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数学月間SGK通信 [2015.03.17] No.055
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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とうとう桜の花も咲きだしました.やるふりだけの中身のない政治や仕組みに呆れます.
メルマガくらいは,実質のある楽しんでいただけるものをと心がけようと思います.
ご希望コメントなどをお寄せください.
■振幅の大きな2重振り子の動画がyoutubeなどに色々あります.
大変滑稽な動きをしますのでまずご覧ください.
http://blogs.yahoo.co.jp/tanidr/16560015.html
にはインターネットから拾った2つの例を掲載しています.
第1の動画は実験,第2の動画はシミュレーション結果です.
なぜこのような話をするのかと言えば,
2重振り子は,振幅の小さいうちは,皆が見たことのある自然な振動をしますが,
ある程度以上の振幅になると,とても不自然な滑稽な動きになるからです.
振幅が大きいときは,始めのスタート位置(初期値)によって結果が変わることにも気づくでしょう.
■このような系(エネルギーが保存される)の運動は,
ラグランジュ関数(運動エネルギーと位置エネルギーの差)に対する
オイラー=ラグランジュ方程式を解けば決定できます.
ラグランジュ関数 L(x(t),x'(t),t)は,座標x(t),速度x'(t),時間tの関数です.
オイラー=ラグランジュ方程式というのは変分原理とも呼ばれ,
ラグランジュ関数の時間積分(これを作用積分といいます)が
停留値となるようなx(t)の経路を見つける方法です.
ここでは,代表して変数はx(t)しか記述していませんが,
実際は自由度の数だけ変数があり,
これと同じ数だけオイラー=ラグランジュ方程式ができます.
エネルギーが保存される系では,ラグランジュ関数は作れるのですが,
オイラー=ラグランジュ方程式は,一般に解けません(解を関数で書けません).
昔,私達が物理学で演習したのは,解のある特殊なケースばかりだったのです.
注)振幅の小さい範囲では,x(t)やx'(t)の2乗まで残す近似で,
線形な微分方程式の固有値問題に帰着します.
詳細はhttp://blogs.yahoo.co.jp/tanidr/16560687.html
■問題は振幅の大きいときの運動を知る方法です.
これは解析的な解が得られないので,
今日のようにコンピュータが使えるようになって数値計算ができるようになりました.
そのためのプログラムは,次のような手順です.
現在の位置と速度をx(n),x'(n)とします.
x(n),x'(n)から加速度x''(n)を得るのは,オイラー=ラグランジュ方程式を使います.
一方,x'(n+Δ)=x'(n)+x''(n)Δ, x(n+Δ)=x(n)+x'(n)Δ ですから,
x(n), x'(n), x''(n)から,時間ステップΔ後の x(n+Δ),x''(n+Δ)が更新できます.
このようにして,初期値から,逐一運動の様子を求めていきます.
■力学系を記述するラグランジュ方程式は存在するのだが,
解を関数で記述できない(解けない)方程式が大多数です.
系の運動を支配する法則(ニュートン力学)は明確なのに,
解が関数で記述できないのです.コンピュータによって
運動は逐一決定できますが,常識と違う予想もつかない挙動が起こる.
分岐やカオスです.このようなことを指摘したのはポアンカレでした.
・1766 オイラー「変分法の原理」
オイラー, ラグランジュ
・1800 ラグランジュ「解析力学」
エネルギー散逸がない系は,オイラー=ラグランジュ方程式が作れる
オイラー, ハミルトン, ヤコービ
・1900 ポアンカレ
可積分の方程式はごくわずか
大部分の方程式は非可積分(関数で記述できない)
ニュートンの法則に従う系の運動は,可積分と決めつけてはいけない.
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可積分 → 予測可能,安定な軌道 互いに独立な因果列
非可積分→ カオス的 干渉し合う因果列