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14を超えるpHとは

私たちが学校で習った「水素イオン濃度指数 pH」の定義では,中性はpH=7で,pHは,(酸性)0~14(アルカリ性)までの数値でした.ときおり,強酸性でpHの-の数値や,強アルカリ性でpHが14を超える数値があるのはどう理解すればよいのでしょうか.わからないことばかりですので,以下で,pHの定義から復習を始めましょう.

以下のHORIBAのウエブサイトにたいへん分かり易い記述があります:

このウエブサイトの説明を要約すると次のようです:
セーレンセン(1909)のpHの定義 $${pH=-log_{10}[H^{+}]}$$ は,その後の研究で,水素イオン濃度$${[H^{+}]}$$ではなく,水素イオンの活量に関係することがわかりました.その結果,pHの定義は1920年に次のように改められました:

$$ {pH=-log_{10}a_{H^{+ } } }$$ ,   $${a_{H^{+ } }=f\times[H^{+}]}$$
これによると14を超えるpHも可能なようです.

■まず,私たちの学校教科書でのpHの定義では;
水溶液のpHは,水素イオン濃度$${ [H^{+}]}$$ の逆数の常用対数として定義されます: $${pH=-log_{10}[H^{+}]}$$
この定義では,何故,逆数なのか考えてしまいます.単純に次のように言った方が良いと思います:pHは溶液中の水素イオン濃度の常用対数をとり,その符号を変えたものである.広範囲の濃度を対象にするので,水素イオン濃度の桁を指標にしたいので,常用対数をとり,符号を正にするためーをつけただけだ.

25℃の純粋の水には,$${1×10^{-7 } }$$mol/L[mol濃度という濃度の単位]の水素イオン$${[H^{+}]}$$(正確には,$${[H_{3}O^{+}]}$$の型)が含まれています.1Lに含まれる水分子のmol数を計算すると55.6molですから,含まれる$${[H^{+}]}$$イオンのmol数$${1×10^{-7 } }$$は,これに比べて非常に小さい.従って,ほとんどの水分子は電離していません.この数値は,「純粋な水」の電気伝導度を精密に測定することにより知ることができます.

多くの教科書には以下のような記述があります:---------------------
$${H_{2}O \rightleftharpoons H^{+}+OH^{- } }$$ の電離平衡定数Kは,水温で決まる定数で;$${\displaystyle \frac{[H^{+}][OH^{-}]}{[H_{2}O]}=K}$$ .
引用終わり------------------

水のイオン積が一定であることは,電離反応速度の質量作用の法則から導かれ,この平衡定数と関連しているようです.しかし,電離度がわずかなために水のmol濃度に変化はないと説明があります.しかし,ここがとても気持ちが悪いのです.溶媒自身であり,同時に溶質でもある水分子のmol濃度とはいったい何なのだ!

ともかく,水分子が電離すれば,$$ H^{+} $$$$ OH^{-} $$は等量ずつ生じるので,それらのイオン積(温度に依存する)は, $$ [H^{+}][OH^{-}]=1×10^{-14} $$であります.

希薄な水溶液の場合は,純粋な水の場合と同様,このイオン積は同じ一定値に保たれるようです.

従って,水素イオン濃度が減少すれば反比例して水酸基イオン濃度が増加する.それぞれのイオン濃度は1を越えることがないとすれば,pHの最大値は14になります.

pHは,酸・塩基の濃度が 1 mol/L よりも低い水溶液の酸性・アルカリ性の度合いを示すための指標として考案されたものです.濃度が 1 mol/L を超える濃厚な酸や濃厚アルカリ溶液では,pHが負になったり14を超えたりします.その上, $${[H^{+}]}$$ から求めると実態に合わない(塩基の場合も同様)ので,その代わりに水素イオン活量 $${a_{H^{+ } } } $$が導入されました.

希薄水溶液でなければ,イオン間の相互作用が強くなるので,溶液中の水素イオン濃度を,イオン活量$${a}$$で置き換えて定義しなおすことが必要になったのです.溶質成分$${i}$$のイオン活量の定義;
 $${a_{i}=e^{\Delta \mu _{i}/RT } }$$

pH緩衝液
緩衝液とは弱酸とその塩の混合液,あるいは,弱塩基とその塩の混合液で作られます.緩衝液は,酸や塩基を多少加えてもそのpHを変化させない性質(=緩衝作用)を示します.
弱酸とその塩の混合液の場合,塩が電離して,水素イオンを発生するので,弱酸の電離を抑える.弱酸の濃度が多少増加しても電離は増えずpHの変動を抑えます.
このよう緩衝効果の例は,例えば,結晶成長に用いるゲル化シリカを,メタケイ酸ナトリウムと酢酸の中和反応で得て(ゲル化にともないpHは多少変化),ゲル中で結晶塩を成長させる反応イオン水溶液を加えるときにもみられます.

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