タグ:SGK通信

会議・研修 不思議な魔方陣

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.05.22] No.008
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
不思議な魔方陣
http://www.mathaware.org/mam/2014/calendar/magicsquares.html
イーサン・ブラウンは,マサチューセッツ,アンドーバーのフィリップス・アカデミィ・
アンドーバーの高校生で,数学マジシャンです.
4×4魔方陣で,観客が任意に選んだ3マスに,観客が任意に選んだ数字(1~20)を置いて
スタートです.さらに観客に,コラムの総和となる任意の数(30~80)を選ばせます.
これらの条件下で4×4の魔方陣を作ります.まるで,“ねずっち”の謎かけ問答のように
直ちに作ります.Fig.1のような魔方陣ができました.
この例では,任意に選ばれたマス位置の数字は,11, 2, 5 で,
観客の提示した総和は79でした(Fig.1のオレンジのマス).
確かに,魔方陣の縦/横/対角線/中心4マス/4隅の4マス/外周角のマス4つ,
などの総和はすべて79になっています.第二のビデオでその作り方がわかります.

Fig.1

 

 

 

 

第三のビデオで,
Fig.2,3のようなラテン方陣の変形から作る方法も紹介されています.

Fig.2                

 

 

 

 

Fig.3

 

 

 

 

4×4の色々な魔方陣を作ってみてください.

0

会議・研修 事故雪崩が過酷事故を生む複雑系

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.05.15] No.006
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ささいな事故が雪崩となり大事故を生む複雑系

■複雑系の事故のトリガーは処々にある
「複雑系とは何か」は,別号で取り上げるとして,
大規模送電網や原発は複雑系です.
2011年7月の数学月間懇話会(第7回)では,これを取り上げました.⇒ プレゼン 
2011年4月の米国MAMのテーマは「複雑系」でした.
米国で何度か起きた大規模停電の仕組みを解析しています.
はっきり指摘のできないような”ささいな原因”(樹木が送電線に触れ
スパーク?)により,送電網に局所に停電が起きた.⇒
⇒ 送電網の残りの部分に過剰な負荷がかかり,健全だった部分の電線が
切れる.⇒ あっという間に,次々と送電網全体に停電が拡がる.
これが,「小さな事故が雪崩となり,大きな事故を生む」という
複雑系での事故の特徴です.

2011.3.11の日本の原発事故でも、同じようなことが起こりました.
あっという間に
全電源喪失⇒再循環配管/圧力抑制プール損傷⇒冷却材喪失⇒炉心メルトダウン
の過酷事故になりました.
今回の事故の引き金は地震・津波だったかも知れませんが,
引き金になるのは,地震・津波だけではありません.
組織やエージェントを含め、何処にトリガーがあるか予測できないのが複雑系です.
原因⇒結果 の1:1対応の単純な因果列がたくさんあるのではなく,複雑系では,
複数の原因から1つの結果が生じたり,
1つの原因が多くの結果に影響を与えるような複雑な因果関係があります.

「今日のアフリカ上空での蝶の羽ばたきが,将来,米国でのハリケーン
の進路に影響を与えるかもしれない」と比喩されるのが,バタフライ・エフェクトです.
複雑系は,<バタフライ・エフェクト>が起こり得る世界で絶対安心はあり得ません.
かように,複雑系では事故の可能性を消すことはできません.
しかし,大規模停電や山火事なら最悪事故が自然に鎮火するのを待つことはできます.
でも,原子力ではそうはいきません.そのエネルギーの莫大さ,放射能の半減期の長さ,
どれをとっても人間のスケールに合いませんから.
------------------------------------
■複雑系の特徴
送電網ネットワーク中にある節点の次数(=その節点に集まる経路の数)
の頻度分布図を作ったとき,節点の次数の高いものも残っているような
(べき乗則分布)ネットワークですと,
次数の高い節点が攻撃されると故障の雪崩につながります.

■べき乗則
大規模停電,巨大地震,所得の分布,.... いろいろな頻度分布に<べき乗則分布>
が見られます.正規分布,ポアソン分布,ワイブル分布など,中心値のまわりに
釣鐘型の分布を作りますが,べき乗則分布では,規模の大きい事象が起こる確率も
いつまでも残っています.被害コストの期待値は,被害コストと確率の積であり,
巨大地震は巨大な被害コストをもたらすので,巨大地震の確率が小さいと言って
無視することは間違いです.原発事故も同様です.

(引用文献)ーーーーー
1.2011MAM、⇒ http://www.mathaware.org/mam/2011/essays/
Cascading Failures: Extreme Properties of Large Blackouts in the Electric Grid
2.数学文化(2011),16,p113-127,
今年の米国MAMの話題と日本の原発事故
3.SGK通信(2011-06)数学月間懇話会報告
⇒ http://www.sugaku-bunka.org/jo2x314rz-453/#_453

0

会議・研修 無限の脅威★

002号はHTML形式で発行したため,txtメールでは,下添え字などに乱れがあります.
まぐまぐサイトでhtmlメルマガを見るを選んで見てください.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.05.09] No.002
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■無限大の脅威(2014年米国MAMの話題より)
今回は,奇妙な数学の話です.数式はうまく表示できているでしょうか?
■発散する級数
S=1+2+3+4+....+n+....=-1/12
正の整数すべての総和が無限大でなく-1/12であるという.正気の沙汰なのか?
このとんでもない結果は,1748年に偉大なオイラーにより導かれた.
発散する数列は悪魔の発明であり,無限級数を用いると,どんな結論でも導くことができる.
発散する級数の研究は,アーベル(1802-1829)に端を発する.
数学者がこの悪魔の細部を解決するのに続く百年を要したのだ.
すなわち,リーマンの解析接続の理論(1859)を待ち理論的解決した.
現代では,物理学(超弦理論,量子計算)や数学(ζゼータ関数)で利用している.
リーマンは素数の分布を調べるためにζ関数に解析接続をした関数の0点を研究し,
リーマン予想を提示した(1856).これはまだ解かれていない.
■オイラーの発見が現実に
オイラー+リーマンの ζ関数は無限級数の形で定義される.
ζ(s)=1+2-s+3-s+4-s+5-s+....
この関数は,実部が1より大きいRe(s)>1複素平面で収束するが,
実部が1あるいは1より小さいRe(s)=<1複素平面では発散する.
そこで,全複素平面(ただし1は極)に,ζ 関数の定義域を拡張
するのに解析接続という手段が役立つ.
S=ζ(-1)=1+2+3+4+5+....
S1=1-1+1-1+1-1+....=1 奇数項までの和
           0 偶数項までの和
この和は,偶数項で止めれば0,奇数項まで止めれば1になる.
しかし,解析接続という理論を使うと1/2になることを以下に示す.
f(x)=1+x+x2+x3+x4+x5+....=1/(1-x)
この多項式は公比xの等比級数だから,|x|<1なら収束し1/(1-x)になる.
もとの多項式は|x|<1の外では発散するので定義できないが,
級数を解析接続した関数1/(1-x)に繋ぎ,形式的だが
x=-1を入れると 1/2 が得られる.
S1=f(-1)=1-1+1-1+1-1+....=1/2
級数S1, S2 などを等式と見立て加減演算をし,Sを求めてみよう.
o+oなどの無限大を数値のように演算しているのが気持ち悪いが
解析接続で収束した級数を用いているので実は正しい結果になる.
S2=1-2+3-4+5-6+.... とすると,
2S2=1-2+3-4+5-6+....+[1-2+3-4+5-6+....]=1-1+1-1+1-1+.... =1/2
ゆえに,S2=1/4が得られる.
S-S2=1+2+3+4+5+6+....-[1-2+3-4+5-6+....]=
=4(1+2+3+....)=4S
ゆえに,S=-S2/3=-1/12
■参考
http://www.mathaware.org/mam/2014/calendar/infinity.html
超弦理論入門,大栗博司,ブルーバックス
リーマン予想を解こう,黒川信重,技術評論社

0

会議・研修 デジタル思考を止め確率を正しく理解しよう

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.05.10] No.003
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆7月22日--8月22日は数学月間(since2005)☆
日本数学協会は,2005年に,7月22日-8月22日を数学月間と定めました.
この期間は,数学の基礎定数 π(22/7=3.142..) とe(22/8=2.7..) に因みます.
この期間に,数学への関心を高めるイベントが各地で開催されるよう応援しています.
イベント情報を,日本数学協会,数学月間の会にお寄せください.
毎年,月間の初日7/22に,数学月間懇話会を開催しています.
お気軽においでください. 詳細は⇒ http://sgk2005.sakura.ne.jp/

■■必要とされる大量データ解析新手法
■大規模データ解析の困難さ!
2011年の数学月間懇話会(第7回)のテーマの一つは,”サイバー世界のモデリング”
北川源四郎氏(統計数理研究所)であった.今日,我々の周囲で莫大なデータが
収集されるようになったが,解析すべきパラメータ数も多くなったので,
データ量がやはり不足している(「新NP問題」).溢れるデータから必要な解析を
行うには,新手法が必要とされる.
数学月間懇話会(第9回)の記録⇒
http://sgk2005.sakura.ne.jp/htdocs/index.php?key=jox165hdn-11#_11

2012年の米国MAMのテーマも,<数学,統計学とデータの洪水>だった.
統計学は,品質管理,医療・創薬・臨床,経済金融,統計調査,データマイニング
などの分野に係わり,現在ますます必要性が増している.
大規模データ(データの洪水)といっても,被験者1人から大量(P種類)の特性データ
を採集できるのだが,解析する特性数より被験者の数(N個)がはるかに少ない
(N<<P)という状態であり,この状態で推論を行うのはとても難しい.
これが「新NP 問題」と呼ばれている.
つまり,大規模データがあるといっても,データはむしろ不足している.
このような状態に適用できる統計的推論の新手法が必要とさる.

■不確かさで満ち溢れた世界!
私達は,観測データからモデル(現象を起こす仕組み)を推定します.
このモデルが,全ての観測データをよく説明したとしても,このモデル(サイバー世界)
が真実であるがどうかは誰にもわからない.将来,このモデルで説明できないデータ
が観測される可能性は消せないのですから.
かように私達の世界は,不確かなことで満ち溢れています.

■■編集後記
私達は,yes/noのデジタル思考に毒されているので,数学や科学は,yes/noの
答えを出せるはずと思い込んでいます.あるいは,判断できないと知りつつ
「専門家の判断」と言って責任転嫁に利用するのは政治の常套手段です.
真実はあるのだが,yesでもnoでもないのが真実.それを,「yes/noに2値化」
するのは科学ではない.まことに理不尽な要求です.
科学が出したグレーゾーンの結論を,自分に都合の良いように2値化するのは,
似非科学で結果だけを報道する大手メディアの数学リテラシーの欠如を憂います.
安全/危険の2値化区分を何処に置きますか?数学や科学で答えを出せません.
その判断は,国民がどのような価値を選択するかの問題です.
これは,科学を超えて判断する<トランス・サイエンス>の課題になります.
数学科学の結果を恣意的に利用され,数学科学の信用を落としてはなりません.
数学月間が今ほど必要な時代はありません.

0

会議・研修 マット・パーカーの27枚のカード・トリック

◆27枚のカード・トリック
米国の数学月間MAMは毎年4月です.今年は,マーティン・ガードナーの生誕百年にあたります.
それを記念して,MAMのテーマは,”Maths, Magic and Mystery”でした.
4月は,毎日一つの面白い話題が発表されました.
27日に発表されたのは「27枚のカード・トリック」でした.
27の枚カード・トリックは,マーティン・ガードナーが1956年に発表したものですが,
それをマット・パーカーが発展した新バージョンです.
詳しくは⇒ 数学月間の会

◆Matt Parker
エジンバラ・フェスティバルでは大人気のコメディ・ショーを持つ数学コミュニケータ.楽しいです.⇒ http://www.standupmaths.com/

◆27枚カードのトリックは次のように演技される:
観客に任意のカード1枚(例えば,スペードA)と,27以下の数字(例えば18)を選ばせる.
演技者は,選んだカードが何んであるか知らない.選ばれたカードを含む27枚のカードは十分に混ぜられ,裏向きの束に積み上げられている.演技の最後には,27枚のカード束の上から18番目の位置に,選ばれたカードを移動して見せる必要がある.つまり,スペードAの上に17枚のカードがあるようにしたい.
この演技のプロセスに,3進法が利用されている.
3進法で17を表すと17=2x30+2x31+1x32で,221と表記される.
(ここでは,1の位から先に表記しているので,慣れている表記と逆順になるのに注意)
演技者は,27枚のカードを,3つの山に,1枚づつ配り分けていく.
選ばれたカードがどの山に入っているか聞いてから,3つの山を,さりげなく重ね合わせる.
再度同じ操作を繰り返す.結局全部で,この操作が3セット繰り返され,1つの束ができるが,不思議なことに求めるカードは,上から18番目に置かれている.
このトリックのミソは,3つの山を重ねる順番にある.重ねる機会は3回あるのだが,
各回の束を作る時,どの山を上(Top=0),中(Middle=1),下(Bottom=2)の
何処に置いたら良いだろうか?
さりげなく手際が良いので見分け難いが,ビデオの後半で,マットがその仕組みを説明する.
日本語の解説は⇒ 数学月間の会
ビデオをよく見て練習しましょう!⇒

0