ブログ

2020年1月の記事一覧

曲線の長さの不思議

http://twitpic.com/8qlket に,√2=2 というパラドックスが提起されています.
このパラドックスの原因は,非常に興味深いので,ここで考察することにします.

問題1

 

 

 

 

 

 

一辺の長さ1の正方形の対角線の長さは√2ですが,上図のように,X軸方向に1,y軸方向に1動く経路(n=0)を考えると長さは2になります.以降,このような折れ曲がり経路を繰り返して行きます(n=1, 2, 3, 4,・・・・).折れ曲がりを繰り返して行っても,いつも経路の長さは2で変わらないことがわかるでしょう.このような碁盤の目のような経路の長さは,マンハッタン距離と呼ばれることもあります(マンハッタンの市街の道は,碁盤の目の様だそうです).マンハッタン経路は,n→で対角線に限りなく近づきますので,√2=2 というパラドックスになります.

どこがいけないでしょうか?

問題2

同様な問題に以下の様なものがあります.https://note.com/keyneqq/n/n2ead38a59af5
半径1の円の円周は2πです.半径1の円に外接する正方形の一辺の長さは2ですから,半径1の円周のマンハッタン距離は8です.n=0から出発してx方向,y方向への折れ曲がり数を繰り返しマンハッタン経路は,限りなく円周に近づきますが,マンハッタン距離は8のままです.
従って,2π=8,すなわち,π=4となります. どこがいけないでしょうか?

 

 ■さて,これらの問題に見られるパラドックスは,どこに原因があるのでしょうか?
これらのすべての曲線はいずれも連続であることは確かです.碁盤の目に沿って辿るマンハッタン経路を回細かく繰り返した曲線は,至る所ギザギザで,微分不可能な曲線になっており,曲線の長さを微分係数を用いた積分で定義することができません.2点間(x1,y1),(x2,y2)のマンハッタン距離の定義は|x1-x2|+|y1-y2|で,碁盤の目(メッシュ)を細かくすればするほど,マンハッタン経路はいくらでも目的とする曲線に近づけることはできるのですが,マンハッタン距離は不変です.
(メッシュで定義される碁盤の目のデジタル世界でも,差分により微分係数が定義できますが,そのときもユークリッド距離を用いて定義します)

マンハッタン経路で定義される曲線は,無限回折れ曲がりを繰り返すことで,目的とする曲線にいくらでも近づきますが,マンハッタン距離が変化するわけはありません.

繰り返しの手順を見て,折れ線のフラクタルとみなしフラクタル次元を求めると,この折れ線の次元はやはり1次元になりました.折れ線の幅がフラクタル次元を生むというような説明も見かけましたが,そうではなくフラクタルはこの問題では関係ありません.この問題で人を驚かせるパラドックスの原因は,単純に距離の定義の違いによるものです.
定義が違うものなので違って当然なのですが,2つの曲線は限りなく近づいて行きますので,定義の違いを忘れて同じ長さだと思ってしまうのが間違いの源です.

0

円に内接する正5角形の作図

半径1の円に内接する正5角形の1辺の長さを求めましょう.
この正5角形の1辺の長さをxとします.
△BACと△ADCは相似(相似比が黄金比Φ)で,形は2等辺三角形(等辺xとすると,底辺Φ・x)です.
Φ・x=x+(x/Φ) ですから,Φは黄金比の方程式 Φ2ーΦー1=0を満たします.
この方程式の解(Φ>1のもの)は,Φ=(1+√5)/2 です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■次に,△BCEと△BOFとが相似であることを利用し,
1:(Φ・x)=OF:CE=(1-y):(x/2) が成立するので, y=1ー1/(2Φ)  

ただし,y=√[(x/Φ)2-((Φ・x)/2-x/Φ)2]=√[x2ー(Φ・x/2)2]=x√[1-(Φ/2)2] 

x=y/√[1-(Φ/2)2]=[1-1/(2Φ)]/√[1-(Φ/2)2]=(√[10-2√5])/2=1.1756

■ 作図
半径1の円に内接する正5角形の一辺の長さx=(√[10-2√5])/2を作図する方法
(証明)ピタゴラスの定理を2回使います.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ 万華鏡への応用

0

PISAの読解力調査

■OECDのPISA(Programme for International Student Assessment)国際的な学習到達度調査で,日本の急激な読解力低下(2018年)が指摘されています.PISA調査は15歳(高校1年)を対象に,読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーの三分野について,3年ごとに実施する調査で,国立教育政策研究所が担当しています.
直近の2018年の試験では,読解力が前回の8位から15位に落ちました.

■日本の読解力の平均得点は504点で,OECD加盟国(移民など多数含む)の平均(487点)は上回ったものの,前回(2015年)から12点下がりました.内訳は408点未満の低得点の生徒の割合が全体の約17%を占め,前回調査から4ポイント増えている.生徒の6人に1人が十分な読解力を持っていないことになる.これほど低得点層が増えたにもかかわらず,平均点の低下は少なかった.これは,文章を解さない児童が増えたが,十分な読解力を備えた児童も同時に増える「二極化」が進んでいるということを意味します.得点分布が,平均中央に山を持つ標準的なグラフでなく,中央の左右に2つの山ができるグラフへと変化しました.
そのような変化は,少なくとも2つの因子が存在することを意味します,本来の読解力だけでなく,影響を与えるもう一つの因子なんでしょうか?それは家庭の経済力かもしれません.現在の日本社会では,貧富の2極化も進んでいますから.あるいは,文科省の言うようにデジタル機器への適応の問題である可能性も否定はしません.

■PISAは,紙に手書きで解答する方式から,パソコンで入力する方式に変更(2015年)したそうです.文科省は「日本の生徒は機器の操作に慣れていないことが影響した可能性がある」と分析しています.パソコンを介したテストの方式を私は良く知りませんが,まず,ディスプレイに問題文が表示され,次に進むと問が表示され,これに応えるという後戻りのできない方式ではないでしょうか.これに解答するのはかなり難しくなる.印刷物を介したテストでは,問を見てからまた問題文に戻り確認して答えるというやり方をすると思います.文科省の分析が,このようなテスト方式の変化のためであるというなら私もそうだろうと思います.しかし,「順位が落ちたのはパソコン入力に戸惑ったせいだ」との分析であるなら間違っていると思います.パソコン利用では,紙のときと違い,読解力だけでなく記憶力など総合的に影響し難しいテストに変わったかもしれません.

 

0

雪の結晶の折り紙(中谷宇吉郎雪の科学館)★

折り紙も数学ですが,この雪の結晶を折るアルゴリズムは複雑でわかりにくいです.
写真の1,2は完成した雪の結晶を,表面から見た写真(1)/裏面から見た写真(2)です.

(1)                  (2) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■スタートに用いるのは,以下に示す6角形の折り紙(3)です.完成品を見ながら,
折り紙(表面側から見て)に,谷折りすべき線(赤色)/山折りすべき線(黄色)を描き込んでみました.

 

(3)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この線の通りに,谷折り/山折りをして,(4)に示す中間体が作れますから,
試行錯誤して,(4)図のような中間体を作るのを目標にしましょう.

 

(4)中間体

 

 

 

 

 

 

 

■中間体(4)の表面側に出た6か所の山尾根の部分を,平らに広げて帯状筋を作る.
この帯状筋の形成のときに,新たに山折りとなる箇所を,
折り紙(3)に青緑色の線で示しておきました.
中間体の山尾根をつぶして帯状筋にするところは,注意深くやりましょう.

0