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インドラの網と反転円

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数学月間SGK通信 [2014.05.20] No.007
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■アポロニウスの窓ApolloniusGasket
映像が果てしなく繰り返す「インドラの網」
網の上に置かれた真珠は互いに反射し合って,他の真珠を映しだすだけでなく,
他の真珠の映る自身の姿をも映します.世界全体が真珠一つ一つの上に映り,
またその姿が別の真珠に映り,これが永遠に続くのです.
”インドラの真珠”
D.マンフォード, C.シリーズ, D.ライト, 小森洋平 (翻訳),日本評論社より

この美しい図形は2次元では,「アポロニウスの窓」とも呼ばれます.
互いに 接し合う3つの円に接する第4の円を描くのですが,
これを次々と繰り返して作られる円の中の世界です.
4つの円の曲率(半径の逆数)をa,b,c,dとすると,
2(a2+b2+c2+d2)=(a+b+c+d)2 という
デカルトの発見(1643)した定理が成り立っています.
参考⇒三角形の七不思議 (ブルーバックス), 細矢 治夫

■反転によるフラクタル構造
美しいアポロニウスの窓を見ていると,いろいろな想いが拡がります.
2つの円が互いに接し,かつそれらがアポロニウスの窓の外周円とも接しているとき.
これらの接点を通り外周円と直交する円を考えましょう.すると,
この円で分断された2つのアポロニウスの窓の世界は,この円を反転円として,
互いに鏡像となっています. もし反転円がどんどん小さくなれば,
その小さな領域に大きな世界がどんどん繰り込まれていくので,
不思議なフラクタル世界 の美しさが見られます.
Fig.

https://scontent-b-nrt.xx.fbcdn.net/hphotos-prn2/t1.0-9/s640x640/1661263_605037739584150_251764405_n.jpg
図は Cinderellaというフリーソフトを用いて描きました.
緑色の円の外にあるピンクと黄色の円は,緑色の円を反転円とすると,
緑色の円内のピンクと黄色の円にそれぞれ映ります.
映されたこれらの円の大きさは,その上のグレーの円と同じ大きさです.
色々な反転円を考えれば,無限にある大小さまざまな大きさの円は,
みんな同じ大きさであるとも言えます.
だから,円盤内の世界は無限に広いと言い張るのも良いでしょう.

■円による反転
原点に中心のある半径1の円による反転は,反転円内の点r→反転円外の点Rへの写像
(あるいはこの逆)で,反転像どうしは,r・R=1の関係にあります.
もし,反転円の円周上に点があれば,反転像は元の点と同じ位置です(r=R=1).
反転操作では,円は円に写像されます.もし,反転円に直交するような円周の円を
この反転円で反転すれば,同一の円の上に写像されます.したがって,
円周に直交するような反転円で分断された円の2つの部分は,反転円による
それぞれの鏡像になります.

円が直線なら,普通の鏡映像になります.
直線鏡の組み合わせで作られる映像は,良く知られた万華鏡です.
反転円を用いたインドラの網も拡張された万華鏡の映像です.

■編集後記
仏教では,「宇宙の一切のものが,一切のものの原因になっていて,
無限の過去からの無数の原因が,どの一人にも
それぞれ反映されている」と考えます.
これはまさに単純な因果列ではなく複雑系の考え方ですね.
宮澤賢治に「インドラの網」という小品があります.
インドラの網目に縫い付けられた珠玉は,互いに映じ合うと同時に,
自分自身も輝いています.
この項目は,複雑系,双曲幾何の円盤モデル,エッシャーの不思議な世界,
平面の分割と万華鏡,などに関連があります.
これらは順次別号で取り上げる予定です.

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