数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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数学月間SGK通信 [2016.01.12] No.097
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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先週に引き続き,モアレの美しさを鑑賞ください.
(A)2枚の格子を全く傾けずに(交差角0°)重ねたもの
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/68/17214068/img_0_m?1452512081
(B)2枚の格子を交差角10°で重ねたもの
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/68/17214068/img_1_m?1452512081
(C)2枚の格子を交差角15°で重ねたもの
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/68/17214068/img_2_m?1452512081
(D)2枚の格子を交差角20°で重ねたもの
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/68/17214068/img_3_m?1452512081
(E)2枚の格子を交差角30°で重ねたもの
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/68/17214068/img_4_m?1452512081
2枚の全く同じ格子(3角格子)を重ねます.
3角格子(6mmの対称性)の非対称の領域は0°~30°です.
そこで交差角(回転角)を0°~30°の範囲を実験しました.
言及したい注目点は3つ:
(1)元の3角格子の格子点の集合(並進群A)と,重ね合わせで生じた共通格子点の集合(並進群B)の関係は,
BはAの部分群であることです.
例えば,交差角30°の時の2つの格子に共通な格子点(スーパーラティスという人もいる)は,
coincident-site-latticeで,Fig(E)に示します.
あたかも,結晶の表面構造や高分解能電顕による格子像観察の映像のようです.
(2)連続的に交差角度をかえると,生じた拡大された格子像がズーム・アップして面白いです.
交差角が小さいと拡大率は大きくなります.Fig(B~D)
(3)モアレ現象は,薄膜の干渉で生じる現象にも似ています.
例えば,複写機ドラムの感光体塗膜の厚さにより,界面と表面からの反射光の干渉があります.
望まない干渉縞を除去するそんな特許を昔書いたことがあります.
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数学月間SGK通信 [2016.01.05] No.096
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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新しい2016年がスタートしました.皆様のご健康とご成功を祈ります.
やる素振り,やった振りで国民を期待させ欺くのはもう化けの皮がはがれてきました.
日本にとって2016年は大事な年です.良い年になりますように.
■モアレMoire
2枚の同じグレーチング(格子模様)を重ねたとき,もとのグレーチングの拡大像のようなものが
新たに生じるのを見たことがありますか.これはモアレ現象の一種です.
The superposition of two regular nets produces a secondary enlarged net of the same shape.
2枚の全く同じグレーチング(格子模様)を重ねると,たいてい相互にわずか傾いていますから,モアレ(モワレ)縞を生じます.
これは,2枚のグレーチング模様の重なった場所はよく光を通し明るく見えるためです.
重なる場所の出現は周期的ですから,重ね合わせ像のコントラストに周期的な分布ができます
(ビート,うなりのようなものです).そしてあたかも,グレーチングの拡大像を得たように見えます.
グレーチング相互の傾きがわずかなら生じる像の拡大率は大きく,傾きが大きくなると拡大率は小さくなります.
下の3つの写真は,最近ある店の中で撮影したもので,今回モアレのテーマを思い出したのもこのせいです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_2_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_0_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_1_m?1451706758
3枚の写真は,それぞれ全く同じ2枚のグレーチングが平行移動(傾きはなく)して重なっている状況です.
これらの写真を見ると,2次元的なビート・パターンが生じているのですが,
全く同じグレーチングが平行にずれても,新しいビート・パターンは生じないはずです.
ではなぜこのようなビート・パターンが生じたのでしょうか?
それは,2枚のグレーチングの間にスペース D があるために,観測者から視差(パララックス)があり,
前方のグレーチングよりも後方のグレーチングを小さく見込むためです.
これは,わずかに寸法の違うグレーチングを重ねたのと同じ現象なので,
このためにビート・パターンが生じているのです.
とても美しいので,よくわかるように以下の写真を追加します.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_7_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_8_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_9_m?1451706758
■詳細考察
では,計算してみましょう:ノギスの副尺の原理を思い出すと良いかもしれません.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_6_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_5_m?1451706758
本当のグレーチングの格子のサイズ a
2枚のグレーチングの間隔 D
視点から表面のグレーチングまでの距離 L
後ろのグレーチングの縮小割合 δ/a≡q<1
として,生じるビートの周期 T を求めて見ましょう.
a/(D+L)=(a-δ)/L より δ/a=D/(D+L)
T≡n・a=(n+1)(a-δ)より δ/a=a/(T+a) ⇒ T=a(1/q-1) ← D, L を消去した
あるいは, T=a(L/D) ← q を消去した
さて,この例で生じた新しいビートの周期は, T=5a のように観測されます.
従って,L/D=5 が得られます.あるいは,1/q=6,つまり δ/a=1/6 です.
2枚の同一なグレーチングの間隔Dで重ねたとき生じるビートが,もとのグレーチングのn倍に見えたら,
観測点から表面のグレーチングまでの距離はL=n・D です.これは,距離Lを測定する道具に応用できるでしょう.
ただし,n=1(T=a)はモアレとは言いません.a/2周期の均一なコントラスト分布です.
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数学月間SGK通信 [2015.12.29] No.095
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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いろいろあった2015年もあと数日で終わります.忙しい日々ですがどうぞ
お変わりなくお過ごしになりますよう.皆さまにとって良い2016年になりますように.
毎年7月22日に,数学月間懇話会を実施していますので,ご参加をお誘いします.
来年の計画が決まりましたらご案内いたします.
数学月間を日本数学協会が提唱して今年(2015年)で丸10年になりました.
今年の7月22日の数学月間懇話会(第11回)テーマは,十年目の数学月間(片瀬豊),
フランス数学週間(高窪正明),サッカーボールの対称性を解くトポロジカルシンメトリー(細矢治夫),
繰り返し模様の観賞法(谷克彦),テーラー展開の話(鈴木啓一)でした.
今年も例年のように大変暑い日で,教室付近の構内は自動販売機はないし熱中症も心配されましたが,
高校生5人を含む30人を超す参加があり熱心に質疑もなされました.参加者の過半数が懇親会にも参加されました.
今回のメルマガでは(1)の講演の概要を報告します.
(1)フランス数学週間(高窪正明)
2012年から始まったフランスの数学啓発活動-数学週間(La semaine des Mathématiques)-に付いて,
主にネットで得られた情報を中心に紹介がありました.
数学週間は,国民教育省の企画の下,“現在の生き生きとした魅力ある数学の提示”,
“数学が日常生活で果たしている重要性の提示”,などの五つの目的を掲げ,
パートナーと呼ばれる20数団体が参加して,毎年3月中旬に行われます.
加えて,毎回一つのテーマが決められています.2012年の第一回から2015年の第四回まで順にテーマを記すと,
”女子と数学”,”惑星である地球”,”様々な文化の交差点にある数学”,そして,”数学は,私たちを運ぶ”です.
この数学週間の特徴は,“数学カンガルー”テスト(後述)・暗算大会と国内数学オリンピック大会とが
同時開催されている点でしょう.前者二つは,遊び・身近なものを通じて,数学への関心を高める目的.
後者は,数学を専門として使う人材を養成する目的でしょう.
さて,数学カンガルーとは,1978年,オーストラリアの数学教授が考案した多項目選択式数学(算数)学力テストを,
フランスの二人の数学教授が更に発展させたもの(1991年)で,
現在は,“国境なきカンガルー協会”が,毎年3月の第3木曜日に実施し,
EUを中心に,世界50か国(600万人)以上が参加しています.
テスト問題は,学年・専攻別に12水準で用意され,代数,幾何学,および,
論理の三分野から出題される24問/50分から成り,参加国各国語に翻訳されます.
テスト結果は参加国それぞれで集計され,成績優秀者が表彰されます.
フランスでは,約4,000の学校・約3,000,000の小中高生が参加します.
これら三つの催しの他に,数学週間の期間中,その年のテーマに沿って多くの講演,
多彩な見学会(実習付),そして,教育映画上映会が,
フランス全土の30大学区(教育行政区)・パートナーによって執り行われます.
特に,第一回以来Cédric Villani 教授(2011年 Fields賞)が,活発な講演・啓発活動を行っている事も注目されます.
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数学月間SGK通信 [2015.12.22] No.094
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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本年もあと1週間です.本年お付き合いいただきありがとうございました.
今回は,前回のユニット折り紙の箱の考察の続きです.
■正6角形箱
2つの箱をユニット折り紙で作りました
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/29/17175629/img_0_m?1450707610
どちらの箱も正6角形です.色の見分けのできない(すべて灰色の見える)眼鏡をかけて見れば,
どちらもおなじで6回回転対称です.
左の箱は,6回回転軸の60°回転ごとに,色がオレンジ⇔青と入れ替わります.
このような色の交代と結び付いた6回軸を6’と書きます.
右の箱は,6回回転軸の60°回転ごと(左まわり)に,色は,青→ピンク→オレンジと置換します.
このような3色の置換と結び付いた6回回転軸を6^(3)と書きます[(3)は上付文字です]
左のような,2色交代と空間対称操作との結合はシュブニコフ,
右のような色置換と空間対称操作との結合はベーロフによって研究されました.
空間対称操作(空間群)はフェドロフにより研究されましたのでフェドロフ群と呼ばれるように,
これらの拡張された空間群は,シュブニコフ群,ベーロフ群と呼ばれます.
■シュブニコフ群
左の点群を6’={6',6'^2,6'^3,6'^4,6'^5,6'^6=1}とします.
図形を見てわかるように,色の変化を起こさない点群3={3, 3^2,3^3=1},
[ただし,6’^2=3,6'^4=3^2に注意]が,部分群[実は正規部分群]として含まれています.
したがって,対称操作の集合は2つの集合の和(剰余類展開)になります:
6'=6’・3+1・3
これは,点群6'を色を変えない正規部分群 3を法として6’/3={1,6'(mod3)}に単純化されるということです.
[注)群3を法としてとは,点群3で動くものはすべて同じものと思えということです.
時計は12を法としています.1時と13時は同じ位置に来ます]
■ベーロフ群
右の点群は6^(3),色を変えない正規部分群は 2={(6^(3))^3=2, 1}ですから,
6^(3)/2={6^(3)(mod2),(6^(3)(mod2))^2, 1}
つまり,mod2というのは,2回軸で移るものは同じと思えということで,考察は図形の半分に帰着できます.
例えば図形の右側だけ見ると,青→ピンク→オレンジの置換が起きることがわかるでしょう.
■正8角形の箱
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/29/17175629/img_1_m?1450707610
左の箱は前回登場した正8角形のものです.点群は 8'
この中に含まれる色を変えない部分群は,4
8'/4={8'mod(4), 1} です.
ただし,正8角形のタイルで平面のタイル張りはできませんから,
有限図形の点群としての8はありますが,8回軸が周期的に並ぶと矛盾が起きます.
つまり,結晶点群として8は存在できません.
例えば,正8角形の分子(オクタテトラエン)が,周期的に配列して結晶を作ったとしても,
並進周期はせいぜい4回対称か2回対称でしょう.
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数学月間SGK通信 [2015.12.15] No.093
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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ネットでこのような美しい正八角形の箱を見つけました.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/99/17162399/img_0_m?1450074719
このなかに以下のような図形が見られます.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/99/17162399/img_1_m?1450074719
一番外側の大きな正8角形の内に一回り小さな正8角形が
含まれています.そしてその正8角形の内に,さらに一回り小さい
正8角形が見えます.
この調子で,内部に作図を続けていくなら,どんどん小さな正8角形が
含まれて行きます.そのようなどんどん繰り込まれていく図形は
フラクタル図形です.
一回り小さくなる度に,その相似比はどのくらいでしょうか?
外側周は直角2等辺3角形でできていますからすぐわかると思います.
1:√2-1 が答えの相似比ですね.
外側を以下のように星形にすると
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/99/17162399/img_2_m?1450074719
レオナルドの星形8角形が得られます.
外側の星形と内部の星形の相似比は,やはり
1:√2-1 です.
老婆心ながら,この比率を√2+1倍して
√2+1:1
が相似比だと答えても正解です.
■私も折り紙でこの箱を作製してみました.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/99/17162399/img_3_m?1450104156
以下のサイトに作り方が出ていますのでご参考まで.
同じ部品を作っておいて組み立てるこのような作り方を
ユニット折り紙というそうです.
正方形の千代紙が8枚必要です(フタ側の半身で).
ただし,中心の白く見える部分は千代紙の裏側ですから
これが嫌な方は両面印刷の千代紙か,贅沢ですが
背中合わせで2枚重ねの千代紙を使うと良いでしょう.
折り紙では,45度や45度の半分の角度は簡単に作れます.
今回の箱作りでもそのような折り方(下写真)を使います.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/99/17162399/img_4_m?1450104156
■作り方は以下のサイトを参考にしました
https://www.youtube.com/attribution_link?a=CJItUT4Igow&u=/watch?v=RbSiETOOac4&feature=share
八角形の折り紙箱 1/2
http://origamisho.com/archives/1412
セツの折り紙処