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群の表現と現象の対称性

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数学月間SGK通信 [2018.03.20] No.211
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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来週27日は,数学月間流勉強会,第4回です.
東大出版会,会議室にて,14:00-17:00
お気軽に参加ください.
この勉強会(第4回)のテーマは,群の行列表現と現象の対称性です.
先週のメルマガで,ルビーの赤色の補色をCrのd電子が吸収する話をしました.
正8面体の場に置かれたCrのd電子軌道5つは,縮退が解けてエネルギー準位が2つに分かれて存在し,
これらの準位間を電子が遷移するときに光エネルギーの吸収が起こるのでした.
さて,ここで正8面体場による準位の分裂を知るには,群の行列表現の手法を使います.
数式を使わず言葉ですべて説明したいと思っていますが,このメルマガ発行時点ではまだ不十分です.
読者の方からのご意見ご質問を歓迎します.
大体,群の行列表現には,色々な定理を使い難しく面倒です.言葉で説明した授業も本も聞いたことがありません.
でも,その心は言葉で説明できるはずだと私は思っています.
専門書は完全ですが,数式も定理も段階を踏んでたくさん勉強しなければなりません.
入門書は易しいですが,読んでも結局何の役にも立ちません.
私は,よくある入門書のように言葉でごまかすのではなく,
あるいは,数式を書き連ねてすますのではなく,数式が主張しているその心を普通の言葉で表現したいのです.
残念ながらまだ企ての途中なので,今日はまだ半端に数式が出て読みにくいものです.ご勘弁のほどを.
有限群Gの各元(成分)gに,n次正則行列D(g)を対応させ,群Gの演算構造を行列の集合D={D(g)}の中で再現することを,
群の表列表現と言います.つまり,群Gの任意の2元gi, gjに対し,集合Dでも,D(gi・gj)=D(gi)・D(gj)が成立すれば,
集合Dは群Gと準同型な群をなします.極端な例は,Gの異なる元もDの同じ元1に対応させてしまう対応も,群Gの表現です.
異なるgi, gj∈Gに対して,D(gi), D(gj)∈Dも異なれば,GとDは(1:1対応)同型な群です.
f次元行列表現を得るには,互いに独立なf個の基底関数が必要です.
f個の基底関数に,群の対称操作giが作用すると,これらの線形結合に変換されます.
この変換はfxf次元の行列D(gi)で,対称操作gi∈Gの行列表現と言います.
このようにして,群Gを行列の集合Dに対応させると,群Gの構造は群Dに反映され,
行列を扱う問題になり,固有値・固有関数などの行列の理論が使えるようになります.
行列の対角成分の和χ(gi)=Tr[D(gi)]を指標と言い,行列を指標に対応させるのも準同型写像で,
行列の群を扱わずに,指標の群を扱うことでとても簡単なります.
位数gの群の正則表現というのはg個の基底関数を用いて作りますが,
群の対称操作で基底関数が不変なのは恒等操作eだけで,他の対称操作giを作用すると,
どの基底関数も別の基底関数に変換されてしまいます.したがって,指標で言うとχ(e)=g,χ(gi)=0です.

任意のn次複素正方行列Aは,ユニタリー行列Pによる相似変換(P^-1)APで
固有値が対角上に並んだ上三角行列に変形できます.
相似変換(座標変換による基底関数の変換に相当)は,同値律を満たすので,
互いに相似変換にある行列は同値,固有値は同じです.
群の表現行列に戻れば,群の元(成分)giの共役類とは,
(g^-1)・gi・g (for g∈G)なので,同じ類の元の同じ指標になります.

さて,ここで既約表現の定義をしましょう.
既約表現というのは,相似変換で行列を対角化しようとしてもできない行列表現のことです.
可約表現とは,相似変換により,ブロック行列が対角上に並んだ型に変形可能な行列表現で,
ブロックには既約表現が並びます.
与えられた群の行列表現があったときに,その行列表現を相似変換により,
対角ブロックに既約表現が並ぶようにし,その行列表現の中に
どういう既約表現が何個あるか知るのを,表現の簡約と言います.
これは,既約指標の直交関係を使うと容易にできます.
この手法を用いて,ルビーの正8面体場に置かれたCrのd電子の縮退準位の分離を知りました.

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