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対数とスケールの定義

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数学月間SGK通信 [2018.06.05] No.222
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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夏を思わせる日があったと思うと寒い日もあります.
梅雨入りもまじかでしょう,皆様どうぞご自愛ください.
今日は,対数について実用上の役割を見てみましょう.
関数としての対数の微積分は,数学では避けられませんが
常用対数表や計算尺はコンピュータ時代に影が薄くなりました.
しかし,対数は数字の桁を表示することなので,色々な現象のスケールの定義が
対数を用いてなされます.社会や科学の色々な分野で対数が係わることになります.
■対数の発明
ネイピア(スコットランド)は,1614年の著書で対数を提唱しました.
大きな数字の間の乗算は面倒です.
対数を用いれば,掛け合わせるそれぞれの数の対数をとり,それらを加算し,
対数表の中にこの数を探しだし,対数をとる前の数を求めればよい.
積の対数は,それぞれの数の対数の和になるから,乗算が加算に変る.
log(A・B)=log(A)+log(B)
コンピュータのない時代の科学技術計算に,対数表は不可欠だった.
16cの天文学者は対数表で大いに助かったことだろう.
あのニュートンも対数表を用いて計算したに相違ない.
ビュルギ(スイス)も,ネイピアとほとんど同時期に対数を用いているらしい.
計算尺の発明は,ウイリアム・オートレッド(英)1621年と言われる.

対数をとると,乗算が加算に変わる原理は,次のようなことです.
例えば,16や32を2のべき乗で表すと,16=2^4, 32=2^5なので,
16x32=512の計算は,つまり,2^4x2^5=2^9 は,
4+5=9のように,べき乗の可算になります(指数法則).
2を底とする対数をとると,log16=4,log32=5,log512=9であるので
べき乗の可算4+5=9から,log16+log32=log512となります.
このように,対数を仲介することで,積を和に変えることができます.
ここでは,2を対数の底として説明しましたが,対数表の完備しているのは底10の
常用対数です.常用対数は,10進法に相当しています.
注)底は1でない正数.対数が定義できるのは真数が正数のとき定義される.
■対数の応用
対数は科学の様々な分野のスケールに用いられる.例えば,エントロピー.ペーハーpH,
デシベルdB,地震マグニチュード,恒星の等級,...等々.
人間の感覚感度は,べき乗スケールで変わった方が自然なようです.
例えば,
・エントロピーSと,状態のとり得る場合の数Wは,
 S=k・log(W),kはボルツマン定数.
・ペーハーpHは,水溶液の水素イオン濃度の対数です.
純水の水素イオン濃度は10^-7なので,中性のpH=-log(10^-7)=7
・デシベルdBは,ゲイン(増幅率)の対数をベルBと言い,その10倍をデシベルdBと言います.
100倍のゲインならlog100=2B=20dB.
・地震のマグニチュードMは,地震のエネルギーの対数です.
マグニチュードが1段階変わればエネルギーは約32倍になります.
・恒星の等級には,実視等級と絶対等級があります.実視等級は,一番明るい星たちを1等星,
肉眼でやっと見える星たちを6等星に区分したことに始まります.
1等星と6等星では明るさが100倍違いましたので,結局1等級違えば明るさは100^(1/5)=2.51・・倍違います.
絶対等級というのは,恒星までの距離を考慮し,恒星がすべて10パーセク(32.6光年)の距離にあるとして,
実視等級を換算し直し,地球からの距離にはよらぬ恒星本来の明るさを表します.
この換算には,明るさは距離の2乗に反比例することを使います.

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ハワイの火山

ハワイ島には3つの主な火山があり,北がマウナケア,中央がマウナロア,南東がキラウエアです.5月に噴火しているのはキラウエアの東端ブナ地区の一部です.ホットスポットからマグマが上がり,地殻プレートは西に移動していますので,活動はだんだん東に移ります*注.
注)
ハワイが乗っている太平洋プレートは,東太平洋海嶺(アメリカ大陸の西側に沿ってある)から生まれて,日本海溝で沈みます.海嶺はマントル対流の上昇箇所にできる山で,ここを中心に,東西にプレートが送り出されます.東に送り出されたプレートは米国大陸の下に潜り込み(サンアンドレアス断層=地震の巣),西に送り出されたプレートは日本海溝で沈みます.マグマの発生源は上部マントルのホットスポットにあり,移動するプレート(地殻)を通り抜けてマグマが上がって来ます.プレートが西に動いているので,火山の活発な場所は,地上で見ると東に動くように見えます.
マウナケア,マウナロアは4,000mを越す山ですが,キラウエアは活動中で標高もまだ1,000mちょとです.マントル上部からマグマが上昇して来ますが,海洋底の地殻は薄いので,マグマだまりで地殻成分を融かす暇がなく,ケイ酸塩成分の少ない流動性の高い玄武岩質のまま穏やかに噴火し溶岩流となります.セントへレンズ山や富士山の様な内陸部では,マグマのケイ酸塩成分が少し増えますから粘性が上がり爆発的な噴火があります.写真(玄武岩basalt)は,私が昔採集したマウナケアのKapa'ahu溶岩です.溶岩流の筋跡が見えます.白っぽく見えるのは,リューサイトKAlSi2O6の小さい結晶です.この溶岩は気泡が抜けて穴だらけ状態(アア溶岩)とは違い,かつ,リューサイトも結晶化しているので,溶岩流の内部でゆっくり固まったものと思います.

hawaiicountygis.maps.arcgis.com
噴火地図

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モーリーの定理

モーリーの定理:「3角形の各内角の3等分線の交点(最初に出会う3点)が作る3角形は,常に正3角形である」
1899年にフランク・モーリーによって発見されたこの定理の証明はとても難解です.一般角の3等分自体が,定規とコンパスで作図不可能ですから,この定理の証明も困難そうです.この定理の背景に不可能作図の角度の3等分があるので,この定理は盲点だったのでしょう.ユークリッドの時代に発見されても良さそうな初等幾何の定理なのに,発見は最近百年の出来事です.

 

■Frank Morlay(1860年英国生まれ.ケンブリッジ卒業.1887年より米国定住)学生時代から始まるThe Edcational Timesへの数学問題(主として幾何学)掲載は,50年にわり,60題を越す.1900年,ジョンズ・ホプキンス大,数学教授
米数学協会Bulletinの編集,ジョンズ・ホプキンス大では the American Journal of Mathematicsの編集を30年間務めた.

http://jwilson.coe.uga.edu/EMT668/EMAT6680.F99/Estes/morley/morley.html

■モーリーの定理の証明は,モーリー後も,いろいろな人が,さまざまな方法で証明しました.三角関数を使ってM. Satyanarayana,初等幾何学的にN. Naranjengar(1909), Alain Connes(1998), John Conway などなど....
数学では,定理を発見し証明するのは価値がありますが,すでに証明されている定理でも,別の方法で証明することは重要です.特に,その証明法が飾りを削ぎ落し定理の本質を暴き出すものであれば非常に価値が高い.皆様もこの定理に挑戦ください.

■ Taylor and Marr(1914)は、2つの幾何学的証明と1つの三角関数を使った証明を提示しました.
この定理を広げて,さらに美しい驚くべき結果も得られています.内部の正3角形に加えて、外部に4つの追加の正3角形があります(Wells 1991).

 

 

 

 


http://mathworld.wolfram.com/MorleysTheorem.html

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月形の面積

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数学月間SGK通信 [2018.06.12] No.223
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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練習問題
(左図)直角3角形の各辺上に半円形が描いてあります.これらの面積に以下の関係があります.青い半円+黄緑の半円=オレンジの半円
ピタゴラス(3平方)の定理,a^2+b^2=c^2 (a,bcは直角3角形の辺長で,cは斜辺)が成立するのだから,当然ですね.
(右図)青い月形+黄緑の月形=三角形の面積(ピンク)を証明しなさい.

 

 

 

 

 

 

 

 

■解説

 

 

 

 

 

 

 

 

直角3角形で成り立つピタゴラスの定理はa^2+b^2=c^2(ただし,cは斜辺の長さ).この関係を面積で表現すると,それぞれの辺を1辺として描いた正方形の面積の関係であることはご存知でしょう.今度は,それぞれの辺を直径とする半円を描いたものが左の図です.それぞれの半円の面積は,piを円周率とし,(pi/8)・a^2,(pi/8)・b^2,(pi/8)・c^2ですから,ピタゴラスの定理を各辺を直径とする半円の面歳の関係だと言ってもよいのです.ピタゴラスの定理は2乗和の関係で,2乗と言えば面積ですから,例えば,それぞれの辺の上に正3角形を描いて,それらの面積の間に成り立つのがピタゴラスの定理ということもできます.
さて,ピタゴラスの定理から,左図の半円の面積に関して,
青い半円+緑の半円=黄色の半円
が成立します.
右図をご覧ください.左図の黄色の半円は,右図でcは白い円の直径ですから,じっと見ると,ピンクの直角3角形が,この白い半円に入っていることがわかるでしょう.面積の関係は,青い半円+緑の半円=白い半円 です.
結局,青い半円と緑の半円と白い半円の巨通部分を減じると,
青い三日月+緑の三日月=ピンクの直角3角形
の関係が得られます.

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今年の数学月間懇話会テーマ

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数学月間SGK通信 [2018.05.08] No.218
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■皆様,連休をどのようにお過ごしでしたか.私は,数学月間のHPの改装を進めています.
当分は,現状HPの方 http://sgk2005.sakura.ne.jp/ を訪問ください.
5月5日は,友人の出るハーモニカの発表会を聞きに行きました.
ファミリー和谷クロマティック・ハーモニカ発表会(ルーテル市ヶ谷センター)です..
オルガン,手風琴のようでもあり,オーボエ,フルートのようにも,時にはバイオリンのようにも聞こえる音色.
ジプシー風,タンゴ風の曲想に似合いながら,四重奏も合奏も協奏曲もこなせる凄いポテンシャルのある楽器です.
フルートでも難しい速いパッセージの超絶技巧に感動.和谷奏扶先生はハーモニカ音楽の開拓者.
目からうろこの発表会でした.

■数学月間懇話会(第14回)のお知らせ
●場所:東大駒場キャンバス,数理科学研究科・002号教室
●日時:2018年8月22日,14:00-17:00
●参加費無料
直接会場にお出で下さい.
●主催:数学月間の会,日本数学協会
●問い合わせ:sgktani@gmail.com
●プログラム:
1.企業での数学活用の実際,渡邉好夫(リコーICT研究所AI応用研究センター,技術顧問)
2.エントロピーと対数,対称性,宮原恒昱(首都大学東京名誉教授・客員教授)
3.パズル玩具と数学の接点-「解ければ終わり」ではもったいない,秋山久義(数学遊戯研究家)
●17:30より構内カフェテリアにて懇親会(飲食は各自払い)
皆さんのご参加をお待ちします.
今年は,例年(7月22日)とちがい8月22日ですご注意ください!

■企画意図の口上
(1)googleやamazonなどが典型ですが,色々なデータが収集され予測に使われています.
皆さんも日ごろ実感されていることでしょう.このビッグデータの時代に,
企業もデータサイエンスに無関心ではいられません.しかし,ビッグデータの以前から,
機器の設計にあたっては動作原理のシミュレーションなどの数学モデルが企業でも使われておりました.
数学が色々な分野で技術を支えているのが具体的に実感できるでしょう.

(2)天才ボルツマン(オーストリアの物理学者)の墓碑には,S=k・ln(W)と刻まれているそうです.Sはエントロピー,
Wは状態のとり得る”場合の数”,ln(W)は”場合の数”の自然対数をとること,kはボルツマン定数です.
対数をとると,ln(A・B)=ln(A)+ln(B) のように,積が和になりますので,
”場合の数”の積は,エントロピーの和に対応します.だからここに対数がでてくるのですね.
ボルツマンは1906年自殺しました.分子の実在も証明されない時代に,
気体分子運動論,統計力学を主張した天才は学会に受け入れられませんでした.
あと1年頑張っていればよかったのですがね.

(3)パズルやマジックの多くは,数学に深いかかわりがあります.
試行錯誤して,答えが見つかればそれで終わりとするのが普通です.
でもそれでは勿体無い.正解が発見でき,本質に肉薄した所にいるのだから,
その手順を整理してみると,その奥にある数学原理が発見できるでしょう.
2010年没のマーチン・ガードナーの著作が懐かしいですね,
おいでになれば,珍しいパズルグッズにも触れることができます.

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フィボナッチ数列と対数螺旋・続き

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数学月間SGK通信 [2018.05.01] No.217
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆様,ゴールデンウイーク(この頃あまり使われないようですが)の真っただ中
良い休日をお過ごしでしょうか.私は数学月間の会のウエブサイトの改装の準備中です.
公開までにまだ日にちがかります.
桜が咲き始める3月末から,顔見知りのシジュウカラさん達が姿を現さなくなりました.
しじゅう来ていたのにぱったり来なくなり心配になりますが,これは毎年のことです.
林の奥の方ではシジュウカラさん達の良い鳴き声がさかんに聞こえます.巣にいて
きっと忙しいのでしょうね.
シジュウカラさん達がまた来る日までに,百日紅の葉はすっかり茂っているでしょう.

◆前号でフィボナッチ数列と対数螺旋の話をしましたが,図を示しておきます.
フィボナッチ数列を1辺とする正方形で平面を埋めていくと,螺旋ができます.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/91/18506991/img_0_m?1525098033

◆互いに隣り合うフィボナッチ数は互いに素です.
[F(n+1),F(n)]でF(n+1)とF(n)の最大公約数を表示することにします.
[F(n+1),F(n)]=[F(n)+F(n-1),F(n)]=[F(n-1),F(n)]
この関係はn=1のでも成り立ち[1,1]=1ですから,隣り合うフィボナッチ数はいつも互いに素です.

◆話は変わりますが,合同式についてちょっと触れます.
a=b(mod n) と書いて,aはnを法としてbに等しい(合同)と読みます.
つまり,a-bはnで割り切れるということです.
この関係を使うと整数全体をnで割った時の余りが,0,1,2,・・・,n-1のn個のグループに分類できます.

例えば,(mod 3)の時には,すべての整数を3で割った時の余りで3つのグループに分類できます.
余りが0,1,2のグループ(集合)です.集合の名前を余りで表記し,
それぞれ0,1,2としますと,次の性質があることがわかります.
0+0=0,0+1=1,0+2=2,1+1=2,1+2=0,2+2=1
3つのグループ0,1,2は,加法で群を作るようです.

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対数螺旋とフィボナッチ

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数学月間SGK通信 [2018.04.24] No.216
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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下の写真は,先日紹介したロマネスコです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下の動画も参照ください.
https://www.facebook.com/scifri/videos/10154643456998403/?t=0

向日葵の花の芯やロマネスクを見てると螺旋が見えてくると思います.
右回りの螺旋が見えたり,左回りの螺旋が見えたりします.
目がちらちらしますが,それぞれの螺旋の数を数えて見ましょう.
多分,ロマネスコでは,左回りの螺旋が13,右回りの螺旋が21見えてきたりします.
向日葵でも同様です.1,1,2,3,5,8,13,21,34,...はフィボナッチ数列で,
向日葵の花の芯,ロマネスコ,松ぼっくり,パイナップルなどなどで見られる
螺旋の数は,13,21などのフィボナッチ数です.
このような配列が成長により生まれる仕組みは次のようなものです.
中心で一定の時間間隔で次々に島が生まれるとして,
生まれた島は植物の成長と共に一定の速度で周辺方向に広がりながら押し出されて行きます.
ただし,島を押し出す方向が,360°/φだけ回転します(φ=1.6180・・・の黄金比).
円周を黄金比で分割しながら,その方向に向きを変えて生まれた島を押し出していく仕組みです.
このようにすると島の配列に螺旋が生じ,螺旋は対数螺旋になります.
なぜ円周を黄金分割しながらその方向に島を押し出すのかわかりませんが,
混み具合が均等になるので,成長の自然の原理でしょう.
植物が数学をしているわけではありません.

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転換点とは

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数学月間SGK通信 [2018.04.17] No.215
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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内閣支持率が30%を切るところです.30%を切ると一気に崩壊に向かったり,
サンゴ礁の環境保全臨界量(自己組織化臨界)があったり,このような現象は良く知られています.
俗にいう,「泥船から逃げる」と「勝ち馬に乗る」のせめぎ合いのバランスです.
このような二者択一の転換点(tipping point)の数学モデルが,米国数学祭り
(4月19日のオンラインQ&Aで)取り上げられるようです.
文化や環境などのシステムの定常状態が急激に変わる点が転換点です.
復元しようとする力と変えようとする力のバランスで方向が決まります.
米国の国民行事,数学祭のニュース(2018年4月)の情報です.
ワシントンDCで,2019年開催されるNational Math Festivalまであと1年!
4月19日(木)午後2-3時(東部時間)に,以下のオンラインQ&Aがあります.
「何でも聞いてください:Tipping Point 転換点と惑星地球」,
Dr. Mary Lou Zeeman (Bowdoin College)
https://www.facebook.com/nationalmathfestival/

さて,4月は新年度でいろいろ行事があります.皆様の方でニュースがありましたらご連絡ください.
今年の数学月間懇話会(第14回)は,8月22日の開催で企画しています.以下は数学と離れ私の近況です.

◆4月14日は,合同大施餓鬼会に参加しました.法話は古河の一向寺の峯崎住職がされました.人生の意味についてです.
「人の存在は他者から与えられる」当たり前の事が当たり前でなくなるのを自明性の崩壊という.
今まで何とも思わなかったことが,幸せだったなと気づくのは,自明性の崩壊によりその存在に気づいたからだ.
ミラーニューロンとよばれる脳神経細胞は,他者の行動を見たり,声を聞いたりしたことを,
自分自身がまるで同じ体験をしているように感じるという.
「他者との関わりがあって自分が存在する」のです.仏となった死者からの視線については,
次回お話されるそうです.

◆4月16日は,市村清新技術財団の50周年記念式典がありました.
たくさんの懐かしいOBの方にお会いできました.今年の産業賞7件,学術賞7件の表彰がありました.
どれも興味深い技術成果ですが,例えば,学術賞の功績賞で,全身透明化による全細胞解析の実現,
上田泰己(東大)には,ギョッとしてしまいました.透明人間ならぬマウス一匹を透明化です.
死んでいるマウス(もちろん生きてはいません)を漬けておいて透明にする処理液の技術です.
この目的が部外者には始めは良くわからなかったのですが,透明化すると,
細胞1つ1つの積み重ねが解析でき,がんが細胞をどのように伝わるかなど病理現象の研究に役立つそうです.
観察は蛍光顕微鏡によるようで,横からシート状の励起光を照射し,
照射された断面からの蛍光を顕微鏡で観測します.断層の3D画像も容易です.
サンプルが透明でなければシート状の励起光照射ができませんからね.
私はこの観察の道具に用いたシート顕微鏡の方に興味があります.
昔,走査型軟X線分光顕微鏡STXMで,化学状態のマッピングをした(3D像も得た)ことを思い出しました.
ちょっと似ている所があります.

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フィボナッチ数列

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数学月間SGK通信 [2018.04.10] No.214
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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フラクタルとフィボナッチ数列についての以下のビデオをご覧ください.
https://www.facebook.com/scifri/videos/10154643456998403/?t=0
ここに出て来る野菜のロマネスコの写真を以下に載せておきましょう.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/73/18482473/img_1_m?1523272964
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/73/18482473/img_0_m?1523272964
不思議な形ができていますね.この形の成長の基になるフィボナッチ数列についての説明をしましょう.
フィボナッチ数列の定義は
F(n+2)=F(n+1)+F(n), F(1)=1,F(2)=1 です.
等比数列の型F(n)=r^nの一般項を求めてみましょう.
 r^(n+2)=r^(n+1)+r^(n)
すなわち, r^2-r-1=0 を満たすものが解です.
この解は α=(1+√5)/2 , β=(1-√5)/2
一般項は F(n)=cα^n+dβ^n となります.
この解をF(1),F(2)に代入し,次の連立方程式が得られます.
cα+dβ=1=F(1)
cα^2+dβ^2=1=F(2)

一方,α,βは2次方程式の解だから
α^2-α-1=0
β^2-β-1=0
を用いると,連立方程式は
cα+dβ=1
c(α+1)+d(β+1)=1
となり,c+d=0 を得ます.そして,c=1/(α-β)=1/√5
つまり,一般項は F(n)=c(α^n-β^n)=(α^n-β^n)/√5 が答えです.

さて,|β|=0.618・・・<1なので,n→∞でβ^n→0
従って,n→∞で,F(n)=α^n/√5に最も近い整数です.なぜなら.F(n)は整数だからです.
隣り合うフィボナッチ数の比は,n→∞のときα=(1+√5)/2=1.6180・・・
(αは黄金数)になります.

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周期的平面の数学

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数学月間SGK通信 [2018.04.03] No.213
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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すっかり暖かになり桜も咲きました.
皆様も良いお花見を満喫されたでしょうか.
毎日,私の所にやって来たシジュウカラさん達もこの良い陽気に忙しいらしく
このところ無沙汰がちになりました.
さた,3月27日の数学月間勉強会,結晶空間群で物理と数学を学ぼう(第4回)は
15名の参加で,無事完結しました.
このシリーズのメインイベントは,第3回の結晶平面群(結晶空間群)の数学でしょう.

周期的な空間(=結晶空間)の数学の復習をしておきましょう.

第1回では周期を扱い,第2回では有限図形の対称性=点群を扱い,
第3回では繰り返し模様(周期的な空間)の対称性ー空間群ーを扱いました.
有限図形の対称性に比べて周期的な空間の対称性はなじみのない人が多いようです.
しかし,周期的な空間はとても重要です.結晶の中は無限に繰り返す世界です.
第4回は,点群から空間群への拡大に言及しました.
2次元の繰り返し模様(=壁紙模様)は,エッシャー〈1944頃)の作品に見られます.
(1)格子
2次元空間では,互いに独立な2つの基本並進ベクトルa1,a2がとれ,
a1,a2の整数係数の1次結合をすべて集めたT={h・a1+k・a2丨h,kは整数}を,
この平面の格子点の集合(あるいは単に“格子”)といいます.
集合Tは無限集合になりますが, 群の条件を満たしており,Tを並進群とも呼びます.
ブラべ格子とは,結晶点群の対称性を基準に,格子のタイプ分類をしたものです.(図1)

(2)点群一有限図形の対称性一
1点の周りの対称操作(点群の対称操作)を考察しましよう.
回転対称軸には,1, 2,3,4,5,6,・・・,∞回(回転対称)軸があり得ます [何もしないのは1回軸].
n回軸Cnとは,360°/nだけの時計回りの回転操作で,n回続けるとCn^n=360°=0°(mod 360°),
これは恒等操作1です.回転操作Cnからは,回転群Cn={Cn,Cn^2,…,Cn^n=1}が生成されます.
その他の2次元点群で見られる対称操作には,鏡映m [対称心-1は,2次元空間では2回軸と同じ]があります.
鏡映操作mが生成する鏡映群はm={m,m^2=1}
(注)mod360°とは360°回転したら同じものとする[360°を法として同値]という意味です.
別の例では,時計の文字盤があります.我々は13時のことを1時とも言いますが,
これは,mod12[12を法として同値]を用いた結果です.

(3)結晶点群一格子と両立できる点群一
結晶では,点群の回転対称性と並進群(格子)の対称性とが両立しなければなりません.
2,3,4, 6回軸は,それぞれに両立できる格子 がありますが,5回軸の場合はどうでしょう.
1つの5回軸が支配する局所的な作用域として正5角形タイルを描きます.
平面に周期があり複数の5回軸が配列している状態を考えると,
各5回軸は自分の局所的な作用域(正5角形タイル)内でのみ有効なのではなく,全域でも有効です.
各5回軸の局所的な作用域は,互いに他の5 回軸により変換し合い,全体として不変な配置となるべきです.
これは2次元平面を正5角形タイルで隙間なく張り詰めることと同じで,そのようなタイル張りは実現不可能です.
したがって,5回軸と両立する格子はあり得ません.7回以上の回転対称軸に関しても同様で,
結局,格子と両立できる(=結晶空間で許される)回転対称は,2, 3,4,6回軸に限られることになります
[ただし,2次元,3次元空間 での話].

(4)空間群の作り方〈2次元の場合)
2次元空間では,10種の結晶点群G:1,m,2=-1,2mm, 3,3m,4,4mm,6,6mm,
および,5つのブラべ格子T:clino-P (斜交単純格子),ortho-P(直交単純格子),ortho-C (直交C面心格子),
tetra-P(正方単純格子),hexa-P(六方単純格子)が数え上げられます.

周期的な空間での対称操作が作る群が結晶空間群で,結晶空間群Φの要素は,
結晶点群Gの要素と並進群Tの要素との積(結合)です.Φ=G×T

壁紙模様の平面群17種の構成を見てみましょう.
壁紙模様は,1つの“モチーフ”(=単位胞の中身)を無限にある格子点の上に配置して構成されています.
格子点は無限にあり,どの格子点にいても常に世界の真ん中ですから,
「格子点距離の倍数だけ移動した点はすべて同価」との見方をします.
これを“格子を法として(mod T)同値”と言います.
無限に繰り返す“モチーフ”の分布を,単位胞内の1つの “モチーフ”に還元できます.
[準同型写像で,Φ/T=G のように表現します.ただし,並進群TはΦの正規部分群であることを用いています]
この見方をさらに進めると,“モチーフ”内部の対称性を記述する結晶点群G自体も,
格子を法として(mod T)閉じればよく,G(mod T)と拡張でき,
拡張された結晶点群G(mod T)と並進群Tとの積で作られる空間群もあります.
このような夕イプの空間群には, 映進面(鏡映 + 鏡面に平行に格子距離/2の並進),
n回螺旋軸(360°/nの回転 十 軸方向に格子距離/nの並進)などの操作があります.
ただし,螺旋軸が現れるのは3次元以上の空間で,平面群にはありません.
例として,平面群P2mm, P2mg, P2ggの作り方を図示します
(注)頭のPは格子を表し,続く2mmなどが結晶点群の対称要素です.後者の2つ平面群には,映進面gが現れます.
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