数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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数学月間SGK通信 [2014.11.18] No.038
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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◆正3角形の対称性
正3角形は,中心に回転軸を立て右回りに120°回転しても,
始めの状態と全く同じで,回転したかどうかわかりません.
この回転を続けて2回行い240°の回転になっても同様です.
120°の回転を3回続けて行うと1回転して始めの状態に戻ります.
つまり,正3角形には3回回転対称があります.
このような回転軸を3回軸といい,記号は3と書きます.
その他に,正3角形は鏡映対称があります.図に示した赤い線が鏡映面です.
ここにある3枚の鏡映面は3回軸の作用で互いに移り変われるわけで,
全部同じ性質です.従って,正3角形の対称性は,3回軸と1種類の鏡映面があり,記号では3mと書きます.
◆正4角形の対称性
正3角形の場合と同様に,こんどは中心に4回回転軸があります.記号は4です.
正4角形を見ると鏡映面が4枚あることがわかります.図で赤線で描いた2枚と
オレンジ線で描いた2枚です.4回軸によって,赤い鏡映面どうしは互いに移り変われるし,
オレンジ鏡映面どうしも移り変われますが,赤とオレンジの鏡映面は,互いに移り変わることができません.
従って,今度は2種類の鏡映面があることになります.正4角形の対称性は,記号で4mmと書くことに注意してください.
◆同様に,正5角形,正6角形の場合は,図のようになることを各自確かめてください.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/42/16226942/img_0?1414074741
◆対称図形の重ね合わせ
正3角形の部品を複数重ね合わせると,一般に,全体の対称性は低下するが
配置の仕方により全体の対称性が上昇することもある.
このようなことをとり上げている本は見かけませんが,とても面白い現象です.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/01/16227001/img_0?1414076174
◆対称性の重畳
正6角形は正3角形の対称性を含んでいますから,
正6角形と正3角形を鏡映面が共通になるよう重ね合わせる(下左)と正3角形の対称性が残ります.
正3角形と正6角形の回転軸をそろえて,鏡映面が共通でないように重畳すると,
結果は3回回転対称だけが残ります(上左)
他の図も同様ですので,各自確認ください.正6角形と正5角形の重畳の場合は,
6回回転対称と5回回転対称に含まれる下位の対称性(共通な部分群)はないので,
鏡映面の一致がなければ,対称性はなにも残りません(上右).
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/01/16227001/img_1?1414076174
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数学月間SGK通信 [2014.11.11] No.037
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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◆ことしは結晶学の生誕100年にあたります
結晶にX線ビ-ムを照てると,
結晶がブロック積みのような周期的な構造なら回折が起こります.
(結晶内部の繰り返し構造の周期と,X線の波長が好都合なことに同程度だったのです)
そう考えたのはラウエでしたのでこの実験をラウエの実験と言います(1912年).
X線がレントゲンにより発見(1895年)されて間もない頃でした.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/23/16237223/img_0?1414563100
結果として得られたラウエの回折像には,その原因になった結晶内部の対称性が反映されているべきです.
これは「キューリーの原理」という因果律です.
回折像を撮影して,小さくて目に見えない(~nm)結晶の内部構造の解析をしたのがブラック親子(1913年)です.
レントゲン(1901),ラウエ(1914),ブラック(1915),それぞれノーベル賞をもらっています.
◆結晶世界はデジタル
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/60/16237160/img_0?1414501713
大小いろいろな結晶がありますが,写真は全部,水晶の結晶です.
結晶個体は,いろいろな種類の結晶面で囲まれており,
その結晶面の大きさも結晶個体により様々です.
しかし,同じ組み合わせの結晶面どうしのなす角度は
どの結晶個体で測っても,同じになります.
例えば,黄色い面と青い面のなす角度は(各面に立てた垂線のなす角のこと)
どの結晶で測っても同じになります.⇒面角一定の法則(1772)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/60/16237160/img_1?1414501713
アウイ(1783)は,
「結晶は小さな単位胞がブロック細工のように積み重なって出来ている」
と考えました.→すなわち,結晶世界はデジタルな空間です!
それなら,現れる結晶面(上図の青い線)は格子点を載せている面なので,
面の傾きは有理数になります.→有理指数の法則(1783)
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数学月間SGK通信 [2014.11.04] No.036
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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◆平面のデジタル化
写真フィルムは連続な平面ですが,デジカメの感光面は半導体のドットが並んでいます.
人間の網膜も視細胞が配列しているデジタル化された平面です.
最近の交通信号は円の中に発光ダイオードのドットが配列しています.
これらが平面のデジタル化の例です.結晶も原子や分子が詰まった単位ブロック(胞)があり,
これがきちんと積み重なりできている周期的な構造で,デジタル化された空間の例です.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_0?1414413690
◆平面のデジタル化の様式
無限に広がる平面の何処も均一なようにデジタル化する(ドットを配列する)なら,
規則正しく周期的な構造になります.交通信号の円内は均一なデジタル化はできません.
平面のデジタル化は対称性の観点からどのように分類できるでしょうか?
結晶学でブラベ格子というものはデジタル化様式の分類にほかなりません.
そもそも結晶空間とはデジタル化された空間のことです.
(注)周期的なドットの配列は「格子」と呼ばれます.
格子の様式分類は,研究した人の名前をつけて「ブラベー格子」と呼ばれます.
2次元の「ブラベー格子」は5種類あることをこれから説明します.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_3?1414413690
まずは,1次元の周期
2次元の周期は2つのベクトルの組み合わせでできる.
対称性から分類するとこれらの5つのタイップがある.
これらから格子を作ったものが以下の図です.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_4?1414413690
上図に示した緑色のタイルは「W-S(ウイグナー・ザイツ)胞」といいます.
このタイルを赤い格子点に配置すると平面がタイル張りされることを確かめましょう.
さて,これらの周期的平面は,格子点(周期的な平行移動で生じる点)
をすべて同値と考えると,1つのタイルの中に引き戻せます.
以下の図には,それぞれのタイルの対称要素を記入しておきました.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_8?1414413690
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_7?1414413690
上図左は,タイルの対称性が一目瞭然のW-S胞.右は,単位胞タイルです.
(注)単位胞の図を見るとわかるように,これらの5つはすべて単位胞に格子点が1つ含まれる1格子点胞です.
上段右の菱形胞を用いずに,面心型の2格子点胞を用いるのが慣例となっていることを申し添えます.
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数学月間SGK通信 [2014.10.28] No.035
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今年の「数学月間懇話会」で松原望さんから「民力指数」についての
講演がありました.指数といえば「消費者物価指数」などが有名です.
数学で指数というのは桁(比率)の表現なので,例えば,基準年の物価
に対して何倍の変化があったかという「消費者物価指数」を,
指数というのは適当でありましょう.
しかし,「民力指数」の指数の意味はこれとは違うようです.
地域の「民力指数」とは,正の数値(スカラー)で,その地域の
生産・消費・文化,および,人口などの基本指標の関数として
(26種の経済統計量の関数として)定義されます.
これは朝日新聞が30年以上前に発案した定義だそうです.
地域の「民力指数」は,地域の経済活動力の表現になります.
都道府県に対する「民力指数」は全国を1,000に,市町村に対する
「民力指数」は全国を100,000になるように規格化します.
「民力指数」は数学的には測度であるので加法的であることが
松原さんの講演で指摘されました.
地域Aと地域Bの合併の「民力指数」の試算も合理性があり
色々な利用が期待できます.
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数学月間SGK通信 [2014.10.21] No.034
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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◆黄鉄鉱の結晶粒の外形には,多面体がいろいろ現れることを,
028号で述べました.整理すると下図のようです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_0?1413100917
さて,この図の中に正12面体や正20面体の外形が見られるようですが,
結晶(周期的な内部構造をもつ)では,5回対称軸は存在できず,
5回対称のある正12面体や正20面体は外形にも生じないはずです.
詳しく調べてみると,黄鉄鉱の正12面体のような5角12面体は,
(2,1,0)面で囲まれているようです.→◆ミラー指数
両者の多面体で二面角の比較をしてみましょう:
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黄鉄鉱 126.89° (2回軸を挟む二面角)
正12面体 116.57°
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
黄鉄鉱の外形(5角12面体)は正12面体ではありません.
◆ミラー指数
ミラー指数とは面の傾きの表示です.
下図のブロックのサイズは,x,y,z各1単位
(x,y,zの各単位は等しくなくても良く,斜交軸でもかまいません)
例えば,(2,1,0)面の,x軸,y軸,z軸との切片は,1/2,1,∞です.
切片の逆数の比をとると,ミラー指数 2,1,0 が得られます.
結晶は単位ブロックが積み重さなった周期的な世界です.
周期的な世界(格子点が並んだデジタル世界)の格子点を載せた
面の傾きは有理数ですから,すべての結晶面のミラー指数は整数となります.
http://sgk2005.sakura.ne.jp/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=88
周期的な世界に5回対称軸は存在できませんので
結晶(周期的な内部構造を持つ)は,正20面体の外形になることはできません.
(注)“準結晶”には5回対称がありますが,周期的な世界ではありません.
◆黄鉄鉱の6面体,5角12面体と準結晶(正12面体)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_1?1413100917
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_2?1413100917
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_3?1413100917
◆柘榴石garnetも立方晶系の結晶構造ですので
外形もさいころのような対称性を示します.
菱形12面体~24面体(これらは正多面体や半正多面体ではありません)
の晶系の変化があります.
http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/bb/chigaku/minerals/img/2-32.jpg
写真はwebで拾った岩手県和賀仙人鉱山産の柘榴石結晶です
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/36/16196636/img_0?1413101685