数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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今日は,YouTubeにある動画の話をします.たいへん興味を引く動画なので,ぜひご覧ください.
この動画の発信元3Blue1Brownは,Grant Sandersonが作ったYouTubeのチャンネルで,
なかなかよくできた可視化された数学入門です.
動画は,物体mは静止しており,物体Mは初速度v0で摩擦のない台上を滑る所から始まります.
Mやmはそれぞれの物体の質量(M>m)で,左側は壁です.
衝突はすべて弾性衝突とすると,エネルギー保存(1)と運動量保存(2)が成り立ちます.
(1)は楕円の式ですが
の変数変換をすれば,新しい変数v3を採用したv1,v3平面では半径v0の円になります.
(2)は,2つの物体m,Mが衝突したとき2つの物体から成る系全体の運動量が保存される(運動量変化が0)ことを示しています.こちらの式も,v2からv3へ変数変換すると,v1,v3平面で傾き-√M/mの直線になります.物体mとMの衝突後に分配される速度変化⊿v1と⊿v2の比は,それぞれの質量に反比例するわけですが,質量mの速度v2を変換したv3に対しては,v1,v3の速度変化の比はそれぞれの質量の平方根に反比例します(2').つまり,v3=-√(M/m)v1+C で,傾き-√(M/m)の直線です.
物体mが壁と衝突するときは,壁は動きませんから,v3の符号のみ変えます.
横軸を速度v1,縦軸を速度v3としてグラフを描くと,
式(1')は,半径がv0の円で,エネルギーが保存される系の状態はいつもこの円上にあるべきです.式(2')は運動量保存を示すグラフで,(-v0,0)の点から出発し傾きー√(M/m)の直線です.
この直線が円と交差する点が,物体mと物体Mの最初の衝突後の速度v1,v3の状態です.
その後,物体mはそのまま滑り壁に衝突し,v3だけが符号を変えます.これは,最初の衝突点のv3の符号を変えた円上の点になります.
このように続けると,円内に納まるのこぎり歯状のグラフができます.
衝突のたびに円周上の,のこぎり歯の先の状態を移るわけで,衝突回数を求めることができます.
YouTubeのアニメーションのように,Mの質量を増加させると,直線(1')の傾きが急になり,
のこぎり歯が細かくなるので衝突回数は増加します.
きちんと計算すると,tanθ=√(m/M)として,
衝突回数Nは,N=2[π/2θ]となり,
Mが大きくなればなるほど,Nは大きくなります.([]は数値の整数部分)
m/M=10-2pとおくと,Mが大きくなる(p→∞)のとき,N→π×10pの整数部分になります.
この記事は数を記憶する方法 https://note.com/sgk2005/n/n15dcfd723999 の続編です.
藤井聡太君の活躍はすごいですね.彼の頭には自分の棋譜はもちろんのこと数多くの棋譜が記憶されており,盤面の映像として取り出せるのでしょう.2019年,5月19日の日本数学協会の講演会の一つに,田村聡子氏(大阪市公立小学校教諭)の講演「ソロバンを取り入れた算数」がありました.
今日の学校教育は,教科書からはみ出たことは一切できない,指導要領にないことは入る余地のない時代だそうです.そのうえ,ソロバン塾よりも公文に行ってしまう時代で,ソロバン教育はなかなか大変です.
私も小学生の頃,ソロバン塾に数か月通ったことはあります.たし算ひき算しか出来ない初級ですので,上級者の技には感嘆するばかりです.その脳の働き方は想像もつきません.
田村先生の話によると,数字がソロバン珠の配列パターンで見えるそうです.私も暗算の時はソロバンを見ていた方が楽ですので,その状態はなんとなく想像できます.
2014/06/10発行のメルマガ13号で,「数を記憶する方法」という英国のエッセイを紹介したことがありますが,3.141592...などの数字の列を,色彩豊かな色の列として見る人がいるそうです.
記憶術でも,こじつけのストーリをつくり,それを映像化して記憶するという方法があるそうです.どうも映像で覚えるのが決め手のようですね.私にはかえって面倒でその良さがわかりません.
日本語では語呂で覚えることはよくやります.英語の語呂合わせは日本語よりも面倒で,この点では日本語の方が有利なようです.
√5=2.2360679は「富士山麓オウム啼く」とやる方が,各数字を同じ韻を踏んでいる言葉と結び付け(例えば),oneワン=バンbun,twoトゥー=シューshoe,threeスリー=ツリーtree,fourフォー=ドォーdoor,.....などとやるより優れているでしょう.
■ソロバンの上級者は,数字でも英語のアルファベットでもピアノの楽譜でも,ソロバン珠の配列パターンで見えるそうです.ソロバンの上級者になると,英語にも音楽にもこの能力は役立つそうでうらやましい限りです.
読み上げ算や読み上げ暗算では,ものすごいスピードで読み上げるのを
聞き逃さず,聞き分け,記憶する.その集中力がすい.
試験会場の自分の座席とスピーカーの位置で,聞きやすい座席位置と聞きにくい座席位置があるそうですが,その違いが明瞭に出るほどの極限状態の集中力です.
場所は指定されているので始めは運ですが,間違った人が抜けて前に詰めるときは,聞きやすい場所を見抜ける人は皆,そこを狙っているそうです.
そろばんの頭の使い方と集中力はいろいろなことでも役立つでしょう.
今回の多面体は,互いに双対な立方体と正8面体を重ね合わせたときの共通部分です.
従って,これらの多面体の対称性は全部同じです.
Fig.1の円盤内部は双曲幾何の支配する世界で,ポアンカレの円盤モデルと呼ばれます.
この円盤世界の直線は,円盤の縁に直交する円弧です.もちろん,円盤の中心を通る直線は円盤の縁で直交するので,この円盤世界でも直線です.
この円盤世界は,正7角形のタイルが頂点で3つ集まるように敷き詰められています[双曲面の正則分割{7,3}].正7角形の辺は,この双曲世界の直線でできています.
直線に沿って円盤の縁に向かって進んだとすると,自分の世界もどんどん小さくなり縁に到達するには無限の時間がかかるようになっている世界です.
{7,3}分割の正7角形のタイルは,円盤の縁に近づくにつれどんどん小さくなっていますが,円盤の中にいる人にとっては全部同じ大きさ(言葉をかえれば円盤内は無限に広い)です.
Fig.1 Fig.2
コクセター万華鏡は,正7角形タイルの中を14個の直角3角形(7,3,2)に分割してできます.この直角3角形の頂点の角度は(π/7,π/3,π/2)ですから,直角3角形(7,3,2)と略記しました.
この直角3角形を鏡室にして作った万華鏡をコクセター万華鏡と呼ぶことにしました.
それは,同様な分割{6,4}の論文をコクセターがエッシャーに送って,それがエッシャーの極限としての円の作品を生んだからです.
{7,3}分割を直角3角形(7,3,2)のコクセター万華鏡にすると,Fig.2のように3角形のどの頂点周りにも偶数の直角3角形が集まるので,円盤内の世界全体が市松模様になります.
円弧の1つを円柱鏡にして,この円弧で分けられた左世界の像を映し出した実験をした撮影してみましたFig.3.右世界の像は左の世界の鏡像なので,円柱鏡を境として市松模様が逆転しているのがわかるでしょう.
Fig.3
円柱鏡(円の内側で反射)の焦点は収差のため,このような曲線になります.
このような反射光線のが作る包絡線の形を“火線”といいます.
この曲線の形はネフロイド(サイクロイドの仲間)と呼ばれます.
■コクセター万華鏡
このコクセター万華鏡は直角3角形(7,3,2)の辺を鏡にして作られます.
この双曲幾何のポアンカレ円盤世界の直線は,円盤の縁で直交する円弧です.
双曲面の正則分割{7,3}の正7角形を,直角3角形(7,3,2)で細分したコクセター万華鏡を示します.
この万華鏡像は,
直角3角形(7,3,2)の辺を鏡にして,円による反転(数学的演算)により得られます.
しかしながら,円柱鏡による反射像には収差があるので,反射を繰り返すとボケてしまいます.
円柱鏡の1回反射の実験例を示します.右側世界は左側世界の鏡像なので,市松模様が鏡面に沿ってずれているのがわかるでしょう.
■風が吹けば桶屋が儲かるバタフライ効果
バタフライ効果とは,気象学者のエドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会で行った講演のタイトル”予測可能性:ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?”に由来します.
複雑系では,単純な因果列ではなく,あらゆる原因がどの結果にも反映されるので,予測できない結果をもたらす可能性があることを言います.
□定まっているようで定まらない運命
系の運動を記述する方程式は正しく作れるのだが,この方程式の解析解が求まる(可積分)とは限りません.現実は,非可積分の場合がほとんどで,教科書で習う可積分の場合は例外的幸運な場合です.1880年代にポアンカレは,ニュートンの運動方程式ですべての運動が定まっているはずの世界で,三体問題は解析解が得られないことを証明しました.
□非可積分の世界とバタフライ効果
非可積分の方程式の解は,コンピュータによる数値計算で求めることができます.しかし,このような系の解では,方程式のパラメータや初期値によって,解が分岐したりカオスと呼ばれる定まらない状態になったりします.
このような状態は,ロジスティク写像の漸化式Xn+1=aXn(1-Xn) や同様な漸化式 Xn+1=Xn2+λ でも見られます.ここで得られる実数列 Xn(n→∞)が,実数パラメータλやaの値により,振動したり発散したり,定まらない状態になったりすることが起こります.また,初期値のごくわずかのずれが,Xnの劇的な変化を生むことがあります.これがバタフライ効果と呼ばれる所以です.
■マンデルブロの登場とフラクタル
IBMトーマス・J・ワトソン研究所にいたマンデルブロは,綿花などの価格変動を調べていて,不規則な変動データの中に隠れている自己相似性を見つけフラクタルとなずけました.フラクタル幾何学は1982年に発表されました.
マンデルブロ集合(奇妙なフラクタル構造)と言うのは,
f(z) = z2 + Cという写像で生まれる複素数列を,
初期値z0 = 0として,z1 = f(z0), z2 = f(z1), …とくり返し計算し,n → ∞で|zn|が発散しないような,複素平面上の複素数Cの集合「初項z0 = 0に対して,発散しないCは何か」のことです.
マンデルブロ集合の境界(数列が発散する/しないの限界)ではカオスの発生があり,美しく不思議に入り乱れたフラクタルが見られます.