結晶で群論を使ってみよう

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数学月間SGK通信 [2017.12.19] No.198
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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数学月間勉強会(第3回),12月12日は,楽しく有意義に実施されました.
ご参加のみなさまに感謝いたします.次回は来年3月頭の予定です.
決まりましたら掲示しますのでご参加ください.
■群の考え方は色々な数学分野に現れるし,群論が適用される対象も様々です.
群論を作ったのはガロア,代数方程式の解法にかかわって生まれました.
2次方程式,3次方程式,4次方程式は,解法が発見されていましたが,
5次方程式の解法はどうしても見つからなか時代です.
f(x)=x^5+ax^4+bx^3+cx^2+dx+eという5次式は,連続なグラフで,
xが負で絶対値が大きければ,f(x)<0,xが正で絶対値が大きければ.f(x)>0になるので,
f(x)=0という5次方程式は,どこかでx軸を過るので必ず解xが存在し,
そのxは係数で表されるはずだと誰もが思っていました.しかし,
係数の加減乗除と冪根で表せる解は存在しなかったのです.
根の対称性に注目し,群の理論を作り,ガロワがその証明をしたのは200年前のことでした.
これに至るまでには,ラグランジュ(1770),コーシー,アーベル,ガロア(1832)が関わっています.
■群論が生まれて活躍したのは,方程式の解法に関するものですが,
群の概念は,正多面体の対称性(シンメトリー)でも使われます.結晶の舞台でその活躍を見てみましょう.
水晶のいろいろな面の大きさは個体ごとに違うが,「対応する面どうしのなす角度を測ると,
どの水晶でも同じ値だ」ということを発見したのはステノ(1669).
この現象を,多くの鉱物で調べて「面角一定の法則」としたのは,ロメデリル(1772)です.
この法則は,「結晶の内部構造から生じている」と洞察したのがアウイ(1783)で,
彼は「結晶には単位胞が存在し.この単位胞が繰り返し並ぶブロック細工が結晶だ」と推論しました.
19世紀に入ると,結晶に座標軸(結晶軸)を導入し,結晶面に指数をつける方法が種々定義されました.
それらの方法のうち,ミラー (1801~1880〉によるミラー指数が,今日,最も広く用いられています.
「その結晶の単位胞に合った座標軸をとると,すべての結晶面のミラー指数は,
簡単な整数で表せる」=結晶面の有理指数の法則といいます.
これは,アウイの述べた「結晶=ブロック細工説」を裏付けることになります.
この時期には, 結晶面の方位(=結晶内部の原点から,各結晶面へ垂線を立てて,
結晶を中心とする単位球表面に投影した点)を,2次元平面へ写像する種々の等角投影法(ステレオ投影など)
も生まれています.
3次元の結晶点群は32種(ヘッセル,1830〉,
3次元の空間格子(結晶格子)のタイプ=ブラべ格子(1848)は14種が数え上げられ,
続いて,3次元の空間群の夕イプが230種であることが,フェドロフ,シェンフ リーズ,バーロー(1885~1894〉により,
互いに独立に数え上げられました.これは,すべてX線の発見以前の純粋な数学的業績であるのが興味深い.
結晶を応用の場にしての群論を具体的に学習をすることができます.
空間群をΦとすると,並進群(格子)Tは,空間群Φに正規部分群として含まれるので,
並進を法とした群Φ/Tは,点群Gに同型です.結晶(周期構造,デジタル化された空間)は,
群論をさまざまに適用できる良い場(舞台)です