数学月間とは何か2

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数学月間SGK通信 [2018.01.02] No.200
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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新年おめでとうございます.良い年でありますように.
皆様は良い新年をお迎えでしょうか.
お陰様でこのメルマガも本号で200号になりました.
本年も宜しくお願い致します.
数学月間懇話会(通常は毎年7月22日に実施)は今年が第14回になりますが,
今年に限り,7月は私の都合が悪いので,8月22日に変更したいと思っています.
決まりましたらご案内を致しますのでご参加ください.
その他,いくつか私の参加するイベント予定があります,興味おありの方はご参加ください.
2月13-16日,京都大学数理解析研究所,RIMS教育数学研究集会
3月上旬,東大出版会,数学月間勉強会,第4回

さて,前号「数学月間とは何か1」の続きです.

2.数学と社会の架け橋=数学月間
数学月間活動がボランティア・ベースである以上,本意ではありませんが活動のメニューを絞らざるを得ません.
数学月間の核心を考察してみましょう.数学月間活動は,数学者のための活動(数学界を応援する)ではありますが,
数学者のための活動(数学内輪の同好会)ではありません.つまり,数学を取り巻く周辺への働きかけです.
国民の数学への関心を高めれば,畢竟,数学者のためになるのだが,現実は,
数学者たちの偏狭さと自由思考のため,献身的な協力は得られていません.

2012年から始まったフランスの数学啓蒙活動(数学週間)を見てみましょう.
数学週間は,国民教育省の企画の下,“現在の活き活きとした魅力ある数学の提示”,
“数学が日常生活で果たしている重要性の提示”などの5つの目的を掲げ,
パートナーと呼ばれる20数団体が参加して,毎年3月中旬に行われます.
毎年,統一テーマが決められます.また,“数学カンガルー”,
“国内数学オリンピック大会”なども同時開催されます.

他分野の例も比較してみましょう.日本化学会など化学4団体が,10月23日を「化学の日」,
この日を含む月曜から日曜までを「化学週間」と2013年に制定しました.
10月23日としたのは何故か? 高校の化学を思い出すと,なるほどと思い当たることでしょう.
化学週間には,全国一斉のオープンキャンパスなどがあり,意匠登録されたロゴマークを,
すべての化学啓発活動に付してビジビリティの向上を目指しています.
提案4団体だけではなく,経産省や文科省,マスコミ,企業など,
産官学一体となった本格的な活動が立ち上がっています.
化学の日イベントは,各地の高校や大学,研究所などで実施され,
月刊誌「ニュートン」,「化学」,「現代化学」,「子供の科学」などへのPR記事の掲載があります.

数学研究は孤高で周辺分野との架け橋は必要ないとの見方もありますが,
数学の影響は社会のあらゆる分野に広がり,化学の比ではありません.
数学月間活動の呼びかけは数学の外周へ向けた広い視野の横断的な活動でなければなりません.
それにもかかわらず,数学者は,抽象化されたものを洗練することに熱中し,
自ら手を染め現実から数学を抽出しようとしたがりません.物理,化学,工学,医学,社会科学,..
のどの分野であろうと形而下には関心がないようです,抽出された数学は美しいに決まっているが,
数学者はその美しさに自己陶酔し,その源泉である周辺分野への配慮がほとんどないので,
国民レベルから数学への共感を得るに至っていません.