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テーブル断面の模様

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数学月間SGK通信 [2016.02.16] No.102
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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写真は,なかなか洒落たテーブル断面の模様です.最近入ったレストランで発見しました.
調べて見るとこの断面の孔は向こう側まで貫通しています.どうやって貫通孔を穿けたのでしょうか?
菱形,長方形,わざわざ貫通孔を穿けるのはとても困難な作業です.
そこで,さらによく観察すると,上・下面は貼り合わせて作ったようで,鏡映対称になっています.
片面をこのような溝つきに仕上げて,溝つき側を内側に貼り合わせれば,
このような上・下鏡映対称で貫通孔のある断面を作れます.
面白い断面模様ができるし,これらの溝が貼り合わせのマーカーになるのかもしれない.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/71/17285171/img_0_m?1455501541

このように考察したところで,とても面白かったのでこれをfacebookの記事にしました.
すると,友人から以下のコメントがありました.
「丸太の外周部分を使って背中合わせにしているのですね。
切れ込みはおそらく反り止めではないかと思います」
なるほど,溝は反り止めの効果があったのです.実に巧妙な木取です.
木目を頼りに木取の図を描いてみました.
1本の丸太材から柱を切り出した残りの外側廃材から4枚とれます.
幾何学的にも見事で,経験と知恵に感心します.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/71/17285171/img_2_m?1455501541

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対称性が高いと言うこと

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数学月間SGK通信 [2016.02.09] No.101
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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対称性が高いとか低いとか言いますが,これはいったいどのようなことでしょうか.
正方形の対称性4mmに限定して話を進めます.その他の平面図形についてはブログをご覧ください,

正方形の対称性(点群)は,4mmと表記されます.この記号中の4は,図形の中心にある4回回転対称軸です.
4回回転対称とは,図形を90°回転しても初めの状態と全く変わらないという図形の状態です.
このような操作を4回繰り返すと1回転しますから4回回転軸という名称が付きました.
4回回転対称の対称操作の数は,90°,180°,270°,360°=0°の回転の4つがあります.
正方形の形に対する鏡映対称操作は,横辺の中点を結んだ鏡と,縦辺の中点を結んだ鏡の2枚(青色),
および対角線の方向に2分する2枚(赤色)の合計4枚があります.
前者の2枚の鏡は,4回軸の操作で互いに移り変われ,後者(対角線方向の2枚)の鏡同士も同様です.
しかしながら,前者の鏡と後者の鏡とは4回軸の操作で互いに移り変わることができませんから,
前者と後者は種類の異なる鏡です.そこで,正方形の対称性(点群)の記述では,
4mmというようにm[鏡(mirror)の意]を2つ並べて書きます(注).
(注)正五角形は5mですが,5枚の鏡は5回軸で互いに変換されますので,1種類の鏡(赤の鏡)しかないからです.

点群4mmの対称操作(要素)の数(群の位数と呼ばれる)は,全部で8個になります.
対称性が高いとは,群の位数が大きいことですが,対称要素が次々に減じていく系列のなかで考えます.
これから説明しようとしているのは,それぞれの群の下に含まれる部分群の系統図についてです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/568615/22/17246222/img_4_m?1454724698

正方形の系列で最も対称性の高い4mmには,4回軸と2種類(赤色と青色)の鏡がありました.
回転対称軸の対称性が下がって(4→2→1)行ったり,鏡映面がなくなったりして,
対称性の高い点群から対称性の低い点群(部分群)が得られます.
赤や青の矢印で結ばれたものは,群と部分群の関係にあります.
図表には,それぞれの点群の対称性を一目でわかる図形で表現しました.

対称要素の数(群の位数)をrとすると,各図形の1/rの領域(緑に塗った)を
対称操作で広げて全体を作ることができます.
つまり,対称性の高い図形ほどこの領域は小さくて済みます.

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平面敷き詰めタイルについて

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数学月間SGK通信 [2016.02.02] No.100
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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おかげさまで100号発行になりました.今年は数学月間は11年目です.
7月の数学月間懇話会に向けての情報も,これから掲載していきますので
よろしくお願いします.日本の数学月間は7/22~8/22です.
さて,エッシャーのような繰り返し模様のモチーフをつくる平行6辺形タイルについては
085(2016/10/20)で言及したことがありましたが,再度ここにまとめてみます.

(1)平行4辺形とは下図の(A)のような形です.
これらは,向かい合った平行な辺どうしは同じ長さです.
向かい合った辺どうしを突き合わせて平面を敷き詰めることができます.
向かい合った辺に同じような変形を加えて図案のモチーフを作ります.
エッシャーの作品の2羽の鳥はこのようにして作られました.
    (A)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/28/17260028/img_0_m?1454336049
(2)平行6辺形で平行な辺どうしが同じ長さの図形は下図の(B),(C)のような形です.
これらは,向かい合った平行な辺(同じ色に着色)どうしを突き合わせて平面を敷き詰めることができます.
向かい合った辺に同じような変形を加え,図案のモチーフを作るとエッシャーの様な繰り返す絵が作れます.
私は,ハロウイン魔女を作って見ました.
   (B)         (C)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/28/17260028/img_1_m?1454336049
(3)平行8辺形以上になると平面を敷き詰められないのは何故でしょうか?
平面は2次元のために独立な平行移動の方向は2つで,3つ目の方向は決まってしまいます.
可能な方向は全部で3つで,4つ目の方向は存在できません.
従って,敷き詰め可能なのは平行6面体までということになります.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/28/17260028/img_2_m?1454336049

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大川組子

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数学月間SGK通信 [2016.01.26] No.099
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆さまご機嫌いかがですか.東京でもちょっと雪が降ったりしました.
今は寒いですが,晴天の日が続いています.日本海側はだいぶ雪が降っているようですが
被害などありませんように.

今回取り上げる伝統工芸の「大川組子」は,FBの友達からの情報と
ブログの友達からの情報で知りました.ウエブやSNSで得られた情報がことの起こりです.
写真は,見事な伝統工芸の格子です.寸分も違わない見事な細工です.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/64/17219564/img_3_m?1452480087
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/64/17219564/img_2_m?1452480087

この模様の対称性を鑑賞しましょう.
これらの組子は,正3角形2つでできている菱形の胞(セル)を単位としています.
そして,全体を一貫する格子があり,胞(セル)は格子の中に詰め込まれています.
第二の図の右側コラムに,そこに使われている胞(セル)の中身(5種類)を取り出しました.
これらはどの中身も周期的に繰り返すなら,どれもみんな6回対称(p6mm)になります.
違った中身へと移り変わる境界の状態は,対称性で記述するのは困難です.
その複雑さに,数学がまだ追着かない芸術の深さがあるようです.
胞の中身に変化があっても,格子が同じ一貫したものになっています.
これは,人工結晶などで見られる格子整合という状態を連想させます.

素晴らしい「大川組子」の写真をウエブで探してたくさん鑑賞しました.
「大川組子」の格子は,3角格子(正3角形2つの菱形),正方格子,
六角形格子の3タイプがありました.
多くの工芸作品は,みんなこのうちのどれかで,他の格子は使われないようです.
そこで思い当たったのですが,これは,正多角形のタイル張りが,
正3角形,正4角形,正6角形の3種であることと似ています.
そして,上で述べたように3角形の中に入る胞の中身の対称性は3mです.
正多角形の格子を用いることと,胞の中身も格子の対称性と同じにすることは
安定な釣り合いを考えれば当然のことで,
昔から職人は,寸分もたがわぬ組子を作るために
力のつり合いと対称性を直観的に理解していたことがわかります.

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鏡の世界

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数学月間SGK通信 [2016.01.19] No.098
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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鏡は左/右を逆転する(上/下は逆転しない)のが不思議だという人がいます.
そんなに不思議でしょうか?実物と鏡像とは,上は上に,下は下に,左は左に,右は右に映る
(対応する)のですから当たり前で,不思議でも何でもありません.
それでも,鏡像の世界はなんだか不思議な感じがするのは確かです.
この不思議さはどこに原因があるのでしょうか?実物と鏡像を考察してみましょう.
実物は我々の世界にあり,鏡像は鏡の中の世界にあります.
それなのに,鏡像を我々の世界の中にあるように思うことが,この混沌の原因なのです.

■ちょっと脱線ーーーーー
「太古の時代は,我々の世界と鏡の中の世界の行き来ができたそうだ.
(このようなことは4次元の世界なら実際に可能である.)
鏡の中の生き物とこちらの世界の生き物は仲良く一緒にいたのだそうです.
ある夜,突然,鏡の世界の住人達が我々の世界で好き勝手を始めるようになった.
そして人々は,鏡の中の住人の正体が「混沌」であることに気付いたという.
そこで,黄帝が魔力によって「混沌」を鏡の世界に閉じ込め,
姿や動きも我々の世界の模倣しかできないようにした.」*1)
混沌の中から湧き出るように次々と生まれてきたさまざまなものが宇宙を形作った.
そしてこれを神の技として語り伝えられた.

呪文の効果が切れて,鏡の世界の住人達が勝手に動き出すことが将来起こるかも知れない.
私は幻想怪奇小説が大好きです.そのようなテーマの小説*2,3)
のうちで私が好きなものは「パイプをすう男」です:
一人の男が寂しい一軒家に住んでいます.
毎夜,ランプを卓に置き食事をとる.正面の張出し窓の五枚の窓ガラスに,五つの人影が映る.
彼が食事をとれば人影も同じように食事をとって,
彼が食後の煙草に火をつければ,同じように火をつける.
ガラス窓が五稜形をしてるから当たり前だが,毎夜のことだった.
ところが,ある夜,恐ろしいことが起こった.彼は,煙草に火をつけて
いつものように正面の窓ガラスに映る自分の姿に眼をやった.
すると,その一番左の端の窓ガラスで,五番目の彼の姿が同じように火をつけた.
が,つけたのは,彼のように紙巻ではなくてパイプだった.....」*2)

*1)Turbulent mirror, J Briggs & F. D. Peat, 訳:高安秀樹,高安美佐子
*2)パイプをすう男,M・アームストロング,幻想と怪奇 1(ハヤカワ)
*3)わな,H・S・ホワイトヘッド,怪奇幻想の文学(新人物往来社)
ーーーーーーー閑話休題

■鏡映像の左右反転
x軸に垂直な鏡面があるとします.鏡面内に原点(0,0,0)があり,上方向がy軸です.
この鏡面により,(x,y,z)の点は(-x,y,z)の点に映ります.
つまり,y,zは変わりません(上は上に,左は左に対応)が,xは-xに変わります(前向きが後向きに対応).
この鏡面は,xの符号だけ反転します.だから,右手は鏡に映ると左手に変わります.

鏡像は鏡の世界にあるのですが,我々は,鏡の世界を我々の世界の延長のように認識しようとします.
つまり,鏡の世界の天井と地面を,我々の世界の天井と地面と共通のものと直観してしまいます.
そして,鏡像を我々の世界に連れ込んで,前後の向き(鏡像はx方向が反転している)を,揃えようとします.
上下方向(y軸)は,鏡の世界と我々の世界は共通,前後方向(x軸)は鏡像では反転しているので,
我々の世界に鏡像を連れてくるなら,反転したx軸をそろえるため,y軸(左右方向)が反転してしまいます.

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