙を3つ折りにして封筒に入れるときにこのようなことが必要になります.
長方形の辺の1/3を作る方法では,Takakubo氏からの以下の2通りの情報が
寄せられました.以下の図をご覧ください.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/61/16622661/img_1_m?1428237203
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/61/16622661/img_2_m?1428237203
これらは一般の長方形(辺の比が1:√2に限らない)で使えます.

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