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数学月間SGK通信 [2014.05.09] No.002
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■■無限大の脅威(2014年米国MAMの話題より)
今回は,奇妙な数学の話です.数式はうまく表示できているでしょうか?
■発散する級数
S=1+2+3+4+....+n+....=-1/12
正の整数すべての総和が無限大でなく-1/12であるという.正気の沙汰なのか?
このとんでもない結果は,1748年に偉大なオイラーにより導かれた.
発散する数列は悪魔の発明であり,無限級数を用いると,どんな結論でも導くことができる.
発散する級数の研究は,アーベル(1802-1829)に端を発する.
数学者がこの悪魔の細部を解決するのに続く百年を要したのだ.
すなわち,リーマンの解析接続の理論(1859)を待ち理論的解決した.
現代では,物理学(超弦理論,量子計算)や数学(ζゼータ関数)で利用している.
リーマンは素数の分布を調べるためにζ関数に解析接続をした関数の0点を研究し,
リーマン予想を提示した(1856).これはまだ解かれていない.
■オイラーの発見が現実に
オイラー+リーマンの ζ関数は無限級数の形で定義される.
ζ(s)=1+2-s+3-s+4-s+5-s+....
この関数は,実部が1より大きいRe(s)>1複素平面で収束するが,
実部が1あるいは1より小さいRe(s)=<1複素平面では発散する.
そこで,全複素平面(ただし1は極)に,ζ 関数の定義域を拡張
するのに解析接続という手段が役立つ.
S=ζ(-1)=1+2+3+4+5+....
S1=1-1+1-1+1-1+....=1 奇数項までの和
0 偶数項までの和
この和は,偶数項で止めれば0,奇数項まで止めれば1になる.
しかし,解析接続という理論を使うと1/2になることを以下に示す.
f(x)=1+x+x2+x3+x4+x5+....=1/(1-x)
この多項式は公比xの等比級数だから,|x|<1なら収束し1/(1-x)になる.
もとの多項式は|x|<1の外では発散するので定義できないが,
級数を解析接続した関数1/(1-x)に繋ぎ,形式的だが
x=-1を入れると 1/2 が得られる.
S1=f(-1)=1-1+1-1+1-1+....=1/2
級数S1, S2 などを等式と見立て加減演算をし,Sを求めてみよう.
o+oなどの無限大を数値のように演算しているのが気持ち悪いが
解析接続で収束した級数を用いているので実は正しい結果になる.
S2=1-2+3-4+5-6+.... とすると,
2S2=1-2+3-4+5-6+....+[1-2+3-4+5-6+....]=1-1+1-1+1-1+.... =1/2
ゆえに,S2=1/4が得られる.
S-S2=1+2+3+4+5+6+....-[1-2+3-4+5-6+....]=
=4(1+2+3+....)=4S
ゆえに,S=-S2/3=-1/12
■参考
http://www.mathaware.org/mam/2014/calendar/infinity.html
超弦理論入門,大栗博司,ブルーバックス
リーマン予想を解こう,黒川信重,技術評論社