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No.532 石庭(枯山水)の作り方

石庭の作り方
石庭を作る人は多分いないと思いますが,工事中の石庭を見て今回は石庭の話題です.地面に石を置けばできると思っていましたが,そんなに簡単ではなく工法はとても手が込んでいます.
地面を1mも堀下げ基礎をしっかり固めます.その後で,地表まで戻して,写真のような岩の配置を作ります.岩の下にあるのは花崗岩のピンコロでカマセ石と呼ばれます.
この先は,砂利を敷き砂紋を描くことになるのでしょう.
この景色が意味しているものは何でしょうか.まだ置く岩が多数あり未完成です.



龍安寺の石庭
有名な石庭に,臨済宗. 妙心寺派,龍安寺があります.私は高校2年生の修学旅行の自由時間に,ここを見に行く計画を作り実行しました.そのころ私は岩波新書の『日本列島』などを読み岩石に興味を持っていたからです.
ちょっと遠くて時間がかかったような記憶があります.私の案に賛成して同行グループになってくれた友人が何人かいました.

龍安寺の石庭の全部で15個ある石は,どの場所に立ってどの角度から見てもすべての石が見えないように造られているそうです.世界は「不完全」だと言いたげで,ゲーデルの「不完全性定理」を思わせます.
その後知ったことですが,龍安寺の石庭の15の石は,虎の子渡し[母虎1匹と子虎3匹(1匹の豹の子を含む)が川を渡る方法]の謎の答えが隠されているという説もあります.

No.531 確率の感じ方

 

大数の法則
コインを10回投げて,連続して表が10回出たとすると,次は裏が出る可能性が高いと思いたくなります.「表や裏のそれぞれが出る確率は同じなのだから,そろそろ裏が追いつき始めるに違いない.」
しかし,これはナンセンスです.偏りのない正しいコインなら,前回の結果がどうであれ,次回の表か裏が出る確率は,表50%,裏50%と決まっています.何回やっても確率は変わりはしない.ルーレットや宝くじでも同様で,100回まわしてゼロが出なかったからといって,次にゼロが出る確率が上がるわけではありません.
コイン,ルーレット,宝くじの玉は無生物であり,以前の結果を記憶し,その頻度を調整する能力はないはずです.

人間の時間感覚の問題で,このような錯覚に陥り易い.イタリアの宝くじで,ある数字が,ずうっと出ていないので,今度は絶対でると思い込み,破産者や自殺者を出した事例があるそうです.
十分大きな試行回数を重ねれば,それぞれの固有の確率に収束していく.これが、「大数の法則」ですが,この「十分に大きい」というのが曲者で人間の時間間隔とは合いません(試行回数の平方根に比例する速度で平均値に近づくのですが).

「まれな出来事は良く起こる」という逆説的なことも良く経験します.「まれな出来事」の起こる確率は小さいはずですが,「まれな出来事」の種類は非常に多いので,そのうちのいくつかは必ず起こる(どれが起こるかわらないが)ので,そのように感じるのでしょう.

地震と確率
地震調査委員会は,主要な活断層や海溝型地震(プレートの沈み込みに伴う地震)の活動間隔や次の地震の発生可能性を評価し公表しています.
南海トラフ地震について,マグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に発生する確率が70~80%といわれます.これは南海トラフでは過去1,400年間に約90~150年の間隔で大地震が発生していることから,次の地震までの間隔を88.2年と予測したのが根拠です.1944年の昭和東南海地震や1946年の昭和南海地震が発生してから,2020年は約75年を経過しており,南海トラフにおける大地震発生の可能性が高まっていると言われます.太平洋やフィリピン海プレートが日本の下に沈み込むとき,引き込まれた日本列島が時々(周期的に)戻るのが海溝型の地震なので発生に周期ができます.
今年地震の起きる確率は1/88,この何十年も巨大地震が起きていないといっても,今年起きる確率はいつもと変わらず1/88と言っていいでしょうか.そうではありません.この場合の確率は一定ではないはずです.
地震は,地層にたまり続けたひずみが地層を破壊して放出される現象です.放出されるエネルギは,地層の強度や生じた断層の大きさなどから推定できます.結局,たまり続けた歪に耐え切れなくなって地層が割れるのですから,地震が発生する直前まで地層の歪は増加し続け,地震が起きる確率は,地震発生まで時々刻々増加して行くはずです.その場所で地震の起きない年月が続いた後は,地震の発生確率は高まっているというのは本当でしょう.

 

No.530 ヒルベルト.ゲーデル.チューリング

ヒルベルトの計画(綱領)
ヒルベルトは,1921年に「ヒルベルトの計画(綱領)」を発表します.すべての数学を公理形式で記述したいのですが,その基礎になる公理の独立性,一貫性が保証されなければなりません.ヒルベルトは,1900年に行われた講演「23の数学的問題」の2番目でもこの問題を取り上げています.


20世紀初頭は,数学者はますます複雑な問題への挑戦を進めるが,その一方で,数学への基本的な疑問も起こりました.数学とは何か?その基本法則は何か?
ダーフィト・ヒルベルトには,数学の本質に取り組むための大胆なアイデアがありました.彼は数学を骨抜きにし,単なるゲームとして扱おうと考えました.チェスがポーンやキャッスルといった駒を使ってプレイされるように,数学ゲームも基本的な構成要素は記号: 0,1,+,×,=,などで,これらを組み合わせてすべての数学が出来ています.
数学を記号のゲームに落とし込み,記号の「意味」を忘れることで,数学とは何か,その基本的なルールが現れて来ると考えました.
数学の原理「ルールの基本セット」が見つかれば,これを根拠にすべての数学的記述の証明ができるし,数に関するどのような数学的記述も真か偽かをこれで決定できます.ヒルベルトは,算術の構造の根底にある論理を利用して,究極の数学理論を見つけたいと考えました.

残念ながら,ヒルベルトの計画(綱領)が実現することはなかった.
クルト・ゲーデルもヒルベルトの計画に触発された一人で,不完全性定理の研究を行い,数学が成り立つ完全なルール・セットは誰も作れないことを証明しました.

ゲーデルの証明によれば,公理系に矛盾がなく完全であることの証明は,公理系の枠組みでできない.完全性(あるいは不完全性)を証明したり反証したりするには,公理の追加(システムの強化)が必要である.
その後,アラン・チューリングのアルゴリズムに関する研究は,任意の数学的記述の真偽を評価できる手続き(アルゴリズム)は存在し得ないことを示しました.

しかし,数値システムをゲームとして扱うという彼の「形式主義的」アプローチは,数理論理学への新たな関心を呼び起こしました.
すべての数学的問題を解決することはできないが,問題のいくつかの特殊なサブクラスは,この方法で解決することができます.今日の数学者たちは,ヒルベルトの計画から肯定的な結果を救出し続けています.

ゲーデル
算術は,0,1,2,3...という整数の体系と,それらを組み合わせる方法:加算,減算,乗算,除算で成り立ちます.19世紀後半になると,数学の基本法則を見つけることに焦点が当てられ,数学者たちが求めていたのは,算術の基本法則(ルール)のリストです.すべての数学定理は,そのルールセットから論理的に演繹できるはずです.バートランド・ラッセルとアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドによる3巻の著作『プリンキピア・マテマティカ』(1996年)を筆頭に,いくつかのルールブック候補が登場しました.
これは,基本的仮定のリストから数学の全体を構築しようとするものであったのです.しかし,1931年,クルト・ゲーデルは,そのような完全なルールブックを作ることは不可能であるという定理を証明してしまいました.
整数に関する記述の中には,真であるにもかかわらず推論できないものが必ずある.
もちろん,ルールブックを拡張してこの記述を新しい法則として組み込むことはできるが,それでも理論には他のギャップが残ることになる.ゲーデルの定理は,それらをすべて埋めることは決して望めないことを保証しています.

その後,算術の論理体系の階層が構築され,それぞれの体系が下の体系(サブクラス)のギャップの多くを埋めていることが知られます.
「証明理論」のテーマは,これらの異なる体系の論理的な強さを比較しています.
一方,「逆数学」では,古典的な数学の結果が成立する基盤条件の理解を狙い, 与えられた定理の証明にどのような公理があるのかを正確に調べています.

No. 529 ピエール・ド・フェルマーの書き込み

この写真は,以下のサイトからお借りしました:

https://www.joh.cam.ac.uk/library/special_collections/early_books/fermat.htm

Diophantus, Arithmetica (Toulouse: Bernard Bosc, 1670). | St John's College, University of Cambridge When reviewing his copy of Diophantus in 1637, Pierre de Ferm www.joh.cam.ac.uk
フェルマーの最終定理
写真は,デイオファントスの算術書の余白にあるフェルマーの書き込みです.
ピエール・ド・フェルマーは,自分の所有するディオファントスの算術書の余白に有名な「最終定理」を書き,余白に収まらないほど長い証明を発見したという趣旨のメモも添えました.1637 年ーーーーーーー
整数$${n}$$が 2 より大きい場合,$${a^n + b^n = c^n}$$ は,非ゼロの整数$${a, b, c}$$に対して解を持ちません.私はこの命題の実に素晴らしい証明を持っていますが,この余白はそれを含めるには狭すぎます.ーーーーー

フェルマーは1665年1月12日にカストル(南フランス,バルセロナに近い)で死にます.彼の死後の1670年に,息子のサミュエルが,ディオファントスの算術書を出版したときに,父親の余白のメモや注釈すべて本文に取り入れた版にしました.これが表紙写真の貴重な書です.(フェルマーが書き込んだ原本は現在失われています)
フェルマーがどのように考えどのように証明したかは謎です.
これは見かけによらず難問で,その証明には300年以上の長い年月を要し,1994 年に至りアンドリュー・ワイルズがこれを証明しました.

デイオファントス
算術書を書いたデイオファントスとは何者でしょうか. wikiによると:

https://en.wikipedia.org/wiki/Diophantus

ディオファントスはギリシャ人で,ローマ時代の西暦200年(あるいは214年)から284年(あるいは298年)に,エジプトのアレクサンドリアに住んでいました.ディオファントスの生涯に関する私たちの知識の多くは,メトロドロスが作成した5世紀のギリシャの数遊びとパズルのアンソロジーから得られています.問題の1つ(彼の墓碑銘)には次のように書かれています。ーーーーー

ここに、驚異のディオファントスが眠る。代数術によって、石碑は年齢を告げている。「神は彼に、人生の 6 分の 1 の少年時代を与え、さらに 12 分の 1 はひげが生える青春時代、そして結婚が始まる前の 7 分の 1 を与え、5 年後に元気な息子が生まれた。悲しいかな、師匠であり賢者の愛する息子は、父の人生の半分を達成した後、冷たい運命に捕らわれた。4 年間、数の科学によって運命を慰めた後、彼は自らの命を絶った。」ーーーーー

このパズルから、ディオファントスの年齢$${x}$$が次のように推定できる.$${x = ⁠x/6⁠ + ⁠x/12⁠ + ⁠x/7⁠ + 5 + ⁠x/2⁠ + 4}$$ を解いて,$${x=84}$$

ディオファントスの活躍した時代は西暦200年頃ですが,その算術書は,9世紀にアラビア語に翻訳され,ヨーロッパの中世暗黒時代を経て,ギリシャ語からラテン語に翻訳されました.1621年のラテン語翻訳のデイオファントスの算術書が,広く入手可能な最初のものでした.ピエール・ド・フェルマーはそれを所有し,研究して余白に書き込みをしたのです.

フェルマー
彼の名を冠した定理が何世紀にもわたって謎に包まれていたので,フェルマーは数学者以外の人々にも最もよく知られるようになった数学者の一人です.幾何学,確率論,物理学,微積分学の分野で独創的かつ重要な貢献をした学者ですが,フェルマーは生涯アマチュアであることを頑なに守りました.彼は自分の考えや発見をすべて手紙や手稿の形で伝え,出版はしませんでした.
彼は昼間は弁護士としてトゥールーズの議会議員を務めていて,学問の世界に身を置かなかったので,厳密な証明や査読などを受ける必要もありません.実際,同僚たちの中には,「フェルマーが証明を出さないのは,証明がないからだ」と陰口をたたく者もいたし,「フェルマーは常に,解くのが難しすぎる問題で挑んでくる」と揶揄する者もいました.しかし,フェルマーは,いくつかの問題には解がないことを証明したと反論しました.

ニュートンは,フェルマーの曲線と接線に関する先駆的な研究とその発展がなかったら,微分積分に到達できなかったと公言しています.彼はパスカルと有名な文通をしており,その中で2人はギャンブルの問題を研究し,確率論の原理を考え出しました.
フェルマーはまた,幾何学理論についてデカルト(数学者の中で最も気難しい数学者であることは間違いない)と対立し,デカルトが幾何学理論を発表する1年前に独自の理論を発表しました.フェルマーが正しかったが,デカルトは自分の影響力とコネを使ってフェルマーの名を汚し,その評判を矮小化したのです.論争もし,最後まで聡明で謎めいた存在であったフェルマーは,解けない謎を残して死にました.その最終定理は,彼の死後300年以上も未解決のままであったのですが,1994年に証明されました.

 

No. 528 数と代数系

始まりは整数の集合
ものを数える数1,2,3,4,..…は自然数と言います。整数は正の整数(自然数と0)、および、負の整数の集合です。整数集合上で、加算と乗算はできます。つまり、任意の整数の和(加算)は、やはり整数。任意の整数の積(乗算)は、やはり整数になるので、整数集合は、加算や乗算について閉じています。これを、加法(あるいは乗法)について、整数は「環」をなす(整数環)といいます。同じ演算が続いているときには、どちらを先にやっても結果は同じだということを結合的と言います。加算や乗算は結合的です。例えば、$${a+b+c=a+(b+c)=(a+b)+c}$$。
さらに、$${a\times (b+c)=a\times b+a\times c}$$という分配則を定義すると、この集合上で加算と乗算という2種類の演算の両方を行うことができます。

「群」と言う代数系は「環」に条件を2つ追加したものです。整数環の集合を例にすると、加法演算でこの集合は閉じており、演算の結合法則も成立しています。これが加法群になるかどうか、単位元の存在と逆元の存在を調べましょう;①加法の単位元0は整数の集合に存在します。②それぞれの要素の逆元は、正負の符号を変えればよいので、もちろん整数の集合には存在します。従って整数の集合は「環」であると同時に「加法群」でもあるわけです。乗法に関しては、単位元1は存在しますが、逆元がない要素もありますので、この集合は「乗法群」にはなりません。

有理数の集合
整数の集合上で、加算の逆演算「減算」はできるのですが、乗算の逆演算「除算」はできません。任意の2つの整数の間での除算の結果が整数になるとは限らないからです。そこで、整数の集合に分数を追加し拡張した新しい集合を考えると、この集合では、四則演算ができるようになります。整数は分数の特殊なケースですから、この拡張された集合は、分数の集合、つまり「有理数」集合です。
有理数の集合内で、四則演算は自由にできます。このような代数系を「体」と言います。

実数の集合
数直線上に分数を並べたとすると、任意の2つの分数の間に、また分数を作ることができ、これは際限なく続けられますから数直線は分数でぎっしり詰まっているように見えます。古代ギリシャでは数直線上のすべての数字は有理数(分数)であると信じていました。しかし、ピタゴラス派は$${\sqrt{2}=1.414・・・}$$は分数で表せないことを発見し慌てました。MetapontumのHippasusはその秘密を守るために殺されたと言います。分数を小数で表現すると、無限に続く場合でも必ず有限の繰り返しが現れます:3/11=0.272727・・・。しかし、$${\sqrt{2 } }$$や, $${\pi=3.14159265・・・・}$$などは、繰り返しが現れることがないのです(この小数は分数で表現できません)。それらは無理数と呼ばれます。数直線上には、このような無理数もたくさんあります。そこで、有理数と無理数の集合を合わせて実数の集合ができます。数直線は実数の集合で出来ています。実数の集合は「体」です。有理数の集合は実数の集合の中に含まれ、「体」の条件を満たします。

定規とコンパスで作図不可能
(1)与えられた円と同じ面積の正方形を作図:
(2)与えられた立方体のちょうど2倍の体積の立方体を作る
(3)任意の角度の3等分の角度を作図
これらはギリシャ時代から研究されている有名な問題です。立方体の倍積問題はデロス問題ともいわれます。問題の起源にデロス島のアポロンの祭壇が関係するからです。(表紙写真)


任意の角度の3等分や立方体の倍積問題は、整数係数(有理数係数といっても同じ)の3次方程式を解く問題になります。定規とコンパスを有限回使っての作図は、四則演算と開平(平方根)の作図ですから、3次方程式の解が係数の四則演算と開平の組み合わせで表示できなければ作図は不可能です。現実には、どちらも3乗根が出てきますから作図はできません。
(1)の問題に関しては、半径1の円の面積は$${\pi}$$ですから、面積が等しい正方形の一辺は$${\sqrt{\pi } }$$で、$${\pi}$$の長さでさえ作図できません。
これらの問題に対する解は実数集合には存在しますが、有理数への四則演算と開平だけでは解が作れないということです。

実数集合まで数の概念を広げると色々な方程式が解をもつことができます。
整数係数(有理数係数)の多項式方程式、例えば
$${3x^2+5x-1=0}$$などは2次方程式の例です。2次方程式、3次方程式、4次方程式の解の公式は16世紀までに解かれましたが、一般の5次方程式あるいはそれ以上の方程式の解の公式は作れないことの証明はアーベルの時代までかかりました。

複素数の完成
$${x^2+1=0}$$は解がありません。なぜなら、2乗して負になるような数は実数にはないからです。この方程式も解を持つようにするには$${x=\sqrt{-1}=i}$$という虚数を定義する必要があります。こうして複素数の集合にたどり着きました。複素数は「体」の代数構造です。複素数の範囲で、ほとんどの方程式が解をもつようになりました。

 

No.527 記数法と基数

   

Abraham Lincolnリンカーンのゲティスバーグ演説(1863)は;
Four score and seven years ago our fathers brought forth on this continent a new nation, conceived in liberty, and dedicated to the proposition that all men are created equal. -----------
で始まります。演説英文は以下のサイトから引用しました:
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.fukaya-toyosato-j.ed.jp/?action=common_download_main&upload_id=3296

scoreとは20のことです
4score and 7 years ago=4x20+7=87years agoと言うことになります。
「4世代と7年前」という訳を見かけますが、それではちょっと計算が会いませんね。「87年前」と訳すべきです。

スコアという単語は、20進法が使われていた名残です。20進法は古代マヤでも使われました。ダース、グロスは12進法が使われていた名残です。
古代バビロニアでは60進法が使われていました。
私たちは10進法が当たり前に見えるほど慣れてしまいましたが、色々な基数を用いた記数法があったのです。
コンピュータのコードは2進法(0か1しか数字は用いません。バイナリーといいます)が使われます。


n進法の基数はnです

例えば,10進法なら,4桁の数字$${abcd}$$の位取りは
$${10^3 10^2 10^1 10^0}$$ですので,数字$${abcd}$$は,$${a・10^3+b・10^2+c・10^1+d}$$の数値になります。数記号$${a,b,c,d}$$のそれぞれは,0,1,2,・・・・・,9の10種類のうちのどれかです。

2進法なら,4桁の数字$${abcd}$$の位取りは
$${ 2^3  2^2  2^1  2^0}$$なので,数字$${abcd}$$は,$${a・2^3+b・2^2+c・2^1+d}$$の数値です。数記号$${a,b,c,d}$$のそれぞれは,0,1の2種類のうちのどれかです。

もちろん、これらの記数法は、小数点以下にも適用できます。記数法の基底が$${n}$$の場合,小数点以下の位取は以下のようになります:
$${. n^{-1}  n^{-2}  n^{-3}  ・・・・・}$$

No.526 本日MRI被検体になった話

本日は右足坐骨神経を圧迫している脊柱管の状態を知るため,MRI(核磁気共鳴イメージング)を撮りました.自分が被検体になるのは20年ぶりです.
MRIの測定中に聞こえる”カタカタ”や”ビー”という冗談かと思うようなふざけた音は,1.5T(テスラ)という強い磁場中で装置が動くために,あたかもスピーカーと同じように装置が振動して出す音です.そのことは承知していましたが,今日の装置(Siemens)の音はすさまじかった.もしかしたら,昔普及した1.5Tでなく新しい3.0Tかも知れない.
じっとしている20分間の測定の間に色々思い出すことがありました.20年前はTree CT研究会でこれらの技術を話題にしていましたが,その後,2012年福一原発事故以降,研究会のテーマは放射能測定にシフトしたのです.

閑話休題,原理です:
■プロトン(水素の原子核)はスピンを持ち,磁石の性質(核磁気)があります.強い静磁場下に置かれたプロトン核磁気は,磁場に沿ってだいたい向きが揃い,歳差運動している状態です.歳差運動の周波数(ラーモア周波数という)は,磁場が強いほど高く,MRI装置の静磁場は1.5T程度と超強力なので,ラーモア周波数は64MHz(ラジオ電波の周波数領域)程度です.
静磁場下のプロトンに,このラーモア周波数の電波が照射されると吸収共鳴が起こり,核磁気の歳差運動の振幅(周波数は変わらない)が増大しほとんど横倒しの状態で回転(古典論的なイメージ)しています.
一方,歳差運動をしているプロトン核磁気からは同じ周波数の電波が放射されるので,これを検出することができます.
■生体組織は,水をはじめ水素原子と結合した分子からなる組織です.
つまり,プロトン(水素の原子核)核磁気は組織の至る所に分布していて,
その水素の属する組織の環境(診断される情報)がそのプロトン核磁気の性質(緩和現象)に反映されています.
すなわち,核磁気の歳差運動の縦緩和,横緩和という現象は,そのプロトン(水素)が含まれる(結合している)組織内の状態で違いが出ます.
緩和というのは,電波の照射を止めると,励起されていた核磁気の歳差運動が定常状態に戻ることで,静磁場方向の核磁気成分の復元緩和を「縦緩和」,静磁場に垂直面内の成分の減衰緩和を「横緩和」といいます.
組織の各点で,これらの緩和定数を測定し,マップに表示できれば,
診断に役立つ組織の特徴を反映したイメージングになります.
■さて,組織画像の位置情報はどのようにして得られるのでしょうか.
これがなければ画像として見ることができません.断層測定をするには,検出器に到来する電波が,1つのスライス平面から来るものだけ集める必要があります.このためには,静磁場の他に傾斜磁場を印加します.
傾斜磁場はさきほどの静磁場とは別で,ペアのコイルによって発生する(数十mT/m程度の強さ)もので,たとえば,$${z}$$軸方向の静磁場があり,加えて,$${z}$$方向に沿って変化する傾斜磁場,$${x}$$方向に沿って変化する傾斜磁場,$${y}$$方向に沿って変化する傾斜磁場の3種類があります.
傾斜磁場があると,空間内で磁場の大きさが一定になるのは平面になります.例えば,静磁場方向と同じz方向の傾斜磁場を印加すると,磁場一定の平面は$${z}$$軸に垂直な平面です.
プロトン核磁気のラーモア周波数は,磁場の強度に比例するので,共鳴吸収する電波の周波数をスキャンすれば,$${z}$$軸に垂直な各断層平面に並ぶ核磁気からの電波を順次採取することができます.
次に,各断層面内の$${(x,y)}$$位置情報はどのように得たらよいでしょうか?
断層内のプロトンの歳差運動を励起した後に,$${x}$$傾斜磁場,引き続き$${y}$$傾斜磁場の印加を行うとします.
$${x}$$傾斜磁場印加で$${x}$$軸に沿って歳差運動の周波数が変化し,その場所から放射される電波の$${x}$$座標情報(周波数エンコーディング)が得られます.
$${x}$$および$${y}$$傾斜磁場の印加で$${y}$$軸に沿って歳差運動の位相が変化し,$${y}$$座標情報(位相エンコーディング)が得られます.
傾斜磁場を印加して,空間の位置情報を得,画像化を可能にしたのは,Lautergur(1972)の発明で,2003年のノーベル賞を受賞しました.
■緩和時間の測定は,歳差運動の励起後,照射電波を切って行うので,立ち上がり時間も考慮した電波照射の複雑なパルスシークエンスになり,256x256画素の測定でもかなりの時間を要します.高分解能画像を得るには,正攻法で行うならさらに細分化した画素数の測定が必要になり膨大な測定時間になるでしょう.原理的には,point to pointの測定になるからです.
この解決策の一つとして,MRIの高分解能かつ高速化を実現させたのは,
「圧縮センシング」という数学方法です.しかし,今日の測定でも20分間かかかっています.まだ遅いですね.

■データを再構成して画像データを渡されるまで,1時間待ちを覚悟していましたが,20分の待ちでした.こちらは速くなった.20年前に比べれば,computerが格段に進化しているので当然と言えば当然です.どんなcpuを用いての計算時間でしょうか.再構成のプログラムも進化したはずで,生データを見てtestしてみたいと思っています.

No.524 企画講演(第14回)説明可能な機械学習-AI電卓

 

数学月間企画講演(第14回;2024.10.12)で,以下の講演が行われた。

説明可能な機械学習== 統計的学習によるハイパフォーマンスモデル ==

徐 良為;SLW代表、(株)NTTデータ数理システム 顧問
e-mail: liangweixu2205@gmail.com
youtube: https://www.youtube.com/@ai_dentaku


1.機械学習の役割と課題

データセット$${x}$$と$${y}$$が与えられたとき,最良の関数$${f(x)=y}$$を求める。$${x}$$は説明変数;$${y}$$は目的変数と呼ばれる。$${f}$$はモデルと呼ばれる。①関数モデル$${f}$$の形を仮定し,②評価すべき誤差関数の定義をし,③誤差関数の最小化(最小2乗法など)を行う。
$${f}$$の形は無数に存在し,現実世界でのこのモデルによる予測が正当かどうかの検証が必要である。モデルで予測できるのは,データの連続性に基づいている。

線形モデルでは検証は容易であるが,ニューラルネットワークは,多段の隠れ層を経由しており,非線形関数も含まれるので,検証は難しい。




機械学習の抱えるジレンマは,予測精度を向上させるためにモデルが複雑になるのだが,複雑になるほど説明力が失われることである。
そこで,限られたデータ範囲の中で,説明可能なシンプルな近似モデルを探すことになる。説明可能とは,予測対象の目的変数に対して,説明変数の寄与条件と寄与度合が明確であることである。



線形モデル,決定木に従うモデルなら,説明は容易だが,現実問題に対しこれらのモデルは予測精度が対応しきれない場合がある。

2. 説明可能な機械学習、「AI電卓」の技術概要

予測精度の高いモデル構築を,電卓を扱うように簡単に実現できるのが「AI電卓」である。AI電卓モデルは,ルールに関する線形結合である。




これらの各対応する条件(ルール)を満たすと,$${r_i}$$は1となる。それぞれに対応する係数$${\beta_i}$$はそのルールの寄与である。
多数のルールの線形結合であるモデルで,誤差が小さくなるようにフィッティングし,多くの$${\beta_i}$$が0となるものを見つける。つまり$${\beta_i}$$に対応するルールを取り除くことができて,説明可能なモデルが得られる。ルールを絞り込むことが知識の発見につながる。










3.Kaggleで検証
Kaggleとはデータ分析コンテストで,特定のテーマに対し予測精度を競う。分析専門家のモデルに対し開発しているAI電卓(機械的自動化)モデルの性能比較をするために参加している。AI電卓の現状は,大規模学習データ(数百万件)から,トップ予測精度モデルになるまでの機械学習の時間は1週間程度かかっている。参加チーム4728中で上位2%以内に入る成績を達成している。
(講演録作成/文責)谷

No.525 企画講演(第15回)社会に数学を活用するArithmerの活動

講演者:大田佳宏
代表取締役社長兼CEO,総務省AIネットワーク社会推進会議構成員,東京大学大学院数理科学研究科客員教授,東京大学アイソトープ総合センター客員教授,一般社団法人日本応用数理学会代表会員,第64回国際数学オリンピック組織委員会副委員長

日時●2024年11月26日,14:30ー16:30(開場14:00)
場所●東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科棟002号室

Arithmerとは
アリスマーとは数学者集団の会社です。数学は色々な科学技術の基盤であり、色々な社会課題の解決に数学が使えます。これを事業として社会に示したいというのがアリスマーの構想です。2016年の9月に創業し、ちょうど9年目になります。数学月間の目標は「数学が社会を支えている」という認識を社会に広めることですが、アリスマーの活動はこれを事業として実践しています。従って、数学月間でアリスマーの活動を取り上げることは非常に意義深いわけです。アメリカやヨーロッパでは、数学が社会を支えているとの認識が普及していますが、日本ではまだその認識は広がっていません。

アリスマーの事業は業務提携をして進められています。例えば、トヨタ通商、三井住友海上など14社にのぼり、エネルギー、製造、インフラ、ロジスティックス、ライフサイエンス、リテール、ファイナンス 等々の分野にわたり、アリスマーの AI が使われています。
アリスマーのAI ソリューションは、さまざまな業界の大手企業を支援し、成功しています。この紹介は 100 件を超えるアリスマーのコラボレーションのほんの一部です。国内での成功を基に、世界に向けても展開し、ビジネスを変革し、業務を最適化し、イノベーションを推進します。


 
アリスマーのコアテクノロジー
アリスマーのコアテクノロジーは、ビジョンAI、分析AI、AIロボという 3 つの主要領域で構成されています。

ビジョンAI:
機械学習アルゴリズムを活用して、物体検出、異常検出、医療画像分析など、さまざまな業界の幅広いアプリケーションを強化します。

AIロボ:
高度な視覚システムと統合学習機能により、周囲を移動し、人々と対話できる AI 搭載マシン。

分析AI:
最適化、パターン認識、傾向分析、予測機能など、包括的なデータ分析を提供します。これにより、一般的な AI アプリケーションから次世代の量子コンピューティング先導に至るまで、ビジネスが強化されます。

●本人確認システム
NEC と連携して、デジタル顧客確認 (KYC) 本人確認システムを立ち上げました。この革新的なソリューションは、NEC の高度な顔認識技術と アリスマー の強力な OCR 機能を活用し、スマートフォン ベースの便利で安全なユーザー確認を実現します。このシステムは、ユーザー フレンドリーなモバイル端末を使い、新しい ID や銀行口座を開設するプロセスを合理化します。


日本を代表する海上保険会社である三井住友海上保険向けに、アリスマーはOCR コアシステムの全社的導入を行い、同社の保険見積プロセスを改革しました。この数年にわたるプロジェクトは 200 億円を超える規模で、保険証書からのデータ抽出を自動化し、見積り作成のスピードを大幅に向上させました。その結果、顧客の待ち時間が 70% 削減されました。


●自律走行車
トヨタとの画期的なビジョンAI コラボレーションを通じて、自律走行車技術の先頭に立っています。この最先端のシステムは、車両、歩行者、その他の周囲の物体をリアルタイムで検出します。高度な物体検出技術により、システムは潜在的な危険を特定し、予防的な事故防止策を講じることができます。アリスマーの革新的なソリューションは大きな評価を得ており、最近、主要ニュース番組で取り上げられ、NHK World でも紹介され、世界中の視聴者に届けられています。


自動運転車は遠い未来かもしれませんが、倉庫ではすでに自律走行車が利用されています。自動誘導カート (AGV) は、制御された環境内で商品を効率的に輸送します。歩行者の安全を最優先するため、アリスマーはトヨタと提携してビジョン AI システムを開発しました。この最先端技術により、AGV は潜在的な危険を検知できるようになり、衝突のリスクを大幅に軽減します。この革新的なソリューションは、トヨタとの共同特許出願の一部です。


●風力発電
風力発電は再生可能エネルギーの成長を先導し、世界の発電量の約半分を占めています。太陽光、水力、地熱は、この急成長分野で引き続き主要な役割を果たしています。日本は、野心的な「洋上風力産業ビジョン」でこの傾向を体現しており、より強い洋上風力を活用して大幅な容量増加を目指しています。2030年までに10ギガワット(GW)、さらに2040年までに40GWに拡大することを目標としています。しかし、この急速な成長には課題があります。過酷な海洋環境はタービンの摩耗を加速させ、火災や構造損傷のリスクを高めます。さらに、メンテナンスを行う熟練技術者の不足も脅威となります。


風力タービンのエンジン室内に設置されたアリスマーAI 搭載カメラは、モーターの故障を検出し、潜在的な火災や故障を防ぐことができます。
この高度なビジョン AI システムは、重大な事故が発生する数日前に問題を特定できるほか、人間による検査では気付かない可能性のある異常なオイル漏れも検出できます。


●保険、ライドシェア
AI 画像分析は保険業界とライドシェア業界に革命をもたらし、請求処理と事故検出を変革します。アリスマーAI は事故後の写真から修理費用の見積もりを生成することで保険請求を効率化し、効率と顧客満足度を向上させます。ライドシェア プラットフォームは AI を活用して旅行前後の画像から潜在的な事故を検出し、安全性を高めて詐欺を減らします。


●空港

最初の検査後に禁止品が見つかると、空港の効率が低下します。回収のために BHS 全体を停止すると、業務が中断し、手荷物の配送が遅れ、フライトの定刻出発に影響する可能性があります。その結果、物流と財務に大きな損失が生じます。アリスマーのビジョンAI は、リアルタイム分析を使用して、空港 BHS での禁止品検出に革命を起こします。このソリューションは、BHS を通過する荷物の輪郭や体積などの主要な特徴を抽出し、複雑な高次元表現 (1,000 次元以上) に変換します。この空間内の距離を測定することで、この AI は荷物の適合性を瞬時に判断し、禁止品の効率的な検出と BHS のよりスムーズな操作を可能にします。 AI は、単純な禁止品検出にとどまりません。このインテリジェントなシステムは、微調整と強化学習を利用して、スキャンごとに検出機能を継続的に改善します。使用すればするほど、より賢くなり、BHS オペレーションの精度とセキュリティがさらに向上します。 アリスマーのビジョンAI は、現在のセキュリティの先を見据えており、この AI と顔認識テクノロジーを組み合わせることで、手荷物の取り扱いに革命を起こすことができます。タグのない未来を想像してみてください。顔が預けた荷物の ID になるのです。このシステムは、BHS 全体で手荷物をシームレスに追跡配送し、物理的なタグをなくして、空港と乗客の両方のプロセスを合理化します。


荷物の紛失や空港での遅延にうんざりしていませんか? AI BHS は、空港でのスムーズな業務を実現する画期的なソリューションを提供します。
従来のシステムでは、紛失した荷物やタグのない荷物の処理に苦労し、フラストレーションの原因となっていました。この高度なシステムは、戦略的に配置された 2 台のカメラを活用して、優れた精度を実現します。
第1のカメラは、類似の荷物であっても、各荷物に固有のデジタル「指紋」を作成します。
第2のカメラは、この指紋を使用して荷物の ID を確認します。この 2 段階のプロセスにより、優れた追跡が保証されます。
識別だけでなく、システムは大幅な位置の変化を検出し、セキュリティと効率性を高めます。
2 ショット ビジョン AI を BHS 内の指定されたポイントに配置するのは簡単です。


●洪水AI
最近のイノベーションの成果として、アリスマーの洪水 AI ソリューションが、日本の大手経済新聞である日経新聞の第一面に大きく取り上げられました。記事では、このテクノロジーによって大手損害保険会社が洪水災害の保険金支払いを従来の方法よりも効率と精度を高めて合理化したことが紹介されました。その結果、保険金請求処理時間と関連コストが大幅に削減され、保険会社は数週間以内に補償を迅速に行うことができました。この迅速な解決により、洪水後の保険契約者の満足度が明らかに高まりました。


高性能 LiDAR 搭載ドローンの統合により、3D マッピングの作業の流れに革命が起こりました。これらのドローンは最先端のレーザー スキャン技術を活用して、センチメートル レベルの精度で膨大なデータセットをキャプチャし、非常に詳細で正確な環境表現を生成します。この包括的なデータ取得により、さまざまな業界の専門家が比類のない空間認識で情報に基づいた意思決定を行うことができます。


広野町は、ドローンで撮影した 3D ポイント クラウド データの力を活用して、建設とインフラ計画を強化し、より強靭な未来への道を切り開いています。これらの詳細な 3D モデルは、情報に基づいた現場計画、強化された建設監視、強靭なインフラ開発のための貴重な洞察を提供し、町が情報に基づいた決定を下し、より強固で気候に強い構造物を建設できるようにします。この積極的なアプローチは、変化する気候に適応し、住民の安全と幸福を確保しようとしている他のコミュニティにとってもインスピレーションとなります。


●ポストディクションAI
(講演録作者注:ポストディクションとは心理学の言葉で,後付けで起こった事象が直前の事象の知覚や認知に影響を及ぼす現象)
生成AI (Gen AI) には大きな可能性がありますが、依然として大きな課題が残っています。これには、非現実的なコンテンツ生成、トレーニング データから継承されたバイアス、誤情報やディープフェイクへの悪用が含まれます。これらの問題を軽減し、責任ある使用を確保するには、Gen AI テクノロジーの進歩が不可欠です。そのような進歩の 1 つが、アリスマーのポストディクション AI です。このテクノロジーは、繰り返しのコミュニケーションを容易にし、機械が記号とルールを使用して論理的に推論できるようにします。アリスマー AI を統合することで、Gen AI は推論能力を強化し、意思決定の説明可能性を高めることができ、最終的にはより信頼性が高く信頼できる AI システムにつながります。


●安全のAI
今日のダイナミックな職場では、従業員の安全が最も重要です。安全のAI は、建設、製造、物流における安全性を積極的に強化し、タスクを合理化する革新的なソリューションとして登場しました。安全AI は、音声ガイドによる説明とリアルタイムの危険警告で作業員を支援します。また、積極的な機器メンテナンスと AI を活用した問題解決の支援促進をします。安全AI の多言語インターフェースと音声警告により、全員が明確にコミュニケーションできます。これらの機能を組み合わせることで、安全AI は、効率性と生産性を高めながら、積極的な安全文化を育みます。


安全AI は従来の監視を超え、高度な AI を活用して、事故が発生する前にビデオ映像を分析し、危険な状況 (作業員の危険な行動や環境の危険) を検出します。リアルタイム分析により、即時介入が可能になり、事故を防止できます。安全AI は反応的ではなく、予測的です。機器データを分析することで、潜在的な障害を予測し、ダウンタイム中に修理をスケジュールして、混乱とコストを最小限に抑えることができます。さらに、安全AI はシームレスに統合され、既存のカメラや従業員の電話でも動作します。簡単なスナップショットで、機器のカウントなどの問題を自動的に特定できるため、手動によるデータ収集が不要になります。


安全AI は、作業員と管理者の両方を支援するために設計された革新的な安全管理ソリューションです。

効率的な運用: 現場の作業員はスマートフォンでリアルタイムのタスク更新を受け取るため、遅延がなくなり、作業効率が向上します。
安全性の向上: 作業員のスマートフォンに組み込まれた AI が、高リスクエリアの危険を即座に検出し、事故リスクを積極的に軽減します。
予測力: 安全AI は、機械の故障を予測するアラートを提供することで、事後対応の対策を超えています。これにより、管理者は予防的なメンテナンス措置を講じ、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
実用的な洞察: 管理者は、包括的なログ データを備えた集中型プラットフォームにアクセスできます。

これにらより、安全上の懸念事項を積極的に特定し、安全アラートやパーソナライズされたトレーニング プログラムなどの対象を絞った介入が可能になります。


●アリスマーAI
大規模なデータセットは大規模言語モデル (LLM) をトレーニングしますが、事実の根拠が欠けている場合があります。RAG(Retrieval Augmented Generation)は、生成時に外部の知識ソースを組み込むことでこれに対処し、より有益で信頼性の高い出力を実現します。外部知識を活用するというこの概念に基づいて、ReAct は推論とアクションの両方を同時に実行します。これにより、ReAct は現実世界の情報にアクセスして処理できるようになり、応答はより包括的になり、事実の証拠に根拠が置かれるようになります。マルチモーダル AI [複数種類の情報を処理できるAI]は、さまざまなデータ タイプを統合してより深い理解を獲得し、精度を高め、医療、自律走行車、製品開発におけるアプリケーションを促進します。アリスマーAI は、RAG、ReAct、独自の G 関数の組み合わせを活用して、AI システム間の通信を容易にし、ユーザーが最小限の入力で必要な情報を取得できるようにします。


アリスマー AI のグラフ データベース テクノロジーは、複雑な従業員ネットワークを視覚的に表現し、積極的なリスク特定と最適化された作業流れのための深い洞察を獲得できます。従業員プロファイル、マシンの詳細、タスク、安全プロトコル、日報などのさまざまなデータ ソースを統合プラットフォームに統合し、データのサイロ化[データが共有できていない]を排除して最新情報へのリアルタイム アクセスを確保します。AI 搭載エージェントは、関連する公開データを積極的に収集して統合し、情報を最新の状態に保ち、現実世界の状況を反映します。従業員と機器の安全性を優先しながら、アリスマーAI のデータ駆動型洞察を使用して作業流れを最適化し、最高の効率を実現します。


タスク分解とは、複雑なタスクをより小さく、より管理しやすいサブタスクに分割するプロセスです。これは、人工汎用知能(AGI)と大規模言語モデル(LLMs)の両方が、大量のドキュメント処理などの目標を達成するのに役立ちます。マルチエージェント AI では、複数のインテリジェント エージェントが連携して動作します。これらのエージェントはソフトウェア プログラムまたはロボットであり、共通の目標で協力したり、独自の相反する目標を追求したりする場合があります。


●農業
アリスマーは、AI を活用した自律農業の先駆的な国家プロジェクトを主導しています。このプロジェクトでは、果物や野菜を無人で収穫するためのロボットを開発しています。Advanced Vision AI は、熟した農産物を識別して選択し、最適な品質を確保して価値を最大化します。
インテリジェント パス プランニングは、ロボットのアームの最も効率的な経路を計算し、周囲の植物へのダメージを最小限に抑えます。この革新的なテクノロジーは、効率的で高品質の収穫の未来を約束します。


●AIロボット●糖尿病
糖尿病治療の分野では、アリスマーは、難解な「神の手」技術を再現する AI 搭載手術ロボットの開発を先導しています。この手技は、並外れた精度と指導の難しさで知られ、長い間、膵島移植手術のボトルネックとなっていました。アリスマーの画期的な技術は、モーション キャプチャ分析を活用して熟練した外科医の動きを細かく記録して再現し、AI ロボットがランゲルハンス島 (インスリンを生み出す膵臓細胞塊) を分離するという繊細な作業を比類のない精度で実行できるようにします。この革新は、この高度に専門化された手術をより費用対効果の高いものにし、はるかに多くの患者が受けられるようにすることで、膵島移植に革命を起こす可能性を秘めています。2023 年に動物実験が成功裏に完了した後、AI ロボットは、日本有数の移植センターである国立国際医療研究センターで 2022 年に臨床デビューする予定です。これは糖尿病との戦いにおける大きな進歩です。AI 支援による処置は、膵島移植の低侵襲性と高精度の方法を提供することで糖尿病治療を変革し、患者の完全寛解を達成する可能性を秘めています。


●結言

(作成/文責)谷

No.523 企画講演(第14回)「説明可能な」機械学習の新時代

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数学月間SGK通信 [2024.09.24] No.523
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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秋になりました10月12日と11月26日に講演会を企画しています.
今回はまず10月12日の講演会を紹介します.多くの方の参加をお待ちしています.

◆数学月間企画講演会(第14回)
日時●2024年10月12日(土),13:30-16:00(開場13:00)
場所●東京大学駒場キャンパス,数理科学研究科棟002教室
(遠方の参加者のためにリモートwebexも併用します)
テーマ:
「説明可能な」機械学習の新時代--------統計的学習でBlack Boxも解消
ChatGPT,生成AIなどとAI分野の発展は著しいものがあります.
AI技術を,得体のしれないBlack Boxのように利用した時代は終わりです.
数学・統計学を基礎とする機械学習の進歩により支えられており論理的に説明できる技術です. 
この企画では,機械学習が統計学によって支えられていることがわかります.
講演●統計的学習による知識発見型モデル構築への実践紹介
  == AI電卓の自動機械学習による Kaggleへの挑戦 ==
講師●徐良為(工学博士);SLW(Statistical Learning Workshop)代表,
(株)NTTデータ数理システム非常勤顧問
司会討論●松原望(東京大学名誉教授)
参加費●1,000円 (当会会員および学生は無料)
参加登録が必要です:
https://sgk2005.org にある「企画講演会(第14回)2024.10.12」で登録できます.
(注)Kaggleとは:
色々なテーマで,AIとモデリングを競い合うコンペで,
1,900万人を超す機械学習ユーザーが参加しています

ちらし.pdfは,https://sgk2005.org でダウンロードできます.