2015年2月の記事一覧

色々な幾何学平面

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数学月間SGK通信 [2015.02.10] No.050
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■ユークリッド幾何,楕円幾何,双曲幾何
色々な幾何空間があります.大きく分けて,ユークリッド幾何空間と非ユークリッド幾何空間です.非ユークリッド幾何空間には,楕円幾何,双曲幾何の支配する幾何空間があります.これら3種を,平面を例にとり比較します.
(1)我々の常識の通用するのはユークリッド平面です.
ご存知のように,ユークリッド平面では,直線外の1点を通る平行線は唯一本だけ引けます.
(2)球の表面は楕円幾何平面の例です.地球の表面だけを想像しましょう.
地球自体は,3次元ユークリッド空間の物体ですが,表面だけなら楕円幾何平面の例です.
楕円幾何平面の直線は大円(球の中心を含む平面による球の切り口)です.地球上の2点間の距離が最小のものは大圏コースと呼ばれますが,これは地球の大円上の線分のことです.地球は3次元ユークリッド空間の物体ですから,地表の2点を地球内部を通る直線で結べば最短距離でありますが,地表だけの2次元平面では大圏コースが最短です.球表面の異なる2つの大円は必ず2点(直径の両端)で交わります.そのため楕円幾何平面では.平行線はありません.また,地球儀の緯線のようなもの(小円)は大円でないのでこの世界では直線になりません.
(3)双曲幾何平面では,ある直線に対する直線外の1点を通る平行線は無数に引けます.双曲幾何平面は楕円幾何平面のように閉じていないので,イメージを持ちにくいのですが,ポアンカレがうまいモデルを提唱しました.このモデルはポアンカレの円盤モデルといいます.双曲幾何の世界を表すのに円盤を用い,この世界の直線は円盤のフチに直交する円弧とします.このように定義された世界では,ある直線に対する直線外の1点を通る平行線は無数に引けることがわかります.

■3種の幾何平面で,平面の正則分割を考える
さてこれからやることは,それぞれの幾何平面で,正多角形のタイルによるタイル張りを考えることです.このような問題は,平面の正則分割とも呼ばれます.
それぞれの幾何平面での多角形は,それぞれの幾何平面の定義による直線で囲まれているものです.それぞれの幾何平面で,3角形の内角の和Sは,S=π(ユークリッド平面),S>π(楕円平面),S<π(双曲平面)になります.
正p角形が頂点でq個集まってタイル張りがなされている状態{p, q}で,正p角形の内角の和を表す式を等号で置くと (2π/q)p=(p-2)S が成り立つので,
1/p+1/q=1/2 (ユークリッド幾何)
1/p+1/q>1/2 (楕円幾何) 
1/p+1/q<1/2 (双曲幾何)
となります.それぞれの幾何平面で,許される{p,q}の整数解を求めると,以下のことがわかります.
(1)ユークリッド平面での正多角形によるタイル張りは,正3角形,正4角形,正6角形で可能.{3,6}.{4,4},{6,3}が解です.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/93/16488893/img_0_m?1423315106
(2)楕円幾何の平面では,正6角形以上の正多角ではタイル張りができません(閉じた立体になりません).
調べてみると,正5角形のタイルでは,頂点に3つのタイルが集まるもの{5,3},正4角形のタイルでは,頂点に3つ集まるもの{4,3},正3角形のタイルでは,頂点に5つ{3,5},4つ{3,4},3つ集まるもの{3,3}が作れます.結局,5種類の正多角形によるタイル張りがあり,これらはプラトンの正多角形に対応した球面立体です.ここでは{5,3}に対応するもののみ掲載します.黄色い球面正5角形が頂点で3つ集まっているものです.黄色いタイルに5mの対称性があるとき,赤で塗った三角形を中心から見込むような万華鏡を作るとこの映像が再現できます.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/93/16488893/img_1_m?1423315106
(3)双曲幾何の平面では,正則分割は無限にあります.
例として{6,4}と{5,4}のものをとりあげ掲載しました.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/93/16488893/img_3_m?1423315106
例えば,{6,4}の映像を3角形の万華鏡で作るには,
下図の中心に頂点のある三角形の2辺は平面鏡,残りの1辺は円盤のフチに直交する円弧の鏡を使います.しかしながら,この円弧は数学的に反転円として定義されているのですが,現実の光学法則では火線という収差があるので,あまり奇麗な万華鏡映像にはなりません
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/93/16488893/img_4_m?1423315106

■円盤の中の不思議な世界
私たちの宇宙は膨張していることが知られています.
遠方の宇宙のフチの後退速度はものすごく,光速に達すると,
こちらに光はやって来ません,そこが宇宙の果です.
宇宙銀河の回転速度は,宇宙のフチに行くほど大きく
高速で運動する世界の長さは,我々から見ると縮んで見えます
つまり,宇宙は双曲幾何の世界に似ています.
双曲幾何の円盤の内では,円盤のフチに近づくほど空間が縮みます.
この世界では,直線に沿って旅する自分自身もフチに行くほど縮むので
いつまで歩いても世界の果てに到達できません.
同様に,円盤の中心に近いほど距離が大きくはかどるので,
円盤の外から見ている我々には,直線が円盤の中心方向に膨らんで見えます.
一方,円盤内の世界にいる者にとってはこれが最短距離で直線なのです.

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