数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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サンディエゴの主婦マジョリー・ライスMarjorie Riceが,タイル張りの問題に出会ったのは,1975年のScientific Americanのマーチン・ガードナーのコラムだった.これは,古代ギリシア時代から数学者を魅了し続けてきた<<平面をタイル張りできる「タイル」の形(一つのタイルで平面を分割するテッセレーション)>>の問題です.
私も関心のある問題で,ガードナーのこのコラムを載せたサイエンスは昔読んで手元にあります.平面のタイル張りは,任意の3角形,任意の4角形タイルでできます.凸7角形以上のタイルでは不可能です.凸6角形の場合は,タイル張りできるタイルの形が3タイプあることを,ラインハルトが学位論文で証明しました(1918).難しいのは凸5角形の場合です.1975年時点のガードナーのコラムには,11タイプ(1967年にカーシュナーが発見した3タイプを含む)が掲載されています.この問題では,タイプ分けの条件が,とても難しい.連続変形によりどちらのタイプにも属するものがあるし,出来上がったパターンが全く違うように見えたりもするので,新しいタイプであるかどうかの判定はなかなか難しい.ライスもこの点にずいぶん苦労したに違いない.
1975年のガードナーのコラムの文章を引用すると,ーーーーーーーーー
カーシュナーの論文には,平面を埋める凸多角形が他にないことの証明はでてこない.その「最大の理由」は,編集者の「完全な証明は,かなり大きな本を必要とするだろう」という序文から読みとられる.---------
そして,実際にまだ新しいタイプがあったのだ.
■以下は,natalieの記事(Quantamagazine)による:
https://www.quantamagazine.org/marjorie-rices-secret-pentagons-20170711/
ライスが五角形タイリングに憑りつかれてから,家族はしばしば彼女が台所のカウンタートップの形をひそかにスケッチしているのを見ている.彼女の娘,キャシー・ライスは,「母は落書きしていると思った」と語った.
高等学校で1年しか数学を取らなかったライスは,誰も知らなかった五角形のテッセレーションパターンの新しい族を発見していたのです.ライスは,今年の7月2日94歳で亡くなりました.認知症のため,五角形タイリングの物語がついに完結したのを彼女が知ることはなかったが,ガードナーの提起から数十年が経過していた.
コンピュータ支援の新証明法で,フランスの数学者 Michaël Rao が,ライスが発見した4つを含む15の凸型五角形が存在することを証明した.
■フロリダ州生まれのマージョリ・ジック(Marjorie Jeuck),結婚後ライスは,ワンルームカントリースクールに入り,そこで2学年をスキップし,年長の子供たちと一緒に学びました.彼女は勉強好きでしたが,数学を学んだのは短期間だけです.貧困と文化的規範のため,大学に進学するなど思いもよらない時代でした.1945年,彼女は,敬虔なキリスト教徒のギルバート・ライスと結婚し,ギルバートが軍の病院で働くワシントンD.C.に移りました.後にサンディエゴに移住しますが,マージョリ・ライスは,幼少の息子と一緒に、その地で商業芸術家としてしばらく働きました.その子供は亡くなりましたが,他の5人の子供がおります.
ライスにとって,数学は楽しみでした.「聖書が重要のように,勉強も大切にした」,「他に勢力をつかい,時間を無駄にすることはなかった」とキャッシーは語っています.息子のダビデは,「彼女は黄金比とピラミッドに魅了され,膨大な図面と計算でそれらを研究していました」と述べています.
ライスは,子どもたちが学校に通っている間に自分も読めるようにと,息子の一人にScientific Americanの定期購読を許可しました.
デービッド・スズキの「物の本質」に関するインタビューで,彼女はタイル張りについてのガードナーのコラムを読んだとき,「誰も以前に見たことのないこれらの美しいものを,見つけられたら素敵と思った」と回想している.彼女はこのテーマに魅了され,どのタイプのものが他と違うのかを理解しようと努めた.数学的な背景がないので,独自の記法システムを開発し,数ヶ月で新しいタイプを発見したとも語っています.
発見して驚き喜んで,彼女は彼女の仕事をガードナーに送りました.ガードナーはそれをペンシルバニア州のモラヴィアン・カレッジのタイリング問題の専門家であるドリス・シャツシュナイダーに送ってくれました.一方,ライスは,自宅の誰にもこれの話をしませんでした.「私のお父さんは,お母さんが何をしているか,発見のことなども全く知らなかった.私たちの気を引くことが色々あるけれど,お父さんがパターンを見つけるのに何時間も費やす気持ちなど全く思いもよらない」
シャツシュナイダーSchattschneiderは,ライスの発見が正しいことを確認した.ライスのアプローチは,マイケル・ラオが新しいコンピュータ支援の証明に取り入れたのと同じもので,五角形の頂点がタイル張りの頂点で一緒になる可能性があるさまざまな方法を検討することでした.シャッシュナイダーは雑誌の記事で次のように語っています.目的に合う五角形の角と辺の条件を決定し,条件を満たす五角形を得ます.この方法で,ライスは最終的に4つの新しい凸形五角形とほぼ60種類のテッセレーションを発見しました.
ライスは恥ずかしいと講演を断ったが,シャッシュナイダーの招待で,彼女と夫は大学の数学会に出席し,彼女は聴衆に紹介された.彼女は1996年に "The Nature of Things"ドキュメンタリーでインタビューを受け,ワシントンにある数学協会のロビーのタイルフロアに彼女の五角形テッセレーションの1つが展示され,彼女はエッシャー風の絵画で彼女の五角形のパターンを記念した.
■この間,他のアマチュアも大きなタイル発見をしました.ソフトウェアエンジニアのRichard James IIIは,ガードナーのコラムを読んだ後で,1975年に新たなタイプの五角形を発見しました. 2010年,オーストラリアのジョーン・テイラーは,1990年にペンローズのタイル張りを見てタイル張りに魅了され,非周期のタイル張り(テッセレーション)する奇妙なマルチパートタイルを発見しました.
ライスの娘は「発見のためだけの発見だったが,認められて幸せだった」と語った.彼女は他の数学者が探していた何かを見つけることができたのだ.
Natalie Wolchover @nattyover
Senior writer for @QuantaMagazine covering physics and related things. I have a Klein bottle that contains the universe.