数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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数学月間SGK通信 [2017.07.25] No.177
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今年も数学月間の初日(7月23日)は数学月間懇話会でした.今年の7月23日は土曜日です.
今年も40人を越す参加者で盛況でした.真夏の炎天の1日で,おいでいただいた皆さまに感謝いたします.
プログラムは,以下のようでした:
1.社会調査の実際,森本栄一(ビデオリサーチ)
2.ブラックホールを見る,池田思朗(統数研)
3.星型正多面体の体積比較(模型も作るよ!),小梁修(osa工房)
さて,以下は私の主観的な感想です(講演概要の議事録ではありません).
■世論調査の感想
安倍内閣の支持率が26%になりました.皆さんはこの数値をどう思いますか.
私はこの数値はやっと正常値になった,今までがおかしかったと思います.
しかし,ある人は,今の支持率低下は世論誘導により作られたといいます.
今までの高支持率は世論誘導で維持されたとは思はないようです.
どちらが正しいのでしょうか.
支持率の変曲点に至るまでは支持率を維持しようとするメカニズムがあるが,
支持率が変曲点を越え(30%台)低下すると,雪崩をうって低下が加速するように私は思います.
世論調査の数値なんて不確かなもの,正しい値はあっても,
この数値自体に世論誘導の効果があり,数値を変化させます.
NHK,各新聞社,それぞれ自分が決めた方法で得たサンプル集合に,
それぞれ独特の設問で調査を行います.ビデオリサーチも決められた方法
(PMピープルメータという機械を配置)で調査を行います.
それぞれ調査し数値を出すのが業務ですが,得られた数値が,
実態を正しく反映したものかどうか誰も保証できないようです.
だいたい,サンプリングがランダムになされたかの検証は非常に難しい.
誤差の範囲もはっきりしない.さらに,統計学の問題に持ち込む以前に以下の問題がある.
設問文章の条件や聞き方などで,答えが左右されます.
設問の並べ方や,選択肢も重要です.あえて誘導尋問のように作ることもできます.
また聞き取り調査の難しさもあります.電話で複雑な設問が理解できるでしょうか.
このように,実態を正しくとらえた世論調査は非常に困難で,この分野は行詰っているようです.
発表された数値なんて絶対の信頼ができるものではありません.
これに誘導されることのないように注意しましょう.
この他,調査とは別の手法ですが,最近,ビッグデータを用いた解析が有力なようです.
たいへん不気味なことですが,当落予測などで実績が上がっているようです.
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数学月間SGK通信 [2017.07.18] No.176
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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7月は数学月間の季節です.お知らせがいくつかあります.
数学月間懇話会(第13回)
●日時:7月22日(土),13:50-17:20,開場:13;30
●場所:東京大学(駒場),数理科学研究科棟002号室
●参加費無料
直接会場にお出で下さい.
●主催:数学月間の会,日本数学協会
●問い合わせ:sgktani@gmail.com
●プログラム
1.社会調査の実際,森本栄一(ビデオリサーチ)
2.ブラックホールを見る,池田思朗(統数研)
3.星型正多面体の体積比較(模型も作るよ!),小梁修(osa工房)
17:30から,学内のイタリアントマトで懇親会をします(飲食は各人払い)
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数学月間勉強会(第2回)は,7,8月はお休みし,9月27日に再開します.
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とっとりサイエンスワールドは,
米子(7/30,鳥取(8/20),倉吉(8/27)です.お近くの方どうぞお出かけ下さい.
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IMAGINARY 数学アート展
◆ 日時 ◆2017年8月8日 14:30 ~ 22:30
◆ 場所 ◆東京都千代田区神田神保町 1-6 神保町サンビルディング 3F みらい研究所 (一部スペース)
開催場所について詳しくは、こちらをご覧ください。
http://mirai-lab.org/
◆ 料金 ◆600円 (みらい研究所1時間利用料)
IMAGINARY 数学アート展のイベント情報は、こちらをご覧ください。
https://imaginary.org/event/math-art-day-in-tokyo
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万華鏡のお話をしましょう.おっとりサイエンスワールドでは,私は万華鏡のワークショップをやります.
万華鏡の映像AとBがあります.どこが違うのでしょうか.
それぞれの万華鏡の鏡の構成はどのようなものと推測できますか?
A https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/81/18134981/img_0_m?1500302509 B https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/81/18134981/img_1_m?1500302509
A,Bの映像ともに,芯(2枚の鏡の交差軸)の所に12回対称があります.
360°/12=30°,従って2枚の鏡の交差角は 30°/2=15°であることがわかります.
AとBの違いは,水平な鏡が有るか無いかの違いです.
そこで,鏡の組み合わせは,以下のようであると推測できます:
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/81/18134981/img_3_m?1500302509
Bの万華鏡はスペーサーも鏡になり3枚鏡の筒です.
Aの万華鏡はスペーサーは鏡でないので図には省略しています.
2等辺3角形の頂角は15°で,頂点の周りは12回回転対称で頂点が集まり埋め尽くされます.
しかし,底角は82.5°で,底角の周りは規則正しい埋め尽くしにはなりません.
3枚鏡の万華鏡の映像は,平面全体に広がっていますが,Aの2枚鏡の万華鏡は円形の領域のみに映像は留まります.
万華鏡の作製は,私のブログhttps://blogs.yahoo.co.jp/tanidr/18134981.html
をご覧ください.
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数学月間SGK通信 [2017.07.11] No.175
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆様お変わりありませんか.暑い夏の7月,8月は数学月間の季節でもあります.
数学月間は,7/22~8/22です.この期間を中心に,数学的なイベントが
各地で盛んになるように応援しています.皆様のまわりで,数学的なイベントがありましたら
お知らせください.数学月間の会HPやFacebookなどで広報しています.
私たちも7/22には,数学月間懇話会の開催予定です.
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数学月間懇話会(第13回)
●日時:7月22日(土),13:50-17:20,開場:13;30
●場所:東京大学(駒場),数理科学研究科棟002号室
●参加費無料
直接会場にお出で下さい.
●主催:数学月間の会,日本数学協会
●問い合わせ:sgktani@gmail.com
●プログラム
1.社会調査の実際,森本栄一(ビデオリサーチ)
2.ブラックホールを見る,池田思朗(統数研)
3.星型正多面体の体積比較(模型も作るよ!),小梁修(osa工房)
17:30から,学内のイタリアントマトで懇親会をします(飲食は各人払い)
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6月28日には,数学月間勉強会(第1回)を実施しました.
こちらの内容は,メルマガでも何回かに分けて報告しようと思っています.
前号(7/4,174号)でも一部紹介しましたが,画像のリンクがうまく開かないようです.
お詫びして,174号の内容を掲載している私のブログのwebsiteを以下に示します.
https://rdsig.yahoo.co.jp/blog/article/titlelink/RV=1/RU=aHR0cHM6Ly9ibG9ncy55YWhvby5jby5qcC90YW5pZHIvMTgxMTY5NjAuaHRtbA--
どうぞお読みいただけると幸いです.
さて,数学月間勉強会の第2回は,9月27日,2時からの予定です.
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「空間群で数学と物理を学ぼう」,谷克彦
(全4回の内容)
[第1回]並進群
対称性の起源「鉱物学・結晶学」.空間の周期的デジタル化.格子と並進群.
逆空間と実空間のデリクレ胞.非周期のデジタル化.
[第2回]結晶点群
有限図形の対称性.なぜ結晶類と呼ぶか.共役類.結晶点群の分解.
[第3回]結晶空間群
結晶点群による並進群の拡大.準同型写像の核=正規部分群.
[第4回]因果律の対称性
双対空間の因果律.
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数学月間流では,数学の源泉となった物理の現場に立つ臨場感があります.
通俗解説書では何冊読んでもピンとこない(私もそうです).
しかし,補題・定理の証明に終始する抽象数学は,何に使うのかわからないと思っている皆さん.
特に若い方にお勧めします.初心から専門の方まで広くご参加を歓迎します.
第1回は,6月28日に15人の参加を得て充実した勉強会になりました.
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閑話休題.2重らせんの話に移りましょう.
数学月間勉強会(第1回)では,空間の周期に関して様々な視点から学習しました.
結晶構造は格子構造を持っており,この格子の基本ベクトルをa1,a2,a3とすると,
逆格子a1*,a2*.a3*が定義されて,この逆格子点は結晶によるX線回折が観測される点です.
格子と逆格子は,互いにFourier変換の関係にある双対空間です.
DNA結晶とその回折像もそのような関係にあります.回折像から結晶構造の推定ができます.
■Rosalind Franklin,ロザリンドは,ロンドン大学のキングス・カレッジに職を得て,
X線結晶学者としてDNA結晶の構造解析を行っていた.
DNAには水分含量の差によって2タイプ(A型とB型)があることを明らかにし,
それらを別々に結晶化し,X線回折写真撮影に成功した(1952年).
写真を見れば,X線結晶学者なららせん構造であることはすぐわかる.
X線構造解析の定石は,回折像の逆Fourier計算し,DNAの詳しい構造を求めることである.
しかし,彼女のまとめた非公開研究データのレポートは,
予算権限を持つクリックの指導教官のマックス・ペルーツが入手し,クリックの手に渡った.
一方,ウイルキンスは,彼女が赴任する前からDNAの研究をしていたが,
ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所のワトソンとクリックに彼女の撮影した写真を内緒で見せた.
ワトソンは,複製の能力のあるDNAのモデルを考えていたが,写真を見て2重らせん構造モデルを確信する.
ワトソン,クリックの論文は,Nature(1953.4.25)に掲載される.ロザリンド・フランクリンらの論文,
ウイルキンスらの論文,合わせて3篇とも同号に同時掲載の体裁をとっている.
ワトソン,クリック,ウイルキンスがノーベル賞を受賞したとき(1962),
フランクリンはその4年前に37歳で亡くなっていた.
ロザリンドの時代にはコンピュータはなく,Fourier合成の計算は,
数表Beevers-Lipson短冊を用いて行う手計算であった.
また,試料たんぱく質の結晶化も不十分で,回折像のスポットもぼんやりしている.
良い結晶を作製して,X線自動回折系で6,000個もの反射スポットを得て,
コンピュータで計算し精密な構造を得るのは1981年になってからである.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/586975/66/18123166/img_0?1499584560
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数学月間SGK通信 [2017.07.04] No.174
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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表題の数学月間流勉強会を,6月28日,15:00-17:00に,東大出版会,会議室で開催しました.
今回[第1回]は,空間の「周期」がテーマでした.この分野の大家の先生方,デザイナーなど関連分野の方,
物理や結晶分野の方,数学愛好の方など15人の参加があり,椅子が足りなくなりご迷惑をおかけしましたが,
楽しく充実した勉強会でした.参加御礼申し上げます.ご興味おありの方の参加をお勧めします.
次回の日時が決まりましたらアナウンスいたします.
[第2回]は,有限図形の対称性(点群),[第3回]は,繰り返し模様の対称性(結晶空間群)と続く予定です.
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[第1回]周期
1.2次元平面のデジタル化
平面のデジタル化とは,1種類のタイルで平面をタイル張りすることです.
例えば,平行4辺形や平行6辺形のタイルは,対向する辺をピッタリ合わせて並べると
平面に隙間なく張り詰めることができます.
Q.平行8辺形以上は平面を敷き詰められないのは何故でしょうか?
以下の図を見て考えましょう.
イメージ 1
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/60/18116960/img_0_m?1499094865
平行に対向する辺を同じように変形して,図案のモチーフを作ります.
このようにすると,エッシャーの様な繰り返し模様の図が作れます.
上図は平行4辺形を変形して得たエッシャーによるモチーフ,
下図は平行6辺形を変形して私が作ったハロウィーン魔女です.
イメージ 2
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/60/18116960/img_1_m?1499094865
2.ユークリッド平面の正則分割
(正多角形によるユークリッド平面のタイル張り)
正p角形が頂点でq個集まっているようなタイル張りを(p,q)と書きます.
正p角形の1つの内角について,(p-2)π/p=2π/q,つまり,1/p+1/q=1/2
p,qの整数解を求めると,(4,4),(6,3),(3,6)の3種類があります.
イメージ 3
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/60/18116960/img_2_m?1499094865
3.アルキメデスのタイル張り
2種類以上の正多角形を組み合わせて平面をタイル張り.
どの頂点の周りの状況も同じ(同一の順序でタイルが並んでいる)
ただし,右回りと左回りによる並び方の違いは同じものと見做す.
イメージ 4
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/60/18116960/img_3_m?1499094865
(1)3つの正多角形(正n1,n2,n3角形)の頂点が出会う場合
2/n1+2/n2+2/n3=1
(2)4つの正多角形の頂点が出会う場合
2/n1+2/n2+2/n3+2/n4=2
(3)5つの正多角形の頂点が出会う場合
2/n1+2/n2+2/n3+2/n4+2/n5=3
(4)6つの正多角形の頂点が出会う場合は
この状態は,正3角形が6つの場合だけ
これらを解いて得られる整数解は,必要条件を満たすものです.
実際に作ることができるか確認すると,8種類のアルキメデスのタイル張りが得られます.
イメージ 5
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イメージ 6
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イメージ7
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/60/18116960/img_6_m?1499094865
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数学月間SGK通信 [2017.06.27] No.173
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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表題の数学月間流勉強会を,6月28日,15:00-17:00に実施します.
お気軽にご参加ください.
会場は,東大出版会,会議室です.ちょっと静かなわかり難い場所なので
道順を説明しましょう.
駒場東大前駅下車西口改札を出て,右手に進み高架下をくぐり,線路を左手に見ながら進みます.
パン屋の付近の踏切(渡りません)あたりで,敷地内の様な裏道に入り,しばらく進みます.
駅から400mくらいの距離です.
東大構内ではありませんので,ご注意ください.
東京大学出版会 〒153-0041 東京都目黒区駒場4-5-29
http://www.utp.or.jp/gaiyou/map_komaba.jpg
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今回の勉強会は,「繰り返し模様の対称性」(結晶空間群)の話です.
1832.5.29決闘で亡くなったガロアが作った群論という数学に係わります.
5次方程式の解は,代数計算を繰り返しても得られないことを証明するときに考えた抽象数学です.
同じ時代に,結晶学者は,単位胞が繰り返す結晶の内部構造の対称性を分類しました.
フェドロフは230種の空間群を数え上げたのです.
繰り返し模様の対称性は,無限に続く空間の周期性と単位胞の対称性(点群)の積と見做せます.
今回の第1回の6月28日は,「空間の周期」について色々話し合おうと思っています.
第2回は,有限図形の対称性(点群).
第3回は,点群と周期(並進群)の積で空間群が作れることを学ぶ予定です.
第4回は因果律の対称性です.
さて,周期と言っても色々な話題があります.1つのブロック(単位胞)で空間をデジタル化する様式を,
対称性で分類したものがブラベー格子です.
だたし,空間をデジタル化すると必ず周期的になるかというとそうでもありません.
非周期の例にペンローズ・タイル張り(準結晶)があります.
そして,この非周期のタイル張りは,高次元の周期的空間から投影された影であることもわかります.
結晶の様な周期的な場にある電子の存在確率はブロッホ関数と呼ばれるFourier級数のような関数になっており,
結晶周期の対称性と同様に,逆格子と呼ばれるエネルギー空間の格子の対称性も重要です.
純粋数学では,補題や定理や系の証明に終始するのですが,数学月間流では,
概念の源泉たる結晶・鉱物や物理の現場に立ち返り,群論も学ぼうというものです.
ご期待ください.