数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
昨年9月に表題の本(技術評論社)を出版しました.この本の構成は8つの章からなり,全章を通して万華鏡で繋がっています.1,2章は有限図形の対称性(点群).3,4章は周期的な空間の対称性(平面群).これらの映像は,万華鏡で作り出すことができます.5章は万華鏡.6章は円による反転という数学的な鏡を用いた万華鏡.7章はフラクタル操作という数学的な鏡を用いた万華鏡です.8章は東京ジャーミイで,イスラミック・デザインを鑑賞します.写真撮影にご協力いただいた東京ジャーミイの本屋さんにも本書を置いていただいています.
■この本に,第9章を続けて書くとすれば,イスラミック・デザインになります.イスラムデザインの特徴は,黄金比(すなわち5回対称や10回対称)がちりばめられていることです.しかし,5回対称性と2次元(あるいは3次元)世界の周期性とは両立できませんから,ちりばめられている5回(あるいは10回)対称性はロゼット内部だけに局所的に作用し,世界の全域を支配するものではありません.そのため,あたかも我々の住む3次元に高次元宇宙が投影しているようで不思議な魅力を感じます.イランのDarb-i Imam寺院(1453)の壁には,その500年後にヨーロッパで発見されるPenroseタイリング[自分の中に自分と同じパターンが繰り込まれる]と同様なパターンがすでに見られることをPeter LuとPaul Steinhardtが報告しています.イスラムの繰り返し模様は準結晶や基本領域が分割されて写像される万華鏡と似たところがあります.
まず写真をご覧ください.
同じ正3角形(正6角形)格子[あるいは,正3角形2つよりなる平行4辺形格子とみてもよい]のパンチングメタルを2枚重ね合わせました.
この図の状態は,2枚の格子どうしのなす角度が2θ=30°になった場合です.初めの正3角形(正6角形)の格子より大きな新しい周期の格子が出現しているのがわかりますか.
■正方形格子(網目)を2枚重ねた場合を考察してみましょう.
両方の網目が重なった位置に,新しい網目の格子が見えて美しい.
2枚の正方形の格子(正方格子という)どうしの傾きを変えると,ときどきこのような新しい格子が現れます.
もとの格子の互いに直角な2つの並進ベクトルをa,bとすると(正方格子ならa=b),
もとの格子は,格子点 na+mb,(n,mは任意の整数)の集合です.
同じ正方格子を2枚傾けて重ねて,新しい周期の2つの並進ベクトル x, yが生じています.これらの図の状態は,
(左図)x=2a+b,y=a+2b .(右図)x=3a+b,y=a+3b (面心格子)
$$ \left( \begin{array}{@{\,} cc @{\, } } 2 & 1 \\[0mm] 1 & 2 \end{array} \right) $$, $$ \left( \begin{array}{@{\,} cc @{\, } } 3 & 1 \\[0mm] 1 & 3 \end{array} \right) $$
この基底変換を行列で書き,行列式を求めると3(左図),8(右図)ですので,
新しくできた格子はもとの格子と比べて面積で3倍(左図),8倍(右図)粗くなっていることがわかります.
格子というのは,並進ベクトルの作る群=並進群の”図的表現”です.
2枚の格子の干渉で生じた新しい格子の周期は,もとの格子の粗いサンプリングになっているわけで,
新しい格子は,もとの格子の部分群になります.
格子が重なって,拡大された(粗い)格子が見える現象は,干渉(ビート)と同じことです.
実際に,2つの原子網面が重なって,このようなビートが見えることは,
電子顕微鏡で格子像の観察をするときにもよく起こります.
結晶は周期的な構造をしているので,周期的な空間は「結晶空間」とも呼ばれます.
エッシャーの繰り返し模様や,壁紙模様などで,周期的空間の実例をたくさん目にしていると思います.
■2つの正方格子の平行なずれによる干渉(モワレ縞)
それぞれの正方格子の周期をλ1,λ2とすると,新しい周期Lは
$$ \displaystyle \frac{1}{L}=\displaystyle \frac{1}{\lambda _{1 } }-\displaystyle \frac{1}{\lambda _{2 } } $$ の関係があります.
私は,子供のころ家にあった織物検査器というもので遊んだことがあります.これは,標準となる格子模様がガラスに刻んであり,織物にこのガラスを重ねると繊維の周期とのビートで縞模様が観察できます.1mmの中に何本繊維があるかとか,織り方が均一でなくどの程度乱れているかが,モアレ縞からわかります.
次の写真は,工事現場のネットが折り返されて2重になっているために観察されるモアレ縞です.
私は3月24,26日のまぐまぐメルマガ(311,312号)で以下の内容の発表をしました.-----
3月21日の厚労省の公表値を用いて,罹患率=発症患者/PCR検査数と定義すると,罹患率は,約5%になります.しかし,PCR検査の,感度と特異性(酒井健司,朝日デジタル)の情報を入れてベイズ推定した罹患率は5.9%になります.この推定値の増加は,主としてPCR検査感度に原因があり,実際の罹患者を取りこぼすためです.(注)この数値は,PCR検査を受けた限定されたグループをサンプルとしているために,一般の集団に対しては少し割り引いた数値になるでしょう.-----
今日PCR検査数も増加したので,4月24日時点の厚労省のデータを用いて,再計算をしてみました.ただし,PCR検査数が増加したといっても(検査を受ける条件はあまり緩和されていません).したがって,陽性確率が高いサンプル集団について検査が行われている状況は同じです.
カバーの図を見てください.ここで推定する数値はあくまでもサンプル集団に関するもので,全体集団に対してはいくらか割り引いた数字になるでしょう.
ーーーーー
■PCR検査状況(厚労省4/23データ)
【PCR検査陽性者数】 【PCR検査陽性時の有症状・無症状の別】
新型コロナウイルスに対するPCR検査数は,4月23日の厚労省の発表で,135,983人になりました.1月前(3月21日)の数字の7.5倍です.PCR検査の陽性者数は11,919人,陽性者のうち発症患者(陽性者∩発症患者)は7,315人です.
発症患者/PCR検査数=罹患率 と仮の罹患率を定義すると,罹患率は約5.4%です.
陽性率=陽性者数/PCR検査数=0.088(前回0.056) ,陰性率=0.912(前回0.944)も定義します.
(要旨)================================================
4月23日の厚労省の公表値を用いて,罹患率=発症患者/PCR検査数と定義すると,罹患率は,約5.4%(前回5.0%)になります.しかし,PCR検査の,感度と特異性(酒井健司,朝日デジタル)の情報を入れてベイズ推定した罹患率は8.6%(前回5.9%)になります.この推定値の増加は,主としてPCR検査感度に原因があり,実際の罹患者を取りこぼすためです.
(注)この数値は,PCR検査を受けた限定されたグループをサンプル集合としているために,一般の集団に対しては少し割り引いた数値になるでしょう.
===================================================
■条件付き確率についての「ベイズの定理」とは次のように説明できます.
$$p(Y|X)p(X)=p(X \cap Y)=p(X|Y)p(Y)$$
記号の意味は例えば以下の様です.
$$p(X)$$ $$X$$が起こる確率
$$p(Y|X)$$ $$X$$が起こった後で$$Y$$が起こる確率
$$p(X \cap Y)$$ $$X$$かつ$$Y$$が起こる確率
ベイズの定理は,$$X$$(原因)が起きた後で$$Y$$(結果)が起きる確率$$p(Y|X)$$と,$$X$$と$$Y$$を入れ替えた確率$$p(X|Y)$$を結び付ける定理です.
■PCR検査の精度
新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味(酒井健司,朝日デジタル)により,次のように仮定します.
PCR検査の感度とは,罹患者がPCR検査で陽性(+)と正しく判定される確率のことで,あまり大きくなく0.7.
真の罹患者でもPCR検査が陰性(-)(偽陰性)となる確率が0.3程度だそうです.
検査の特異性とは,非罹患者が陽性(+)(疑陽性)と判定される確率で0.01程度だそうです.
$$\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
& + & - \\[0mm]
\hline
罹患 & 0.7 & 0.3(偽陰性) \\[0mm]
\hline
非罹患 & 0.01(疑陽性) & 0.99 \\[0mm]
\hline
\end{array}$$
■これらの仮定の下で,以下の2つを推定しましょう.ただし,ベイズの定理を使います.
(1)PCR検査で陽性と判定されたとき,罹患者である確率を求めなさい.
$$p(罹患|+)=\displaystyle \frac{p(+|罹患)p(罹患)}{p(+)}=\displaystyle \frac{0.7 \times 0.054}{0.054 \times 0.7+0.946 \times 0.01}=0.80$$
+(陽性)でも,検査感度のせいで罹患者をとりこぼすことが多い.また,非罹患者の割合が多いので偽陽性の数も無視できず,全体として決定率を80%(前回79%)に下げている.
(2)罹患率を推定しなさい.
$$ p(罹患|-)=\displaystyle \frac{p(-|罹患)p(罹患)}{p(-)}=\displaystyle \frac{0.3 \times 0.054}{0.054 \times 0.3+0.946 \times 0.99}=0.017 $$
陰性と判定されたものの中に見逃された患者である可能性は1.7%(前回1.6%)ほどある.
従って,全人口のなかで推定される罹患率は$$0.088 \times 0.80+0.912 \times 0.017=0.086$$,すなわち,8.6%(前回5.9%)と推定できます.
=====================================================text
■条件付き確率についての「ベイズの定理」とは次のように説明できます.
p(Y|X)p(X)=p(X∩Y)=p(X|Y)p(Y)
記号の意味は例えば以下の様です.
p(X) Xが起こる確率
p(Y|X) Xが起こった後でYが起こる確率
p(X∩Y) XかつYが起こる確率
ベイズの定理は,X(原因)が起きた後でY(結果)が起きる確率p(Y|X)と,XとYを入れ替えた確率p(X|Y)を結び付ける定理です.
■PCR検査の精度
新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味(酒井健司,朝日デジタル)により,次のように仮定します.
PCR検査の感度とは,罹患者がPCR検査で陽性(+)と正しく判定される確率のことで,あまり大きくなく0.7.
真の罹患者でもPCR検査が陰性(-)(偽陰性)となる確率が0.3程度だそうです.
検査の特異性とは,非罹患者が陽性(+)(疑陽性)と判定される確率で0.01程度だそうです.
■これらの仮定の下で,以下の2つを推定しましょう.ただし,ベイズの定理を使います.
(1)PCR検査で陽性(+)と判定されたとき,真の罹患者である確率を求めなさい.
p(罹患|+)=p(+|罹患)p(罹患)/p(+)=0.7×0.054/(0.054×0.7+0.946×0.01)=0.80
+(陽性)でも検査感度のせいで罹患者をとりこぼすことが多い,また,非罹患者の割合が大きいので偽陽性も無視できず,この2つの原因が,+判定でも罹患者である確率80%(前回79%)を下げている.
(2)罹患率を推定しなさい.
p(罹患|−)=p(−|罹患)p(罹患)/p(−)=0.3×0.054/(0.054×0.3+0.946×0.99)=0.017
-(陰性)と判定されたものの中に見逃された患者である可能性は1.7%ほどある.
従って,サンプル集合全体で推定される罹患率は0.088×0.80+0.912×0.017=0.086
すなわち,8.6%(前回5.9%)と推定できます.
ナイチンゲールが50年間ベッドでの仕事を余儀なくされ,死因ともなったのは,クリミア戦争時に流行したマルタ熱(ブルセラ症)であることが明らかになった.D A B Young,Florence Nightingale's fever,(BMJ VOLUME 311 23-30 DECEMBER 1995)
ーーーーーーー
■ブルセラ症(brucellosis)
NIID国立感染症研究所https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/513-brucella.html,および,wikiを参照した.----
ブルセラ症はマルタ熱とも呼ばれる細菌に感染して起こる人獣共通感染症.クリミア戦争でマルタ熱が流行したことで世界的に注目されたが,紀元前400年頃のヒポクラテス著書にブルセラ症と思われる疾患がすでに記載されている.現在でも,世界中で毎年50万人を越える家畜ブルセラ菌感染患者が新規に発生(食料や社会・経済が家畜へ依存し,家畜ブルセラ病が発生している国や地域)発生している.マルタ熱の原因菌として,イギリス軍の軍医Sir David BruceによりB. melitensis が分離(1887)されて以降,種々のブルセラ属菌が発見されている.ヒトへの感染が報告されている主なものは,B. melitensis (自然宿主:ヤギ,ヒツジ),B. suis (ブタ),B. abortus (ウシ,水牛),B. canis (イヌ)の4菌種である.日本では,過去に牛のB. abortus感染が流行し問題になったが,家畜衛生対策の徹底により,1970年を最後に国内家畜から菌が分離された例はない.感染動物の加熱殺菌が不十分な乳・乳製品や肉の喫食による経口感染が最も一般的である.ヒト-ヒト感染は極めてまれである.
ブルセラ属菌は敵国の兵士や住民に罹患させて能力を低下させる生物兵器としても研究・培養された.アメリカは1942年、ソ連は1978年に兵器化を実現した.
■サビノワとリユドミラ物語.Екатерина Савинова и Людмила Сенчина
Приходите завтра「明日来なさい」(1963年,ソビエト映画)は,1540万観客の大ヒット映画(ロシア語)です.シベリアの寒村からИнститут имени Гнесиных モスクワの音楽学校に入ろうと出てきた才能ある少女の物語です.重い荷物を背負って一人で都会に出てきた元気で愉快な純粋な少女です.しかし,モスクワに来たときは既に遅く入学試験は終わっていました. 少女の役名はФросяフローシャ.これは実在のЕкатерина Савиноваサビノワの伝記映画で,サビノワ自身が主演し歌います.あの声はサビノワしか出せません.私がこの映画を知ったのも彼女の3.5オクターブ出るという魅力的な声の歌を耳にしたからです.音楽学校の玄関で有名なソコロフ教授に何度か訴えます.ついに引き出した教授の返事が Приходите завтра!「明日来なさい」でした.教授に学校のオーデトリウムで聞いてもらえた彼女の歌声がすばらしい.教授もフローシャの純粋さと素晴らしい声を見抜き,何とか入学させようと動きます.この映画はサビノワが自分で主演した愉快で楽しい映画で,私はとても好きです.しかし,残念ながら,その後のサビノワは,ブルセラ病(生牛乳を飲むと牛から感染する)が重くなり鉄道自殺(1970年,43歳)してしまいます.
興味深いのは,1963年にウクライナで高校生時代に,Людмила Сенчинаリュドミラ・センチナはきっとこの映画を見たのではないかと私は想像します.リュドミラは成功して,ロシア人民芸術家歌手になります.彼女は今年の1月25日に,ペテルブルクの病院で死去(67歳)しました.
リュドミラは,高校を卒業して,歌手になるために,ウクライナからレニングラード(現ペテルブルグ)に出てきました.でも,そのとき音楽学校の試験は終わっていたのです.よく似た話があるものですね.サビノワと違うのはペテルブルグに親戚がいたことです.
リュドミラの代表曲は,Песня Золушкиシンデレラの歌
-------
NHS Nightingale Hospital
NHS=国民保険サービス,Nightingale Hospital=臨時救急病院≒野戦病院
イギリスのNHSは4つの地域区分(イングランド,スコットランド,ウエールズ,北アイルランド)があります.イングランドのナイチンゲール病院は,London(4,000床)に4月3日オープンを皮切りに,7つ目のSunderland(460床)は日産自動車工場近くに準備が整いました.Covid-19患者の数に北東部の病院が対処できない場合に限り使われます.「人々が社会的距離を保ち,あるいはワクチンができ,この病院を使わないですむことを願っている」とNewcastle病院のNHS局長は語りました(Sunderland Echo紙).
Stay at home, protect the NHS, and save lives
イギリスは,3月23日に3週間の全土封鎖に踏み切ったが,まだピークが去らないとしてさらに3週間の延長に入っています.4月19日現在.累積確認患者数は90,629,累積死者数は14,399に上りますが,一日の感染者の広がりは減少してきました.封鎖と並行して,PCR検査から抗体検査に転換し,抗体検査の大規模実施(現時点で1万3729人1日3万5000件の能力がある)と「NHSナイチンゲール病院」の設立を進めています.「ナイチンゲール病院」といはどのような病院でしょうか?
クリミア戦争(1853-1856)で野戦病院の衛生状態の改革を行ったナイチンゲールは,『看護覚え書』,『病院覚え書』など多くの著作を残し,そこにはワンルームの病院設計図も載っています.高い天井まで延びた3層の窓,3層目の窓を開放し換気,ベッドの間隔,等々,ナイチンゲールの病院概念が活かされた臨時救急病院≒野戦病院だからこう呼ぶのでしょう.
ーーーー
Sunderland Echo↑
Getty Images↓
(注)以下のナイチンゲールの伝記的記事は,
草の実堂;https://kusanomido.com/study/history/western/21987/ を参考にした.
ナイチンゲールはクリミア戦争(1853-1856)で野戦病院の衛生状態を実践改革し死亡率を低下させました.帰国後のナイチンゲール・チームはバーリントンホテルに集結し,戦時の報告書をもとに病院の状況分析をして,数々の統計資料を作成,改革のためにつくられた各種委員会に提出しました.特に,死亡原因ごとに死者の数をひと目で分かるようにレーダーチャートの発明があります.
1860年にナイチンゲールが看護専門学校(ナイチンゲールスクール)を設立したのは広く知られていますが,ナイチンゲールが統計学者であることはあまり知られていません.疫学研究の元祖です.1859年にイギリス王立統計学会の初の女性メンバーに選ばれ,アメリカ統計学会の名誉メンバーにも選ばれました.ナイチンゲールは90歳で亡くなりますが,晩年50年間はほとんどベッドの上で,本の原稿や手紙を書く活動でした.その病因はブルセラ病に感染したこと(by D A B Young,Florence Nightingale's fever,1995)でした.ブルセラ病については,以前に述べたことがあるのでそちらを参照ください.
新型コロナウイルスの感染拡大が続いています.皆様お元気でしょうか.注意してお過ごしください.
緊急事態宣言下で,人と人の接触機会を最低7割,極力8割の削減を,政府は目標に掲げています(朝日新聞デジタル).
接触機会をある閾値下に削減すると感染が減衰し収まるわけです.数学月間の会の石黒真木夫氏が,マクロの数理モデルでシミュレーションを行いました.その結果は,youtubeチャンネル「NPO数学月間の会」にアップロードし公開しました.そのリンクを探すには,数学月間のホーム・ページhttp://sgk2005.saloon.jpにアクセスします.現在そのトップ頁に掲載しています.そこで用いたシミュレーションのエクセルファイルは,同ホームページの記事中にリンクを張りましたので,各自がダウンロードしてシミュレーションを体験することができます.参考論文(西浦博・稲葉寿)へのリンクも,同ホームページの記事中に置きました.
*youtubeチャンネル「NPO数学月間の会」の動画へのリンクは,数学月間の会のホーム・ページにアクセスし,youtubeチャンネルのタブを開くとそこに置かれています.
(1)石黒のシミュレーションの概要
ある人口集団を,未感染者,ウィルス感染源,免疫獲得者,死亡者に分類し,未感染者がウィルス感染源の一員と接触すると,ある感染確率で未感染者が感染してウィルス感染源となる.ウィルス感染源のウィルス拡散は14日間つづき,14日目に「死亡率」に従って死亡者と免疫獲得者に分かれ,免疫獲得者はもはやウィルスを拡散することも再感染することもなくなる.このようなルール(数理モデル)でシミュレーションを行った.このモデルに基づくと,時間の経過とともに未感染者は単調減少し,免疫獲得者は単調増加するので,感染の流行はかならず止まる.しかしそれは集団全員が感染した後である.
感染確率と死亡確率を適当に与えれば,シミュレーションは簡単である.いまの計算機をもってすれば人口集団の各個人の命運をたどるミクロシミュレーションもさして難しくない.ここで紹介するのは未感染者やウィルス感染源集団の大きさの変化を追跡するマクロシミュレーションである.確率的な現象の「期待値の動き」を追いかける決定論的なダイナミクスを採用する.もし,ミクロシミュレーションをして,算術平均の変化を見るとマクロシミュレーションの結果に「誤差」が乘ったような動きになるだろう.
石黒シミュレーションによる発見は,減少の後に揺り戻しが付随していることである.そのような波動を繰り返しながら徐々に減少し収束していきます.ワクチン等の発見がなくこの状態が続けば,ときおり感染者が増加する波動を繰り返しながら,生存者全員が免疫を獲得するまで続き.その間多数の死者がでるでしょう.
(2)ミクロシミュレーションについて
講演会「数学と生命科学--数理モデルを中心として」
主催:上智大学理工学部数学科/情報理工科(「数学月間」参加プログラム)
があったのは2008年8月4日(月)のことです.この中の講演に,「感染症対策における数理モデルの役割」(大日康史,国立感染症研究所)というのがありました.今回のCOVID-19の感染拡大にあたり,この国立感染症研究所の感染症対策のシミュレーションが,タイムリーに政策に活かされているとは思えません.原発事故の当時SPEEDIの結果が活用されなかったのに似ていると私は思います.
■感染症対策における数理モデルの役割,大日康史(国立感染症研究所)の概要
数理モデルによる感染拡大のシミュレーションは,新型インフルエンザやバイオテロなどの対策の有効性評価に必要である.
数理モデルには,SIRモデル,ibm(IndividualBasedモデル),Ribm(Realibm)などがある.
本研究で用いたRibmとは,実際に調査した個人の移動,所在の記録データ(首都圏では88万人)にもとづき,
6分ごとに人々の接触状態(感染の機会)が定義されるものである.新型インフルエンザには,種々のタイプがあり鳥類間の感染は起こるが,鳥から人への感染は血液の濃厚接触などの場合に限られる(豚と人の感染するインフルエンザのタイプは似る).人に感染した場合に,人から人への感染が始まり拡大していく.シミュレーションには,例えば以下のシナリオを用いる:(第1日)初発例が外国で感染.(第3日)帰国.帰宅後(八王子)感染性を持つ.(第4日)出社(丸の内).発症.(第5日)国際医療センターに受診.東京都健康安全研究センターで検査診断.(第6日)対策へ:シミュレーションの結果である首都圏への感染拡大の様子や全国への拡大の様子が示された.どのような対策(外出自粛,地域閉鎖,休校,住民全員が予防服用,....)をとると効果があるかが予測できるシミュレーションが示された.
■堆積岩は,岩石の砕屑物が水中で堆積して生まれたものです.この堆積物には,火山灰など火山由来のものも,石灰岩のような生物由来のものもありますが,岩石の風化などで生じた砕屑物は,その粒径により,礫(2mmより大きい),2mm以下の細かい粒径のものは,砂($$2>・・・>1/2^4$$),シルト($$1/2^4>・・・>1/2^8$$),粘土($$1/2^8>・・・$$)に分類されます.
静かな水中で,様々な粒径の砕屑土砂が沈降していくときの終端速度(一定になった速度)は,ストークスの法則で見積もることができ,大きい粒子の終端速度は大きく,小さい粒子の終端速度は小さいことがわかります.洪水で河口に運ばれてきた大小混合の砕屑物は,河口近くに大きい粒子を堆積させ,離れた海へ運ばれて堆積するのは小さい粒子ということになります.
■粘性液体中を静かに沈降していく粒子の速度が一定(終端速度)$$v$$のとき,次のように記述できます.
粒子は小さな球形で直径$$ d $$,密度を$$\rho _{s}$$とし,粘性液体の粘度$$\eta$$ ,密度を$$\rho_{f}$$ とします.
微粒子に働く力が釣り合うと(加速度0になり),粒子は一定速度(終端速度)で沈降します.つまり,
重力$$=$$浮力$$+$$抵抗力,あるいは,重力$$-$$浮力$$=$$抵抗力
従って,$$\displaystyle \frac{\pi ^{2}d^{3 } }{6}\left( \rho _{s}-\rho_{f} \right) g=3\pi \eta dv$$,ただし,$$g$$は重力加速度.
これを解いて,
$$v=\displaystyle \frac{\left( \rho _{s}-\rho_{f} \right) g}{18\eta }d^{2}$$
これがストークスの式です.
■ストークスの式を使って,水中の球形石英粒子の沈降速度を求めると,粒子径1 µm(粘土)の沈降速度は0.0001cm/s(およそ30m/年),粒子径10 µm(シルト)の沈降速度は0.01cm/s(およそ3000 m/年),少し大きな粒子径1 mm(砂)の粒子は1 m/sの沈降速度です.実験との比較では,100μm以下ではストークスの式はほぼ成り立ちますが,1mmになるとストークスの式から外れ沈降速度が大きくなります.これは,粒子径が大きくなると,沈降粒子の背後に渦流が発生しストークスの式が適用できないからです.
もし,水よりも粘性の大きい,あるいは密度も大きい分散媒を用いれば,もっと大きな粒子までストークスの式が適用できます.
私は,万華鏡の設計で,分散媒の中を沈降するガラスくずの速度を考察するのにストークスの式を用いました.
皆さまお元気でおお過ごしでしょうか.メルマガ311,312号で取り上げましたが罹患率5~6%でした.ただし,これはPCR検査を受けた人数に対してで,一般人に対しては少し割り引いた罹患率になるでしょう.3月30日現在の東京都の延べ患者数は443人とのことです.実際は都市封鎖をしてもおかしくない事態です.
この状況はしばらく続くので,数学月間の会の活動としてのイベントがいつ実施できるか見通せません(今年も7月22日に数学月間懇話会をやる予定です),
この対策として常時情報発信ができるyoutubeチャンネル(NPO数学月間の会)を立ち上げました.
このメルマガが皆様に届く朝には,このyutubeチャンネルも(3月31日0:00)公開されていると思います.ぜひお確かめの上,問題があるかどうかご報告くださいますようお願いいたします.
私個人のインターネット環境はwifiですので通信速度が遅く,
大きな動画のuploadに時間がかかり現在まだ5つくらいです.
今後,会員皆様の関連動画も載せられるように考えますので,ご協力のほどお願いいたします.
(要旨)ーーー
3月21日の厚労省の公表値を用いて,罹患率=発症患者/PCR検査数と定義すると,罹患率は,約5%になります.
しかし,PCR検査の,感度と特異性(酒井健司,朝日デジタル)の情報を入れてベイズ推定した罹患率は5.9%になります.
この推定値の増加は,主としてPCR検査感度に原因があり,実際の罹患者を取りこぼしていたためです.
(注)この数値は,PCR検査を受けた限定されたグループをサンプルとしているために,一般の集団に対しては少し割り引いた数値になるでしょう.
======================================
■条件付き確率についての「ベイズの定理」とは次のように説明できます.
$$p(Y|X)p(X)=p(X \cap Y)=p(X|Y)p(Y)$$
記号の意味は例えば以下の様です.
$$p(X)$$ $$X$$が起こる確率
$$p(Y|X)$$ $$X$$が起こった後で$$Y$$が起こる確率
$$p(X \cap Y)$$ $$X$$かつ$$Y$$が起こる確率
ベイズの定理は,$$X$$(原因)が起きた後で$$Y$$(結果)が起きる確率$$p(Y|X)$$と,$$X$$と$$Y$$を入れ替えた確率$$p(X|Y)$$を結び付ける定理です.
■新型コロナウイルスに対するPCR検査数は,厚生労働省の発表で,日本でも3月21日現在,18,134人になりました.
PCR検査による感染者数は1,007人,発症患者(=罹患者と定義)はそのうちの884人です.
発症患者/PCR検査数=罹患率 と仮の罹患率を定義すると,罹患率は約5%です.
陽性率=感染者数/PCR検査数=0.056 ,陰性率=0.944 も仮に定義します.
新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味査(酒井健司,朝日デジタル)をもとにして,次のように仮定します.PCR検査の感度というのは,罹患者がPCR検査で+になる確率のことで,あまり大きくなく0.7, 罹患者でもPCR検査が-となる場合(偽陰性)の確率は0.3程度だそうです.
検査の特異性により,非罹患者が+(疑陽性)と判定される確率は0.01だそうです.
*注)3月24日のメルマガに使った仮定の数値は,実際とだいぶ違いましたので,修正した以下の表に差し替えました.
$$\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
& + & - \\[0mm]
\hline
罹患 & 0.7 & 0.3(偽陰性) \\[0mm]
\hline
非罹患 & 0.01(疑陽性) & 0.99 \\[0mm]
\hline
\end{array}$$
これらの仮定の下で,以下の2つを推定しましょう.ただし,ベイズの定理を使います.
(1)PCR検査で陽性と判定されたとき,罹患者である確率を求めなさい.
$$p(罹患|+)=\displaystyle \frac{p(+|罹患)p(罹患)}{p(+)}=\displaystyle \frac{0.7 \times 0.05}{0.05 \times 0.7+0.95 \times 0.01}=0.79$$
+(陽性)でも,検査感度のせいで罹患者をとりこぼすことが多い,非罹患者の割合が多いので偽陽性も無視できず,全体として決定率を下げている(79%).
(2)罹患率を推定しなさい.
$$ p(罹患|-)=\displaystyle \frac{p(-|罹患)p(罹患)}{p(-)}=\displaystyle \frac{0.3 \times 0.05}{0.05 \times 0.3+0.95 \times 0.99}=0.016 $$
陰性と判定されたものの中に見逃された患者である可能性は1.6%ほどある.
従って,全人口のなかで推定される罹患率は$$0.056 \times 0.79+0.944 \times 0.016=0.059$$,すなわち,5.9%と推定できる.
*注)ただし,PCR検査は限定されたグループに対してなされており,偏った集団をサンプルとしているので,全人口に対してなら少し割り引いた値が推定される.
一般の振幅
$$\left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\displaystyle \frac{d}{dt}\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \dot{\phi } }-\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \phi }=0 \\[0mm]\displaystyle \frac{d}{dt}\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \dot{\psi } }-\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \psi }=0\end{array} \right. $$
ラグランジュ関数$$L$$は,
$$L=T-U$$
$$ T=\displaystyle \frac{m+m_{1 } }{2}l^{2}\dot{\phi }^{2}+\displaystyle \frac{m_{1 } }{2}l^{2}_{1}\dot{\psi }^{2}+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \dot{\phi }\dot{\psi } $$
$$U=-\left( m+m_{1} \right) glcos\phi -m_{1}gl_{1}cos\psi $$
--------------------
$$\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \dot{\phi } }=\left( m+m_{1} \right) l^{2}\dot{\phi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \dot{\psi }$$
$$\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \dot{\psi } }=m_{1}l_{1}^{2}\dot{\psi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \dot{\phi }$$
$$\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \phi }=-m_{1}ll_{1}\dot{\phi \psi }sin\left( \phi -\psi \right) -\left( m+m_{1} \right) glsin\phi $$
$$\displaystyle \frac{ \partial L}{ \partial \psi }=m_{1}ll_{1}\dot{\phi \psi }sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}gl_{1}sin\psi $$
--------------------
$$\left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\left( m+m_{1} \right) l^{2}\ddot{\phi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \ddot{\psi }-m_{1}ll_{1}\dot{\psi }sin\left( \phi -\psi \right) \left[ \dot{\phi }-\dot{\psi } \right] =-m_{1}ll_{1}\dot{\phi \psi }sin\left( \phi -\psi \right) -\left( m+m_{1} \right) glsin\phi \\[0mm]m_{1}l_{1}^{2}\ddot{\psi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \ddot{\phi }-m_{1}ll_{1}\dot{\phi }sin\left( \phi -\psi \right) \left[ \dot{\phi }-\dot{\psi } \right] =m_{1}ll_{1}\dot{\phi \psi }sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}gl_{1}sin\psi\end{array} \right. $$
$$ \left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\left( m+m_{1} \right) l^{2}\ddot{\phi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \ddot{\psi }+m_{1}ll_{1}\dot{\psi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) =-\left( m+m_{1} \right) glsin\phi \\[0mm]m_{1}l_{1}^{2}\ddot{\psi }+m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \ddot{\phi }-m_{1}ll_{1}\dot{\phi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) =-m_{1}gl_{1}sin\psi \end{array} \right. $$
$$ \left[ \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }\left( m+m_{1} \right) l^{2} & m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \\[0mm] m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) & m_{1}l_{1}^{2}\end{array} \right] \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } } \ddot{\phi } \\[0mm]\ddot{\psi }\end{array} \right] =\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }-m_{1}ll_{1}\dot{\psi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -\left( m+m_{1} \right) glsin\phi \\[0mm]m_{1}ll_{1}\dot{\phi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}gl_{1}sin\psi\end{array} \right] $$
$$\left[ \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }\left( m+m_{1} \right) l^{2} & m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \\[0mm]m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) & m_{1}l_{1}^{2}\end{array} \right] ^{-1}=\displaystyle \frac{1}{m_{1}\left( m+m_{1} \right) l^{2}l_{1}^{2}-m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}cos^{2}\left( \phi -\psi \right) }\left[ \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }m_{1}l_{1}^{2} & -m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \\[0mm]-m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) & \left( m+m_{1} \right) l^{2}\end{array} \right] $$
$$ \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\ddot{\phi } \\[0mm]\ddot{\psi }\end{array} \right] =\displaystyle \frac{1}{m_{1}\left( m+m_{1} \right) l^{2}l_{1}^{2}-m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}cos^{2}\left( \phi -\psi \right) }\left[ \begin{array}{@{\,} cc @{\, } } m_{1}l_{1}^{2} & -m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) \\[0mm]-m_{1}ll_{1}cos\left( \phi -\psi \right) & \left( m+m_{1} \right) l^{2} \end{array} \right] \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }-m_{1}ll_{1}\dot{\psi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -\left( m+m_{1} \right) glsin\phi \\[0mm]m_{1}ll_{1}\dot{\phi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}gl_{1}sin\psi\end{array} \right] $$
$$=\displaystyle \frac{1}{m_{1}\left( m+m_{1} \right) l^{2}l_{1}^{2}-m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}cos^{2}\left( \phi -\psi \right) }\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }-m_{1}^{2}ll_{1}^{3}\dot{\psi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}\left( m+m_{1} \right) gll_{1}^{2}sin\phi -m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}\dot{\phi }^{2}cos\left( \phi -\psi \right) sin\left( \phi -\psi \right) +m_{1}^{2}gll_{1}^{2}cos\left( \phi -\psi \right) sin\psi \\[0mm]m_{1}^{2}l^{2}l_{1}^{2}\dot{\psi }^{2}cos\left( \phi -\psi \right) sin\left( \phi -\psi \right) +m_{1}\left( m+m_{1} \right) gl^{2}l_{1}cos\left( \phi -\psi \right) sin\phi + \sqcap - m_{1}\left( m+m_{1} \right) l^{3}l_{1}\dot{\phi }^{2}sin\left( \phi -\psi \right) -m_{1}\left( m+m_{1} \right) gl^{2}l_{1}sin\psi\end{array} \right] $$
$$\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\dot{\phi }(n+1) \\[0mm]\dot{\psi }(n+1)\end{array} \right] =\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\dot{\phi }(n) \\[0mm]\dot{\psi }(n)\end{array} \right] +\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }\ddot{\phi }(n) \\[0mm]\ddot{\psi}(n)\end{array} \right] \mit\Delta t$$
$$ \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } } \phi (n+1) \\[0mm] \psi (n+1) \end{array} \right] =\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } } \phi (n) \\[0mm] \psi (n) \end{array} \right] +\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } } \dot{\phi }(n) \\[0mm] \dot{\psi }(n) \end{array} \right] \mit\Delta t $$