数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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数学月間SGK通信 [2018.08.28] No.230
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今年の夏は特別暑いですね.皆様お元気でしょうか.
7,8月は超過密なスケジュールでしたが,何とか乗り切れそうです.
8月22日の数学月間懇話会(第14回)は,お陰様で無事実施できました.
残るは9月2日のとっとりサイエンスワールドin倉吉(未来中心)です.
お近くの方,ぜひご参加ください.私は万華鏡で参加します.
今年の万華鏡は,ちょっと見ると昨年と同じと思う人もいそうですが,
実は3枚鏡に進化しているのです.今年の万華鏡を作れば,昨年より
ずいぶんきれいな映像であることがわかるでしょう.
このようなタイプ(ブリュースタ)の万華鏡は,これでゴールです.
来年の万華鏡からは,多面体万華鏡のシリーズに変えたいと思っています.
ぜひ,今年の万華鏡を作りに来てください.
ひまわりの花の中心の種の部分や,松ぼっくりを裏から見ると
時計回りの螺旋と反時計回りの螺旋が見えるでしょう.
それらの螺旋の数は,隣り合うフィボナッチ数であることが知られています.
今日は,フィボナッチ数の話です.
オスのミツバチは未受精卵から生まれ,メスのミツバチは受精卵から生まれるそうです.だから,オスのミツバチには母親しかいません.メスのミツバチには母親と父親がいます.
いま,1つのオスのミツバチに注目して,このミツバチの祖先が何匹になるか,
世代ごとに遡ってみましょう.
原点になるオスのミツバチを世代1とします.
遡って,世代nのミツバチの数を(a(n),b(n),t(n))と表記しましょう.
a(n)はメスのミツバチ数,b(n)はオスのミツバチ数,t(n)はミツバチ総数です.
世代1では,オスのミツバチ1匹なので,
(a(1)=0,b(1)=1,t(1)=1)です.
オスのミツバチには母親しかいませんから
親の世代(世代2)では,(a(2)=1, b(2)=0, t(2)=1)になり,
さらに遡り祖父母の世代(世代3)で,メスのミツバチ1匹が生れたのだから,
(a(3)=1,b(3)=1,t(3)=2) です.
この調子で遡っていきます:
いつも次の関係が成り立つことがわかるでしょう.
a(n-1)=b(n)
a(n-1)+b(n-1)=a(n)
t(n)=a(n)+b(n)
これらの関係を整理して,
a(n-1)+b(n-1)=a(n-1)+a(n-2)=a(n)
t(n)=a(n)+b(n)=a(n)+a(n-1)=a(n+1)
が得られます.
これは,メスのミツバチの数は,世代を遡るとフィボナッチ数列で増大する
ことを示しています.
n世代のミツバチ数は,一つ遡ったn+1世代のメスのミツバチ数と同じとも言えます.
1世代から遡って8世代まで,ミツバチ総数t(n)を並べて見ましょう.
1,1,2,3,5,8,13,21,....
これはフィボナッチ数列です.
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数学月間SGK通信 [2018.09.04] No.231
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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9月2日はとっとりサイエンスワールドin倉吉(未来中心)でした.
7月は私は不在だったので,参加するのは今年は倉吉だけでした.
他会場は,材料のみの提供で,先生方やボランティアの高校生にお願いしました.
前夜の20時50分発のバスで出発し,当日の朝7時に倉吉到着です.
会場の倉吉,未来中心(なしっこ館)で,8時過ぎから準備に入り,
いよいよ10時開場です.良い天気の日になりました.
2日(当日)の来場者は1,226人との発表です.
倉吉会場の万華鏡は100人を予定しましたが,3回目のクラスで使い切り,
その後の4,5回は,予備の材料をかき集めて対応しました.
結局,150人(約30人クラスを5回)を超す盛況でしたが,
4,5回目は混雑しすぎて指導の声が届かず困りました.
材料切れでお断りした方々には申し訳ありません.
左側は今年(2018年)の万華鏡の映像.右側は昨年(2017年)の万華鏡の映像です.
万華鏡の外観はほとんど同じなのですが,覗くと,映像はずいぶん違うでしょう.
今年の万華鏡で,頂角が15度の2等辺3角形の3枚鏡の万華鏡のゴールです.
ちなみに,昨年の万華鏡は2枚鏡の万華鏡でした.
去年の万華鏡 今年の万華鏡
来年の万華鏡は多面体の見える万華鏡も含めて,いろいろ考慮中です.
ご希望などお寄せください.
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数学月間SGK通信 [2018.09.11] No.232
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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参考
ロンドンの記事
多面体の6角形の面
関西では台風大雨の被害,北海道では地震の被害と,重なりなした.
皆様いかがでしょうか.お見舞い申し上げます.
北海道の地震では,泊原発が停止していたのは不幸中の幸いでした.
もし稼働中だったら制御棒が挿入でき停止できたとしても,
燃料の冷却には非常用電源だけでは持ちません.福一の再現になるところでした.
今年は異常に暑い夏でした.私の家に来ていたシジュウカラさんたちは全く姿を現さなくなっていたのですが,9月8日になってまた戻ってきました.暑い夏はどこか山の方にでも避難していたのでしょう.無事で良かった.
今回はイギリス旅行で見たものの話です.
ロンドンに寄ったのは,7月16,17日の2日だけ.16日(月曜日)の昼にロンドン着.ブリティッシ・ライブラリーと大英博物館見学.あまり見学時間はありません.
館内も非常に暑い.その後トラファルガーまで2階建てバスに乗る.
16日はKings crossに泊まる.
マルクスは大英博物館の読書室で毎日過ごしたそうだ.記録が残っている.
■
地下鉄の通路のバイオリニスト.サウンドオブミュージックの演奏ですが,上手いので募金しました.上手いわけですここで演奏できるのはオーデションに合格した人だけだそうです.私も下手なバイオリンを奏くので,この方に関心をもちました.なぜここで演奏しているのか質問したかった.伴奏もなくただ一人.こんなところでバイオリンに出会うとは意外でした.
17日(火曜日)は,V&A(Victoria & Albert)Museum(今日も非常に暑い日であるが,5階は天井ガラスでまるで温室).その後,自然史博物館見学.
東日本大震災のコーナーがありました.床が横揺れする地震の体験ができます.
地震を体験したことがあるかを問うアンケートの投票ボタンがありましたが,この地の人の7割が地震の体験がないようです.
■さて,街を歩いていて面白い建物を見つけました.
黄金比だらけのペンローズタイリングや面白い多面体のオブジェです.
この建物はよくわかりませんがロンドン大学と関係ありそうです.この多面体の形は,なかなか面白い.正5角形が12個と6角形(正ではない)が30個でできています.
正5角形が12面でできている「正12面体」の各面(正5角形)に厚みを持たせて,
側面が台形で囲まれた「厚みのある正5角形の面」で正12面体を作り,側面の台形は隣の面の台形とつないで平面上の6角形にします.なかなか美しく面白い多面体ですが,3つの6角形が出会う頂点があります.もし,6角形が正6角形なら3つ出会う頂点は平坦になってしまいますから,この図形の6角形は正6角形ではありません.
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数学月間SGK通信 [2018.10.09] No.236
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今年の数学月間懇話会の講演の1つは,パズル玩具と数学の接点-「解ければ終わり」ではもったいない-秋山久義氏でした.
この講演で取り上げたパズルの1つに「クロスバー・パズル」があります.秋山氏のプレゼンを引用し,
このパズルを紹介しましょう.
クロスバー・パズルというのは,8枚の板よりなり,
板には5の溝が切ってある櫛形をしています:
5つの溝のうち1つは深く,1つは浅い.残りの3つの溝は中間(半分)の深さです.
8枚の板は,シリンダー錠のように,溝の配列が全部異なります.
この8枚の板を縦/横に組み合わせ,完成図のような形に組み上げて下さい.
縦/横(直交)に組み合うときに,深い溝には浅い溝を組み合わせなければできません.
中間の深さのもの同士が組み合わなければやはり行き詰ります.
全部組み上げるのはとても難しいです.ご挑戦ください.
[ヒント]
ラテン方陣というのは,5つの数字を並べて.縦/横のどの列にも,同じ数字が出てこないような並べ方です.
クロスバー・パズルでは,深い溝と浅い溝が,縦/横の列に1つずつあるのが必要条件です.
ラテン方陣とクロスバー・パズル,この両者は似ていると思いませんか!
このラテン方陣から出る解は,ここに示したグラフの解(4つ)以外にもあるし,
ラテン方陣は,この他にもまだあります.従って,解はこの4つ以外にたくさん(多分,24通り)あります.
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数学月間SGK通信 [2018.09.25] No.234
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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フィボナッチ数はいろいろな所に現れます.
230号に続きThomas Koshyの著書からの引用です.
今回はフィボナッチ数と音楽の関係です.
フィボナッチ数は次のように定義される
F(n)=F(n-1)+F(n-2).F(1)=1,F(2)=1として数列を作ると
1,1,2,3,5,8,13,.......が得られる.
ピアノの鍵盤は,フィボナッチ数と音楽のつながりを魅惑的に可視化している.
鍵盤上で1オクターブは,2音の間の音程で,高音の周波数は低音の2倍になっている.鍵盤でいうと,1オクターブは,5つの黒鍵と8つの白鍵,合わせて13の鍵で構成される;図.この5つの黒鍵は2つのグループをなしている;一方は2鍵よりなるグループ,他方は3鍵よりなるグループ.
1オクターブに入る13の音は,西洋音楽で最も一般的な音階であるクロマチック音階(半音階)を作る.クロマチック音階に先行して,2つの他の音階;5音からなるペンタトニック音階と8音からなるダイアトニック音階があった. お馴染みの"Mary had a Little Lamb” と “Amazing Grace” は,ペンタトニック音階を使い演奏できる.また, “Row, Row, Row Your Boat” のメロディーはダイアトニック音階を使い演奏できる.
長6度と短6度(それぞれ,6つ離れた音,および5+1/2離れた音)は,耳を最も喜ばす2つの音程である.長6度は,例えば,音CとAから成る:それぞれの音は,1秒当たり264と440の振動数である;図.264/440 = 3/5は,フィボナッチ比であるに注目しよう.
短6度は,例えば,1秒当たりの振動数330と528の音であるEとCから構成される. それらの比もフィボナッチ比である: 330/528 = 5/8.
[自音の音程は1度という.1オクターブの音程は8度である.]