大丸百貨店(心斎橋)の幾何学模様★

今は閉鎖されてしまったyahooブログの仲間「さなのブログ」に大丸百貨店(心斎橋)の美しい幾何学模様の写真がありました.私は大阪にもずいぶん行ったのですが,心斎橋には縁がなく大丸百貨店もとうとう見ずじまいでした.さなさんから,ヴォーリズ設計の86年間皆に幸せを与え続けてきた美しい建物が取り壊されると教えられ惜しい限りです.そこで,私のyahooブログにこの記事を書きました(2015.12.31).その後,新しい建物が完成し2019.9.20に大丸百貨店は再開しました.ウイリアム・メリル・ヴォーリス(*)の懐かしいデザインが極力残されて,懐かしい雰囲気が感じ取れよかったと思っています.

(*注)壁紙模様で有名なイギリス人William Morrisではありません.アメリカ人のWilliam Merrell Voriesです.ヴォーリズはプロテスタントの伝道者としてひとり来日し,戦争中も日本に帰化し日本で骨を埋めた人です.近江兄弟社の前進を設立しヴォーリズ建築事務所も設立しました.明治学院チャペルをはじめ数多くの美しい建物を手掛けています.「屋根をかける人」門井 慶喜著, KADOKAWAは,ヴォーリスのすがすがしさが伝わる良い本です(学校出たてのヴォーリスが日本への船に乗っている場面から始まります)

■取り壊し前の建物の美しい幾何学模様を鑑賞しましょう.以下で取り上げる模様は建築物でよく使われ,イスラム起源の模様の雰囲気があります.


この写真(貴重な取り壊し前)は,さなさんのブログの写真に遠近法の補正をかけて,模様を正面から見たように修正したものです.ただし,写真に見られる8回対称の花模様は窪んだドームの奥にあるため,視差の効果で中心から寄ってしまいました.実際はそれぞれドームの中心(4回回転軸のある位置)にあります.この写真の繰り返し模様にはp4mmの対称性があります.

 

 

 

 

次の図も,さなさんのブログの写真に遠近法の補正をかけて,正面から見たようにし切り出したものです.建築には半円しか使われていませんが,全円を想像してみると頂点のなまった星形10角形のようです.この星形は五芒星を2つ重ねたらできるもので,黄金比がたくさん現れます.このような模様は東京ジャーミーの説教壇や門扉にも見られます.

 

 

 

 


 

この写真の下側に見られる繰り返し模様も取り上げましょう.


この模様には6回回転対称軸が配列しています(3回や2回回転対称軸も生じています).青い線は鏡映対称面です.繰り返し模様の対称性はp6mmです.

 

 


さなさんのブログのもう一つの写真から,切張りをして繰り返し模様を再現したものが以下の図です.ちょっとずれたところができましたが,パターン全体の様子は想像できるでしょう.


この模様も美しく大変複雑なものですが,4回対称性のある繰り返し模様であることがわかります.対称性はp4mmです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■現在の大丸百貨店

これらの写真を見ると,建て替えられた建物にもヴォーリスのデザインが活かされているのがわかりますね.