数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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■数学月間企画講演会(第16回)のお知らせ
日時●2025 年 10 月 5 日(日),14:00-17:00
場所●東京大学数理科学研究科棟 002 号室
講演(高校生にもわかる)
●ミケルの定理を巡って,岡本和夫(東大名誉教授)
●ロピタルの定理を巡って,大山陽介(徳島大学)
主催●NPO 法人数学月間の会(理事長:岡本和夫)
参加費●無料.多くの方々のご参加をお待ちしています.
リモートも併用しますが,お近くの方は会場参加をお勧めします.
問い合わせ先● sgktani@gmail.com
●事前の参加登録が必要です.数学月間の会ウエブサイト https://sgk2005.org/ で登録できます(ログインの必要はありません).
■数学月間企画講演会(第17回)のお知らせ
日時●11月9日(日)14:00-17:00
場所●東大(駒場)数理科学研究科棟002教室
講演(高校生にもわかる)
●量子コンピューティング;松原望(東大名誉教授)
●フィボナッチ数・2次形式・トポグラフ;佐藤郁郎(宮城県立がんセンター研究所)
主催●NPO法人数学月間の会(理事長:岡本和夫)
参加費●無料.多くの方々のご参加をお待ちしています.
リモートも併用しますが,お近くの方は会場参加をお勧めします.
●問い合わせ先 sgktani@gmail.com
●事前の参加登録が必要です.数学月間の会ウエブサイトhttps://sgk2005.org/で登録できます(ログインの必要はありません).
何らかの原因で登録できないなどありましたらメールでご連絡ください.
■数学月間懇話会(第21回)2025.7.22に実施しました.
厳しい暑さの中,ご参加いただきありがとうございました.
講演ビデオは,YouTubeで限定公開になっていますので
数学月間の会ホームページ
https://sgk2005.org/youtube/page_20250818022852
にあるリンクからご覧になれます.
共立出版から 「フィボナッチ数・リュカ数大鑑(上・下)」が8月27日に発売になります.原著はThomas Koshy『Fibonacci and Lucas Numbers with Aplications』Wileyです.私も一部分の翻訳を分担しました.上下それぞれ700頁程度の大部の本で,上下揃いで目方が3.2kgもありとても重い.
フィボナッチ数・リュカ数大鑑(上) - 共立出版Thomas Koshy 著 www.kyoritsu-pub.co.jp
フィボナッチ数・リュカ数大鑑(下) - 共立出版Thomas Koshy 著 www.kyoritsu-pub.co.jp
私が分担部分の翻訳を担当したのは2019年秋でした.これだけ大部の書籍になると編集者の苦労も大変です.めでたく今回の出版に至りました.共立出版の編集者様にお祝い申し上げます.
内容については,ぜひ出版物をお読みください.
この分野の集大成と言える本なので,一般書と言うよりは研究書で個人で買うには高い本です.もし,図書館などでお読みいただければ幸いです.
今後機会があれば,本書の内容を参考に,著作権を侵害しないような一般向きの解説記事や発展記事を書きたいと思っています.
(2)ガロアの登場(19世紀前半)
3次方程式,4次方程式には代数的な解の公式があるが,一般の5次以上の方程式には,代数的な解の公式が作れない.代数的に解を書けるのは運のよい場合である.
誤解しないで欲しいが,解自体がないわけではない.一般に,$${n}$$次方程式には$${n}$$個の複素数の解が存在する(ガウスにより証明された).
方程式$${x^4-4=0}$$の場合,有理数体$${Q}$$上までなら$${(x^2-2)(x^2+2)=0}$$,拡大体$${Q(\sqrt{2})}$$の上までなら$${(x-\sqrt{2})(x+\sqrt{2})(x^2+2)=0}$$,拡大体$${Q(\sqrt{2},i)}$$の上まで許すなら$${(x-\sqrt{2})(x+\sqrt{2})(x-\sqrt{2}i)(x+\sqrt{2}i)=0}$$と因数分解できる.つまり,複素数体には解が存在するが,拡大した有理数体の大きさにより,記述できる解の個数が変わる.そして,有限回の代数的手法で拡大した有理数体の中に解がすべて存在するかを問うている.
方程式の係数の有理数体$${Q}$$からスタートして,ベキ根を加えて体の拡大を繰り返し,すべての解を含む拡大体$${K}$$に到着するなら,拡大体$${K}$$内で代数的な解の公式が存在する.
一般に,有理数体$${Q}$$上の$${n}$$次の多項式方程式(代数方程式)方程式には$${n}$$個の複素数の解が存在する(ガウス)のだが,有限個のベキ根を加えた$${Q}$$の拡大体に虚数$${i}$$を付加して拡大体$${K}$$を作っても,すべての解を含む複素数体をカバーしきれない.複素数体に解があると言っても,有限回の代数的操作でその解にたどり着けるとは限らない.
(注)$${Q}$$上の多項式の根になり得る数を代数的といい,$${Q}$$上のいかなる多項式の根にもなり得ない数は超越数という.
根を付加した拡大体において,根の置換群を考え,この置換群の正規部分群の列により拡大体が順次縮小でき単位群$${1}$$に至れば,解の公式が存在するというのがガロア理論の本質にある.正規部分群による縮小(正規部分群を核とする準同型写像)の各段階で定義される剰余群が巡回群であるなら,この正規部分群の列は可解となる.一般的な5次方程式では,解の置換群は位数120の5次の対称群であり,その正規部分群は位数60の交代群である.この交代群は単純群だが,その下に真の正規部分群を含まないので可解ではなく,一般的には代数的解法がない.
例)4次方程式の場合は代数的な解がある:
■結晶群での解釈
これは,結晶群における群の拡大の仕組みを思い起こさせる.
結晶は周期的な構造(デジタル化された構造)を持ち,並進群$${T}$$で記述される構造である.これに,回転対称操作や鏡映対称操作などの結晶点群$${G}$$の対称操作を付加することで,並進群を拡大して結晶空間群$$ {\it \Phi} $$を得ることができる.
逆の表現をすれば,並進群は,結晶空間群の中の正規部分群であるので,並進群を核とする準同型写像により結晶空間群$${\it \Phi}$$は必ず結晶点群$${G}$$に縮小帰着できる.
$${\it \Phi=T\otimes G}$$ $${\it \Phi /T \simeq G}$$
結晶点群$${G}$$の場合,2つの部分群$${G_{1}, G_{2 } }$$(どちらも正規部分群ではない)の半直積で構成される場合があり,準同型写像が成り立たず,その場合はそこから先は結晶点群を縮小することができない.$${G=G_{1}\oslash G_{2 } }$$
注)正規部分群と剰余類
部分群$${H}$$によるラグランジュ展開の任意の左剰余類の積$${g_{i}H\cdot g_{j}H}$$が,ばらけずに丸ごと別の左剰余類$${g_{s}H}$$に対応するならば,左剰余類は群を作る.この条件は$${g_{i}H\cdot g_{j}H=g_{i}g_{j}H}$$となることであり,$${Hg_{j}=g_{j}H}$$を意味する.
これは$${H}$$が$${\it \Phi}$$の正規部分群であることに他ならない.
(1)に戻る https://note.com/sgk2005/n/n68ac87eb04a6
有理数の集合(整数と分数)では,任意の2数に対して加法+,乗法×を行うことができ,加法に関し単位元0も逆元も存在するので加法群,乗法に関しても単位元1も逆元も存在するので乗法群になります.さらに分配法則が存在します.したがって,有理数の集合上では4則演算を自由に行うことができ演算結果は必ず有理数集合内にあります.このような代数系を「体」といいます.
「群」や「体」などの数学概念は,ガロアが5次以上の方程式には代数的な解法が存在しないものがあることを証明する過程で生み出されました.
有理数を係数とする(有理数体上の)2次,3次,4次の多項式方程式には解の公式[係数の四則演算とベキ根で表現される]が必ず存在するが,5次以上の方程式には代数的に解けないものがあることをガロアが証明しました.
ガロア(1811~1832年)は短い悲劇的な生涯でしたが,「群」,「体」などの新しい数学概念を生み出しましたが,このことが認識されるのは死後40年も経過してからでした.
「群」や「体」の概念を用いると,以下のような古典的な問題の証明を,新しい観点から理解することができます.
(1)ギリシャ時代の3大不可能作図
ギリシャの幾何学者たちが研究した3つの作図不可能問題:
①デロス島のアポロンの祭壇(立方体)を倍積に
一辺1の立方体に対してちょうど2倍の体積の立方体を作る.
1 → $${\sqrt[3]{2 } }$$ の長さの作図
②円を同じ面積の正方形に
円の半径1 → 正方形の一辺$${\sqrt{\pi } }$$ の長さの作図
③任意の角度を3等分する
任意に与えられた$${a}$$に対して,3次方程式$${x^3-3x-a=0}$$
の$${x}$$を作図する.
ギリシャでは幾何学が基本で,数は線分の長さで表現します.
数直線は実数(有理数と無理数)で構成されています.
もちろん①~③の解は存在しますが,コンパスと直線定規だけを繰り返し用いて作図せよという問題です.
コンパスと直線定規で作図出来るのは,長さの加減乗除(四則演算),開平$${\sqrt{ } }$$のみで,これらの操作の繰り返しで作図できるものだけが可能です.
作図法は下図参照.
乗除は方べきの定理
任意の整数の開平の作図
有理数体$${Q}$$の数字に加減乗除の操作を繰り返して得られる結果は同じ$${Q}$$の中にあります.作図条件に開平$${\sqrt{ } }$$の操作も許されますから,この結果は有理数の集合$${Q}$$からはみ出します.そこで,有理数体$${Q}$$を開平(平方根)$${\sqrt{ } }$$を加えて拡大した拡大体$${Q(\sqrt{})}$$を作れば,作図可能な数(長さ)はこの拡大体の中にあるはずです.つまり,立方根などはこの拡大体のなかにないので,立方根の作図は不可能とわかります.
①は立方根の作図だから不可能.
②は$${\pi}$$自体が超越数なので代数式の解ではなく作図できない.
③は$${a}$$の値により [与えられた角度により]解$${x}$$が四則演算と開平で表現できることもあり,その場合は作図できる.例えば,90°の角に相当する$${a=0}$$の場合は,$${x=0, \sqrt{3}, -\sqrt{3 } }$$であるので作図できる.一般の3次方程式の解は立方根を含み作図できない.
この続きは次号へ
体の拡大 (2)ガロアの時代
明日7月22日は 数学月間懇話会(第21回)です。この問題にも少し触れます。案内は,https://sgk2005.org/ をご覧ください。
$$ \mit\Phi =H \otimes G $$ $$ \mit\Phi /H \simeq G $$ $$ \mit\Phi \vartriangleright H $$
$$\mit\Phi =H \oslash G$$ $$\mit\Phi \supset H,G$$
$$ \mit\Phi =H \cup g_{1}H \cup g_{2}H \cup \cdots \cup g_{r}H $$