2019年5月の記事一覧

美術・図工 カオス,フラクタル

■風が吹けば桶屋が儲かるバタフライ効果

バタフライ効果とは,気象学者のエドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会で行った講演のタイトル”予測可能性:ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?”に由来します.

複雑系では,単純な因果列ではなく,あらゆる原因がどの結果にも反映されるので,予測できない結果をもたらす可能性があることを言います.

□定まっているようで定まらない運命

系の運動を記述する方程式は正しく作れるのだが,この方程式の解析解が求まる(可積分)とは限りません.現実は,非可積分の場合がほとんどで,教科書で習う可積分の場合は例外的幸運な場合です.1880年代にポアンカレは,ニュートンの運動方程式ですべての運動が定まっているはずの世界で,三体問題は解析解が得られないことを証明しました.

□非可積分の世界とバタフライ効果

非可積分の方程式の解は,コンピュータによる数値計算で求めることができます.しかし,このような系の解では,方程式のパラメータや初期値によって,解が分岐したりカオスと呼ばれる定まらない状態になったりします.

このような状態は,ロジスティク写像の漸化式Xn+1=aXn(1-Xn) や同様な漸化式 Xn+1=Xn2+λ でも見られます.ここで得られる実数列 Xn(n→∞)が,実数パラメータλやaの値により,振動したり発散したり,定まらない状態になったりすることが起こります.また,初期値のごくわずかのずれが,Xnの劇的な変化を生むことがあります.これがバタフライ効果と呼ばれる所以です.

■マンデルブロの登場とフラクタル

IBMトーマス・J・ワトソン研究所にいたマンデルブロは,綿花などの価格変動を調べていて,不規則な変動データの中に隠れている自己相似性を見つけフラクタルとなずけました.フラクタル幾何学は1982年に発表されました.

 マンデルブロ集合(奇妙なフラクタル構造)と言うのは,

f(z) = z2 + Cという写像で生まれる複素数列を,

初期値z0 = 0として,z1 = f(z0), z2 = f(z1), …とくり返し計算し,n → ∞で|z|が発散しないような,複素平面上の複素数Cの集合「初項z0 = 0に対して,発散しないCは何か」のことです.

マンデルブロ集合の境界(数列が発散する/しないの限界)ではカオスの発生があり,美しく不思議に入り乱れたフラクタルが見られます.

 

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