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STEAM教育と数学月間活動

STEM教育(ステムきょういく)とは、"Science, Technology, Engineering and Mathematics" すなわち科学・技術・工学・数学の略語で,AIやArtも加えてSTEAM教育といわれる理数教科の統合教育であります.STEM教育は,米国で2003年ごろから始まりました.近年,日本でもSTEM教育の必要性が叫ばれるようになりました.これらの科目の中で統合的に数学を教える試みが重要ですが,まだ成功しているとはいえません.われわれが訴えている数学月間の視点は,STEM教育へも貢献できるものと思います.
数学はあらゆる文化・学術の基盤で,科学,工学,産業,芸術,医学,経済など,社会のあらゆる分野を数学が支えています.しかしながら,一般市民,特に,生徒・学生とその両親は,数学学習を敬遠する風潮にあり,これが数学力の低下をもたらしています.米国の「数学月間」MAM(Maths Awareness Month)は,議会上院が決議し、続くレーガン大統領の宣言(1986年4月17日)により国家的な行事として開始されて今日に至ります.米国MAMは,数学系の学協会が参加するJPBM(Joint Policy Boad for Maths)が,毎年,社会を反映した数学テーマを選定し,毎年4月に種々の数学イベントを展開し,国民からの事後評価も受けます.皆が知りたい時局の数学を,種々のレベルで学習できるウエブ・サイトが充実し,そこにエッセイや論文が集積され,そのテーマの数学を基礎から最先端まで,学生が独習できる優れたガイドになります.MAM期間には,一般から専門家まで,小学生から大学生まで,いろいろなレベルのイベントが全国で展開されます.レーガン宣言で国家的行事のMAMを決断した背景には,国民の数学力が低下し,米国の産業力も低下するとの焦りがあったといわれます.日本も同様な状況にあり,国家的行事の数学月間が望まれます.
社会のさまざまな分野と結び付けて数学を知るという数学月間はSTEM教育と精神は同じです.その活動も数学愛好者内にとどまっているのでは意味がなく,社会に横断的に呼びかけ活動し,「社会と数学の架け橋」になることが必要です.多くの方々が数学月間の会に参加されることを願っております.

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球面正12面体の見える万華鏡

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数学月間SGK通信 [2018.11.13] No.241
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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いろいろな多面体の見える万華鏡(立体万華鏡と仮に呼ぶことにします)を作っています.
アルミ板やプラスチックの鏡は像がきれいに映りますが
ミラー紙を用いても,ここで取り上げているような立体万華鏡は良好に作れますので.
チャレンジしてみてください.


球面正多面体は,アラブの数学者,アブル・ワーファ(1000頃)に始まります.
球面正多面体{p,q}は,球面正p角形が,頂点でq個集まっているもので,
球面正p角形の1つの内角は2π/qです(図D).そして,球面p-多角形の辺はすべて大円であることに注意しましょう.
ここで例に取り上げるのは,正12面体に相当する球面正12面体=球面{5,3}多面体です.

 

 

 

 

 

 

 

メビウスは多面体万華鏡を発明します(1850)が,これは,球面p-多角形を.
2p個の球面直角3角形に分割することを使います(図A).
分割された3角形の角度は,π/p,π/q,π/2,このような直角3角形を(p,q,2)のように記述します
万華鏡は,3角形(赤く塗った)の各辺となる大円を鏡にすると得られます.
Aは,メビウス万華鏡になり,正5角形の面を10個の直角3角形に分割しています.
Bは,正5角形の面を5個の2等辺3角形に分割しています.Bには,Aに存在した鏡映対称面が1つ消えています.
Cの赤く練った正3角形の周囲の辺の大円を鏡に置き換えて万華鏡を作れば,正20面体の映像が見えます.
それぞれの映像写真は続きに

■正12面体像の見える万華鏡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・左図は,この展開図(直角3角形ーピラミッド万華鏡)による正12面体の映像で,正5角形の面が10分割されています.

・右図は,正5角形の面の1/5が万華鏡の内部(非対称領域)にあるような万華鏡による映像です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の写真は,やはり正5角形の面の1/5が万華鏡の内部(非対称領域)にあるような万華鏡ですが,
展開図に示す光の窓になる部分が円形であるため,球面正12面体の映像が見えます.


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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フィボナッチ数列と置換

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数学月間SGK通信 [2018.10.16] No.237
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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フィボナッチ数列というのは,1,1,2,3,5,8,13,....のように続く数列です.
この数列のn項a(n)は,a(n)=a(n-1)+a(n-2)と再帰的に定義できます.
フィボナッチ数列は,様々な分野の思いがけないところで出現します.
この再帰的な機構が支配している現象が様々な分野にあるからです.

集合S(n)={1,2,3,....,n}を考えます.この集合の上の置換を考えます.
置換の結果は,n個の文字の順列になりますから,n!個の置換があります.

さて,文字が始めの位置から移動しない,あるいは,たかだか隣への移動だけが許される
と制限してみます.つまり,どの文字も1つおいた隣以上の移動はしない置換だけを対象にします.
このような置換を,「距離1の置換」と呼ぶことにします.
具体例(次の図)を示すので,「距離1の置換」とは何かは理解できるでしょう.



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Qestion
S(n)上の「距離1の置換」の数をa(n)個とします.n≧1に対してa(n)を求めなさい.
Answer
S(1)に対しては,a(1)=1
S(2)に対しては,a(2)=2
S(3)に対しては,a(3)=3
であることを,確認してください.
次は,a(n)=a(n-1)+a(n-2)が成立することを証明します.
・S(n)の最後のnを動かさない「距離1の置換」の数は,S(n-1)上の「距離1の置換」の数a(n-1)と同じ.
・S(n)で最後のnを動かすとすれば,nの行先はn-1で,空いたnの位置に来れるのはn-1しかありません.
従って,この場合の「距離1の置換」の数はS(n-2)上の「距離1の置換」の数a(n-2)と同じです.

さて,S(n)の最後のnが動くか/動かないかは互いに背反の事象ですから,
両者の和 a(n-1)+a(n-2)がa(n)に等しくなります.(証明終わり)

この式の形は,フィボナッチ数列の定義と同じ形ですから,
a(n)は,第1項が1,第2項が2から始まるフィボナッチ数列になります.

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フィボナッチ数列が現れる例★

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数学月間SGK通信 [2018.10.30] No.239
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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フィボナッチ数列F(n)は,
1,1,2,3,5,8.13,21,34,.....のような数列です.
F(n)=F(n-1)+F(n-2) と再帰的に定義されます.
このような数列は,いろいろな所に現れます.
得られた数列が,フィボナッチ数列であることを証明するには数学的帰納法を用います.
今回は,その典型的な例を取り上げましょう.

■抵抗ラダー回路

ラダーとは梯子のことで,梯子型に抵抗を並べた回路を,抵抗ラダー回路といいます.
例えば,次の図は3段のラダー回路です.

 

 

 

 

A-Bの端子(入力側)から見たインピーダンスをZ_i,
C-Dの端子(出力側)から見たインピーダンスをZ_oとします.
この3段のラダー回路は,A-B側(入力側)にR1の抵抗があるが,C-D側(出力側)にはないので,
左右対称ではありません.入力側から見たインピーダンスと出力側から見たインピーダンスの比から,
減衰率Z_i/Z_o≡Aが定義されるが,A>1なのでアッテネータ(減衰器)として使えます.
抵抗値をすべて同じR1=R2=1とすると,
ラダーの段数mを増やしていくと,減衰率A(m)=F(2m+1)/F(2m-1)は,2/1,5/2,13/5,34/13,...と
フィボナッチ数列が出てきます.
(参考)計算は以下をご覧ください.証明は数学的帰納法を使う練習になります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ラダー回路の応用例
ラダー回路は,アナログ信号が入力されたときに,そのアナログ信号の大きさを,瞬時に8水準に分類する(8ビットのデジタル化)回路(これを8ビットのAD変換といいます)に使われたりもします.
次の図をご覧ください.

コンパレータが7個並列に並んでいますね(カスケード結合).
入力信号の大きさを8水準に分類するのは,
7個のコンパレータの働きで,
その境界値となる7段階の基準電位をそれぞれに供給します.
この7つの基準電位を発生するのが,
一番左の直列に並んだ抵抗ラダー回路です.
nビットのAD変換には(2^n)-1個のコンパレータと基準電位がいります.

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家庭科・調理 角の3等分

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数学月間SGK通信 [2017.11.07] No.192
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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与えられた任意の角の3等分は実在しますが,定規とコンパスだけでは,
これを作図できないということは多分ご存知でしょう.
以下は,ギリシャの幾何学者達が熱心に研究した不可能作図問題です:
(1)与えられた正立方体の2倍の体積の正立方体を作れ
(2)与えられた円と同じ面積の正方形を作れ
(3)任意に与えられた角を3等分せよ
もちろんこのような図形は実在しますが,作図手段を,「定規とコンパスだけを有限回使って」と制限して作図ができるか?という問題です.

■長さa, bの2つの線分が与えられたとき,直線定規とコンパスだけを用いて,
加法a+b,減法a-b,乗法a・b,除法a/b,開平√a
の作図が可能なことは,以下の図をご覧ください.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

定規とコンパスで作図できる長さ

これ以外の作図(例えば,立方根の作図)は定規とコンパスでは出来ません
(証明は難しいのでスキップ).

 (1)ではx3=2(a3)だから,2の立方根の作図が必要
 (2)では,x2=π(r2)だから,πという無理数の開平の作図が必要
 (3)では,x3-3x-a=0という角3等分の方程式の根であるxの作図が必要です.
[ただし,aは,与えられる角度Ω(cosΩ=a/2)により決まる]
例えば,Ω=90°(a=0)のときは,x=√3の作図になり,これは可能です.
しかし,一般角の場合,この3次式の解には3乗根が入ってきますので,作図は出来ません.
注)この角3等分の方程式の導出は以下の図をご覧ください.

 

 

 

 

 

 

 

 


任意の角度の3等分方程式

例として,Ω=60°(a=1)のときは,x3-3x-1=0となり,
p+q√r (p,q,rは有理数)の形の解を持たないので,
角の3等分の作図は(定規とコンパスでは)できません.

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