数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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数学月間SGK通信 [2017.10.17] No.189
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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<東京おもちゃまつり>が,東京おもちゃ美術館にて,10月14,15日に開催されました.
両日とも冷たい雨の降るあいにくの天気でしたが盛況でした.
私は10月15日に出かけ,バクウ研究所の富川義朗先生と佐藤芳弘先生にお会いしました.
いろいろな面白い「ばくうコマ」の展示があります.原理はなかなか奥が深い.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/73/18258773/img_0_m?1508164222
■振動で廻す
富川先生たちは,振動を回転運動に変える超音波モータの発明者です.おもちゃのトントン・コマはその応用です.
ミラクル・ツインという「ばくうコマ」は,中央の偏心した回転子が発生する振動を,
左右に置いた円板の軸受け穴に伝え,軸芯に回転モーメントを発生させるのです.このとき左右円板の回転方向は反対になります.
これはジャイロ・モーメント・モータの原理と同じとのことです.
■錯視を起こさせる(4回対称模様が3回対称に見えたり,5回対称に見えたり)のは,
軸芯自身の回転(=自転)に,軸芯が沿って転がる回転(=公転)が,加算/減算されることが原因でしょうが,
1回転の内に回転速度が3回/あるいは5回遅くなるというようなことが起こるのでしょう
(もし均一に回転しているなら像が流れてしまい何角形かはっきり認識できないでしょう).
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/73/18258773/img_2_m?1508164222
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お知らせ
10月21,22日に数教研の合同研究会が新宿であります.21日10:00-12:00は講演「万華鏡の不思議」で参加します.万華鏡も作ります.
詳細は以下をご覧ください. http://www.sukyoken.jp/…/the…/wp-sukyoken/img/notice_sep.pdf
お近くの方どうぞご参加ください.
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数学月間SGK通信 [2017.10.10] No.188
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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前号で9月26日に実施した数学月間勉強会(第2回)の様子をご報告しました.第3回は12月12日の予定です.
次回の第3回は,このシリーズ「結晶空間群で数学と物理を学ぼう」のクライマックスです.
多くの方のご参加をお勧めします.
その後の9月末から,公私にわたり色々なことが起こりました.今日は衆院選の公示の日ですね.
私事の方からご報告します.9月29日(金)に入院・手術をし,予定通り,月曜日に退院しました.
土日を含む3泊です.用事が一段落するこの時期まで2年越しで延期していた前立腺肥大の手術です.
お陰様で予定通り順調に終わりました.この手術は,従来の電気メスでは2週間の入院が必要で躊躇していましたが,
ホルミウム・ヤグ・レーザーでは3日の入院で治りも早いのです.
ホルミウム・ヤグというのはレーザー光を発振させる結晶の名前です.
ホルミウム・ヤグ・レーザー光の波長は2.1μmの長波長赤外線で,水に吸収され組織到達深度は0.4mm.
出血もほとんどない素晴しい医学技術です.
手術時間は長時間かかりましたが,患者は頑張りません.お医者さんが頑張りました.
病院食は美味しく11食全部完食.看護師さんはきれいだし,天国の様.でも本当に天国に行かなくてよかった.
さて,私がインターネットもTVも見なかった3日間に,政局好きなマスコミの興味は政権交代ばかり煽っていました.
細川新党のときも2大政党とか言って小選挙区制を煽ったのはマスコミでした.
私たちは,安倍政権は当然総辞職くすべきと思いますが,希望の党に政権交代すればよいと思っていません.
その後,希望が出した踏み絵で皮肉にも民進党が分解してたいへんわかり易くなりました.
福袋のような政党では投票することができませんから良いことです.
この選挙の争点は,憲法を改正するか守るかです.雑音に惑わされないようにしましょう.
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数学月間SGK通信 [2017.10.03] No.187
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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9月26日,14:30から,数学月間勉強会(第2回)を開催しました.様子をご報告します.
第1回は,空間の周期でしたが,今回,第2回のテーマは,有限図形の対称性(点群)でした.
次回,第3回は,周期的な空間に点群を配置して,繰り返し模様の対称性(結晶空間群)を構築することになります.
鏡映面だけから生まれる対称性の例として色々な万華鏡と,
その万華鏡の映像が群を生成する場合としない場合の説明をしました.
参加者の三野さんは,ゾムツールで作った格子を展示しました.
■さて,今回考察する有限の対称図形の例は,皆さまの馴染み深いプラトンの正多面体5種類から始めました.
すなわち,正4面体{3,3},正6面体{4,3},正8面体{3,4},正12面体{5,3},正20面体です{3,5}.
ここで用いた{p,q}の記号は,シュレーフリの記号といい「正p角形が頂点でq個集まっている正多面体」を記述しています.
p,qを入れ替えた{q,p}の図形は,{p,q}と互いに双対と言います.p,qを入れ替えるというのは図形で言うと,
頂点を面に/面を頂点に替えた図形ということです.すなわち,{4,3}と{3,4}は双対,{5,3}と{3,5}は双対です.
互いに双対な図形の対称性(点群)はもちろん同一です.
ある正多面体や,互いに双対な正多面体を組み合わせて(混合して),
頂点を切る(切頂)操作で色々な半正多面体が得られますが,
生まれた半正多面体は,もとになった始めのプラトンの正多面体と対称性(点群)は変わりません.素性は隠せないのです.
周期的空間=結晶空間で,可能な点群の回転対称には制限があります.
許される回転対称は,2回軸,3回軸,4回軸,6回軸だけです.
何故かというと,正5角形や正7角形のタイルでは隙間なく平面が張れないからです.
従って,正12面体(正20面体)の点群は結晶点群ではありません.3次元の結晶点群は32種類あります.
■今回の主題は,点群を2つの群の積に分解して,その群の構成を見る群論手法を説明です.
群Gの中に正規部分群Hを見つけると,「商群G/Hが作れて,G/Hはより小さい群(Gの部分群)G’に同型である」
という準同型定理を応用しています.群Gの要素で注目したある性質が同じとする基準で要素を束ねたものを考えると,
群Gはより小さな群G’に写像できるというわけです.記号で書くと,G/H=G’
これは,群Gの正規部分群をH,部分群をG'として,これらの積で群Gが作れるということです.正確に言うと,
G=H(x)G',G=H(s)G',G=H(・)G'(modH)のどれかのタイプの積で作られます.
(x)は直積,(s)は半直積,(・)は条件積と言います.[数学記号(環境依存文字)は,〇の中にxやsや・が入ったもの]
条件積が現れる最後の群では,G'(modH)は,Hの要素だけ異なるものは同値と思えという条件で群が成り立つという意味.
modは法としてと読みます(時計で13時と1時が同じなのは,mod12で数えるから).
文章での説明は,ここまでにしますが,詳しくは私のブログをご覧ください.
勉強会では,ここで必要になる:正規部分群,準同型定理,直積,半直積の説明をしました.
条件積の具体的な例として,4回対称群4の分解結果を掲載しておきます;4=2(・)4(mod2)
■次回第3回は,11月末あたりを予定していますが,まだ確定していません.
決まりましたらお知らせをします.
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数学月間SGK通信 [2017.09.26] No.186
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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本日は,数学月間勉強会があります.ご興味のある方ご参加ください.
「結晶空間群で,物理と数学を学ぼう」第2回
主催●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
日時●9月26日,14:30-17:00,(開場14:00)
会場●東京大学出版会,会議室
最寄り駅●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ・申し込み●sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
数学月間勉強会の特徴は,物理と数学の両視点から数学誕生を理解できるところで,
特に初心の若い方々にもお勧めします.
第2回テーマ●「美しい多面体と点群,結晶点群の鑑賞」
(注意)東京大学出版会は,線路沿いの留学生会館の敷地内です.東大構内ではありません.
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9月23日に開催された日本数学協会,第15回年次大会で,松浦昭洋(東京電機大学)氏の,
「数学的曲面が拓くジャグリングの世界」と題する講演と見事なパフォーマンスがありました.
数学的曲面とは,球内部,シリンダー内部,円錐内部などの2次曲面や,負曲率が付随する鞍部,
懸垂曲線(円弧で近似)などで,これら色々な曲面に沿って,
面白い運動をさせるジャグリングの披露がありました.
例として,シリンダー内部の面に沿ったボールの運動を,単純化した説明しましょう.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/88/18228588/img_1_m?1506338017
皆さん,A→Bと進んだボールの転がる方向は,次のどちらでしょうか?(1)上昇する/(2)落下する.
意外に見えるのがジャグリングの醍醐味/味噌ですよ.大雑把に言うと,
A点で速度vで転がりだした質量Mのボールは角運動量Ω=MvRをもって,
シリンダー壁に沿って楕円軌道を描きます.従って,(1)が正解です.
松浦氏の正確な計算によると,運動は単振動のようで,上下方向の振動周期はT=√14π/Ω(Ωは定数),
1周期当たりの水平方向の回転数は1.87だそうです.2回転近くするので
楕円軌道が少し崩れて8の字のような軌道を描きます.
ホールインワンで確かにカップに入ったはずのボールが上昇して外に出て来ることがあるそうです.
それはこの現象のせいです.
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数学月間SGK通信 [2017.09.19] No.185
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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お知らせがあります.
数学月間勉強会ー「結晶空間群で,物理と数学を学ぼう」第2回
主催●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
日時●9月26日,14:30-17:00,(開場14:00)
会場●東京大学出版会,会議室
最寄り駅●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ・申し込み●sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
数学月間勉強会の特徴は,物理と数学の両視点から数学誕生を理解できるところで,
特に初心の若い方々にもお勧めします.
第2回テーマ●「美しい多面体と点群,結晶点群の鑑賞」
第1回は空間の周期でした.
周期的空間の代表は結晶内部の世界です.だから,周期的空間は結晶空間とも呼ばれます.
周期があれば,単位構造があるわけですから,結晶空間はデジタル化された空間です.
無限に広い平面を埋めるのに,繰り返し模様が使われます.
ポスターを繰り返して並べ大きなポスターにするのも,平面のデジタル化です.
数学月間勉強会(現在のシリーズ)では「デジタル化された空間」の対称性の数学をテーマにしています.
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■今回のメルマガは,平面のエッシャー風タイル張りの話題です.
サンディエゴの主婦マジョリー・ライスMarjorie Riceが,タイル張りの問題に出会ったのは,
1975年のScientific Americanのマーチン・ガードナーのコラムだった.これは,
古代ギリシア時代から数学者を魅了し続けてきた<<平面をタイル張りできる「タイル」の形
(一つのタイルで平面を分割するテッセレーション)>>の問題です.
私も関心のある問題で,ガードナーのこのコラムを載せたサイエンスは当時読んで手元にあります.
平面のタイル張りは,任意の3角形,任意の4角形タイルでできます.凸7角形以上のタイルでは不可能です.
凸6角形の場合は,タイル張りできるタイルの形が3タイプあることを,ラインハルトが学位論文で証明しました(1918).
難しいのは凸5角形の場合です.1975年時点のガードナーのコラムには,11タイプ
(1967年にカーシュナーが発見した3タイプを含む)が掲載されています.
この問題では,タイプ分けの条件が,とても難しい.連続変形によりどちらのタイプにも属するものがあるし,
出来上がったパターンが全く違うように見えたりもするので,新しいタイプであるかどうかの判定はなかなか難しい.
ライスもこの点にずいぶん苦労したに違いない.
1975年のガードナーのコラムのを引用すると,ーーーーーーーーー
カーシュナーの論文には,平面を埋める凸多角形が他にないことの証明はでてこない.
その「最大の理由」は,編集者の「完全な証明は,かなり大きな本を必要とするだろう」
という序文から読みとられる.---------
そして,実際にまだ新しいタイプがあったのだ.
■以下は,natalieの記事(Quantamagazine)による:
https://www.quantamagazine.org/marjorie-rices-secret-pentagons-20170711/
ライスが五角形タイリングに憑りつかれてから,家族はしばしば彼女が台所のカウンタートップの形を
ひそかにスケッチしているのを見ている.彼女の娘,キャシー・ライスは,「母は落書きしていると思った」と語った.
高等学校で1年しか数学を取らなかったライスは,
誰も知らなかった五角形のテッセレーションパターンの新しい族を発見していたのです.
ライスは,今年の7月2日94歳で亡くなりました.
認知症のため,五角形タイリングの物語がついに完結したのを彼女が知ることはなかったが,
ガードナーの提起から数十年が経過していた.
コンピュータ支援の新証明法で,フランスの数学者 Michaël Rao が,
ライスが発見した4つを含む15の凸型五角形が存在することを証明した.
■フロリダ州生まれのマージョリ・ジック(Marjorie Jeuck),結婚後ライスは,ワンルームカントリースクールに入り,
そこで2学年をスキップし,年長の子供たちと一緒に学びました.彼女は勉強好きでしたが,数学を学んだのは短期間だけです.
貧困と文化的規範のため,大学に進学するなど思いもよらない時代でした.
1945年,彼女は,敬虔なキリスト教徒のギルバート・ライスと結婚し,
ギルバートが軍の病院で働くワシントンD.C.に移りました.後にサンディエゴに移住しますが,
マージョリ・ライスは,幼少の息子と一緒に、その地で商業芸術家としてしばらく働きました.
その子供は亡くなりましたが,他の5人の子供がおります.
ライスにとって,数学は楽しみでした.
「聖書が重要のように,勉強も大切にした」,「他に勢力をつかい,時間を無駄にすることはなかった」
とキャッシーは語っています.息子のダビデは,
「彼女は黄金比とピラミッドに魅了され,膨大な図面と計算でそれらを研究していました」と述べています.
ライスは,子どもたちが学校に通っている間に自分も読めるようにと,
息子の一人にScientific Americanの定期購読を許可しました.
デービッド・スズキの「物の本質」に関するインタビューで,彼女はタイル張りについてのガードナーのコラムを読んだとき,
「誰も以前に見たことのないこれらの美しいものを,見つけられたら素敵と思った」と回想している.
彼女はこのテーマに魅了され,どのタイプのものが他と違うのかを理解しようと努めた.
数学的な背景がないので,独自の記法システムを開発し,数ヶ月で新しいタイプを発見したとも語っています.
発見して驚き喜んで,彼女は彼女の仕事をガードナーに送りました.
ガードナーはそれをペンシルバニア州のモラヴィアン・カレッジのタイリング問題の専門家である
ドリス・シャツシュナイダーに送ってくれました.ガードナーはちゃんと取り次いでくれたのです.良い話です.
一方,ライスは,自宅の誰にもこれの話をしませんでした.
「私のお父さんは,お母さんが何をしているか,発見のことなども全く知らなかった.
私たちの気を引くことが色々あるから,お父さんがパターンを見つけるのに何時間も費やす気持ちなど
全く思いもよらない」と娘は話しました.
一方,シャツシュナイダーSchattschneiderは,ライスの発見が正しいことを確認した.
ライスのアプローチは,マイケル・ラオが新しいコンピュータ支援の証明に取り入れたのと同じもので,
五角形の頂点がタイル張りの頂点で一緒になる可能性があるさまざまな方法を検討することでした.
シャッシュナイダーは雑誌の記事で次のように語っています.目的に合う五角形の角と辺の条件を決定し,
条件を満たす五角形を得ます.この方法で,
ライスは最終的に4つの新しい凸形五角形とほぼ60種類のテッセレーションを発見しました.
ライスは恥ずかしいと講演を断ったが,シャッシュナイダーの招待で,彼女と夫は大学の数学会に出席し,
彼女は聴衆に紹介された.彼女は1996年に "The Nature of Things"ドキュメンタリーでインタビューを受け,
ワシントンにある数学協会のロビーのタイルフロアに彼女の五角形テッセレーションの1つが展示され,
エッシャー風の絵画で彼女の五角形のパターンを記念している.
■この間,他のアマチュアも大きなタイル発見をしました.ソフトウェアエンジニアのRichard James IIIは,
ガードナーのコラムを読んだ後で,1975年に新たなタイプの五角形を発見しました.
2010年,オーストラリアのジョーン・テイラーは,1990年にペンローズのタイル張りを見てタイル張りに魅了され,
非周期のタイル張り(テッセレーション)する奇妙なマルチパートタイルを発見しました.
ライスの娘は「発見のためだけの発見だったが,認められて幸せだった」と語った.
彼女は他の数学者が探していた何かを見つけることができたのだ.
Natalie Wolchover @nattyover
Senior writer for @QuantaMagazine covering physics and related things. I have a Klein bottle that contains the universe.