掲示板

No.538 数学発展歴の見方

投稿日時: 15:06 システム管理者

◆数学上の発見の評価は,現在の視点からのその影響度と洗練度でなされるでしょう.それしか方法はないのですが,現在の私たちの視点と何世紀も前の数学者たちの視点は違うことを忘れないようにしましょう.
今日の数学の教え方は,往々にして過去の難解さを理解できなくしています.ただし,それはそれで,効率的に数学の理解ができる利点はあります.

数学上の主要な発見の素晴らしさの評価は単純ではありません.それらは,閃光のように見えますが,実際には,多くの数学者たちによる長年にわたる研究の集大成です.

微積分を最初に発見したのはニュートンかライプニッツかという論争がありますが,ニュートンが師バローから微積分を学んだことは間違いありません.もちろん,バローが微積分を発見したわけでもありません.微積分はギリシャ数学に始まる長い進歩の過程を経て生まれたものです.フェルマーやライプニッツも係わっています.

数学の主要な発見は,「適切な時期」にそのテーマに取り組んでいた幸運に置かれれば,誰でもできたと思える面もあります.でも,これも偏った見方です(なぜ二人以上の人が,ほぼ同時に独立に同じ発見をしたかの説明には,ある程度役立ちますが).発見の中に,天才的なひらめきが確かに存在し,それは,より深い理解や,特定の概念の重要性をより明確に理解したことから生まれます.

新しい概念の発見は奥が深い.その簡単な例は,
2個のリンゴを3個のリンゴに加えること(加算)の誕生です.
リンゴだけでなくあらゆるものの集合の抽象的な性質として, 2や3などの数字の世界が生まれることで,数え上げから数学の領域へと移行しました.
負の数の導入も長い苦労の末にようやく実現しました.
現在の視点から当たり前に思えることでも,そのときの困難を理解することは、小学生を教えようとする教師にとって有益です.

ネイピア,ブリッグスらは,約400年前に対数を考えました.対数はそれから350年間,算術計算の主なツールとして使われました.科学で必要な膨大な計算は,対数なしではできませんでした.その後世界は変わり,コンピュータが登場しました.さて,この先何がコンピュータに取って代わるのでしょうか.ネイピアが対数と同時に機械式コンピュータの基本概念を発明したことを思い出してください. より高速なコンピュータ,より小型のコンピュータ,より高性能なコンピュータは思い浮かべることはできますが,コンピュータと対数表が異なるくらい,コンピュータと画期的に異なる何かが思いつきますか.量子コンピューティングかも知れませんね?いずれにしろ,
非ユークリッド幾何学,群,一般相対性理論,集合論などの発明がいかに困難であったかが分かります.