2019年12月の記事一覧

数当てカードの数理★

4x4の16個のマスに0~15の数字が書かれたカードがあります.このカードの上に孔のあいたマスクカードを重ね「あなたの思った数が見えますか」と尋ねる.これをマスクカードを変えて4回行えば,相手が心の中で思っていた数が当てられるというのが,この数当てのゲームです.

どのような仕組みがあるのでしょうか.秋山久義さんが,2019年7月のパズル懇話会で発表されています.
今日は,秋山久義さんの発表「数当てカードの諸相」から引用して,その仕組みを解説します.

まず,16個の数の配列は,ランダムに配置したふりをしていますが隠れた規則があります.
例えば次の2つの方法があります.
(1)左右対称の位置にある2つの数字の和は常に15になる.
(2)回転対称(2回対称あるいは点対称)の位置にある2つの数字の和は常に15になる.

このために右半分(あるいは左半分)を知れば,全部の数の配置がわかります.
つまり,相手の意中の数が見えない場合は,その数との和が15となる数の方が見えているのです.

 

 

 

 

 

 

 

 

さて,0~15の数を2進数で表すと次の表のようになります.a,b,c,dはそれぞれ2^3,2^2,2^1,2^0の桁に相当します.

 

2進数表示で3桁目を表すマスクカードがa,2桁目を表すマスクカードがb,というように
4枚のマスクカードができます.
それぞれの数の上に乗る4種類のマスクカードで,2進数表示の1のところに孔を開ける(網掛け部分)
ことにします(逆に統一してもかまわないが).
例えば,13の場合は,aとbとdのマスクカードに孔(網掛け部分)をあけ,cのマスクカードには
孔はあけません.

以上で,仕掛けの準備ができました.

これで,質問を開始して,数字が見えるといったマスクカードはそのまま横に置き積み重ねていきます.
見えないといったマスクカードは
(1)の場合には裏返して重ね/(2)の場合は180°回転して重ねるのです.

結局,4枚のマスクカードを重ねたものは,
相手の心の中で思っている数字の位置に孔があいた状態になっているはずです.

 

 

 

 

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エッシャー視覚の魔術師

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数学月間SGK通信 [2019.12.24] No.298
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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12/20はアップリンク渋谷に映画,「エッシャー 視覚の魔術師」を見に行きました.
エッシャー(オランダ,2018)の版画作品からは,数学者としてのエッシャーは良く知られていますが,
どんな生活をした人物かはあまり気にしたことがありませんでした.
映画では,エッシャーの息子たちへの取材が面白かったです.作品にまつわるエピソード
[1955年作「表皮」から1956年作「婚姻のきづな」に発展]など,よくわかりました.
ムッソリーニ時代の全体主義に息子が染められるのを嫌いイタリアからスイスに移住しました.
人物像のわかる良い映画でした.

最後の方でエッシャーが国際結晶学会の講演に呼ばれていくところがありましたが,
私の専門は結晶学で,結晶学会では昔からエッシャーの周期的模様を教材にしており,
結晶学者には,エッシャー作品は馴染み深いものです.

アルハンブラのモザイクには平面群の17種のすべてがあるという説と1種類かけているという説があります.
どちらでしょうか?それともどちらも違うのか.実際にアルハンブラには行って調べて見たいものです.
ペンローズ・タイリングを発見したペンローズも,アルハンブラのタイルからヒントを得たと聞きます.
私も,イスラームのデザインに立戻って,タイル張りの見直しをしてみようと思っています.

映画のエンドロールにスナップ映像が流れますが,その映像の一つに,大道絵師の光景が写りました.
たまたま昨夏,ニューカッスルの通りで見かけたエッシャー作品ばかり道に描いていた大道絵師のようです.

http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/escher-review.html シネマジャーナルへ掲載いただきました.

■エッシャー作品の生まれるまで
コクセターとエッシャーはオランダで開催された1954年の国際数学者会議で出会いました.
1958年にコクセターはこの分割を掲載した論文*をエッシャーに送り,
これがエッシャーの「極限としての円」の作品群を生むことになります.
http://sgk2005.saloon.jp/blogs/blog_entries/view/46/a655be2fc4e933a93af15e269d8b684e?frame_id=54

極限としての円の数学については,以下のブログを参照ください.
http://sgk2005.saloon.jp/blogs/blog_entries/view/46/2e340c06148db50daae618a772629e15?frame_id=54

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