数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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60÷5(7-5)=?
この答えは24ですか6ですか
60÷5x2=?と聞かれれば,24と迷わず答えられる人が,なぜ6と答えたくなるのでしょうか.これは5と()の間にxが書かれていないことが心理的に影響すると思います.
5(7-5)は文字式のような錯覚に陥り,ひとまとめにして数値を出したくなります.
÷とxの演算が並んだ式は,前から順番に演算するのが決まりです.
割り算を使わず掛け算だけで書き直すこともできます.例えば,
60÷5x2=60x(1/5)x2 のようにです.
60÷5(7-5)=を,分数で書いてみましょう.しかし,
5だけが分母に来るのか,5(7-5)が分母に来るのか不明確です.
(60/5)(7-5)のことなのか,60/(5(7-5))のことなのか,かっこを1組追加すれば明確になります.
逆ポーランド式に,二項に対する演算の繰り返しとして計算手順のグラフを書くと,
解釈の異なるそれぞれの計算手順は以下のようになります.
■さて,文字式の場合は係数と文字の間のx記号は省略されるのが普通です.
9a2÷3a=の答えは,3a か,3a3 のどちらが正しいのでしょうか?
雰囲気的には3aですが,式の機械的な記述は曖昧です.
このような曖昧さを避けるために,()を用いて明確にすべきです.
9a2÷(3a)=3a あるいは,(9a2÷3)a=3a3 のようにはっきりさせましょう.
●以下のコメントが読者より寄せられました.この問題はなかなか面白いですね.
ここに掲載させていただきます.
理学系では『省略演算の優先』を意識している傾向がいくつか見られます。たとえば化学業界では省略演算は優先することが国際的なルールとして明記されていて、先の計算は6と答えなければならないように定められているそうです。
また、物理学のフィジカルレビュー誌の投稿規定にも同様な省略演算の優先が書かれているということですので、こちらも6と答えることが義務付けられていることになります。
算数の世界では、帯分数の計算部分に同様な様子が見られます。{以下テキストの都合上帯分数には()をつけ、整数部分と分数部分の間に『と』を挟みますが、実際には無いものと思ってください}
(2と1/3)×3 は,2+1/3×3 なら,+より×優先なので =2+1=3 と計算するはずですが、
実際には省略演算である+を先に行い、7/3×3=7 と計算します。
ところで、マセマティカで計算すると、メルマガの計算は24が出力されるようです。ソフトのいくつかは24を出力すると聞いています。
以下は想像です。
理学系では古くから省略演算を優先する感覚があったため、そのようなルールが少なくとも上記の物理化学ではルールとして明記された。数学はともかく算数でもそのように教えている部分がある。
一方で後発の計算機業界ですが、こちらはそもそも昔は省略演算は文法違反でエラー扱いでした。それがハードが強力になり対応可能となった時に、理学系の慣習など頭になく、ただ省略演算を補うだけだったために、結果24と計算するソフトが多いのではないかと。実際、カシオの関数電卓では、古い機種では24を答えに出し、新しい機種で6を出力するケースを確認しています。おそらく化学業界あたりから苦情が来てユーザーニーズに合わせたのではないでしょうか?
数学では化学業界と違って国際組織が演算順序をルールとして明記するなんて多分やってないと思います。×が+に優先するなことすら学会による明文化はなく慣習によるものだと思われます。明文化されない以上慣習として定着するまではどちらが正しいとは言い切らないのが無難に思います。ただ、化学業界のルールでも但し書きとして、『ただし、誤解を招かないよう括弧を十分に補うことを推奨する』とあるそうですから、メルマガの式は
(60÷5)(7-5) なり、60÷(5(7-5)) なりにするのが大人の対応ということになりそうです。
数学月間SGK通信 [2019.06.04] No.269
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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2019年の国民数学祭(National Math Festival)は,5月4日(日曜日)に
ワシントンDCと40州の科学博物館で実施されました.
数学のなかを旅し,発見し,ゲームをし,コミュニティのなかで数学の無限の力と喜びを祝いました.
数理科学研究所(MSRI),および高等研究所(IAS)と国立数学博物館(MoMath)の共同研究者は,
この日の素晴らしい成功をもたらした皆様の支援と貢献に感謝します.
ソーシャルメディアであなたの写真を私たちと共有してくださいとのメッセージがあります.
楽しい数月祭りの様子の多くの写真が公開され,雰囲気を知ることができます.
ワシントンDCと各地の科学博物館に,あらゆる年齢の2万人の数学愛好者を惹きつけたものは何でしょうか.
数学の月曜日(Math Monday)という動きがあります.以下にその特徴を述べます.
■楽しい: 子供たちに数学を楽しんでもらいたいので,自分の遊びたいものを選びます.
■無料:ゲーム費用を除いて,始めるのに何もかかりません.
■簡単:始めるのに少数の人々ででき,運営は週に数時間です.
■ボランティアが運営:両親を含み,教師には負担をかけません.
■すべての子供が対象:すでに数学を楽しんでいる数学の弱者だけでなく,すべての能力の子供たちのために.
■ソーシャル:私たちのゲームは子供たちが一緒に遊んで学ぶことを奨励しています.
■毎週(数学月曜日):数学サークルのような毎月のイベントを補完します.
数学の月曜日(MathMonday)をあなたの学校や家庭で始めましょうと呼びかけています.
数学の月曜日はとても良いことで,これは日本の小学校のカリキュラムと全く逆の動きです.
数学の月曜日のやり方は:
- 時間と場所を決めましょう.学生が誰でも来れるような多目的室や図書館のような広い公共スペースで,
昼食時に毎週実施することをお勧めします.
- 保護者のボランティアを参加させ,校長,学校,PTAの支援を受けます.
数学の月曜日で使える無料で提供できるいろいろなゲームがあります.
例えば,
1. ブロックス(プレーヤー4人)
テトリスのようなピースをボードに置き,領土を主張します.
空間的思考力を養います.
2. セット(プレーヤー2~6人)
色,形,数,模様を見て,セットを構成する3枚のカードを見つけます.
3. プライムクライム(プレーヤー2~4人)
素数の加算,掛け算,をし,1から101までピースを進めます.
4. ラッシュアワー
赤い車がでられるように混雑した敷地内で車を滑らせてグリッドロックを脱出.
■数学パズルは,論理,空間思考,計算技術を開発します.
次の問題に挑戦してください:
各式の4つの空所に,すべて1,2,4,7という数を入れて,式が成立するようにしてください.
□+□+□=□
□+□+1=□□
□□+□□=59
□□+14=□□
5□+□□=□5
今日は,YouTubeにある動画の話をします.たいへん興味を引く動画なので,ぜひご覧ください.
この動画の発信元3Blue1Brownは,Grant Sandersonが作ったYouTubeのチャンネルで,
なかなかよくできた可視化された数学入門です.
動画は,物体mは静止しており,物体Mは初速度v0で摩擦のない台上を滑る所から始まります.
Mやmはそれぞれの物体の質量(M>m)で,左側は壁です.
衝突はすべて弾性衝突とすると,エネルギー保存(1)と運動量保存(2)が成り立ちます.
(1)は楕円の式ですが
の変数変換をすれば,新しい変数v3を採用したv1,v3平面では半径v0の円になります.
(2)は,2つの物体m,Mが衝突したとき2つの物体から成る系全体の運動量が保存される(運動量変化が0)ことを示しています.こちらの式も,v2からv3へ変数変換すると,v1,v3平面で傾き-√M/mの直線になります.物体mとMの衝突後に分配される速度変化⊿v1と⊿v2の比は,それぞれの質量に反比例するわけですが,質量mの速度v2を変換したv3に対しては,v1,v3の速度変化の比はそれぞれの質量の平方根に反比例します(2').つまり,v3=-√(M/m)v1+C で,傾き-√(M/m)の直線です.
物体mが壁と衝突するときは,壁は動きませんから,v3の符号のみ変えます.
横軸を速度v1,縦軸を速度v3としてグラフを描くと,
式(1')は,半径がv0の円で,エネルギーが保存される系の状態はいつもこの円上にあるべきです.式(2')は運動量保存を示すグラフで,(-v0,0)の点から出発し傾きー√(M/m)の直線です.
この直線が円と交差する点が,物体mと物体Mの最初の衝突後の速度v1,v3の状態です.
その後,物体mはそのまま滑り壁に衝突し,v3だけが符号を変えます.これは,最初の衝突点のv3の符号を変えた円上の点になります.
このように続けると,円内に納まるのこぎり歯状のグラフができます.
衝突のたびに円周上の,のこぎり歯の先の状態を移るわけで,衝突回数を求めることができます.
YouTubeのアニメーションのように,Mの質量を増加させると,直線(1')の傾きが急になり,
のこぎり歯が細かくなるので衝突回数は増加します.
きちんと計算すると,tanθ=√(m/M)として,
衝突回数Nは,N=2[π/2θ]となり,
Mが大きくなればなるほど,Nは大きくなります.([]は数値の整数部分)
m/M=10-2pとおくと,Mが大きくなる(p→∞)のとき,N→π×10pの整数部分になります.
この記事は数を記憶する方法 https://note.com/sgk2005/n/n15dcfd723999 の続編です.
藤井聡太君の活躍はすごいですね.彼の頭には自分の棋譜はもちろんのこと数多くの棋譜が記憶されており,盤面の映像として取り出せるのでしょう.2019年,5月19日の日本数学協会の講演会の一つに,田村聡子氏(大阪市公立小学校教諭)の講演「ソロバンを取り入れた算数」がありました.
今日の学校教育は,教科書からはみ出たことは一切できない,指導要領にないことは入る余地のない時代だそうです.そのうえ,ソロバン塾よりも公文に行ってしまう時代で,ソロバン教育はなかなか大変です.
私も小学生の頃,ソロバン塾に数か月通ったことはあります.たし算ひき算しか出来ない初級ですので,上級者の技には感嘆するばかりです.その脳の働き方は想像もつきません.
田村先生の話によると,数字がソロバン珠の配列パターンで見えるそうです.私も暗算の時はソロバンを見ていた方が楽ですので,その状態はなんとなく想像できます.
2014/06/10発行のメルマガ13号で,「数を記憶する方法」という英国のエッセイを紹介したことがありますが,3.141592...などの数字の列を,色彩豊かな色の列として見る人がいるそうです.
記憶術でも,こじつけのストーリをつくり,それを映像化して記憶するという方法があるそうです.どうも映像で覚えるのが決め手のようですね.私にはかえって面倒でその良さがわかりません.
日本語では語呂で覚えることはよくやります.英語の語呂合わせは日本語よりも面倒で,この点では日本語の方が有利なようです.
√5=2.2360679は「富士山麓オウム啼く」とやる方が,各数字を同じ韻を踏んでいる言葉と結び付け(例えば),oneワン=バンbun,twoトゥー=シューshoe,threeスリー=ツリーtree,fourフォー=ドォーdoor,.....などとやるより優れているでしょう.
■ソロバンの上級者は,数字でも英語のアルファベットでもピアノの楽譜でも,ソロバン珠の配列パターンで見えるそうです.ソロバンの上級者になると,英語にも音楽にもこの能力は役立つそうでうらやましい限りです.
読み上げ算や読み上げ暗算では,ものすごいスピードで読み上げるのを
聞き逃さず,聞き分け,記憶する.その集中力がすい.
試験会場の自分の座席とスピーカーの位置で,聞きやすい座席位置と聞きにくい座席位置があるそうですが,その違いが明瞭に出るほどの極限状態の集中力です.
場所は指定されているので始めは運ですが,間違った人が抜けて前に詰めるときは,聞きやすい場所を見抜ける人は皆,そこを狙っているそうです.
そろばんの頭の使い方と集中力はいろいろなことでも役立つでしょう.
今回の多面体は,互いに双対な立方体と正8面体を重ね合わせたときの共通部分です.
従って,これらの多面体の対称性は全部同じです.