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笑い話と計算

こんなクイズを何処かで聞いたことがありませんか?
1人10ドルのホテルに3人が止まり,30ドル支払いました.ホテルフロントが5ドル値引きしてくれ,女中を介して返金してきましたが,途中で女中が2ドル抜いたので,3人に渡ったのは1ドルづつです.結局,それぞれ9ドルづつ支払ことになり,全員でホテルに27ドル,女中が2ドル持っています.残りの1ドルはどこに消えたのでしょうか?
ややっこしくて変な気分ですが,お判りでしょう.27ドルと2ドルを足す意味は何でしょうか?

このような計算の笑い話は,落語のツボ算にも出てきます.買ったツボを返品するときに,支払った金額と返品するツボの値段を足してしまうのです.
数学の方程式を作るときに,左辺に足すか右辺に足すかよく意味を考えて式を作らないと,このようなとんでもないことになります.

落語の時そばでは,そば代金の16文を数える間に,8のときに時間(八つ)を混ぜ込むことで,1つスキップし金額を1文ごまかします.与太郎が真似をするときは,時間が(四つ)で,逆戻りし損をしてしまいます.これは,お金と時の呼び名という単位が異なり足すことのできないものを足すトリックです.我々ももう少し複雑な問題ではありますが.方程式を立てるときに単位の異なるものを足してしまうような式を立ててしまうことがよくあります.笑い話ではすみません.

話のついでにもう一つ,落語に出てくる不正な計算について述べましょう.落語花見酒では,酒だるを担いで売りに行く2人の間で,お金をやりとりしているうちに,お酒が全部なくなってしまう話です.これは売上金の公金横領に当たるわけですが,お金はお金でも,公金と自分の金というカテゴリーの違うものの区別ができなかったために起きた笑い話です.

最初の例に戻ると,ホテル取り分は25ドル,女中取り分は2ドル,客支払い分は3x9=27ドルで何の不思議もありません.

■以上をブログに掲載した時に,読者の方から「三方一両損」の話が出ました.
江戸っ子の職人が3両入りの財布を拾って,落とし主に届けると,落とし主はいらないと意地を張る.どちらも江戸っ子らしくていいですね.
大岡越前守が,1両出して4両にし,2両づつ分けさせる名裁きをします.
拾ったまま届けず手元に置けば3両ある.届けてもらって受け取っておけば3両ある.
奉行も関わらなければ1両出さずに済む.しかし,結局3人とも1両ずつ損をしたというのです.


■今回もう一つ,35頭のラクダと3人の兄弟(アラビア数学奇譚,3章より)を追加しましょう.

35頭のラクダを,父の遺言によれば,長男Aが1/2,次男Bが1/3,3男Cが1/9に分けろというものです.
かぞえびとペレズミがラクダをつれた友人と通りかかります.

ペレズミは言います「ここにある友人のラクダを上げますから36頭にしましょう」
36頭で計算すれば,すべて割り切れて,A,B,Cの3人のすべてが得をします.
なぜなら,
35/2<36/2=18
35/3<36/3=12
35/9<36/9=4

その結果,18+12+4=34頭ですみますから,1頭は友人に返却して,余った1頭は相続の問題を解決したペレズミがもらいます.

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窓内の円

2019.02月号より,文 Юрий Белецкий +図 Алексей Вайнер

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


■オデッサ州立フィルハーモニー協会(建築家-A.I.ベルナルダーツィ)
の窓は,円と弧のパターンで装飾されています.
この窓は,すばらしい幾何学問題を提供しています.

白板に描いたように,小さな3つの円の中心$$O_{1},O_{2},O_{3}$$は1つの直線上にのります.証明してください.

 

 

 

 

 

 

 

 

■この問題をみて思い浮かべるのは,以前掲載した以下の2つの記事です.
アポロニウスの窓,アルべロス(靴屋のナイフ)という形のなかに面白い幾何学世界があります.
反転の利用ーパップスの定理
https://note.com/sgk2005/n/n56056054e23c

インドラの網と反転円
https://note.com/sgk2005/n/nec1396b13bd4


アルべロス(下図のオレンジ色の形)の中で,パップスの定理が成立しています.しかし,円$$ω_{2}$$と円$$ω_{1}$$の中心を結ぶ線は,水平ではありません.

 

 

 

 

 

 

いま問題になっているオデッサの窓内の円では,$$O_{1},O_{2}$$を結ぶ直線は水平になるのですが,その原因は,外側の大きな円(半径$$r$$)内で重なり合う2つの円(半径$$ar$$)に接するように,半径$$xr$$の円を決定することによります.しかる後に,この半径$$xr$$の円に接するように,半径$$yr$$の円を描くと,この円の中心は半径$$ar$$の中心線上に存在するようです.
問題のオデッサの建物図では,$$a=2/3$$(大きな円の直径を3等分する位置に柱がある)のようですが,実は,同じ半径の円が重なっていれば(任意の$$1/2<a<1$$)成り立つようです.

 

接する4つの円の半径の間にはデカルトの定理という式が成り立ちますが,それを計算するのは容易ではありません.幾何で解くことにしました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

円の接する条件を図示すると,辺の長さが,$$1-x,1-a,a+y,x+y$$の4角形になります.4角形の対角線は,$$a+x,1-y$$です.この条件は関係する円が接するための条件です.$$1-x$$の辺が垂直なのは対称性から明らか,半径$$yr$$の円の中心と,半径$$ar$$の円の中心を結ぶ$$a+y$$も垂直として,$$x$$と$$y$$を解くと,

 

この$$x,y$$を用いて,互いに対向する辺の長さを求めると,互いに等しいことが証明でき,矛盾は出ません.

 

従って,この4角形は長方形になり,辺$$x+y$$は水平であることがわかります.

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桃子さんよりの解答の投稿

この式を証明していきたいと思います。n桁の数字を$$(x_n),(y_n),(z_n)$$とすると、

$$ (x_n)=(10^n-4)/6 $$

$$(y_n)=(10^n)/2$$

$$(z_n)=(10^n-1)/3$$

と表せる。元記事より

$$ x_{n}^{3}+y_{n}^{3}+z_{n}^{3}=10^{2n}x_{n}+10^{n}y_{n}+z_{n} $$


を証明すれば良いことがわかる。

$$x_{n}^{3}+y_{n}^{3}+z_{n}^{3}=((10^{n}-4)/6)^{3}+(10^{n}/2)^{3}+((10^{n}-1)/3)^{3}$$

$$ {10^{2n } }x_{n}+10^{n}y_{n}+z_{n}=10^{2n}(10^{n}-4)/6+10^{n}10^{n}/2+(10^{n}-1)/3 $$
$$=10^{3n}/6-10^{2n}/6+10^{n}/3-1/3$$

ゆえに

$$(x_n)^3+(y_n)^3+(z_n)^3={10^(2n)}(x_n)+(10^n)(y_n)+(z_n)$$


が成立する。

大まかなものだとこういう感じです。

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菱形多面体

菱形30面体とサッカーボール(あるいはフラーレン)の関係の続編です.
菱形は正多角形ではありませんから,菱形多面体は正多面体ではありませんが,正多面体や準正多面体と密接な関係がありますので,菱形多面体に集中して見直しましょう.菱形12面体と菱形30面体があります.それぞれの菱形多面体は,準正多面体6・8面体と12・20面体の双対多面体として得られます.
(注)双対多面体というのは,面と頂点を入れ替えて対応させて作る多面体です.例えば,準正多面体の6・8面体は,正6面体の面と正8面体の面よりなり,正6面体の面を対応させた頂点と,正8面体の面を対応させた頂点とで,菱形12面体の頂点は構成されています.

 

(美しい幾何学p.21より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■菱形12面体は,空間を隙間なく充填できる立体です.菱形12面体の面を合わせて空間を充填すると,立方面心格子の配列ができます.

 

 

(美しい幾何学p.61より)

 

 

 

 

■菱形12面体の見える万華鏡を作る

 

 

(美しい幾何学p.44,45より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて,菱形12面体の菱形面の対角線比は,1:√2であることを確かめてください.
菱形30面体の菱形面の対角線比は,黄金比2:1+√5であるを確かめてください.


■IQライトと呼ばれるランプシェードの話が,kvantik(2019.07)に載っていました.重さはたったの100グラムで,30枚の薄いフレキシブルプレートを組み立てて作ります.各プレートは菱形の形状で,4つのフックがついていて組み立てます.このデザインは,デンマークのデザイナーHolger Strömによって1973年に作られたそうです.
名称のIQはInterlocking Quadrilateralsーー連動した四角形の略.
菱形面が5つ集まる場所と3つ集まる場所があることに注意して,組み立てましょう.

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膜の振動モード,クラドニ図形

 
カバー写真は私のバイオリンですが,低音域に共鳴点があり振幅が大きくなり音が開くような気がするのです.バイオリンの音質が何とかならないかと思って,昔,高い本だと思いながら気まぐれで買った「楽器の音響学」安藤由典という本が手元にあります(残念ながら役には立ちませんでした).この本のp.132に,バイオリン胴板の振動モードの図(小橋,時田,日本音響学会誌,Vol.8,p.15,'52より引用したもの)があります.本自体古いし引用文献も大変古いので,もっと詳細な実験がその後どこかに発表されていると思います.特に調べていませんので,もしお気づきの方おられましたらお教えください.

 

バイオリンは駒から1cm付近の弦を弓で振動させ,駒から指板上の指で押さえた点までの長さの弦が振動し,その振動を胴で共鳴させます.共鳴箱の役割が重要です.定在波の振動の節となる場所は節点,2次元の面ですから,定在波の振動の節点は節線となって領域を取り囲んでいます.
振動モードの図で白い部分と斜線部分は振動方向が逆になっているので,斜線との境界線が節線です.周波数が上がるにつれて細かい領域に分かれて行くのは納得できるでしょう.楽器は特別な共振域ができないよう設計されあのような形になるのだ思いますが,ある音域が共振気味に耳元で鳴るのは良くありません.私はそれを見抜けずに迷った挙句良くない方を購入してしまいました.


■ここで,クラドニ図形の次の動画をご覧ください.


振動の腹では粉末は払いのけられ節線に集まります.この実験で見られる興味深い図形をクラドニ図形といいます.
振動から生じる節線についてのさまざまな疑問は,200年以上にわたって科学者を魅了してきました.1809年,クラドニがパリを訪問した後,フランス科学アカデミーはコンテストを発表しました.その目的は,「弾性表面の数学的理論を構築し,それが実験データとどの程度一致するかを示すこと」でした.この賞は1816年にソフィー・ジャーメインが受賞しました.その数学的モデルは,少し後のグスタフ・キルヒホフによって完成しました.

ここでこの話題を取り上げたのは,「トリニティオプション-サイエンス」第16号(310),2020年8月11日に,フョードル・ナザロフ,ミハイル・ソディン,アレクサンドル・ログノフによるこのテーマの紹介記事で,
アレクサンドル・ログノフが,2020年のヨーロッパ数学会のEME賞(数学への卓越した貢献が認められた35歳未満の10人の研究者に4年ごとに授与)を受賞したニュースを見たからです.

 

■周波数が上がると定在波の節線集合の形はだんだん細かくなりますが,どのように変わるのでしょうか.
バイオリンやギターなどの楽器は,圧縮に抵抗する弾性体の板を振動させますが,膜の振動であれば一定張力のみの弾性体ですみます.実際の楽器の振動計算をするのが目的ではなく,この節線集合サイズの振る舞いを知るのが目的ですので,アレクサンドル・ログノフは扱いが単純化できる膜モデルを用い,ラプラス微分方程式の各周波数に対する固有関数のゼロ節線集合のサイズに関するヤウ・シンツンとニコライ・ナディラシビリの予想を証明しました.

■この問題は,工学的には,2次元のFourier解析で膜の振動を正弦波の固有振動の重ね合わせに分解し,ラプラス方程式の固有関数を与えられた境界条件で解く有限要素法でコンピュータを用い数値解を得ることができます.
ラプラス演算子をΔ,振動数ωの固有関数 v_ω(x) は微分方程式
Δv_ω(x)+ 4(π^2)(ω^2)v_ω(x)= 0 の解です.節線集合は,条件 v_ω(x )= 0を満たすxの集合で,与えられた境界条件を満たすように解く問題です.


Fourierはナポレオン時代の数学者ですが,熱伝導の微分方程式の境界値問題を解くために開発したFourier解析を公開したのは1822年でした.従って,現代なら使う2次元のFourier変換もクラドニの時代にはありませんでした.

しかしながら,問題を精密に解くことと,現象の本質を理解することとは目的が違います.計算すればそうなるとか,一口ではいえないというのでは,本質が理解できたことになりません.

節線集合に関する有名な問題は,40年以上前に出された節線集合サイズに関するヤウ・シンツン予想です.節線の長さが,周波数ωの線形関数として増加する予想しました. それらは通常,膜を小さな正方形に分割し,それぞれのサイズを推定します.そのような推定のための便利なツールは,倍加指数(ハウスドルフ次元に似る)であり,立方体Qから倍の立方体2Qに変えたとき,固有関数の最大振幅の比の対数を倍加指数と定義しました.倍加指数が有界のままであれば,立方体Qに該当する節点集合のサイズも有界であるとの予想です.ニコライ・ナジラシビリは,ヤウ・シンツンによって提起された問は,調和関数の関連する質問に還元できることに気づきました.しかし,正方形が小さな断片に分割されたときに調和関数の倍加指数がどうなるかという問題は,2016年にアレクサンドル・ログノフとエフゲニア・マリンニコワの研究が発表されるまで進展していませんでした.

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東京の感染収束と相互作用

実効再生産数が東京では,まだ1を少し超えているようですが,他の県では1未満になってきたようです.以下のサイトに,都道府県別の実効再生産数の時系列の変化のグラフがあります.

 

Rt Covid-19 Japan都道府県別コロナウイルスの感染拡大・収束状況(実効再生産数Rt)をグラフ化したWebサイトrt-live-japan.com
実効再生産数Rというのは,1人の感染者が新たな感染者を作る人数のことです.Rが1未満なら感染流行は減少収束し,1より大きければ感染は拡大します.しかしながら,各都道府県の実効再生産数がすべて1未満になっても,感染拡大の起こる可能性を警告している論文を前回紹介しました.その論文では,全体をコミュニティと病院という2つのグループに分割したモデルで,コミュニティ内の感染に関する実効再生産数と病院内の感染に関する実効再生産数がともに1未満であっても,全体の実効再生産数が1を超す(感染拡大が起こる)可能性が指摘されました.その原因は,コミュニティから病院に感染させる場合も,病院からコミュニティに感染させる場合もあるからです.

都道府県別の実効再生産数が,それぞれ1未満になっても,各県間の人の移動接触により各県間の感染が起こるので,全体の実効再生産数が1より大きくなることは十分あり得ます.油断は危険です.

■数学の形式としては,次の行列を作ります:
対角要素には,各都道府県の実効再生産数を並べ.行列のその他の要素には,異なる県間の感染率を対応させます.県間の感染率は,相当する県間の人の接触確率のようなものです.このような行列を作るにはいろいろなデータが必要ですが,この行列ができたとすると,この行列の固有値を求める数学の問題になります.最大の固有値が1を超していれば,全体の実効再生産数は1を超し伝染の拡大が起こります.

私たちの社会は,都道府県がそれぞれ孤立して独立でいるわけではなく,互いに相互作用(人の接触がある)しているので,独立な個別地区の予測と,全体の予測は大変異なり,このような計算をしてみないとわかりません.

(注)実効再生産数の計算方法は,Anne RがCoriらによるものが,山中伸弥のホームページに紹介されています.

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フィボナッチ数列とルーカス数列

 

 

 

 

 

 

 

 

■直線上にn個の点が並んでいるとします.点が連続しないように選んで点の集合を作ります.そのような集合の選び方A_nは何通りありますか? ただし,点を1つも含まない集合は空集合Φと言いますが,集合の選び方の1つに空集合もあります.

・n=1のとき: Φ,{1}     → $$A_1=2$$
・n=2のとき: Φ,{1},{2}   → $$A_2=3$$ 
(注){1,2}の集合は点が連続するので条件を満たしません.

・n=3のとき: Φ,{1},{2},{3},{1,3} → $$A_3=5$$

・n=nのときは: n点目を選ばない $$A_{n-1}$$個の方法と,n点目は選ぶがn-1点目は選ばない $$A_{n-2}$$個の方法があります.
従って,$$A_n=A_{n-1}+A_{n-2}$$ ,これは,フィボナッチ数列$$F_n$$の定義ですが,初項が2なので,$$A_n=F_{n+2}$$になります.

■円周上にn個の点が並んでいる場合はどうでしょうか.今度はn番目の点と,1番目の点が連続してはダメです.この場合の集合の選び方をB_n個とします.

・n=1のとき: Φ,{1}     → $$B_1=2$$ 
・n=2のとき: Φ,{1},{2}   → $$B_2=3$$
・n=3のとき: Φ,{1},{2},{3}  → $$B_3=4$$ 
(注){1,3}は繋がるので条件にあいません.
・n=nのとき:
n点を除いた場合は$$ A_{n-1}$$通り,n点がある場合には,自分n点と両隣り(n-1と1)の計3点は除くので$$A_{n-3}$$通りがあります.

この両者の合計が一般式です:$$B_n=A_{n-1}+A_{n-3}=F_{n+1}+F_{n-1}=L_n$$

このような数列 $$B_n$$ はルーカス数列$$L_n$$と呼ばれます.

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大丸百貨店(心斎橋)の幾何学模様★

今は閉鎖されてしまったyahooブログの仲間「さなのブログ」に大丸百貨店(心斎橋)の美しい幾何学模様の写真がありました.私は大阪にもずいぶん行ったのですが,心斎橋には縁がなく大丸百貨店もとうとう見ずじまいでした.さなさんから,ヴォーリズ設計の86年間皆に幸せを与え続けてきた美しい建物が取り壊されると教えられ惜しい限りです.そこで,私のyahooブログにこの記事を書きました(2015.12.31).その後,新しい建物が完成し2019.9.20に大丸百貨店は再開しました.ウイリアム・メリル・ヴォーリス(*)の懐かしいデザインが極力残されて,懐かしい雰囲気が感じ取れよかったと思っています.

(*注)壁紙模様で有名なイギリス人William Morrisではありません.アメリカ人のWilliam Merrell Voriesです.ヴォーリズはプロテスタントの伝道者としてひとり来日し,戦争中も日本に帰化し日本で骨を埋めた人です.近江兄弟社の前進を設立しヴォーリズ建築事務所も設立しました.明治学院チャペルをはじめ数多くの美しい建物を手掛けています.「屋根をかける人」門井 慶喜著, KADOKAWAは,ヴォーリスのすがすがしさが伝わる良い本です(学校出たてのヴォーリスが日本への船に乗っている場面から始まります)

■取り壊し前の建物の美しい幾何学模様を鑑賞しましょう.以下で取り上げる模様は建築物でよく使われ,イスラム起源の模様の雰囲気があります.


この写真(貴重な取り壊し前)は,さなさんのブログの写真に遠近法の補正をかけて,模様を正面から見たように修正したものです.ただし,写真に見られる8回対称の花模様は窪んだドームの奥にあるため,視差の効果で中心から寄ってしまいました.実際はそれぞれドームの中心(4回回転軸のある位置)にあります.この写真の繰り返し模様にはp4mmの対称性があります.

 

 

 

 

次の図も,さなさんのブログの写真に遠近法の補正をかけて,正面から見たようにし切り出したものです.建築には半円しか使われていませんが,全円を想像してみると頂点のなまった星形10角形のようです.この星形は五芒星を2つ重ねたらできるもので,黄金比がたくさん現れます.このような模様は東京ジャーミーの説教壇や門扉にも見られます.

 

 

 

 


 

この写真の下側に見られる繰り返し模様も取り上げましょう.


この模様には6回回転対称軸が配列しています(3回や2回回転対称軸も生じています).青い線は鏡映対称面です.繰り返し模様の対称性はp6mmです.

 

 


さなさんのブログのもう一つの写真から,切張りをして繰り返し模様を再現したものが以下の図です.ちょっとずれたところができましたが,パターン全体の様子は想像できるでしょう.


この模様も美しく大変複雑なものですが,4回対称性のある繰り返し模様であることがわかります.対称性はp4mmです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■現在の大丸百貨店

これらの写真を見ると,建て替えられた建物にもヴォーリスのデザインが活かされているのがわかりますね.

 

 

 

 

 

 

 

 

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四角い車輪,三角の車輪★

国立数学博物館MoMath(National Museum of Maths)は,米国唯一の数学博物館で,ニューヨークのマディソン・スクエアに,2012年12月15日オープンしました.
ここには30以上の対話型展示がありますが,ホールの展示で目立つのは,正方形の車輪の3輪車が滑らかに走る光景です.

たいへん興味深いので,床面の曲線がどのような形であるかを計算してみました.
ここに掲載する結果は,2013年7月22日の数学月間懇話会(第9回)で谷が発表したものです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

ついでに,応用問題として計算した3角形の車輪の結果を(Fig.2)に掲載します.

■Fig.2 三角の車輪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注)2013年10月2日に開設された東京理科大学「数学体験館」にも同じ企画が採用されている.

 

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美しい幾何学ー美しいものには理由がある

昨年9月に表題の本(技術評論社)を出版しました.この本の構成は8つの章からなり,全章を通して万華鏡で繋がっています.1,2章は有限図形の対称性(点群).3,4章は周期的な空間の対称性(平面群).これらの映像は,万華鏡で作り出すことができます.5章は万華鏡.6章は円による反転という数学的な鏡を用いた万華鏡.7章はフラクタル操作という数学的な鏡を用いた万華鏡です.8章は東京ジャーミイで,イスラミック・デザインを鑑賞します.写真撮影にご協力いただいた東京ジャーミイの本屋さんにも本書を置いていただいています.


■この本に,第9章を続けて書くとすれば,イスラミック・デザインになります.イスラムデザインの特徴は,黄金比(すなわち5回対称や10回対称)がちりばめられていることです.しかし,5回対称性と2次元(あるいは3次元)世界の周期性とは両立できませんから,ちりばめられている5回(あるいは10回)対称性はロゼット内部だけに局所的に作用し,世界の全域を支配するものではありません.そのため,あたかも我々の住む3次元に高次元宇宙が投影しているようで不思議な魅力を感じます.イランのDarb-i Imam寺院(1453)の壁には,その500年後にヨーロッパで発見されるPenroseタイリング[自分の中に自分と同じパターンが繰り込まれる]と同様なパターンがすでに見られることをPeter LuとPaul Steinhardtが報告しています.イスラムの繰り返し模様は準結晶や基本領域が分割されて写像される万華鏡と似たところがあります.

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格子が作る干渉模様(モワレ)★(164のリメイク版)

まず写真をご覧ください.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ正3角形(正6角形)格子[あるいは,正3角形2つよりなる平行4辺形格子とみてもよい]のパンチングメタルを2枚重ね合わせました.
この図の状態は,2枚の格子どうしのなす角度が2θ=30°になった場合です.初めの正3角形(正6角形)の格子より大きな新しい周期の格子が出現しているのがわかりますか.

 

 

 

 

■正方形格子(網目)を2枚重ねた場合を考察してみましょう.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両方の網目が重なった位置に,新しい網目の格子が見えて美しい.
2枚の正方形の格子(正方格子という)どうしの傾きを変えると,ときどきこのような新しい格子が現れます.
もとの格子の互いに直角な2つの並進ベクトルをa,bとすると(正方格子ならa=b),
もとの格子は,格子点 na+mb,(n,mは任意の整数)の集合です.
同じ正方格子を2枚傾けて重ねて,新しい周期の2つの並進ベクトル x, yが生じています.これらの図の状態は,

(左図)x=2a+b,y=a+2b .(右図)x=3a+b,y=a+3b (面心格子)

    $$ \left( \begin{array}{@{\,} cc @{\, } } 2 & 1 \\[0mm] 1 & 2 \end{array} \right) $$,     $$ \left( \begin{array}{@{\,} cc @{\, } } 3 & 1 \\[0mm] 1 & 3 \end{array} \right) $$

この基底変換を行列で書き,行列式を求めると3(左図),8(右図)ですので,
新しくできた格子はもとの格子と比べて面積で3倍(左図),8倍(右図)粗くなっていることがわかります.

格子というのは,並進ベクトルの作る群=並進群の”図的表現”です.
2枚の格子の干渉で生じた新しい格子の周期は,もとの格子の粗いサンプリングになっているわけで,
新しい格子は,もとの格子の部分群になります.

格子が重なって,拡大された(粗い)格子が見える現象は,干渉(ビート)と同じことです.
実際に,2つの原子網面が重なって,このようなビートが見えることは,
電子顕微鏡で格子像の観察をするときにもよく起こります.
結晶は周期的な構造をしているので,周期的な空間は「結晶空間」とも呼ばれます.
エッシャーの繰り返し模様や,壁紙模様などで,周期的空間の実例をたくさん目にしていると思います.

■2つの正方格子の平行なずれによる干渉(モワレ縞)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの正方格子の周期をλ,λとすると,新しい周期Lは

$$ \displaystyle \frac{1}{L}=\displaystyle \frac{1}{\lambda _{1 } }-\displaystyle \frac{1}{\lambda _{2 } } $$ の関係があります.

私は,子供のころ家にあった織物検査器というもので遊んだことがあります.これは,標準となる格子模様がガラスに刻んであり,織物にこのガラスを重ねると繊維の周期とのビートで縞模様が観察できます.1mmの中に何本繊維があるかとか,織り方が均一でなくどの程度乱れているかが,モアレ縞からわかります.

次の写真は,工事現場のネットが折り返されて2重になっているために観察されるモアレ縞です.

 

 

 

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ベイズの定理と新型コロナウイルスPCR検査★

私は3月24,26日のまぐまぐメルマガ(311,312号)で以下の内容の発表をしました.-----
3月21日の厚労省の公表値を用いて,罹患率=発症患者/PCR検査数と定義すると,罹患率は,約5%になります.しかし,PCR検査の,感度と特異性(酒井健司,朝日デジタル)の情報を入れてベイズ推定した罹患率は5.9%になります.この推定値の増加は,主としてPCR検査感度に原因があり,実際の罹患者を取りこぼすためです.(注)この数値は,PCR検査を受けた限定されたグループをサンプルとしているために,一般の集団に対しては少し割り引いた数値になるでしょう.-----
今日PCR検査数も増加したので,4月24日時点の厚労省のデータを用いて,再計算をしてみました.ただし,PCR検査数が増加したといっても(検査を受ける条件はあまり緩和されていません).したがって,陽性確率が高いサンプル集団について検査が行われている状況は同じです.
カバーの図を見てください.ここで推定する数値はあくまでもサンプル集団に関するもので,全体集団に対してはいくらか割り引いた数字になるでしょう.

 

 

 

 

 

 

 


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■PCR検査状況(厚労省4/23データ)

 【PCR検査陽性者数】    【PCR検査陽性時の有症状・無症状の別】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新型コロナウイルスに対するPCR検査数は,4月23日の厚労省の発表で,135,983人になりました.1月前(3月21日)の数字の7.5倍です.PCR検査の陽性者数は11,919人,陽性者のうち発症患者(陽性者∩発症患者)は7,315人です.
発症患者/PCR検査数=罹患率 と仮の罹患率を定義すると,罹患率は約5.4%です.
陽性率=陽性者数/PCR検査数=0.088(前回0.056) ,陰性率=0.912(前回0.944)も定義します.

(要旨)================================================
4月23日の厚労省の公表値を用いて,罹患率=発症患者/PCR検査数と定義すると,罹患率は,約5.4%(前回5.0%)になります.しかし,PCR検査の,感度と特異性(酒井健司,朝日デジタル)の情報を入れてベイズ推定した罹患率は8.6%(前回5.9%)になります.この推定値の増加は,主としてPCR検査感度に原因があり,実際の罹患者を取りこぼすためです.
(注)この数値は,PCR検査を受けた限定されたグループをサンプル集合としているために,一般の集団に対しては少し割り引いた数値になるでしょう.
===================================================

■条件付き確率についての「ベイズの定理」とは次のように説明できます.
$$p(Y|X)p(X)=p(X \cap Y)=p(X|Y)p(Y)$$
記号の意味は例えば以下の様です.
$$p(X)$$  $$X$$が起こる確率
$$p(Y|X)$$ $$X$$が起こった後で$$Y$$が起こる確率
$$p(X \cap Y)$$ $$X$$かつ$$Y$$が起こる確率

ベイズの定理は,$$X$$(原因)が起きた後で$$Y$$(結果)が起きる確率$$p(Y|X)$$と,$$X$$と$$Y$$を入れ替えた確率$$p(X|Y)$$を結び付ける定理です.

■PCR検査の精度

新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味(酒井健司,朝日デジタル)により,次のように仮定します.
PCR検査の感度とは,罹患者がPCR検査で陽性(+)と正しく判定される確率のことで,あまり大きくなく0.7.
真の罹患者でもPCR検査が陰性(-)(偽陰性)となる確率が0.3程度だそうです.
検査の特異性とは,非罹患者が陽性(+)(疑陽性)と判定される確率で0.01程度だそうです.

$$\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
& + & - \\[0mm]
\hline
罹患 & 0.7 & 0.3(偽陰性) \\[0mm]
\hline
非罹患 & 0.01(疑陽性) & 0.99 \\[0mm]
\hline
\end{array}$$

■これらの仮定の下で,以下の2つを推定しましょう.ただし,ベイズの定理を使います.
(1)PCR検査で陽性と判定されたとき,罹患者である確率を求めなさい.
$$p(罹患|+)=\displaystyle \frac{p(+|罹患)p(罹患)}{p(+)}=\displaystyle \frac{0.7 \times 0.054}{0.054 \times 0.7+0.946 \times 0.01}=0.80$$
+(陽性)でも,検査感度のせいで罹患者をとりこぼすことが多い.また,非罹患者の割合が多いので偽陽性の数も無視できず,全体として決定率を80%(前回79%)に下げている.

(2)罹患率を推定しなさい.
$$ p(罹患|-)=\displaystyle \frac{p(-|罹患)p(罹患)}{p(-)}=\displaystyle \frac{0.3 \times 0.054}{0.054 \times 0.3+0.946 \times 0.99}=0.017 $$
陰性と判定されたものの中に見逃された患者である可能性は1.7%(前回1.6%)ほどある.
従って,全人口のなかで推定される罹患率は$$0.088 \times 0.80+0.912 \times 0.017=0.086$$,すなわち,8.6%(前回5.9%)と推定できます.

 =====================================================text

■条件付き確率についての「ベイズの定理」とは次のように説明できます.
p(Y|X)p(X)=p(X∩Y)=p(X|Y)p(Y)
記号の意味は例えば以下の様です.
p(X)  Xが起こる確率
p(Y|X) Xが起こった後でYが起こる確率
p(X∩Y) XかつYが起こる確率
ベイズの定理は,X(原因)が起きた後でY(結果)が起きる確率p(Y|X)と,XとYを入れ替えた確率p(X|Y)を結び付ける定理です.
■PCR検査の精度

新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味(酒井健司,朝日デジタル)により,次のように仮定します.
PCR検査の感度とは,罹患者がPCR検査で陽性(+)と正しく判定される確率のことで,あまり大きくなく0.7.
真の罹患者でもPCR検査が陰性(-)(偽陰性)となる確率が0.3程度だそうです.
検査の特異性とは,非罹患者が陽性(+)(疑陽性)と判定される確率で0.01程度だそうです.

■これらの仮定の下で,以下の2つを推定しましょう.ただし,ベイズの定理を使います.
(1)PCR検査で陽性(+)と判定されたとき,真の罹患者である確率を求めなさい.
p(罹患|+)=p(+|罹患)p(罹患)/p(+)=0.7×0.054/(0.054×0.7+0.946×0.01)=0.80
+(陽性)でも検査感度のせいで罹患者をとりこぼすことが多い,また,非罹患者の割合が大きいので偽陽性も無視できず,この2つの原因が,+判定でも罹患者である確率80%(前回79%)を下げている.
(2)罹患率を推定しなさい.
p(罹患|−)=p(−|罹患)p(罹患)/p(−)=0.3×0.054/(0.054×0.3+0.946×0.99)=0.017
-(陰性)と判定されたものの中に見逃された患者である可能性は1.7%ほどある.

従って,サンプル集合全体で推定される罹患率は0.088×0.80+0.912×0.017=0.086
すなわち,8.6%(前回5.9%)と推定できます.

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ブルセラ症(病)★(リメイク版)

ナイチンゲールが50年間ベッドでの仕事を余儀なくされ,死因ともなったのは,クリミア戦争時に流行したマルタ熱(ブルセラ症)であることが明らかになった.D A B Young,Florence Nightingale's fever,(BMJ VOLUME 311 23-30 DECEMBER 1995)
ーーーーーーー
■ブルセラ症(brucellosis)
NIID国立感染症研究所https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/513-brucella.html,および,wikiを参照した.----
ブルセラ症はマルタ熱とも呼ばれる細菌に感染して起こる人獣共通感染症.クリミア戦争でマルタ熱が流行したことで世界的に注目されたが,紀元前400年頃のヒポクラテス著書にブルセラ症と思われる疾患がすでに記載されている.現在でも,世界中で毎年50万人を越える家畜ブルセラ菌感染患者が新規に発生(食料や社会・経済が家畜へ依存し,家畜ブルセラ病が発生している国や地域)発生している.マルタ熱の原因菌として,イギリス軍の軍医Sir David BruceによりB. melitensis が分離(1887)されて以降,種々のブルセラ属菌が発見されている.ヒトへの感染が報告されている主なものは,B. melitensis (自然宿主:ヤギ,ヒツジ),B. suis (ブタ),B. abortus (ウシ,水牛),B. canis (イヌ)の4菌種である.日本では,過去に牛のB. abortus感染が流行し問題になったが,家畜衛生対策の徹底により,1970年を最後に国内家畜から菌が分離された例はない.感染動物の加熱殺菌が不十分な乳・乳製品や肉の喫食による経口感染が最も一般的である.ヒト-ヒト感染は極めてまれである.
ブルセラ属菌は敵国の兵士や住民に罹患させて能力を低下させる生物兵器としても研究・培養された.アメリカは1942年、ソ連は1978年に兵器化を実現した.

■サビノワとリユドミラ物語.Екатерина Савинова и Людмила Сенчина
Приходите завтра「明日来なさい」(1963年,ソビエト映画)は,1540万観客の大ヒット映画(ロシア語)です.シベリアの寒村からИнститут имени Гнесиных モスクワの音楽学校に入ろうと出てきた才能ある少女の物語です.重い荷物を背負って一人で都会に出てきた元気で愉快な純粋な少女です.しかし,モスクワに来たときは既に遅く入学試験は終わっていました. 少女の役名はФросяフローシャ.これは実在のЕкатерина Савиноваサビノワの伝記映画で,サビノワ自身が主演し歌います.あの声はサビノワしか出せません.私がこの映画を知ったのも彼女の3.5オクターブ出るという魅力的な声の歌を耳にしたからです.音楽学校の玄関で有名なソコロフ教授に何度か訴えます.ついに引き出した教授の返事が Приходите завтра!「明日来なさい」でした.教授に学校のオーデトリウムで聞いてもらえた彼女の歌声がすばらしい.教授もフローシャの純粋さと素晴らしい声を見抜き,何とか入学させようと動きます.この映画はサビノワが自分で主演した愉快で楽しい映画で,私はとても好きです.しかし,残念ながら,その後のサビノワは,ブルセラ病(生牛乳を飲むと牛から感染する)が重くなり鉄道自殺(1970年,43歳)してしまいます.

興味深いのは,1963年にウクライナで高校生時代に,Людмила Сенчинаリュドミラ・センチナはきっとこの映画を見たのではないかと私は想像します.リュドミラは成功して,ロシア人民芸術家歌手になります.彼女は今年の1月25日に,ペテルブルクの病院で死去(67歳)しました.
リュドミラは,高校を卒業して,歌手になるために,ウクライナからレニングラード(現ペテルブルグ)に出てきました.でも,そのとき音楽学校の試験は終わっていたのです.よく似た話があるものですね.サビノワと違うのはペテルブルグに親戚がいたことです.
リュドミラの代表曲は,Песня Золушкиシンデレラの歌
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Covid-19とナイチンゲール病院★

NHS Nightingale Hospital
NHS=国民保険サービス,Nightingale Hospital=臨時救急病院≒野戦病院
イギリスのNHSは4つの地域区分(イングランド,スコットランド,ウエールズ,北アイルランド)があります.イングランドのナイチンゲール病院は,London(4,000床)に4月3日オープンを皮切りに,7つ目のSunderland(460床)は日産自動車工場近くに準備が整いました.Covid-19患者の数に北東部の病院が対処できない場合に限り使われます.「人々が社会的距離を保ち,あるいはワクチンができ,この病院を使わないですむことを願っている」とNewcastle病院のNHS局長は語りました(Sunderland Echo紙).
Stay at home, protect the NHS, and save lives
イギリスは,3月23日に3週間の全土封鎖に踏み切ったが,まだピークが去らないとしてさらに3週間の延長に入っています.4月19日現在.累積確認患者数は90,629,累積死者数は14,399に上りますが,一日の感染者の広がりは減少してきました.封鎖と並行して,PCR検査から抗体検査に転換し,抗体検査の大規模実施(現時点で1万3729人1日3万5000件の能力がある)と「NHSナイチンゲール病院」の設立を進めています.「ナイチンゲール病院」といはどのような病院でしょうか?

クリミア戦争(1853-1856)で野戦病院の衛生状態の改革を行ったナイチンゲールは,『看護覚え書』,『病院覚え書』など多くの著作を残し,そこにはワンルームの病院設計図も載っています.高い天井まで延びた3層の窓,3層目の窓を開放し換気,ベッドの間隔,等々,ナイチンゲールの病院概念が活かされた臨時救急病院≒野戦病院だからこう呼ぶのでしょう.
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 Sunderland Echo↑

Getty Images↓

 

(注)以下のナイチンゲールの伝記的記事は,
草の実堂;https://kusanomido.com/study/history/western/21987/ を参考にした.
ナイチンゲールはクリミア戦争(1853-1856)で野戦病院の衛生状態を実践改革し死亡率を低下させました.帰国後のナイチンゲール・チームはバーリントンホテルに集結し,戦時の報告書をもとに病院の状況分析をして,数々の統計資料を作成,改革のためにつくられた各種委員会に提出しました.特に,死亡原因ごとに死者の数をひと目で分かるようにレーダーチャートの発明があります.
1860年にナイチンゲールが看護専門学校(ナイチンゲールスクール)を設立したのは広く知られていますが,ナイチンゲールが統計学者であることはあまり知られていません.疫学研究の元祖です.1859年にイギリス王立統計学会の初の女性メンバーに選ばれ,アメリカ統計学会の名誉メンバーにも選ばれました.ナイチンゲールは90歳で亡くなりますが,晩年50年間はほとんどベッドの上で,本の原稿や手紙を書く活動でした.その病因はブルセラ病に感染したこと(by D A B Young,Florence Nightingale's fever,1995)でした.ブルセラ病については,以前に述べたことがあるのでそちらを参照ください.

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COVID-19感染拡大シュミレーションの数理モデル★

新型コロナウイルスの感染拡大が続いています.皆様お元気でしょうか.注意してお過ごしください.
緊急事態宣言下で,人と人の接触機会を最低7割,極力8割の削減を,政府は目標に掲げています(朝日新聞デジタル).
接触機会をある閾値下に削減すると感染が減衰し収まるわけです.数学月間の会の石黒真木夫氏が,マクロの数理モデルでシミュレーションを行いました.その結果は,youtubeチャンネル「NPO数学月間の会」にアップロードし公開しました.そのリンクを探すには,数学月間のホーム・ページhttp://sgk2005.saloon.jpにアクセスします.現在そのトップ頁に掲載しています.そこで用いたシミュレーションのエクセルファイルは,同ホームページの記事中にリンクを張りましたので,各自がダウンロードしてシミュレーションを体験することができます.参考論文(西浦博・稲葉寿)へのリンクも,同ホームページの記事中に置きました.
*youtubeチャンネル「NPO数学月間の会」の動画へのリンクは,数学月間の会のホーム・ページにアクセスし,youtubeチャンネルのタブを開くとそこに置かれています.

(1)石黒のシミュレーションの概要
ある人口集団を,未感染者,ウィルス感染源,免疫獲得者,死亡者に分類し,未感染者がウィルス感染源の一員と接触すると,ある感染確率で未感染者が感染してウィルス感染源となる.ウィルス感染源のウィルス拡散は14日間つづき,14日目に「死亡率」に従って死亡者と免疫獲得者に分かれ,免疫獲得者はもはやウィルスを拡散することも再感染することもなくなる.このようなルール(数理モデル)でシミュレーションを行った.このモデルに基づくと,時間の経過とともに未感染者は単調減少し,免疫獲得者は単調増加するので,感染の流行はかならず止まる.しかしそれは集団全員が感染した後である.

感染確率と死亡確率を適当に与えれば,シミュレーションは簡単である.いまの計算機をもってすれば人口集団の各個人の命運をたどるミクロシミュレーションもさして難しくない.ここで紹介するのは未感染者やウィルス感染源集団の大きさの変化を追跡するマクロシミュレーションである.確率的な現象の「期待値の動き」を追いかける決定論的なダイナミクスを採用する.もし,ミクロシミュレーションをして,算術平均の変化を見るとマクロシミュレーションの結果に「誤差」が乘ったような動きになるだろう.
石黒シミュレーションによる発見は,減少の後に揺り戻しが付随していることである.そのような波動を繰り返しながら徐々に減少し収束していきます.ワクチン等の発見がなくこの状態が続けば,ときおり感染者が増加する波動を繰り返しながら,生存者全員が免疫を獲得するまで続き.その間多数の死者がでるでしょう.

(2)ミクロシミュレーションについて
講演会「数学と生命科学--数理モデルを中心として」
主催:上智大学理工学部数学科/情報理工科(「数学月間」参加プログラム)
があったのは2008年8月4日(月)のことです.この中の講演に,「感染症対策における数理モデルの役割」(大日康史,国立感染症研究所)というのがありました.今回のCOVID-19の感染拡大にあたり,この国立感染症研究所の感染症対策のシミュレーションが,タイムリーに政策に活かされているとは思えません.原発事故の当時SPEEDIの結果が活用されなかったのに似ていると私は思います.

■感染症対策における数理モデルの役割,大日康史(国立感染症研究所)の概要
数理モデルによる感染拡大のシミュレーションは,新型インフルエンザやバイオテロなどの対策の有効性評価に必要である.
数理モデルには,SIRモデル,ibm(IndividualBasedモデル),Ribm(Realibm)などがある.
本研究で用いたRibmとは,実際に調査した個人の移動,所在の記録データ(首都圏では88万人)にもとづき,
6分ごとに人々の接触状態(感染の機会)が定義されるものである.新型インフルエンザには,種々のタイプがあり鳥類間の感染は起こるが,鳥から人への感染は血液の濃厚接触などの場合に限られる(豚と人の感染するインフルエンザのタイプは似る).人に感染した場合に,人から人への感染が始まり拡大していく.シミュレーションには,例えば以下のシナリオを用いる:(第1日)初発例が外国で感染.(第3日)帰国.帰宅後(八王子)感染性を持つ.(第4日)出社(丸の内).発症.(第5日)国際医療センターに受診.東京都健康安全研究センターで検査診断.(第6日)対策へ:シミュレーションの結果である首都圏への感染拡大の様子や全国への拡大の様子が示された.どのような対策(外出自粛,地域閉鎖,休校,住民全員が予防服用,....)をとると効果があるかが予測できるシミュレーションが示された.

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ストークスの法則

■堆積岩は,岩石の砕屑物が水中で堆積して生まれたものです.この堆積物には,火山灰など火山由来のものも,石灰岩のような生物由来のものもありますが,岩石の風化などで生じた砕屑物は,その粒径により,礫(2mmより大きい),2mm以下の細かい粒径のものは,砂($$2>・・・>1/2^4$$),シルト($$1/2^4>・・・>1/2^8$$),粘土($$1/2^8>・・・$$)に分類されます.
静かな水中で,様々な粒径の砕屑土砂が沈降していくときの終端速度(一定になった速度)は,ストークスの法則で見積もることができ,大きい粒子の終端速度は大きく,小さい粒子の終端速度は小さいことがわかります.洪水で河口に運ばれてきた大小混合の砕屑物は,河口近くに大きい粒子を堆積させ,離れた海へ運ばれて堆積するのは小さい粒子ということになります.

■粘性液体中を静かに沈降していく粒子の速度が一定(終端速度)$$v$$のとき,次のように記述できます.
粒子は小さな球形で直径$$ d $$,密度を$$\rho _{s}$$とし,粘性液体の粘度$$\eta$$ ,密度を$$\rho_{f}$$ とします.
微粒子に働く力が釣り合うと(加速度0になり),粒子は一定速度(終端速度)で沈降します.つまり, 
重力$$=$$浮力$$+$$抵抗力,あるいは,重力$$-$$浮力$$=$$抵抗力  
従って,$$\displaystyle \frac{\pi ^{2}d^{3 } }{6}\left( \rho _{s}-\rho_{f} \right) g=3\pi \eta dv$$,ただし,$$g$$は重力加速度.
これを解いて,
$$v=\displaystyle \frac{\left( \rho _{s}-\rho_{f} \right) g}{18\eta }d^{2}$$
これがストークスの式です.

■ストークスの式を使って,水中の球形石英粒子の沈降速度を求めると,粒子径1 µm(粘土)の沈降速度は0.0001cm/s(およそ30m/年),粒子径10 µm(シルト)の沈降速度は0.01cm/s(およそ3000 m/年),少し大きな粒子径1 mm(砂)の粒子は1 m/sの沈降速度です.実験との比較では,100μm以下ではストークスの式はほぼ成り立ちますが,1mmになるとストークスの式から外れ沈降速度が大きくなります.これは,粒子径が大きくなると,沈降粒子の背後に渦流が発生しストークスの式が適用できないからです.

もし,水よりも粘性の大きい,あるいは密度も大きい分散媒を用いれば,もっと大きな粒子までストークスの式が適用できます.
私は,万華鏡の設計で,分散媒の中を沈降するガラスくずの速度を考察するのにストークスの式を用いました.

 

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youtubeチャンネル開設

皆さまお元気でおお過ごしでしょうか.メルマガ311,312号で取り上げましたが罹患率5~6%でした.ただし,これはPCR検査を受けた人数に対してで,一般人に対しては少し割り引いた罹患率になるでしょう.3月30日現在の東京都の延べ患者数は443人とのことです.実際は都市封鎖をしてもおかしくない事態です.
この状況はしばらく続くので,数学月間の会の活動としてのイベントがいつ実施できるか見通せません(今年も7月22日に数学月間懇話会をやる予定です),
この対策として常時情報発信ができるyoutubeチャンネル(NPO数学月間の会)を立ち上げました.
このメルマガが皆様に届く朝には,このyutubeチャンネルも(3月31日0:00)公開されていると思います.ぜひお確かめの上,問題があるかどうかご報告くださいますようお願いいたします.
私個人のインターネット環境はwifiですので通信速度が遅く,
大きな動画のuploadに時間がかかり現在まだ5つくらいです.
今後,会員皆様の関連動画も載せられるように考えますので,ご協力のほどお願いいたします.

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ベイズの定理と新型コロナウイルス

(要旨)ーーー
3月21日の厚労省の公表値を用いて,罹患率=発症患者/PCR検査数と定義すると,罹患率は,約5%になります.
しかし,PCR検査の,感度と特異性(酒井健司,朝日デジタル)の情報を入れてベイズ推定した罹患率は5.9%になります.
この推定値の増加は,主としてPCR検査感度に原因があり,実際の罹患者を取りこぼしていたためです.
(注)この数値は,PCR検査を受けた限定されたグループをサンプルとしているために,一般の集団に対しては少し割り引いた数値になるでしょう.
======================================

■条件付き確率についての「ベイズの定理」とは次のように説明できます.
$$p(Y|X)p(X)=p(X \cap Y)=p(X|Y)p(Y)$$
記号の意味は例えば以下の様です.
$$p(X)$$  $$X$$が起こる確率
$$p(Y|X)$$ $$X$$が起こった後で$$Y$$が起こる確率
$$p(X \cap Y)$$ $$X$$かつ$$Y$$が起こる確率

ベイズの定理は,$$X$$(原因)が起きた後で$$Y$$(結果)が起きる確率$$p(Y|X)$$と,$$X$$と$$Y$$を入れ替えた確率$$p(X|Y)$$を結び付ける定理です.

■新型コロナウイルスに対するPCR検査数は,厚生労働省の発表で,日本でも3月21日現在,18,134人になりました.
PCR検査による感染者数は1,007人,発症患者(=罹患者と定義)はそのうちの884人です.

 

 

 

 

 

 

 

発症患者/PCR検査数=罹患率 と仮の罹患率を定義すると,罹患率は約5%です.
陽性率=感染者数/PCR検査数=0.056 ,陰性率=0.944 も仮に定義します.

新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味査(酒井健司,朝日デジタル)をもとにして,次のように仮定します.PCR検査の感度というのは,罹患者がPCR検査で+になる確率のことで,あまり大きくなく0.7, 罹患者でもPCR検査が-となる場合(偽陰性)の確率は0.3程度だそうです.
検査の特異性により,非罹患者が+(疑陽性)と判定される確率は0.01だそうです.
*注)3月24日のメルマガに使った仮定の数値は,実際とだいぶ違いましたので,修正した以下の表に差し替えました.
$$\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
& + & - \\[0mm]
\hline
罹患 & 0.7 & 0.3(偽陰性) \\[0mm]
\hline
非罹患 & 0.01(疑陽性) & 0.99 \\[0mm]
\hline
\end{array}$$
これらの仮定の下で,以下の2つを推定しましょう.ただし,ベイズの定理を使います.
(1)PCR検査で陽性と判定されたとき,罹患者である確率を求めなさい.
$$p(罹患|+)=\displaystyle \frac{p(+|罹患)p(罹患)}{p(+)}=\displaystyle \frac{0.7 \times 0.05}{0.05 \times 0.7+0.95 \times 0.01}=0.79$$
+(陽性)でも,検査感度のせいで罹患者をとりこぼすことが多い,非罹患者の割合が多いので偽陽性も無視できず,全体として決定率を下げている(79%).

(2)罹患率を推定しなさい.
$$ p(罹患|-)=\displaystyle \frac{p(-|罹患)p(罹患)}{p(-)}=\displaystyle \frac{0.3 \times 0.05}{0.05 \times 0.3+0.95 \times 0.99}=0.016 $$
陰性と判定されたものの中に見逃された患者である可能性は1.6%ほどある.
従って,全人口のなかで推定される罹患率は$$0.056 \times 0.79+0.944 \times 0.016=0.059$$,すなわち,5.9%と推定できる.

*注)ただし,PCR検査は限定されたグループに対してなされており,偏った集団をサンプルとしているので,全人口に対してなら少し割り引いた値が推定される.

 

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Tex練習:w振り子

一般の振幅

$$\left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\displaystyle \frac{d}{dt}\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \dot{\phi } }-\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \phi }=0 \\[0mm]\displaystyle \frac{d}{dt}\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \dot{\psi } }-\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \psi }=0\end{array} \right. $$

ラグランジュ関数$$L$$は,

$$L=T-U$$

$$ T=\displaystyle \frac{m+m_{1 } }{2}l^{2}\dot{\phi }^{2}+\displaystyle \frac{m_{1 } }{2}l^{2}_{1}\dot{\psi }^{2}+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \dot{\phi }\dot{\psi } $$

$$U=-\left( m+m_{1} \right) glcos\phi -m_{1}gl_{1}cos\psi $$

--------------------

$$\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \dot{\phi } }=\left( m+m_{1} \right) l^{2}\dot{\phi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \dot{\psi }$$

$$\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \dot{\psi } }=m_{1}l_{1}^{2}\dot{\psi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \dot{\phi }$$

$$\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \phi }=-m_{1}ll_{1}\dot{\phi \psi }sin\left( \phi -\psi \right) -\left( m+m_{1} \right) glsin\phi $$

$$\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \psi }=m_{1}ll_{1}\dot{\phi \psi }sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}gl_{1}sin\psi $$

--------------------

$$\left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\left( m+m_{1} \right) l^{2}\ddot{\phi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \ddot{\psi }-m_{1}ll_{1}\dot{\psi }sin\left( \phi -\psi \right) \left[ \dot{\phi }-\dot{\psi } \right] =-m_{1}ll_{1}\dot{\phi \psi }sin\left( \phi -\psi \right) -\left( m+m_{1} \right) glsin\phi \\[0mm]m_{1}l_{1}^{2}\ddot{\psi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \ddot{\phi }-m_{1}ll_{1}\dot{\phi }sin\left( \phi -\psi \right) \left[ \dot{\phi }-\dot{\psi } \right] =m_{1}ll_{1}\dot{\phi \psi }sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}gl_{1}sin\psi\end{array} \right. $$

 

$$ \left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\left( m+m_{1} \right) l^{2}\ddot{\phi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \ddot{\psi }+m_{1}ll_{1}\dot{\psi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) =-\left( m+m_{1} \right) glsin\phi \\[0mm]m_{1}l_{1}^{2}\ddot{\psi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \ddot{\phi }-m_{1}ll_{1}\dot{\phi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) =-m_{1}gl_{1}sin\psi \end{array} \right. $$

$$ \left[ \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }\left( m+m_{1} \right) l^{2} & m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \\[0mm] m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) & m_{1}l_{1}^{2}\end{array} \right] \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } } \ddot{\phi } \\[0mm]\ddot{\psi }\end{array} \right] =\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }-m_{1}ll_{1}\dot{\psi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -\left( m+m_{1} \right) glsin\phi \\[0mm]m_{1}ll_{1}\dot{\phi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}gl_{1}sin\psi\end{array} \right] $$

$$\left[ \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }\left( m+m_{1} \right) l^{2} & m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \\[0mm]m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) & m_{1}l_{1}^{2}\end{array} \right] ^{-1}=\displaystyle \frac{1}{m_{1}\left( m+m_{1} \right) l^{2}l_{1}^{2}-m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}cos^{2}\left( \phi -\psi \right) }\left[ \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }m_{1}l_{1}^{2} & -m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \\[0mm]-m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) & \left( m+m_{1} \right) l^{2}\end{array} \right] $$

 $$ \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\ddot{\phi } \\[0mm]\ddot{\psi }\end{array} \right] =\displaystyle \frac{1}{m_{1}\left( m+m_{1} \right) l^{2}l_{1}^{2}-m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}cos^{2}\left( \phi -\psi \right) }\left[ \begin{array}{@{\,} cc @{\, } } m_{1}l_{1}^{2} & -m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \\[0mm]-m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) & \left( m+m_{1} \right) l^{2} \end{array} \right] \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }-m_{1}ll_{1}\dot{\psi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -\left( m+m_{1} \right) glsin\phi \\[0mm]m_{1}ll_{1}\dot{\phi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}gl_{1}sin\psi\end{array} \right] $$

 

$$=\displaystyle \frac{1}{m_{1}\left( m+m_{1} \right) l^{2}l_{1}^{2}-m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}cos^{2}\left( \phi -\psi \right) }\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }-m_{1}^{2}ll_{1}^{3}\dot{\psi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}\left( m+m_{1} \right) gll_{1}^{2}sin\phi -m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}\dot{\phi }^{2}cos\left( \phi -\psi \right) sin\left( \phi -\psi \right) +m_{1}^{2}gll_{1}^{2}cos\left( \phi -\psi \right) sin\psi \\[0mm]m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}\dot{\psi }^{2}cos\left( \phi -\psi \right) sin\left( \phi -\psi \right) +m_{1}\left( m+m_{1} \right) gl^{2}l_{1}cos\left( \phi -\psi \right) sin\phi + \sqcap - m_{1}\left( m+m_{1} \right) l^{3}l_{1}\dot{\phi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}\left( m+m_{1} \right) gl^{2}l_{1}sin\psi\end{array} \right] $$

 

$$\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\dot{\phi }(n+1) \\[0mm]\dot{\psi }(n+1)\end{array} \right] =\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\dot{\phi }(n) \\[0mm]\dot{\psi }(n)\end{array} \right] +\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\ddot{\phi }(n) \\[0mm]\ddot{\psi}(n)\end{array} \right] \mit\Delta t$$

 $$ \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } } \phi (n+1) \\[0mm] \psi (n+1) \end{array} \right] =\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } } \phi (n) \\[0mm] \psi (n) \end{array} \right] +\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } } \dot{\phi }(n) \\[0mm] \dot{\psi }(n) \end{array} \right] \mit\Delta t $$

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