数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.11.18] No.038
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆正3角形の対称性
正3角形は,中心に回転軸を立て右回りに120°回転しても,
始めの状態と全く同じで,回転したかどうかわかりません.
この回転を続けて2回行い240°の回転になっても同様です.
120°の回転を3回続けて行うと1回転して始めの状態に戻ります.
つまり,正3角形には3回回転対称があります.
このような回転軸を3回軸といい,記号は3と書きます.
その他に,正3角形は鏡映対称があります.図に示した赤い線が鏡映面です.
ここにある3枚の鏡映面は3回軸の作用で互いに移り変われるわけで,
全部同じ性質です.従って,正3角形の対称性は,3回軸と1種類の鏡映面があり,記号では3mと書きます.
◆正4角形の対称性
正3角形の場合と同様に,こんどは中心に4回回転軸があります.記号は4です.
正4角形を見ると鏡映面が4枚あることがわかります.図で赤線で描いた2枚と
オレンジ線で描いた2枚です.4回軸によって,赤い鏡映面どうしは互いに移り変われるし,
オレンジ鏡映面どうしも移り変われますが,赤とオレンジの鏡映面は,互いに移り変わることができません.
従って,今度は2種類の鏡映面があることになります.正4角形の対称性は,記号で4mmと書くことに注意してください.
◆同様に,正5角形,正6角形の場合は,図のようになることを各自確かめてください.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/42/16226942/img_0?1414074741
◆対称図形の重ね合わせ
正3角形の部品を複数重ね合わせると,一般に,全体の対称性は低下するが
配置の仕方により全体の対称性が上昇することもある.
このようなことをとり上げている本は見かけませんが,とても面白い現象です.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/01/16227001/img_0?1414076174
◆対称性の重畳
正6角形は正3角形の対称性を含んでいますから,
正6角形と正3角形を鏡映面が共通になるよう重ね合わせる(下左)と正3角形の対称性が残ります.
正3角形と正6角形の回転軸をそろえて,鏡映面が共通でないように重畳すると,
結果は3回回転対称だけが残ります(上左)
他の図も同様ですので,各自確認ください.正6角形と正5角形の重畳の場合は,
6回回転対称と5回回転対称に含まれる下位の対称性(共通な部分群)はないので,
鏡映面の一致がなければ,対称性はなにも残りません(上右).
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/01/16227001/img_1?1414076174
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.11.11] No.037
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ことしは結晶学の生誕100年にあたります
結晶にX線ビ-ムを照てると,
結晶がブロック積みのような周期的な構造なら回折が起こります.
(結晶内部の繰り返し構造の周期と,X線の波長が好都合なことに同程度だったのです)
そう考えたのはラウエでしたのでこの実験をラウエの実験と言います(1912年).
X線がレントゲンにより発見(1895年)されて間もない頃でした.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/23/16237223/img_0?1414563100
結果として得られたラウエの回折像には,その原因になった結晶内部の対称性が反映されているべきです.
これは「キューリーの原理」という因果律です.
回折像を撮影して,小さくて目に見えない(~nm)結晶の内部構造の解析をしたのがブラック親子(1913年)です.
レントゲン(1901),ラウエ(1914),ブラック(1915),それぞれノーベル賞をもらっています.
◆結晶世界はデジタル
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/60/16237160/img_0?1414501713
大小いろいろな結晶がありますが,写真は全部,水晶の結晶です.
結晶個体は,いろいろな種類の結晶面で囲まれており,
その結晶面の大きさも結晶個体により様々です.
しかし,同じ組み合わせの結晶面どうしのなす角度は
どの結晶個体で測っても,同じになります.
例えば,黄色い面と青い面のなす角度は(各面に立てた垂線のなす角のこと)
どの結晶で測っても同じになります.⇒面角一定の法則(1772)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/60/16237160/img_1?1414501713
アウイ(1783)は,
「結晶は小さな単位胞がブロック細工のように積み重なって出来ている」
と考えました.→すなわち,結晶世界はデジタルな空間です!
それなら,現れる結晶面(上図の青い線)は格子点を載せている面なので,
面の傾きは有理数になります.→有理指数の法則(1783)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.11.04] No.036
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆平面のデジタル化
写真フィルムは連続な平面ですが,デジカメの感光面は半導体のドットが並んでいます.
人間の網膜も視細胞が配列しているデジタル化された平面です.
最近の交通信号は円の中に発光ダイオードのドットが配列しています.
これらが平面のデジタル化の例です.結晶も原子や分子が詰まった単位ブロック(胞)があり,
これがきちんと積み重なりできている周期的な構造で,デジタル化された空間の例です.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_0?1414413690
◆平面のデジタル化の様式
無限に広がる平面の何処も均一なようにデジタル化する(ドットを配列する)なら,
規則正しく周期的な構造になります.交通信号の円内は均一なデジタル化はできません.
平面のデジタル化は対称性の観点からどのように分類できるでしょうか?
結晶学でブラベ格子というものはデジタル化様式の分類にほかなりません.
そもそも結晶空間とはデジタル化された空間のことです.
(注)周期的なドットの配列は「格子」と呼ばれます.
格子の様式分類は,研究した人の名前をつけて「ブラベー格子」と呼ばれます.
2次元の「ブラベー格子」は5種類あることをこれから説明します.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_3?1414413690
まずは,1次元の周期
2次元の周期は2つのベクトルの組み合わせでできる.
対称性から分類するとこれらの5つのタイップがある.
これらから格子を作ったものが以下の図です.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_4?1414413690
上図に示した緑色のタイルは「W-S(ウイグナー・ザイツ)胞」といいます.
このタイルを赤い格子点に配置すると平面がタイル張りされることを確かめましょう.
さて,これらの周期的平面は,格子点(周期的な平行移動で生じる点)
をすべて同値と考えると,1つのタイルの中に引き戻せます.
以下の図には,それぞれのタイルの対称要素を記入しておきました.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_8?1414413690
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/31/16234231/img_7?1414413690
上図左は,タイルの対称性が一目瞭然のW-S胞.右は,単位胞タイルです.
(注)単位胞の図を見るとわかるように,これらの5つはすべて単位胞に格子点が1つ含まれる1格子点胞です.
上段右の菱形胞を用いずに,面心型の2格子点胞を用いるのが慣例となっていることを申し添えます.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.10.28] No.035
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今年の「数学月間懇話会」で松原望さんから「民力指数」についての
講演がありました.指数といえば「消費者物価指数」などが有名です.
数学で指数というのは桁(比率)の表現なので,例えば,基準年の物価
に対して何倍の変化があったかという「消費者物価指数」を,
指数というのは適当でありましょう.
しかし,「民力指数」の指数の意味はこれとは違うようです.
地域の「民力指数」とは,正の数値(スカラー)で,その地域の
生産・消費・文化,および,人口などの基本指標の関数として
(26種の経済統計量の関数として)定義されます.
これは朝日新聞が30年以上前に発案した定義だそうです.
地域の「民力指数」は,地域の経済活動力の表現になります.
都道府県に対する「民力指数」は全国を1,000に,市町村に対する
「民力指数」は全国を100,000になるように規格化します.
「民力指数」は数学的には測度であるので加法的であることが
松原さんの講演で指摘されました.
地域Aと地域Bの合併の「民力指数」の試算も合理性があり
色々な利用が期待できます.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.10.21] No.034
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆黄鉄鉱の結晶粒の外形には,多面体がいろいろ現れることを,
028号で述べました.整理すると下図のようです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_0?1413100917
さて,この図の中に正12面体や正20面体の外形が見られるようですが,
結晶(周期的な内部構造をもつ)では,5回対称軸は存在できず,
5回対称のある正12面体や正20面体は外形にも生じないはずです.
詳しく調べてみると,黄鉄鉱の正12面体のような5角12面体は,
(2,1,0)面で囲まれているようです.→◆ミラー指数
両者の多面体で二面角の比較をしてみましょう:
---------------------
黄鉄鉱 126.89° (2回軸を挟む二面角)
正12面体 116.57°
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
黄鉄鉱の外形(5角12面体)は正12面体ではありません.
◆ミラー指数
ミラー指数とは面の傾きの表示です.
下図のブロックのサイズは,x,y,z各1単位
(x,y,zの各単位は等しくなくても良く,斜交軸でもかまいません)
例えば,(2,1,0)面の,x軸,y軸,z軸との切片は,1/2,1,∞です.
切片の逆数の比をとると,ミラー指数 2,1,0 が得られます.
結晶は単位ブロックが積み重さなった周期的な世界です.
周期的な世界(格子点が並んだデジタル世界)の格子点を載せた
面の傾きは有理数ですから,すべての結晶面のミラー指数は整数となります.
http://sgk2005.sakura.ne.jp/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=88
周期的な世界に5回対称軸は存在できませんので
結晶(周期的な内部構造を持つ)は,正20面体の外形になることはできません.
(注)“準結晶”には5回対称がありますが,周期的な世界ではありません.
◆黄鉄鉱の6面体,5角12面体と準結晶(正12面体)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_1?1413100917
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_2?1413100917
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_3?1413100917
◆柘榴石garnetも立方晶系の結晶構造ですので
外形もさいころのような対称性を示します.
菱形12面体~24面体(これらは正多面体や半正多面体ではありません)
の晶系の変化があります.
http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/bb/chigaku/minerals/img/2-32.jpg
写真はwebで拾った岩手県和賀仙人鉱山産の柘榴石結晶です
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/36/16196636/img_0?1413101685
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.10.14] No.033
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大阪大学理学部数学教室は,
現代数学の様相と数学研究の実際,自然科学や社会科学に及ぼす数学の影響,
文化としての数学の在り方などについて,多角的な視点から易しく解説する公開講座を,
高校生を対象に夏休みのこの時期に開催しています( オープンキャンパスも同日実施されます).
まさに数学月間の模範になるイベントで,毎年,杉田洋教授より情報を頂きSGKのwebに掲載しています.
今年のテーマは,“多面体の不思議”でした.
2014年8月12日(火),10:00~12:00
会場:大阪大学豊中キャンパス 理学研究科 D棟 D307教室
講師:村井 聡(情報科学研究科情報基礎数学専攻 准教授)
毎年,興味深いテーマが選ばれ,私も参加したいと思いつつまだ参加できずにおります.
今回のイベントでは受講生が殺到し,準備した教室に定員の2倍近い人(約100人)が
集まり,来年は教室の選択を考える必要がありそうと伺っております.
(以下は私の勝手な解説ですみません).
-----
多面体はとても古くから考えらてきた図形で、紀元前のギリシャ時代には既にその性質が調べられていました.
多面体で基本的な定理は,オイラーの定理V+F-E=2(3次元)が有名です.
これを使うとプラトンの正多面体(凸多面体)が5つというのがすぐ証明できます.
正多面体というのは,面が1種類の正多面体でできており,どの頂点のまわりの状態も同一なものです.
正多面体の記述は,定義の本質を捉えているシュレーフリの記号を用います.
正p角形が頂点にq個集まっている(同じことだが辺がq個集まっている)状態は,{p,q}と記述されます.
3次元の多面体は,面が3個以上集まらないと作れませんし,面が正3角形の場合には,
6個集まると平面になってしまいますので,正3角形の面をもつ凸多面体は,{3,q},q=3,4,5しかありません.
q=3の場合は正4面体,q=4の場合は正8面体,q=5の場合は正20面体です.
全ての面が合同な正3角形であるが正多面体でないものまで数えると8種類になり
これらをまとめてデルタ多面体と呼びます.
1種類で空間を隙間なく充填できる正多面体は立方体だけですが,
2種類の組み合わせで空間を充填できる正多面体は,正4面体と正8面体です.
結晶学では良く知られていることですが,面心格子と体心格子というのも立方体と同じ対称性を持ち,
それぞれのウイグナー-ザイツ胞(デリクレ胞とも言う)は,それぞれ菱形12面体,切頂正8面体になります.
数学と諸科学[科学や造形]の関わり合いで現れる多面体の性質は,非常に興味を惹く話題です.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.10.07] No.032
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「化学の日」10月23日は,化学4団体(日本化学会,化学工学会,日本化学工業協会,新化学技術推進協会)が
昨年制定しました.その日を含む月曜日から日曜日までの1週間が「化学週間」です.
もちろんこれはアボガドロ数6.02×10^23に因んでいます.
これも米国が先でNational Mole Foundationが10月23日をMole Dayと定め,
10月23日6時02分にイベントを行うなど色々な活動が盛んだそうです.
日本の「化学の日」初年度の今年は産官学一体となって,化学の普及活動が国民亭イベントとなるように
呼びかけています.我々の「数学月間」もこのような取り組みが必要で,「化学の日」の経緯は手本になります.
*****以下は,化学と工業,Vol67-9,2014,玉尾皓平氏(日本化学会前会長)の記事からの抜粋です*****
◆2年前の会長就任時に提案した2つの具体的提案を紹介します。
「全国一斉オープンキャンパス」:これが 「化学の日」と直結する提案です。
各大学. 研究機関や化学企業で独自に行っているオープンキャンパスやオープンファクトリーを,
「化学の日」「化学週間」にできるだけ 曰程を合わせて一斉に実施いただくことで,
国民的イベントとして認知度を高めようとの取組みです。
「『夢・化学-21』の全国統一ブランド化」: 「夢・化学-21」キャンペーンの強化策として,
そのロゴマークを意匠登録し,上で述ベたようなこれまでのすべての化学啓発活動にロゴマークを付して
ビジビリティの向上を目指すものです。
いずれもいわば全国区の活動ですが,期間限定型で集中的に盛り上げる企画と,
通年活動型で全国津々浦々いつでも「夢・化学-21」ロゴマーク付きのイベントが行わ れている,
という性格の異なる活動を2つ準備し,足並みをそろえて最大の効果を狙おうとする点が特徴です。
提案4団体だけではなく,経済産業省や文部科学省,さらにはマスコミ関係者の賛同も得ており,
産学官一体となった初めての本格的な取組みで,化学の啓発活動,
市民権獲得にとっての決め手となるものと期待しています。
◆「化学の日」「化学週間」のイベントは?
「化学の日」を長く定着させるためには. 活動現場に新たなロードを課さないことが 重要と考えます。
新たに企画するのではな くて,現在行われているイベントの開催日 をできるだけ「化学の日」「化学週間」
の日程に合わせていただくことで.最大の効 果を上げようとの考えです。
すでに,各支 部や産業界に対して,日程調整のご協力を お願いしています。
ただ,初年度の今年は,「化学の日@開成学園」「化学週間@東京大 学」「子ども実験ショー@近畿」
などのキックオフイベントを企画中です。
また,各種一般紙や月刊誌「ニュートン」「化学」「現代化学」「子供の科学」などへの
PR記事掲載の企画も進んでいます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.09.30] No.031
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
地震に関心が高まっていますが,地震は地殻の破壊現象ですから
いつポッキリ折れるか予言できないように文字通りの予知はできません.
◆地震の規模(マグニチュード)M
まず,地震のマグニチュードMとは何でしょうか?
これは地震のエネルギーEの対数です.
大体,地震のエネルギーの大きさの桁と思ってよいでしょう.
リヒターが当初発案したマグニチュードの定義は,
震央から100kmに設置したと仮想した,特定な型の地震計で
観測される最大振幅の対数でした.しかし,現在では
もっと理屈に合ったモーメント・マグニチュード
(あるいは気象庁マグニチュード)が採用されています.
◆可能な最大地震
地震で解放されるエネルギーは,生じた断層面の面積と
その平均変位とその付近の地殻の剛性の積です
(大雑把にいえば生じた断層の長さに比例します).
地殻に溜まった歪エネルギーが地震で解放されるわけですが,
断層の長さが長い方が解放されるエネルギーは大きいし,
地殻の剛性が大きいほど大きな歪エネルギーが蓄えられます.
これらから起こりうる地震の最大エネルギーを見積もると
M9.5程度と考えられています
(1960年のチリ地震ではM9.5が観測されている).
◆べき乗則
地震の規模(マグニチュード)Mと発生頻度(回/年)n
の間に n=10^(a-bM) の関係があります.
これはグテンベルクとリヒターが発見しました.
a,bはその地域の地殻の特性を表す定数でが,b≒1ですので
地震のマグにチュードが1つ大きくなるごとに,地震の回数は1/10に減ります.
だからこれをべき乗則と言います.
地震の規模Mには最も発生しやすい典型というのがありません
(釣鐘型の正規分布ではありません).
大きな地震は少なくなりますが,M=9あたりも起こり得るし,
そんな巨大な地震に見舞われると壊滅的なダメージです.
従って,頻度は小さいけれど致命邸なダメージとなる巨大地震が起きても
被害が最小となるように備える必要があります.原発は止めましょう.
クリーン・ルームのチリのサイズ分布もべき乗則だと言われています.
もし正規分布のように頻度の高いサイズがあるなら
そのサイズのチリの発生に注目した対策ができるのですが
べき乗則では特別な対策は困難です.
◆分布関数を求める実験
凍ったジャガイモを投げて砕き,破片のサイズ分布を調べた人が居ます
(南デンマーク大,1993年).ここでもべき乗則が確認されました.
スパゲッティやクラッカーを砕くとどのようなサイズ分布になるか
実験した話が今年の数学月間懇話会で中西達夫さんからありました.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.09.23] No.030
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今年のとっとりサイエンスワールド2014(矢部敏昭会長)が
9月21日(中部,倉吉)で無事終わりました.例年のように
8月31日(東部,鳥取),8月2日(西武,米子)の計3回開催され
各回,1000人に達する参加者が集まりました.
スタッフも先生方100人+高校生ボランティア60人の規模です.
8年目ですが,小さい子供から,両親,お年寄りまで,楽しみに集まる
算数イベントに定着しました.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/81/16147181/img_0?1411477332
◆万華鏡は,各会場でそれぞれ異なる3角形の鏡の組み合わせを作りました.
西部110人,東部160人,中部110人用意しました.
鳥取でやったけれど倉吉にまた来たという小さい小学生もいたり,
彼女はすっかり内容を理解していてもうベテランです.大したものだ.
鏡の組み合わせが作る3角形が変われば,違うタイル張り模様が見られることを
知ることが眼目なので,色々な鏡の組み合わせの万華鏡や,
多面体が立体的に見える万華鏡などの展示物も用意して行きます.
これらの内で,2枚鏡の万華鏡の人気が高く
来年のリクエストとして聞いておきました.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/81/16147181/img_2?1411477822
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/81/16147181/img_3?1411477822
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.09.16] No.029
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読者の皆様へ.
8月19日(025号)からまぐまぐの遅配が続いています.
特に,026号,027号はまだ配送されていない方があるようです.
届かない方がありましたら,ご一報ください.
これらの号では多面体に関する話を続けています.
メルマガ更新は毎火曜日の朝7:00に行っておりますので,
以下のサイトでもご覧になれます.
http://blogs.yahoo.co.jp/tanidr/folder/545271.html あるいは
http://sgk2005.sakura.ne.jp/htdocs/?page_id=32
----------
◆4次元の正多面体は6種あるのですが,
3次元以上が見えない私たちには理解が困難です.
色々な図や説明が種々の本やwebで見られますが,どれもしっくりしません.
結局,4次元の正多胞体6種を最初に見つけたシュレーフリの説明が
最もわかり易いようです.(コクセター[幾何学入門]や
ヒルベルト,コーン・フォッセン[直観幾何学]に載っています).
さて,このようなものを記述するシュレーフリの記号というのは
大変良くできています.この記号の仕組みを理解することが結局
4次元の理解に直結します.シュレーフリの記号を単純な図形で見てみましょう.
◆3次元の正多面体の例
面(2次元)が頂点(0次元)で3つ以上集まらないと立体(3次元)はできません.
シュレーフリの記号は以下のようです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/41/16122741/img_0?1410817831
(1)正4面体 {3,3}←シュレーフリ記号
正3角形の面(2次元)が頂点(0次元)で3つ集まっている.
(2)正6面体(立方体) {4,3}←シュレーフリ記号
正4角形の面(2次元)が頂点(0次元)で3つ集まっている.
正多面体が記述の対象ですから,どの頂点まわりの状態も同じです.
◆4次元の正多面体の例
胞(3次元の多面体)が辺(2次元)で3つ以上集まらないと
4次元の立体はできません.
シュレーフリの記号は以下のようです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/41/16122741/img_1?1410817831
(1)正5胞体 {3,3,3}
3次元正4面体{3,3}が辺(2次元)で3つ集まっている.
(2)正8胞体 {4,3,3}
3次元正6面体{4,3}が辺(2次元)で3つ集まっている.
正多胞体なので,どの辺まわりの状態も同じです.
(参考) {4,3,4} というのはどのようなものでしょうか?
これは,3次元正6面体が辺のまわりに4つ集まっている状態ですから
角砂糖を頂点を合わせて無限に積み重ねたような状態.
これは3次元空間の中で無限に続く立方格子です(3次元で納まってしまいます).
◆双対図形について
3次元の正多面体{p,q}の双対図形は{q,p}です.
{p,q}:正p角形の面が頂点でq個(辺がq本)集まっている.
この図形で面を頂点に変えた図形は,{q,p}となります.
同様に,{p,q,r}の双対図形は{r,q,p}になります.
◆4次元のイメージの万華鏡
雰囲気だけです(色々工夫していますが残念ながら困難なようです).
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/41/16122741/img_2?1410817831
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/41/16122741/img_3?1410817831