数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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針金で正4面体ABCDを作り,持ち手をつけて,正4面体をシャボン液の中に浸してからゆっくり引き上げると,どのような面にシャボン膜ができるでしょうか?
実験してみてください.針金枠の正4面体の面にシャボン膜ができると思いますか?
多分,正4面体の中心Oと正4面体の辺でできる三角形,例えば,△OABなどの膜ができると思います.正4面体は辺が6個ありますから,このような膜は6枚あります.
Oから正4面体の各頂点へ,線分OA,OB,OC,ODの4本がありこの線分が3つのシャボン膜の境界になります.
(1)Oから正4面体の各頂点に向かう線分同士のなす角度は何度でしょうか?
(2)△OABのような6つの膜が1点で出会うOのような点が必ずできるでしょうか?
(3)正4面体の4つの面の面積合計と,△OABの面積x6とでどちらが大きいでしょうか?
(4)どのようなシャボン膜の形のつり合いが実現するでしょうか?
色々な疑問が起こり難しい問題です.実験してみて推測してみましょう.
針金の枠が立方体のときは,どのような膜の形になるでしょうか?
実験してみると下図のような膜ができると思います.
このような膜の形ができることを説明してください.
1976年,ドイツのRegensburg大学のKurt Fischerは,神経の生理学モデルを研究し,フィボナッチ数の発生をここでも発見した[177].神経繊維に沿って移動するインパルスは,ナトリウムまたはカリウムのイオンに由来し,n>=2の細胞からなる同一の膜貫通孔を通って流れる.微量のカルシウムイオンCa2+が孔に入ると,孔内のナトリウムイオンNa+の流れを止めることができる.
これらのイオンは,細孔の入り口を除いて,それぞれ1つまたは2つの細胞を占有することができ,これらの2つの状態をそれぞれ1あるいは2と標記する.図3.39は典型的な孔の状態で,0と表示したのは空の細胞である.
ナトリウムは,孔のいずれの端でも出入りすることができるが,カルシウムは孔の左側でのみ出入りできると仮定する.その結果,孔内のカルシウムイオンは,この孔を通るナトリウムの流れを妨げる.
ロシアの数学者Andrey Andreyevich Markov (1856-1922)にちなんで名付けられたこのマルコフ確率過程は,ツリー構造で表すことができる.木の頂点は細孔の可能な状態を表し,そのエッジは状態間の可能な遷移を表す.たとえば,図3.40に,5つの空でない細胞を有する孔の様々な可能な状態を示す.
図3.40
ツリーは2種類の頂点で構成されていることに注意せよ.すなわち,右端のセルに1,あるいは,右の2つのセルの中央に2があるものだ. レベル5のすべての状態は後者で,状態の右側にカルシウムが存在するため,ナトリウムイオンの右への移動がもはや実行可能ではない.図3.41に図3.40のツリー骨格が描かれている.これは図2.1のフィボナッチツリーに非常に似ている.いずれの図からも,5つの空でない細胞を有する孔は,レベル5に5=F5個の状態を有することがわかる.
図3.41
一般的に,n個の空でない細胞を有する孔は,レベルnにFn個の状態を有する.これは,レベルnの状態数がフィボナッチ再帰関係を満たすことからわかる.
1963年,カリフォルニア州サンノゼにあるサンノゼ州立大学のS.L. Basinは,”電気ネットワークに関心のある人々まで,我が友フィボナッチから逃れることはできない”[23]と書いた.ここでは,フィボナッチ数が電気ネットワークの研究にどのように現れるか示そう.
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数学月間SGK通信 [2019.03.05] No.257
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆様いかがお過ごしでしょうか.ひな祭りも過ぎ春がもうすぐです.
ご存知の方も多いと思いますが,yahooブログが今年で閉鎖されることになりました.
私は,数学と社会の架け橋<数学月間>を,yahooブログに書き続けていますが,
現時点で延べ47,917人の訪問者があるし,お友達もできて,この縁を続けたいと
対策を考えています.数学月間の会は,https://sgk2005.org/にホームページがあります.
加えて,新しいサイトhttp://sgk2005.saloon.jp/ を準備中で,そこにはブログのコーナーも設け
yahooブログもここに集積するつもりです.
しかし,現在,要の役割をしているyahooブログの地位は捨てがたいので,これに代わる
新しいブログサイトも何処かに開設しお知らせしますので,皆様との縁が続きますよう願います.
そのようなわけで,要のyahooブログが今移動準備状態で,
メルマガで使う図はyahooブログからのリンクで入れていましたので
本号のメルマガ257号は,文章だけとなります.
■液体のジュースの缶と凍らせたジュースの缶があり,斜面を転がしたらどちらが速いでしょうか?
質量は同じで,直径の大きい缶と直径の小さい缶があり,斜面を転がしたらどちらが速いでしょうか?
このトッピックスは,中西達夫著の微積とラグランジアン(工学社)に載っています.
ネットを検索してみると,これらの話題は各所に見受けられます.
中西氏の本では,このような物理(運動)の実験から,問題を解くための微積などの
数学概念手法を説明します.その数学理論が生まれた場に立ち戻り数学を作ろうというのが
数学月間流の数学理解の仕方です.大変読みやすく興味深い本なのでお勧めします.
表題の物理の問題は,缶が斜面を転がる運動は,重心の移動と重心の周りの回転の
両者の重ね合わせと考えます.斜面の上端で静止状態の持つ位置エネルギーが
重心移動の運動エネルギーと重心周りの回転運動のエネルギーに変わります.
すなわち,回転運動のエネルギーに費やされる分だけ,
重心移動の運動エネルギー(1/2)mv^2は小さくなります.
回転させにくい程,回転に多くのエネルギーを使います.
缶の中が凍っている方が回転させにくいし,半径の大きい方が回転させにくいので,
液体の入った缶の方が速く転がり,直径の小さい缶の方が速く転がります.
シリカガラスSiO2の軟化点は1700°Cと高温です.ガラスには明確な融点はありません.初めから乱れた構造ですから液体状態の個体ともいわれます.固体での変形が起こるのは軟化点~1900°Cあたりまでで,それ以上の温度では液体になります.シリカの正4面体ネットワーク中の所々にCaイオンやNaイオンが入ったものが,ソーダーライムガラス(青板ガラスとも呼ばれる)で,ガラスの融点も軟化点も下がり成型が容易になります.しかし,Naの熱振動振幅は大きく,ガラスの熱膨張率は大きくなります.ホウケイ酸ガラスは,ホウ素Bを添加したガラスで,ナトリウムNaの量を減らせるので,熱膨張率を小さくできます.これがpyrexパイレックスガラス(Corningの商標)で軟化点は820℃位で,Nonexという非膨張ガラスの処方も開発されました.パイレックスガラスは,キッチンのベーキング皿にも,温度計にも,ビーカーなど理化学機器にも,1949年に完成したパロマーのヘール望遠鏡の巨大鏡(回転放物面)にも使われています.この巨大鏡はパイレックスガラスの直径5mのガラスのキャストディスクで20トンもあります.この巨大なガラスのキャストディスクの製造では,アニーリング・オーブンに入れて10か月もかけて徐冷したそうです.これを現場に運び凹面(回転放物面)に研磨しました.
しかし,2008年3月14日に パイレックス・ロール板が生産中止をコーニング社は決めました.パイレックスと言えば耐熱ガラスの代名詞で,理化学機器にも使われていますが,望遠鏡用の 大きなガラスも作らなくなりました.どうなることか心配です.コーニング社の製品は,スマートフォン用のGorillaGlassというカバーガラスやエレクトロニクス用の薄い強化ガラスにシフトしたようです.
コーニングガラス博物館は面白そうです.
MRI(核磁気共鳴イメージング)
■プロトン(水素の原子核)はスピンを持ち,磁石の性質(核磁気)があります.
強い静磁場下に置かれたプロトン核磁気は,向きは揃い,歳差運動している状態です.歳差運動の周波数(ラーモア周波数という)は,磁場が強いほど高く,MRI装置の静磁場は1.5T程度と超強力なので,ラーモア周波数は64MHz(ラジオ電波の周波数領域)程度です.静磁場下のプロトンに,このラーモア周波数の電波が照射されると吸収共鳴が起こり,歳差運動の振幅が増大し横倒しの状態で回転(古典論的なイメージ)しています.一方,歳差運動をしているプロトン核磁気からは同じ周波数の電波が放射されるので,これを検出することにします.
生体組織は,水をはじめ水素原子を含むいろいろな組織です.つまり,プロトン核磁気は組織の至る所に分布していて,その水素の属する組織の環境(診断情報)がそのプロトン核磁気の性質に反映されています.すなわち,核磁気の歳差運動の縦緩和,横緩和という現象に違いが出ます.照射電波を切ると,励起されていた核磁気の歳差運動が定常状態に戻る(緩和)のですが,静磁場方向の核磁気成分の復元緩和を「縦緩和」,静磁場に垂直面内の成分の減衰緩和を「横緩和」といいます.
組織の各点で,これらの緩和定数を測定し,マップに表示できれば,診断に役立つ組織の特徴を反映したイメージングになります.
■さて,画像の位置情報はどのようにして得られるのでしょうか.
このためには,静磁場の他に傾斜磁場を印加します.傾斜磁場はペアのコイルによって発生させ,数十mT/m程度の大きさです.静磁場方向をzとするとz方向に沿って強度が変化するz-傾斜磁場,x方向に沿って強度が変化するx-傾斜磁場,y方向に沿って変化するy-傾斜磁場の3種類があります.傾斜磁場の印加された空間内では磁場の大きさが一定になるのは1つの平面です.例えば,静磁場と同じ方向のz-傾斜磁場を印加すると,磁場一定の平面はz軸に垂直な平面です.プロトン核磁気のラーモア周波数は,その場の磁場強度に比例するので,もし,共鳴吸収する電波の周波数をスキャンすれば,各断層平面ごとの電波を順次採取することができます.
次に,各断層面上の(x,y)位置情報を得る仕組みの説明をします.断層上のプロトンの歳差運動を励起後に,y-傾斜磁場の印加と停止,その後続いて,x-傾斜磁場の印加を行います.まず,y-軸に沿って歳差運動の周波数が変わりますが,y-傾斜磁場が切られると,y-軸に沿って位相変化として残ります.続いてx-傾斜磁場が印加されるので,x-軸に沿った周波数変化ができます.結局,断層面上の点(x,y)から放射される電波は,x-座標に沿って周波数が変わり(周波数エンコーディング),y-座標に沿って位相が変わる(位相エンコーディング)ものが採取できます.
傾斜磁場を印加して,空間の位置情報を得,画像化を可能にしたのは,Lauterbur(1973)のNatureに載せた論文です.Lauterburらは2003年のノーベル賞を受賞しました.
■緩和時間の測定には,傾斜磁場や照射電波のON/OFFが必要で,傾斜磁場の立ち上がり時間も考慮した複雑なパルスシークエンスです.256x256画素の測定でもかなりの時間を要します.高分解能画像を得るには,正攻法ではさらに細分化した画素数の測定が必要になり膨大な測定時間になるでしょう.パラレルイメージングなどの手法に加えて,MRIの高分解能かつ高速化を実現したのは,別項目で言及した「圧縮センシング」という方法です.
■2重振り子(振幅の小さいとき)
図のような2重振り子の運動です.今回は物理演習のようになりましたが,
数式に囚われる必要はありません.重要なのは,振幅が小さい範囲なら
運動は線形の微分方程式に近似できるので,2種類の周波数の振動が重畳
された運動になる.つまり,関数で記述できる安定な周期的な運動になる
という事です.そして,これに対比される次に話題になる振幅の大きい
2重振り子運動では,運動は関数で記述できず,予想もつかない
とんでもない運動をするということです.
◆それでは,振幅の小さいときの2重振り子の学習をしましょう.
ここでは,ラグランジュ関数やラグランジュ方程式を説明せずに用いています.
これらを学習したい方は,EMANの物理学などが参考になります.
m1の座標は
これは,Oから釣り下がる長さ l の糸と
mから釣り下がる長さ l1 の糸の和であるからだ.
この2重振り子のラグランジュ関数Lは
Tは系全体の運動エネルギー,Uは系全体の位置エネルギー
解Φ,ψ を求めるには,次のラグランジュ方程式を解かねばならないのだが
解析的には解けない(関数で記述できる解がない)ので,
Φ,ψ の振動範囲を微小に制限して(Φ,ψの2次までを残す近似),
この近似した L=T-U を用いて,ラグランジュ方程式を解く.
これは解けるのだが物理の演習問題なので(参考)に示し,結論だけ述べる.
結論
Φ, ψ は,以下の2つの固有ベクトル(基準振動)の重畳(線形結合)で表せる.
微小振動の範囲では,Φ,ψは,それぞれ2つの固有振動の重ね合わせであるということは,
それほど複雑な振動ではない.いずれにしろ周期的な振動である.
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(参考)
続く⇒ 振幅の大きい場合