数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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■2重振り子(振幅の大きいとき)
微小な振幅であるならば,解析的な解があり,あまり複雑でない周期的な運動になることを前回に学習しました.
しかし,振幅が大きくなると,ラグランジュ関数 L の近似ができませんので,ラグランジュ方程式は解けません.
しかし,将来,誰かが巧妙な方法で解くのではないかと期待し,最悪そのような解析的な解は存在しないとしても,
振動範囲が小な場合と本質的に大差はないのではないかと想像するのが自然なことでした.
系のラグランジュ関数 L は全く正しいし,ラグランジュ方程式も正しいのですから,
解析的に解けないと言っても心配ないのではと思うでしょう.
しかし,実験ではとんでもない現象が見られました.
コンピュータを用いた計算が高度になり,力ずくで動きのシミュレーションがなされるようになりました.
正しい方程式は実在するのですから,関数による軌道記述は出来なくても,動きは逐一決定されるはずです.
しかし,初期条件(初期値)により,予想もつかない挙動が見られます(カオス).
◆第1の動画は実験
スタートする初期値によって運動の様子は異なります:
◆第2の動画はシミュレーション
Double Pendulum Chaos Light Writing (computer simulation) 1
■2重振り子(振幅の小さいとき)
図のような2重振り子の運動です.今回は物理演習のようになりましたが,
数式に囚われる必要はありません.重要なのは,振幅が小さい範囲なら
運動は線形の微分方程式に近似できるので,2種類の周波数の振動が重畳
された運動になる.つまり,関数で記述できる安定な周期的な運動になる
という事です.そして,これに対比される次に話題になる振幅の大きい
2重振り子運動では,運動は関数で記述できず,予想もつかない
とんでもない運動をするということです.
◆それでは,振幅の小さいときの2重振り子の学習をしましょう.
ここでは,ラグランジュ関数やラグランジュ方程式を説明せずに用いています.
これらを学習したい方は,EMANの物理学などが参考になります.
m1の座標は
これは,Oから釣り下がる長さ l の糸と
mから釣り下がる長さ l1 の糸の和であるからだ.
この2重振り子のラグランジュ関数Lは
Tは系全体の運動エネルギー,Uは系全体の位置エネルギー
解Φ,ψ を求めるには,次のラグランジュ方程式を解かねばならないのだが
解析的には解けない(関数で記述できる解がない)ので,
Φ,ψ の振動範囲を微小に制限して(Φ,ψの2次までを残す近似),
この近似した L=T-U を用いて,ラグランジュ方程式を解く.
これは解けるのだが物理の演習問題なので(参考)に示し,結論だけ述べる.
結論
Φ, ψ は,以下の2つの固有ベクトル(基準振動)の重畳(線形結合)で表せる.
微小振動の範囲では,Φ,ψは,それぞれ2つの固有振動の重ね合わせであるということは,
それほど複雑な振動ではない.いずれにしろ周期的な振動である.
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(参考)
続く⇒ 振幅の大きい場合
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数学月間SGK通信 [2015.03.03] No.053
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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3月になりました.皆様,お元気にお過ごしでしょうか.
母が救急車で入院した1月には,硬い芽のようだった病院の梅も,
今はすっかり咲いてしまいました.白梅でした.
病院は遠方なのですが,見舞いにほぼ毎日通っています.
ここの梅の花の咲くのが見られるとは思っていませんでした.
でも,お陰様で無事に日々が過ぎています.
無限に繰り返す周期的な空間を結晶空間といいます.
このような空間を,正多面体(あるいは半正多面体)を組み合わせて,
すきまなく充填する様式を観賞しましょう.
これは立体パズルとしては難しいものですが,自然界ではめずらしくありません.
美しい鉱物結晶の構造として,結晶学の常識になっています.
空間分割の対称性,空間群の研究は,数学者ではなく
フェドロフなどの結晶学者や鉱山技師が偉大な業績を残しています.
■立方体(1種類)を積み重ねた周期空間から始めましょう.
Fig.1の4列目の最上行(右上隅)にあります.
http://blogs.yahoo.co.jp/tanidr/GALLERY/show_image.html?id=16535749&no=1
(これらの図はPOV-Ray,v3.7を用いて作成しています)
1列目の図は,立方体と正8面体を重ねて表示したものです.
これらの2つの正多面体は互いに双対*の関係にあります.
(*立方体の面を頂点に,頂点を面に変えたものが正8面体)
立方体のサイズを固定して,正8面体のサイズを連続的に変化してみましょう.
第1列の上から下へ,正8面体のサイズを徐々に小さくしています.
そのとき,立方体と正8面体の共通部分として得られる半正多面体が第2列.
これら半正多面体の名前をシュレーフリ記号*で書くと,
第2列の上から順に[3,8,8],[3,4,3,4],[4,6,6]です.
*)記号の見方:例えば[3,8,8]は,頂点のまわりが,
正3角形,正8角形,正8角形で囲まれているという状態です
■第3列は,それぞれの多面体を2次元に配列させて作ったシート.
第3列の上段図には小さい正8面体,中段図には大きな正8面体を立てる穴が,
下段図では,正8面体ではなく同じ半正多面体[4,6,6]用の穴ができます.
■第4列に,空間を隙間なく埋め尽くす正多面体の組み合わせを示します.
第4列の最上段図は,立方体のみでできる配列.
立方体だけで隙間なく空間を充填した構造は単純格子といいます.
第2,第3の行に,正8面体の穴に正8面体を詰めて空間を充填する様式を示します.
これらも格子としては単純格子と同じです.
第4の行は,多面体[4,6,6]のみで空間を充填できることを示します.
このとき出来上がる構造は体心格子と呼ばれます.
■ペロブスカイト(CaTiO3)構造
Fig.1の下から2行目の配列構造を見てください.
正8面体と[3,4,3,4]多面体の組み合わせで,空間が充填されています.
Fig.2
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/79/16539279/img_3_m?1425130572
正8面体の中心にTi原子,[3,4,3,4]多面体の中心にCa原子,
各多面体の頂点にはO原子を配置すると,ペロブスカイトの結晶構造が得られます.
余談ですが,この構造は,強誘電体や超伝導物質と係わりがありますし,
地球マントルの高密度物質の構造とも係わりがあります.
■ダイヤモンド構造
Fig.3
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/07/16541407/img_0_m?1425310851
こんどは,正8面体の稜を共通にして,平面シート状に並べます.
もちろん,正8面体だけでは空間の充填は出来ませんので,
正4面体の隙間がたくさんできます.正4面体の隙間はFig.3の緑のシートが
積み重なったようになり,頂点で8つの正4面体がつながり(シートが重なるため),
正4面体と正8面体の比率は2:1です.
空間の充填パズルはこれで正解なのですが,ついでにダイヤモンド構造を作ってみます.
Fig.4
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/07/16541407/img_1_m?1425310851
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/07/16541407/img_2_m?1425310851
正8面体(間隙)を取り囲む緑の正4面体の半分だけ使い,
各頂点で4つの正4面体がつながるようにします.
ダイヤモンドの結晶構造は, このような正4面体の配列が繰り返し,
青い正4面体の中心と頂点の位置に炭素原子を配置した構造*です.
*)正4面体の中心にある炭素原子から,4つの頂点方向に4本の結合が伸びています.
正四面体のどの頂点も4つの正4面体と規則正しくつながつているので,
正4面体の頂点の炭素原子からは,周りの4つの正4面体の中心にある炭素原子に向かって,
同様に4本の結合が伸びています.