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2017年11月の記事一覧

数学月間勉強会(第3回)予告

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数学月間SGK通信 [2017.11.28] No.195
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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12月12日,数学月間勉強会(第3回)が近づきました.
気軽にご参加ください.
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主催●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
日時●12月12日,14:30-17:00
会場●東京大学出版会,会議室
線路沿いの留学生会館などのある敷地内の一番奥の建物です.
東大構内ではありませんからご注意ください.
最寄り駅  
●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ・申し込み●sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
第3回テーマ●「結晶空間群の作り方」
数学月間勉強会の特徴は,物理と数学の両視点から数学誕生を理解できるところで,
特に初心の若い方々にもお勧めします.
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今回のテーマは,「結晶空間群の作り方」で,このシリーズのクライマックスになります.
難しそうだと思われる恐れがあるので,きょうは,
「このテーマは我々が良く使う考え方で特殊なものではない」と感じられる予告編になります.
登場する数学は,群論でいう「準同型定理」という大変重要な考え方です.
しかし,ご安心ください.数学月間の数学では,大学の数学のように証明を長々やる野暮なことはしません.

結晶空間というのは周期的な空間のことです.繰り返し模様は,結晶空間の代表例です.
今回は,繰り返し模様の成り立ち(対称性)を調べる数学「結晶空間群」です.
繰り返し模様は,モチーフとなるタイルを張り詰めてできていますから,
繰り返し(並進)て平面を張り詰めているタイルをみんなはがして,
1枚のタイルの上の全部重ねてしまいましょう.
これで,平面全体を1つのタイルに対応させることが出来ました.
有限図形である1つのタイルの対称性は「結晶点群」で記述できます.
このように,空間(対称性は空間群で記述)を有限図形(点群で記述)に縮小するのが
「準同型定理」の働きです.もっと簡単な例を挙げると,時計です.
時間は無限に増えるのですが,時計は12時間たったらもとの位置にもどります.
12時間だけ違う時間は,同じものと見做せというルールを作れば,無限の時間を,
12時間の中に写像できます.これが「準同型定理」の心です.たとえ話だけではいけませんから,
最後に,歩道のタイルの平面(空間)群の作り方の解説図を掲載しておきます.
この説明は当日行います.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/83/18316883/img_0_m?1511795897

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種子は人類の遺産

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数学月間SGK通信 [2017.11.21] No.194
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今日は,数学はでません(メンデルの法則は一寸数学ですが).日本の,米・麦.大豆を守って来た「種子法」についてです.
安倍政権は,TPPの一環で,種子法廃止を2017.4に成立させてしまいました.来年3月施行です.
何事も規制改革会議に決定させ,国会の審議はろくにしない仕組みは止めてもらいたいものです.

■種子法は,1952年以来,日本の米・麦・大豆を守って来ました.稲は各地で長年改良され,300の多品種があり,
その地の風土に合った優良品種を栽培奨励しているといいます.
種子法は,多国籍企業の種子ビジネスに障害になるので廃止されました.これからは
農家の種採り,交換,保存も禁止され,例えば,モンサントの限定品種に制覇される時代になるようです.
多様性が種々の原因による不作危機の保証になっているのに馬鹿なことです.
種子・化学肥料・農薬のセットビジネスが狙いです.
無精子(雄性不稔)の株を使い開発したF1品種や,遺伝子組み換え品種が蔓延る未来を止めねばなりません.
[山田正彦氏(元農水大臣,日本の種子を守る会)のIWJインタビューより]

■F1品種の作り方[たねのうた http://tanenouta.com/pleasure/879/ より]
雄性不稔とは,おしべに問題があってうまく受精できない植物個体.
雄性不稔の株を母株として利用すると,その花粉には受粉能力がないわけですから,
別の品種の父株と交互に植えておけば,間違いなく別々品種を両親とする子が生まれます.
この雄性不稔の遺伝子は,玉ねぎの突然変異から見つかり,人参やナス,とうもろこし,
そして,これまで自家不和合成を利用していたアブラナ科でも実用化されているようです.
私たちは突然変異から見つかった遺伝的におかしい野菜を食べていることになります.
ミツバチの不妊もこの花粉に原因があるという説もあるようです.

■味のよい「コシヒカリ」と収量の多い「インデカ種」のかけ合わせで生まれるF1品種のメリットは,
1年目は,両親の良いとこ取りだが,次年のその子F2は,劣勢遺伝が出るのでそれぞれの先祖の悪い所が出ます.
農家は,毎年新しい種子を買う必要がある(メーカー指定の肥料,農薬のセットを使う契約をさせられるようです).
遺伝子組み換えは危ないですが,危なそうなF1品種の安全性は30年先にならないとわからないでしょう.
昔ながらの品種改良で生まれた種子は長い歴史があり,F1品種とは違い安全で,無農薬栽培などの工夫は農家の自由です.

■日本の野菜は,種子法の適用外だったため,すでにF1品種で海外多国籍企業に90%制覇されているそうです.
日本各地の原種の苗を「手苗」というそうで,昔の農家は,これらの種を採り「自家採種」代々引き継いで栽培しました.
私は,ブログ友にもらった「ぷよ姫」さんというミニトマトを育てています.
育て始めるのが遅かったので,11月16日になって完熟した始めの1粒を食べたばかりです.
トマトはナス科で自家受粉,交雑率が低いそうです.
食べた実から種採りをしました.小さい白い種です.来年この種を撒くつもりです.

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会議・研修 種子は人類の遺産

完熟したぷよ姫さん初めの1粒いただきました.種採りも教えていただき,愛ニャンコマリアさん有難うございました.白い小さな種ですね.種子はとても重要なものだということを実感できました.

■今日は,数学はでません(メンデルの法則は一寸数学ですが).
日本の,米・麦.大豆を守って来た「種子法」についてです.
安倍政権は,TPPの一環で,種子法廃止を2017.4に成立させてしまいました.来年3月施行です.何事も規制改革会議に決定させ,国会の審議はろくにしない仕組みは止めてもらいたいものです.

■種子法は,1952年以来,日本の米・麦・大豆を守って来ました.稲は各地で長年改良され,300の多品種があり,その地の風土に合った優良品種を栽培奨励しているといいます.種子法は,多国籍企業の種子ビジネスに障害になるので廃止されました.これからは農家の種採り,交換,保存も禁止され,例えば,モンサントの限定品種に制覇される時代になるようです.多様性が種々の原因による不作危機の保証になっているのに馬鹿なことです.種子・化学肥料・農薬のセットビジネスが狙いです.
無精子(雄性不稔)の株を使い開発したF1品種や,遺伝子組み換え品種が蔓延る未来を止めねばなりません.
[山田正彦氏(元農水大臣,日本の種子を守る会)のIWJインタビューより]

■F1品種の作り方[たねのうた http://tanenouta.com/pleasure/879/ より]
雄性不稔とは,おしべに問題があってうまく受精できない植物個体.
雄性不稔の株を母株として利用すると,その花粉には受粉能力がないわけですから,
別の品種の父株と交互に植えておけば,間違いなく別々品種を両親とする子が生まれます.この雄性不稔の遺伝子は,玉ねぎの突然変異から見つかり,人参やナス,とうもろこし,そして,これまで自家不和合成を利用していたアブラナ科でも実用化されているようです.
私たちは突然変異から見つかった遺伝的におかしい野菜を食べていることになります.ミツバチの不妊もこの花粉に原因があるという説もあるようです.

■味のよい「コシヒカリ」と収量の多い「インデカ種」のかけ合わせで生まれるF1品種のメリットは,1年目は,両親の良いとこ取りだが,次年のその子F2は,劣勢遺伝が出るのでそれぞれの先祖の悪い所が出ます.
農家は,毎年新しい種子を買う必要がある(メーカー指定の肥料,農薬のセットを使う契約をさせられるようです).
遺伝子組み換えは危ないですが,危なそうなF1品種の安全性は30年先にならないとわからないでしょう.昔ながらの品種改良で生まれた種子は長い歴史があり,F1品種とは違い安全で,無農薬栽培などの工夫は農家の自由です.

■日本の野菜は,種子法の適用外だったため,すでにF1品種で海外多国籍企業に90%制覇されているそうです.日本各地の原種の苗を「手苗」というそうで,昔の農家は,これらの種を採り「自家採種」代々引き継いで栽培しました.
私は,ブログ友にもらった「ぷよ姫」さんというミニトマトを育てています.
育て始めるのが遅かったので,11月16日になって完熟した始めの1粒を食べたばかりです.トマトはナス科で自家受粉,交雑率が低いそうです.
食べた実から種採りをしました.小さい白い種です.来年この種を撒くつもりです.

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MRI装置の話

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数学月間SGK通信 [2017.11.14] No.193
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆様お変わりありませんか.MRI(核磁気共鳴イメージング)の話です.
私は,今年は2回MRIの測定をし,9月末に手術をしましたが,今は絶好調です.
MRIを撮ったことのある方もおられることでしょう.あのカタカタだのビーだの
ほとんど冗談かと思うようなふざけた音がしますが,1.5T(テスラ)という強い磁場の中で
装置が動くためにあたかもスピーカーと同じように振動する装置の出す音です.
それにしてもなんとかならないものか,
振動しないように作るにも,今でも何トンという重量ですから無理でしょう.
一方,画像の分解能を良くすれば,測定時間は増えるのが常識ですが,
分解能を上げて,かつ,測定時間も短縮できる「圧縮センシング」という数学的な方法があります.
その前に,今日はMRIの装置の仕組みについてお話します.
■プロトン(水素の原子核)はスピンを持ち,磁石の性質(核磁気)があります.
強い静磁場下に置かれたプロトン核磁気は,磁場に沿ってだいたい向きが揃い,
歳差運動している状態です.歳差運動の周波数(ラーモア周波数という)は,
磁場が強いほど高く,MRI装置の静磁場は1.5T程度と超強力なので,
ラーモア周波数は64MHz(ラジオ電波の周波数領域)程度です.
静磁場下のプロトンに,このラーモア周波数の電波が照射されると吸収共鳴が起こり,
核磁気の歳差運動の振幅(周波数は変わらない)が増大しほとんど横倒しの状態で回転
(古典論的なイメージ)しています.
一方,歳差運動をしているプロトン核磁気からは同じ周波数の電波が放射されるので,
これを検出することができます.
■生体組織は,水をはじめ水素原子と結合したいろいろな組織です.
つまり,プロトン(水素の原子核)核磁気は組織の至る所に分布していて,
その水素の属する組織の環境(診断情報)がそのプロトン核磁気の性質に反映されています.
すなわち,核磁気の歳差運動の縦緩和,横緩和という現象に,そのプロトンが含まれる水素周囲の違いが出ます.
緩和というのは,電波の照射を止めると,励起されていた核磁気の歳差運動が定常状態に戻ることで,
静磁場方向の核磁気成分の復元緩和を「縦緩和」,静磁場に垂直面内の成分の減衰緩和を「横緩和」といいます.
組織の各点で,これらの緩和定数を測定し,マップに表示できれば,
診断に役立つ組織の特徴を反映したイメージングになります.
■さて,組織画像の位置情報はどのようにして得られるのでしょうか.
これがなければ画像として見ることができません.
断層測定をするには,検出器に到来する電波が,
1つのスライス平面から来るものだけ集める必要があります.
このためには,静磁場の他に傾斜磁場を印加します.
傾斜磁場はさきほどの静磁場とは別で,ペアのコイルによって発生する
(数十mT/m程度の強さ)もので,静磁場方向をz軸とするとz方向に沿って変化する傾斜磁場,
x方向に沿って変化する傾斜磁場,y方向に沿って変化する傾斜磁場の3種類があります.
傾斜磁場があると,空間内で磁場の大きさが一定になるのは平面になります.
例えば,静磁場方向と同じz方向の傾斜磁場を印加すると,磁場一定の平面はz軸に垂直な平面です.
プロトン核磁気のラーモア周波数は,磁場の強度に比例するので,
共鳴吸収する電波の周波数をスキャンすれば,
z軸に垂直な各断層平面に並ぶ核磁気からの電波を順次採取することができます.
次に,各断層面内の(x,y)位置情報はどのように得るかというと,
断層内のプロトンの歳差運動を励起した後に,x傾斜磁場,引き続きy傾斜磁場の印加を行います.
x傾斜磁場印加でx軸に沿って歳差運動の周波数が変化し,その場所から放射される電波のx座標情報
(周波数エンコーディング)が得られます.
xおよびy傾斜磁場の印加でy軸に沿って歳差運動の位相が変化し,
y座標情報(位相エンコーディング)が得られます.
傾斜磁場を印加して,空間の位置情報を得,画像化を可能にしたのは,
Lautergur(1972)の発明で,2003年のノーベル賞を受賞しました.
■緩和時間の測定は,歳差運動の励起後,照射電波を切って行うので,
立ち上がり時間も考慮した電波照射の複雑なパルスシークエンスになり,
256x256画素の測定でもかなりの時間を要します.高分解能画像を得るには,
正攻法ではさらに細分化した画素数の測定が必要になり膨大な測定時間になるでしょう.
これを解決し,MRIの高分解能かつ高速化を実現したのは,
以下で言及する予定の「圧縮センシング」という数学方法です.

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理科・実験 MRI装置の画像化の仕組み★

MRI(核磁気共鳴イメージング)

■プロトン(水素の原子核)はスピンを持ち,磁石の性質(核磁気)があります.
強い静磁場下に置かれたプロトン核磁気は,向きは揃い,歳差運動している状態です.歳差運動の周波数(ラーモア周波数という)は,磁場が強いほど高く,MRI装置の静磁場は1.5T程度と超強力なので,ラーモア周波数は64MHz(ラジオ電波の周波数領域)程度です.静磁場下のプロトンに,このラーモア周波数の電波が照射されると吸収共鳴が起こり,歳差運動の振幅が増大し横倒しの状態で回転(古典論的なイメージ)しています.一方,歳差運動をしているプロトン核磁気からは同じ周波数の電波が放射されるので,これを検出することにします.
生体組織は,水をはじめ水素原子を含むいろいろな組織です.つまり,プロトン核磁気は組織の至る所に分布していて,その水素の属する組織の環境(診断情報)がそのプロトン核磁気の性質に反映されています.すなわち,核磁気の歳差運動の縦緩和,横緩和という現象に違いが出ます.照射電波を切ると,励起されていた核磁気の歳差運動が定常状態に戻る(緩和)のですが,静磁場方向の核磁気成分の復元緩和を「縦緩和」,静磁場に垂直面内の成分の減衰緩和を「横緩和」といいます.
組織の各点で,これらの緩和定数を測定し,マップに表示できれば,診断に役立つ組織の特徴を反映したイメージングになります.
■さて,画像の位置情報はどのようにして得られるのでしょうか.
このためには,静磁場の他に傾斜磁場を印加します.傾斜磁場はペアのコイルによって発生させ,数十mT/m程度の大きさです.静磁場方向をzとするとz方向に沿って強度が変化するz-傾斜磁場,x方向に沿って強度が変化するx-傾斜磁場,y方向に沿って変化するy-傾斜磁場の3種類があります.傾斜磁場の印加された空間内では磁場の大きさが一定になるのは1つの平面です.例えば,静磁場と同じ方向のz-傾斜磁場を印加すると,磁場一定の平面はz軸に垂直な平面です.プロトン核磁気のラーモア周波数は,その場の磁場強度に比例するので,もし,共鳴吸収する電波の周波数をスキャンすれば,各断層平面ごとの電波を順次採取することができます.
次に,各断層面上の(x,y)位置情報を得る仕組みの説明をします.断層上のプロトンの歳差運動を励起後に,y-傾斜磁場の印加と停止,その後続いて,x-傾斜磁場の印加を行います.まず,y-軸に沿って歳差運動の周波数が変わりますが,y-傾斜磁場が切られると,y-軸に沿って位相変化として残ります.続いてx-傾斜磁場が印加されるので,x-軸に沿った周波数変化ができます.結局,断層面上の点(x,y)から放射される電波は,x-座標に沿って周波数が変わり(周波数エンコーディング),y-座標に沿って位相が変わる(位相エンコーディング)ものが採取できます.
傾斜磁場を印加して,空間の位置情報を得,画像化を可能にしたのは,Lauterbur(1973)のNatureに載せた論文です.Lauterburらは2003年のノーベル賞を受賞しました.
■緩和時間の測定には,傾斜磁場や照射電波のON/OFFが必要で,傾斜磁場の立ち上がり時間も考慮した複雑なパルスシークエンスです.256x256画素の測定でもかなりの時間を要します.高分解能画像を得るには,正攻法ではさらに細分化した画素数の測定が必要になり膨大な測定時間になるでしょう.パラレルイメージングなどの手法に加えて,MRIの高分解能かつ高速化を実現したのは,別項目で言及した「圧縮センシング」という方法です.

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