2019年11月の記事一覧

作製する万華鏡

万華鏡の鏡室となる3角形は,頂角が15°の2等辺3角形です.従って,鏡室は(15°,82.5°,82.5°)ですから,分数解(12,24/11,24/11)の万華鏡になります.確かに,1/12+11/24+11/24=1 ですから,条件を満たす分数解であることがわかります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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万華鏡のワークショップ

今週の土曜日(11月30日)は東京ジャーミイで万華鏡のワークショップをやります.これは東京ジャーミイのチャリティ・バザーの一環として実施されます.お近くの方は参加されることをお勧めします.詳細や参加申し込みは,以下の東京ジャーミイのウエブサイトをご覧ください.
https://tokyocamii.org/ja/event/1787/?fbclid=IwAR2JXV3GaFx5ruXfPabGC-reuY7VPFNKq1LPXtLpgdltl4hijMo0hT1Ot8I

■万華鏡の原理
平行な合わせ鏡の間に置いた物体は,物体像と鏡像のペアが無限に繰り返す市松模様を生じます.2枚の合わせ鏡が平行でなくθの角度で交差する場合は,一次元の市松模様は円周に沿って並びます.円周の向こう側で市松模様がきれいにつながる条件は,360/2θ=n(整数)です.これは,万華鏡を発明した物理学者ブリュースターの特許(1817年)に書いてあります.

3枚鏡が3角形をなす場合は,3角形の各頂点でこの条件が成り立つので
1/n+1/m+1/p=1,(2=<n,m,p)が,平面がきれいな市松模様になる条件です.この条件を満たす3角形は図に示す3種類しかありません.

これだけではつまらないので,分数解も許すことにすれば,解は無限にあります.このような分数解の万華鏡は,平面の所々で市松模様が破綻しますが,やはり美しいものです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

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ジャーミイの模様の幾何学~美しいものには理由がある~(下)

■イスラーム模様の特徴 ➡亜群

イスラーム模様の特徴は,局所的に対称性の高い星型ロゼットがちりばめられていることです.平面群で存在が許される回転対称は,2,3,4,6回に限られ,5回や,7回以上の回転対称は周期性と両立できません.その理由は正5角形のタイルや正7角形以上のタイルは平面を隙間なく埋めることができないからです.

イスラームの繰り返し模様中に,高い対称性(9回とか10回とか12回など)のロゼットをよく見かけますが,これらの対称性は各ロゼットの内部だけで,全域を支配することはあり得ません.そのため,対称性が高そうに見えても,平面群(17種類ある)のどれかに割り当てざるを得ないのです.

イスラームの特徴的な模様を,平面群で分類するのではなく,もっときめ細かい対称性の記述はできないものでしょうか? 群ではなく,亜群(1926)や混群という代数系などが提案されていますが,その発展が行き詰っているのは残念なことです.

 

■高次元の周期的な世界から2次元の世界への影 ➡高次元格子からの射影

 

イスラーム模様を高次元の周期的空間からの2次元平面への影であると解釈する方法もあります.

周期性のないPenroseのタイル張り(1976)を,このような方法で作ることもできます.

左図は,周期的な2次元世界から1次元世界への射影で,2次元世界で存在した周期性が失われる事例です.5次元の周期的空間[3次元や2次元の周期的空間には存在できない5回対称軸が存在可能]を,2次元平面に射影すると,5回対称のロゼットを作れますが,5回対称性はロゼットの内部だけで2次元平面での周期性は壊れます.イスラーム模様にちりばめられた高い対称性の星型ロゼット(高次元空間からの影)を見ていると,高次元の宇宙の中に自分が存在する世界があることを実感し,不思議な気分になります.

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ジャーミイの模様の幾何学~美しいものには理由がある~(上)

■結晶は周期的な世界 ➡平面群

結晶は単位胞を積み上げてできたブロック細工のようなもので,周期的な内部構造です.図は水晶の例です.水晶の6角柱の方向から見た投影図とM.C.Escherのこの版画作品は同じ対称性(平面群p31m)です.

系の秩序(対称性)は,対称操作[系全体を動かしたとき,系の初期位置と全く重なるような操作]の集合で記述します.対称操作には,並進,対称心,鏡映,回転などがあり,これらの対称操作(群の元という)の組み合わせが作る“群”という代数系[集合の元間の演算が,群の定義(注)を満たす集合]で分類できます.壁紙を記述する平面群は17種類あり,ジャーミイの繰り返し模様もこれらのどれかに分類できます.

注)群の定義:

1.集合Gの任意の2つの元a,bの積a・bは集合Gに属す.→集合は閉じている
2.(a・b)・c=a・(b・c) →結合の法則
3.任意の要素aに対して,a・e=e・aとなるeが集合Gの中にある.→単位元eの存在
4.任意の要素aに対してx・a=a・x=eとなるxが集合Gの中にある.→逆元xの存在

■イスラームの模様の作り方 ➡テッセレーション

イスラーム建築に使われている美しい模様は,コンパスと定規だけで厳密に作図できますが,1200年までに,5種類のGirihタイル[縁に模様のある等辺多角形タイル]を用いて,パズルのように平面を埋めて美しい複雑なデザインを作る手法が確立しました.

この方法は平面を多角形タイルで分割するテッセレーションの手法と同じです.イランのDarb-i Imam寺院(1453)の壁には,その500年後にヨーロッパで発見されるPenroseタイリング[自分の中に自分と同じパターンが繰り込まれる]と同様なパターンがすでに見られることをPeter LuとPaul Steinhardtが報告しています.

(下)へ続く

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5次元空間格子の射影でペンローズ・タイリングを作る

ペンローズ・タイリングとは,次のような2種類のタイルから出来ているタイル張りです.
この図の例では周期ができてしまいましたが,周期ができないように作ることもできます.

ペンローズ・タイリングは,5次元の空間格子の2次元への射影として作れます.
5次元超立方体は頂点32個,辺の数80(各頂点が5次の同次グラフ)です.
超立方体は亀井図(多元構造グラフ)で表示するとわかり易い.
https://sgk2005.org/wysiwyg/image/download/1/526/medium
我々は5次元空間を見ることができないので,5次元空間の基底を,互いに直交する2つの部分空間の基底の直和(2次元+3次元)に分けて考察することにします.
周期的な5次元空間[単位胞(5次元超立方体)]を,その5次元空間内をよぎる2次元平面(スクリーン)に射影するには,2次元平面にできる格子の影に,この2次元平面に対する3次元直交補空間(菱形20面体)を射影すればよい.


この3次元補空間内の基底ベクトル3本は互いに直交しているのだが,この3本のすべてがスクリーンとなる2次元平面にも直交している(想像しにくい状態だが5次元の世界だから可能).
5次元超立方体を3次元に射影してできる立体は,菱形20面体(頂点数は22個,辺の数40)だが,
5次元空間の単位胞の体対角方向が2次元スクリーンに垂直になるように置いて,スクリーンへ射影を行う.つまり,菱形20面体の1つの5回対称軸を2次元スクリーンに垂直にして見下ろしたときの外形(ペトリー多角形と言う)を図に示します.ペトリー多角形とその内部の点は5次元の超立方体の頂点に対応します.


ペンローズ・タイリングに現れる特徴的なパターンが,ペトリー多角形内に作れることを図に示しました.

5次元の周期的な空間を,単位胞(5次元超立方体)の体対角線[1,1,1,1,1]方向に垂直な2次元平面に射影すると,この2次元平面は,3次元補空間の菱形20面体をいくつかの高さのレベルで切断したいくつかのサイズのペトリー多角形内のパターンが次々に現れ,ペンローズのタイル模様が作れます.

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Girihタイル★★

下図左のような3種(水色,黄緑色,ピンク)のタイルをGirihタイルと言います.この他に2種のタイル型もGirihタイルに加えて5種類のタイルを用いる場合もあります.Girihというのはタイルの中の模様の線のことです.水色の10角形のタイルの作図法を下図右に示します.この作図は赤い円を10等分することから始めます.

 

 さて,これらの3種類のタイルを用いて,色々な平面のタイル張りができます.

例えば,次の2つをご覧ください.

(1)

 

(2)

 

タイルの色は説明のために着色しただけで,タイルの輪郭線ではなく,各タイル内の線Girihが描く模様に注目してください.

これらのタイル張りの対称性は,(1)はP2mm,(2)はC2mm,もちろん,描かれるイスラーム模様の対称性も同様です.

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Girihタイル

このような3種(水色,黄緑色,ピンク)のタイルをGirihタイルと言います.この他に2種のタイルの型もGirihタイルに加えて5種類のタイルを用いる場合もあります.Girihというのはタイルの中の模様の線のことです.水色の10角形のタイルの作図法を次の図に示します.この作図は赤い円を10等分することから始めます.

さて,これらの3種類のタイルを用いて,色々な平面のタイル張りができます.

例えば,次の2つをご覧ください.

(1)

(2)

タイルの色は説明のために着色しただけで,各タイル内の線Girihが描く模様が求めるものです.

これらのタイル張りの対称性は,(1)はP2mm,(2)はC2mm,もちろん,描かれるイスラーム模様の対称性も同様です.

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