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ペンローズ・タイリングと準結晶

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数学月間SGK通信 [2014.06.03] No.011
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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ペンローズ・タイリング
ロジャー・ペンローズが1966に考案したタイリング

■非周期のタイリング

1種類(あるいは2種類)のタイルで,隙間なく平面を張ると,
必ず周期的なパターンが現れると思うかもしれません.
確かに周期的なパターン[平行多角形(平行6角形など)になるよう
タイルを組み合わせて単位とする]を作れば,平面を埋め尽くせることはすぐわかります.
しかし,埋め尽くされた平面には,必ず周期的なパターンが
生じているかとえばそうでもありません.

古くから知られている1種類のタイルによる非周期タイリングに,
Voredbergタイリングがあります(Fig.1).
これはずいぶん複雑な形のタイルに見えますが,本質はFig.2のタイリングと同じ.
螺旋の中心が2つあるようなタイリングで,規則的ではあるが確かに非周期です.

Fig.1
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/05/15825205/img_0?1401584285
Fig.2
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/05/15825205/img_1?1401584285

■ペンローズ・タイリング

Fig.3
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/05/15825205/img_2?1401584285
Fig.4
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Fig.5
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/05/15825205/img_3?1401584285

2種類のタイルを用いた規則的ではあるが非周期なタイリングのもう一つが,
ペンローズのタイリング(Fig.3)です.
2種類のタイルをFig.4に示します.凧のような形の2Aと矢じりのような形の2Bです.
これらの形の半分A,BはFig.5の五芒星の中に出てきます.この図形には,
やたらに黄金比1:Φ ,Φ=(1+√5)/2=1.6180・・・があらわれ,フラクタル構造が生じます.
A型の二等辺三角形は,等辺:底辺=Φ:1,B型の二等辺三角形は,等辺:底辺=1:Φです.
このタイリングには,同じパターンが次々に繰り込まれて行くフラクタル構造の規則が
ありますが非周期です.
ペンローズ・タイリングが興味深いのは,それ自身美しいことにもよりますが,
それにもまして,このような構造をとる準結晶と呼ばれる物質が,現実に発見されたからです.

■ペンローズ・タイリングの作り方

Fig.6
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/05/15825205/img_5?1401584285
Fig.7
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/05/15825205/img_6?1401584285

Fig.7に示すように,A型の三角形はA型2個とB型1個に分割できます.
分割して生じたA型が始めのA型と同じ大きさになるためにΦ倍に拡大します.
B型の三角形はA型1個とB型1個に分割でき,生じたB型が始めのB型と同じ
大きさになるためにΦ倍に拡大します.このように分割・拡大を繰り返して,
いくらでも広い平面を埋め尽くすことができます.
この例では,正十角形からスタートし,分割手続きが繰り返されるので
5回回転対称が残ることがわかるでしょう.素性を隠すことはできませんね.
タイルの細分化が充分進んだとき,Aタイル数/Bタイル数=Φ=1.618・・・・となることがわかります.

■準結晶

電子線回折像(Fig.5)が10回回転対称性を示す物質が見つかり大騒ぎになりました.
回折像が観測できるのは結晶で,結晶構造は周期的なので5回対称(回折像は10回対称)
は許されないはずです.しかし,ペンローズ・タイリングの構造であれば,5回対称性をもち,
周期的な構造ではないが回折像が観測されます.
シュヒトマンは,特別な合金[超急冷で作ったMg-Al合金]でこのような物質を発見しましたが,
その論文が信用され受理(1984)されるのに2年半もかかりました.回折像が観測されるのは,
周期的な結晶構造でなければならないという思い込みがあったからです.今では,
種々の合金の安定相としても存在することが知られています
(5角12面体の準結晶の単結晶single quasicrystal).
シェヒトマンはこの発見でノーベル賞を受賞しました.
準結晶の発見(1984)に先立ち,ペンローズ・タイリングが考案(1966)
されていたというのも興味深いことです,

Fig.8
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/05/15825205/img_7?1401584285

■高次元結晶の低次元空間の切り口としての解釈

ペンローズ・タイリングを見ていると,局所的に5回対称をもつ球のような部分が随所に分布している
のに気づきます.これは,局所的な3次元宇宙がたくさん埋め込まれているようでもあります.
例えば,周期的な5次元空間を3次元空間に投影したものとの解釈は出来ないでしょうか.⇒続く

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