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No.453 原子核レベルの距離の単位

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数学月間SGK通信 [2022.12.20] No.453
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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瞬間を測る時間の単位を見てきました.こんどは,原子核レベルの小さい距離を測る単位はどうでしょうか。

原子核とその構成粒子は非常に小さいため,フェムトメートル( fm )の単位を用います。1fm = 10^{-15}m
これは、ナノメートル nm(分子の典型的なサイズ) の 100万分の 1( 10^{-6} )です。
陽子または中性子のサイズは約 1 fm 程度、さらに小さく重い粒子があります。

素粒子の世界のエネルギーも小さすぎてジュールJでは測れません。
代わりに用いるエネルギーの単位は電子ボルト( eV ) です。
定義によると,1eVは,1つの電子が 1ボルトの電位差を通過するときに,電場で獲得するエネルギーです。
1eV は約 1.6×10^{-19} J です。
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注)電子の電荷は約 1.6×10^{-19}クーロンで,1アンペアの電流が1秒間で運ぶ電荷が1クーロンです.
1クーロン の電荷を1ボルト の電位差に逆らって動かすのに必要な仕事が1ジュール.
1ジュールは,1ニュートンの力で1メートル動かすときの仕事でもあります.
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電子ボルトeVは,原子や光のプロセスを記述するのに便利です。
たとえば,室温の気体分子は,約1/40eVの運動エネルギーを持ち,
可視光の光量子は,約 1eV のエネルギーを持っています。

原子核や素粒子の内部で起こる現象は,さらに大きなエネルギー変化を伴います.
メガ電子ボルト ( MeV ),ギガ電子ボルト ( GeV ),さらにはテラ電子ボルト ( TeV ) がここで使用されています。
例えば,陽子や中性子は,数十MeV の運動エネルギーで原子核内を移動します。
陽子の内部構造が顕著になる陽子-陽子衝突や電子-陽子衝突のエネルギーは数GeVです。
現在知られている最も重い粒子であるトップクォークを生成するには,約1TeVのエネルギーで陽子を押す必要があります。

距離スケールとエネルギースケールの間に対応関係を確立できます。
波長 L の光子のエネルギーの計算は: E =c h/L
ここで,cは光速,hはプランク定数(約 h=6.62 10^{-34} J・s です。
光子だけでなく,スケール Lで物質を研究するときに, 対応するエネルギーの推定に適用できます。
「微視的」単位では,1GeVは約1.2fmフェムトメートルのサイズに相当します。

アインシュタインの有名な式 E_{0} = mc^{2} によると,質量と静止エネルギーは密接に関連しています。
素粒子の世界では,この関係は最も直接的な方法で現れます.十分なエネルギーを持つ粒子が衝突すると,
新しい重い粒子が生まれ,静止している重い粒子が崩壊すると,質量差が結果の粒子の運動エネルギーに移行します。

このため,粒子の質量も一般に電子ボルトで表せます (より正確には,電子ボルトを光速の2乗で割った値)。
1 eV はわずか 1.78×10^{-36}kg の質量に相当します。
これらの単位で, 電子の重さは 0.511 MeV, 陽子の重さは 0.938 GeV です。
多くのさらに重い粒子が発見されています。これまでの記録保持者は, 質量が約170 GeV のトップ クォークです。
質量がゼロでない既知の粒子の中で最も軽いニュートリノは, 数十meV (ミリ電子ボルト) しかありません。

引用:https://old.elementy.ru/posters/collider,加速器(Ускоритель;Accelerator)

No.452 瞬間はどのように分割されるか

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数学月間SGK通信 [2022.12.13] No.452
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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450号で始めた「瞬間の時間単位」の具体的な内容に言及しようと思います。

 時間単位 と 起こる現象の代表例
マイクロ秒   水滴の分離
ナノ秒     表面原子の動き
ピコ秒     結晶格子振動
フェムト秒   電子,プロトンの移動
アト秒     オージェ電子放出
ゼプト秒    原子核内反応
ヨクト秒    素粒子の生成や崩壊

それぞれの項目の詳細は以下のリンクに書きました。ご覧ください。
https://note.com/sgk2005/n/n966d425aa31e ミリ秒
https://note.com/sgk2005/n/nc22e83bd9bad マイクロ秒
https://note.com/sgk2005/n/n74b4c6c0e460 ナノ秒
https://note.com/sgk2005/n/n543634f4f445 ピコ秒
https://note.com/sgk2005/n/n8ab495be1fda フムト秒
https://note.com/sgk2005/n/nfea6ba2f2e14 アト秒
https://note.com/sgk2005/n/n8fb86846aa6b ゼプト秒
https://note.com/sgk2005/n/nf2d930b4c3dc ヨクト秒

時間が量子化されてこれ以上は分割できないというような最短時間(時間の量子)が存在するのか,
それとも,時間は連続なのかどちらでしょうか.量子化できないことの証明があるらしいのですが
私はわかりません.もしあるとすれば,光がプランク長を移動するのに要する時間(プランク時間)
のオーダー 10^{-44}秒でしょう.

ロシアの科学ジャーナル「エレメント」から、以下のポスターがでています.
イラスト入りでよくまとまっています.ご参考に.
https://old.elementy.ru/posters/moment

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ご感想やコメントを以下のブログあるいはメールにお寄せください.
☆NPO法人数学月間の会(SGK)=数学と社会の架け橋
 連絡先:sgktani@gmail.com
 https://note.com/sgk2005
 公式HP: http://sgk2005.saloon.jp/
☆発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/

No.451 なかの数学まつり第2回第3回の解説

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数学月間SGK通信 [2022.12.06] No.451
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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なかの数学まつりは,初めての試みでしたが,予定通りに3回の実施ができました.
第2回は11月26日,第3日は11月27日に実施しました.
コロナの第8波やインフルエンザに注意し,定員制で,マスク着用,検温,消毒なども実施し
無事に開催できました.小学生の参加では,親子で参加や姉妹で参加された方もおられます.
学校の事業とは違う参加型の体験で,みんな楽しい時間になったと思います.
このイベントの告知は,数学月間の会ウエブサイト,中野区の72か所の施設に配ったチラシが主体です.
参加者にどの経路で知ったか聞いたところ,児童館,高齢者会館,地域センターに設置したチラシとの
回答がありました.ウエブの区民ニュースを見た方もおられました.中野区掲示板は200か所もあり
とても貼って回ることはできませんが,中野駅や中野ZERO付近の掲示板は見られているようでした.
数セミイベント情報にも掲載しておりますが、小中学生はこれを見ることはないようです.
我々は組織的な広報手段を持ちませんが,ある程度の参加者を得て楽しく快適に実施できたのは
参加者の口コミ応援が貢献していると思われます.ありがたいことです.
数学月間の会の会員ボランティアの協力に感謝いたします.

さて,第2回,第3回の内容についての解説に移ります.
以下のウエブサイトの記事を参照ください.次々にリンクが出てきますので
クリックして,図やYouTube動画もご覧になるとよくわかると思います:

(第2回)正多面体を作ろう
https://note.com/sgk2005/n/n891019aa6da0

(第3回)エジプト紐であそぼう
https://note.com/sgk2005/n/n8304931cfec7

 

No.454 愛と数学-隠された現実の心 Edward Frenkel (著)-序

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数学月間SGK通信 [2022.12.27] No.454
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今年も残り少なくなりました。次回のNo.455は,年が変わり2023年になっています。

どうぞ皆さま良い年をお迎えください。
今回紹介するこの本,数学は外界を認識するのに必要であるにもかかわらず,
嫌われているのは何故かがわかります。そして,数学の授業が
17世紀の微分積分あたりで終わっていて,その後の発展した分野に触れておらず
つまらないものになっているということに私も同感です。
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愛と数学-隠された現実の心 Edward Frenkel (著)
 
Love and Math: The Heart of Hidden Reality
https://old.elementy.ru/bookclub/book/410/Lyubov_i_matematikaより翻訳

«Любовь и математика». Главы из книгиold.elementy.ru
序章
私たちの隣には秘密の世界があります - 美しさと調和に満ち,私たちの世界と密接に絡み合った隠された平行宇宙です.これが数学の世界です.そして,私たちのほとんどにとって,それは目に見えないままです.私の本はこの魔法の世界への招待状です.Edward Frenkel

訳者注)隠された世界とは外界(森羅万象の法則の世界)のことです.「数学によってのみ外界が認識できる」と言った,デカルト,ホッブスを思い出します.

次のパラドックスを考えてみましょう:数学は私たちの日常生活に織り込まれています。インターネットで買い物をしたり、ウェブで必要な情報を見つけようとしたり、テキスト メッセージを送信したり、GPS デバイスを使用したりするたびに、数式やアルゴリズムを利用します。その一方で、数学はほとんどの人に畏敬の念を抱かせます。詩人ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガーの言葉を借りれば、それは「私たちの文化の盲点であり、エリート、少数の学習者だけが、地位を確立できたエイリアンの地」となっています。「小説を読んだり、絵を眺めたり、映画を見たりすることを考えただけで、耐え難い苦痛を感じる人に出会う」ことはごくまれですが、「理性と教養のある人々」が、「軽蔑とプライドが混ざり合って」、数学は「退屈」で「拷問」または「悪夢」にすぎないとしばしば言います。

この異常を説明するものは何でしょう?
私の意見では、これには2つの理由があります。第一に、数学は他の科目よりも抽象的であり、そのためアクセスしにくい。第二に、私たちが学校で学ぶのは、数学のごく一部でほとんどが千年以上前に開発されたものにすぎず、それ以来、数学は信じられないほど進歩しましたが、私たちのほとんどは、どんな宝物が隠されているのかさえ気づいていません.

学校で、フェンスの描き方だけを教えられ、レオナルド・ダ・ヴィンチやピカソの作品を見せることのない「美術の授業」に強制的に出席させられたと想像してみてください。これをしながら芸術を鑑賞することを学ぶことができますか? 芸術についてもっと知りたいですか?
おそらく次のような答えになるでしょう:「学校の美術の授業は時間の無駄だった。 フェンスをペイントする必要がある場合は、適切な人を雇うだけです。」 ばかげているように聞こえるかもしれませんが、それが今日の数学の教え方です。 同時に、偉大な絵画の巨匠の作品は誰でも利用できますが、偉大な巨匠の数学は 7 つの封印で秘密のままです。

しかし、数学の魔法はその美しさだけにあるわけではありません。ガリレオの有名な言葉、「自然界の書物は数学の言葉で書かれている」は誰もが知っています。数学は、現実を説明する方法であり、私たちの世界がどのように機能するかを理解する方法であり、真実のゴールド スタンダードとなっている普遍的な言語です。科学と技術が社会の発展に重要な役割を果たしている私たちの世界では、数学はますます明確な力、富、進歩の源になりつつあります。したがって、この新しい言語を流暢に話せる人は、進歩の最前線にいます。

数学に関する一般的な誤解の 1 つは、数学は「ツール」としてのみ使用できるというものです。たとえば、生物学者は実験を設定し、データを収集してから、このデータに対応する数学的モデルを構築しようとします (おそらく数学者の参加を得て)。この形式の協力は重要ですが、数学は実際にはもっと多くのことを私たちに提供してくれます。根本的な突破口を開き、完全なパラダイム シフトを意味する発見を行うことができます。これは、数学の助けがなければ不可能です。
たとえば、アルバート アインシュタインが重力によって空間が曲がることに気付いたとき、彼は方程式を使用してデータを記述しようとはしませんでした。実際、そのようなデータはまったくありませんでした。当時、私たちの空間が湾曲しているとは誰も想像できませんでした。誰もが私たちが平らな世界に住んでいることを「知っていた」のです。しかし、アインシュタインは、重力と加速度が同じ効果を持つという彼の洞察と合わせて、これが彼の特殊相対性理論を非慣性系一般化する唯一の方法であることに気付きました。これは、アインシュタインが50年前の数学者バーナード・リーマンの業績に頼るだけで達成できた、数学の分野における最高レベルの知的飛躍でした。
人間の脳は、2 次元を超える湾曲した空間を想像できないようにプログラムされています。それらを研究して説明する唯一の方法は、数学を使用することです。あなたはどう思いますか?アインシュタインは正しかった!私たちの宇宙本当にねじれています。しかも拡大中。これが、私が話している数学の力です。

そのような多くの例は、物理学だけでなく、他の科学分野でも引用することができます (それらのいくつかについては以下で説明します)。歴史は、数学的アイデアが科学と技術をますます急速に変革していることを示しています。最初はもっぱら抽象的で難解なものと考えられていた数学的理論でさえ、後に応用問題を解決するために不可欠になることがよくあります。最初は数学に依存していなかったチャールズ ダーウィンは、後に自伝の中で次のように書いています。それをマスターした人々は、理性を働かせる追加のツールを備えているように私には思えます。私はこれが将来の世代のための優れた指示だと考えています。

子供のころは、私は隠された数学の世界があることを知りませんでした. ほとんどの人と同じように、数学は無味乾燥で退屈な科目だと思っていました。しかし、私は幸運でした。高学年で勉強しているときに、この魔法の世界を開いてくれるプロの数学者に出会いました。数学は無限の可能性に満ちており、優雅さと美しさにおいて詩、絵画、音楽に劣らないことを学びました。私は数学が好きになりました。

親愛なる読者の皆さん、この本の助けを借りて、私の先生や指導者が私にしてくれたことをあなたにもしたいと思います: 数学の力と美しさをあなたに明らかにし、私がかつてなんとかしたように、あなたがこの魔法の世界に入るのを助けることです.たとえあなたが「数学」と「愛」という言葉を同じ文で決して使わない人の一人であったとしても、数学が私の肌に浸透したのと同じようにあなたの肌に浸透し、世界のイメージは永遠に変わります。

数学の知識は他に類を見ません。物理的な世界に対する私たちの認識は常に歪められますが、数学的真実の認識は歪められません。これらは客観的で、永遠で、揺るぎない真実です。数式または定理は、性別、宗教、肌の色に関係なく、どこにいても誰にとっても同じことを意味します。千年後も同じ意味を持つ。しかし、さらに驚くべきことは、それがすべて私たちのものであるということです。数式の特許を取得する権利は誰にもありません。これらの数式はすべて私たちのものであり、共通のものです。この世界には、これほど深く洗練されていると同時に、誰もが平等にアクセスできるものはありません。そのような知識の貯蔵庫が実際に存在することは、ほとんど信じられないほどです。この知識は、少数の「選ばれた者」だけに与えるにはあまりにも価値があります。それは私たち一人一人のものです。

数学の重要な機能の 1 つは、情報の順序付けです。これが、ヴァン ゴッホのブラシの跡を単なる絵の具の塊と区別するものです。3D プリンティングの出現は、私たちが馴れ親しんでいる現実の根本的な変化を示します。物理的なオブジェクトの領域から、すべてが情報とデータの領域に流れ込み始めます。3D プリンターのおかげで、PDF を書籍に、MP3 を音楽に変換するのと同じくらい簡単に、情報から物質を作成できるようになります。このすばらしい新世界では、情報を整理して順序付けする方法として、また情報を物理的な現実に変換する手段として、数学がさらに重要な中心的な位置を占めるようになるでしょう。

この本では、過去 50 年間に数学で出現した最も偉大なアイデアの 1 つであるラングランズ プログラムについて話します。ラングランズ プログラムは、多くの人が数学の大統一理論と考えています。この魅力的な理論は、代数、幾何学、数論、解析、量子物理学など、光年離れているように見える数学の分野間の深いつながりの網を織り上げています。これらの地域を数学の秘密の世界の大陸として想像すると、ラングランズ プログラムは、私たちをある大陸から別の大陸へ瞬時に移動させ、また戻すことができるテレポーテーション デバイスのようなものです。

ラングランズ プログラムは、現在プリンストン高等研究所でアルバート アインシュタインのオフィスを持っている数学者、ロバート ラングランズによって 1960 年代後半に開始されました。このプログラムの根底には、対称性の理論があります。同時に、その基礎は、20 歳で決闘で殺される直前に、フランスの天才によって 200 年前に築かれました。その後、フェルマーの最終定理の証明を定式化することを可能にしただけでなく、数と方程式の理解に革命をもたらした別の驚くべき発見によって、それは豊かになりました. さらに別の鋭い洞察力は、数学には不可解なアナロジーと比喩に満ちた独自のロゼッタ ストーンがあることを示しました。数学の魅惑的な土地を流れる小川としてのこれらのアナロジーに従って、インスピレーション、深いアイデア、驚くべき啓示など、ほとんど注目されていない数学の側面を見ることができるように、これらすべてについてお話ししたいと思います。数学は、真実を求めて無限に飛び交う身近な空想の境界を打ち破る方法です。無限理論の創始者であるゲオルク・カントールは、「数学の本質はその自由にある」と書いています。数学は、現実を分析すること、事実を探求すること、それらが私たちを導くところならどこでもそれらに従うことを私たちに教えてくれます. 教義や偏見から私たちを解放し、私たちの革新的な可能性を養います。このように、数学が私たちに与えるものは、主題そのものをはるかに超えています。

しかし、この贈り物は善にも害にも利用できるため、数学が現実世界に与える影響に常に注意を払う必要があります。たとえば、世界的な経済危機は主に、金融市場で不適切な数学的モデルが広く使用されたことによって引き起こされました。多くの意思決定者は、自分自身の数学的無知のために、これらのモデルの本質を完全には理解していませんでしたが、システム全体の崩壊につながるまで、彼らの貪欲さだけに導かれて傲慢にモデルを適用し続けました. 彼らは、誰もブラフを開かないことを期待して、情報への非対称アクセスの利点を悪用しました. 多分、別の例を見てみましょう。1996 年、米国政府が任命した委員会は秘密会議で、消費者物価指数の計算式を変更しました。消費者物価指数は、課税、社会保障、健康保険、およびその他の指数による支払いを決定するインフレの尺度です。何千万人ものアメリカ人の利益が影響を受けましたが、新しい公式とその結果についての公の議論はありませんでした. そして最近、この式を「裏口」として使用して、舞台裏で米国経済に影響を与えようとする別の試みが行われました.

数学に精通した社会では、この種の秘密取引ははるかに少ないだろう. 数学は、厳密さと知的な正直さに事実への依存を掛け合わせたものです。今日の数学に支配された世界では、少数の権力者の恣意的な決定から身を守るために必要な数学的知識に、私たちは皆自由にアクセスできるべきです。数学のないところに自由はありません。

* * *

数学は、芸術、文学、音楽と同じくらい私たちの文化遺産の一部です。私たち人間は、未知のもの、新しい目標の達成、宇宙とその中での私たちの場所の知識に対する生来の欲求を持っています. 残念ながら、コロンブスのように新しい大陸を見つけたり、月面に最初に足を踏み入れたりする必要はもうありません。しかし、私たちの世界の未知の不思議を求めて海を泳いだり、宇宙に行ったりする必要はないと言ったらどうでしょうか? それらは私たちの目の前にあり、日常の現実の繊維と絡み合っています。ある意味、彼らは私たちの一部です。数学は宇宙の流れを導き、あらゆる曲線や形の背後に隠れ、小さな原子から巨大な星まであらゆるものを支配しています。

私の本は、この豊かでまばゆい世界への招待状です。数学の教育を受けていない人のために書きました。数学が難しすぎて何も理解できないと思っているなら、数学が怖いけれど、同時に本当に知っておく価値のある何かがあるか知りたいと思っているなら、この本はあなたのためのものです.

数学を理解するには、何年もかけて勉強しなければならないというのはよくある誤解です。一部の人々は、それを理解する能力を持たずに生まれてきたと信じています。これには同意できません。私たちのほとんどは、太陽系、原子と素粒子、DNA の二重らせんなどの概念について聞いたことがあるでしょう。これらのことを初歩的に理解するために、物理学や生物学の特別なコースは必要ありません。そして、これらの複雑なアイデアが私たちの文化、私たちの集合意識の一部であるという事実に誰も驚かない。 同じように、誰もが数学の重要な概念とアイデアを理解できます。それらは適切に説明する必要があるだけです。そうすれば、数学の学習に何年も費やす必要がなくなります。多くの場合、退屈な手順を飛ばして問題の核心にたどり着くことができます。

問題は、全世界が惑星、原子、DNA について話しているにもかかわらず、対称群、「2 たす 2」が必ずしもそうではない非標準的な数体系など、現代数学の魅力的なアイデアについてはほとんど誰も教えてくれないことです。いわゆるリーマン面のような 4 つの美しい幾何学的形状を作成します。トラだと言い張って、小さな猫を見せているようなものです。しかし、実はトラは全く別の動物です。ウィリアム・ブレイクが雄弁に言ったように、その「驚くべき対称性」を理解できるように、その素晴らしさをすべてお見せします.

私はあなたを誤解させません: この本を読んだ後、あなたはすぐに数学者になることはありません. しかし、誰もが数学者になるために努力すべきだと言っているわけではありません。ですから、いくつかのコードを覚えれば、ギターでかなりの数の曲を演奏できるようになります。世界一のギタリストになれるわけではありませんが、あなたの人生を豊かにしてくれます。この本では、長い間隠されてきた現代数学のコードを紹介します。そして、あなたの人生を豊かにすることをお約束します。

私の教師の 1 人である偉大なイスラエルの Moiseevich Gelfand は、次のように述べています。酔っぱらいに 2/3 と 3/5 のどちらが大きいか尋ねても、彼は答えられません。しかし、質問を再定式化すると、ウォッカ 3 本に対してウォッカ 2 本、5 本に対してウォッカ 3 本のどちらが良いか、すぐにわかります。もちろん、3 本に対して 2 本です。

この本での私の目標は、すべてを理解できる言葉で説明することです。
訳者注)マーフィーの法則で、「言葉が通じなければそれは数学」と揶揄的に定義されている.

また、抑圧的な政権に直面して数学が自由の防波堤となったソビエト連邦での私の生活についてもお話しします。当時ソビエト連邦で施行されていた差別政策のため、私はモスクワ州立大学に受け入れられませんでした。目の前でドアがバタンと閉まりました。私はのけ者でした。しかし、私はあきらめませんでした。講義とゼミのために大学に忍び込んだ。数学の教科書を独学で勉強し、夜更かしすることが多かった。最終的に、システムをだますことができました。彼らはドアを通らせてくれませんでしたが、私は窓から飛び込みました。結局のところ、人が恋をしているなら、彼を止めるものは何もありません。

2 人の素晴らしい数学者が私を彼らの庇護の下に連れて行き、私のメンターになりました。彼らの指導の下、私は独自の数学的研究を始めました。私はまだ研究所の学生でしたが、すでに未知の境界を突破しようとしていました。それは私の人生で最もエキサイティングな時期であり、差別的な政策がソビエト連邦で私の専門分野の仕事を得ることができないと確信していたにもかかわらず、私は好きなことをしていました.

しかし、私には驚きが待ち受けていました。私の最初の数学的研究は密かに国外に持ち出され、有名になりました。その結果、21 歳のとき、ハーバード大学の教授として臨時のポストに就くよう招待されました。奇跡的に、同じ頃、ソビエト連邦でペレストロイカが始まり、鉄のカーテンが崩壊し、ソビエト市民は海外旅行の機会を得ました。それで、博士論文を擁護することさえできなかった私は、ハーバード大学の教授になり、再びシステムをハッキングしました。その後、科学の道を歩み続け、ラングランズ プログラムの最前線で研究を行うようになり、過去 20 年間にわたってこの分野の発展に貢献することができました。この本では、著名な科学者によって得られた驚くべき結果の説明を見つけることができます。

しかし、何よりもまず、この本は愛についてです。私はかつてこのビジョンを持っていました: 数学者が「愛の公式」を発見し、これが映画 Rites of Love and Mathematics の始まりとなりました。この映画を上映するたびに、誰かが必ず「愛には公式があるのですか?」と尋ねます。

私の答えは、「私たちが発見するすべての式は愛の式です。」結局のところ、数学は、存在するすべてのもののまさに中心に浸透し、文化、大陸、世紀を通じて私たちを結び付ける、永遠で計り知れない知識の源です。私たち一人一人が、この世界とお互いへの愛に新しい意味を与えるこれらのアイデア、公式、方程式の魔法のような美しさと絶妙な調和を見て、感謝し、賞賛できるようになることを夢見ています.

読者へのアドバイス
私は、この本の数学的概念を最も初歩的で直感的な方法で提示するためにあらゆる努力をしました。ただし、いくつかの部分が数学で過負荷になっているように見える場合があることは理解しています (特に、第 8 章、第 14 章、第 15 章、および第 17 章の断片)。最初の読書で、理解できない、または退屈だと思う資料をスキップすることは何も悪いことではありません (私はしばしばこれを自分で行います)。後で戻ってきて、新しい知識を身につけていると、はるかに理解しやすくなっていることに気付くかもしれません。ただし、これは通常、次に説明する内容を理解するためには必要ありません。

何かについて混乱するのは完全に正常であることを強調することは非常に重要だと思います. 数学をしているとき、私は 90% の確率でこの感覚に陥っています。私の世界へようこそ! 混乱 (時には絶望さえも) は、数学者なら必ず伴う感情です。しかし、この状況には明るい面もあります。すべてが明確で、ほとんど努力することなくすべてを整理できるとしたら、人生がどれほど退屈になるか想像してみてください。数学をこれほどエキサイティングなテーマにしているのは、混乱を克服したい、理解できないものを理解したい、未知のベールを取りたいという私たちの願望です。そして、私たちが理解したかったことを理解したときの個人的な勝利の感覚は、経験とコストを正当化します.

この本では、技術的な詳細ではなく、全体像と、さまざまな概念と数学のさまざまな分野の間の論理的なつながりに焦点を当てています。多くの場合、より詳細な議論はメモに記載されており、有用な資料へのリンクや追加の読み物への提案も提供されています。ただし、脚注は主要な資料を理解するのに役立ちますが、安全にスキップできます (少なくとも最初の読書では)。

式の使用を最小限に抑え、可能な場合は口頭での説明を選択しました。しかし、本の中のいくつかの公式を見逃しても大丈夫です。

数学用語についての警告: この本を書いている過程で、私は驚いたことに、数学者によって特定の方法で使用される特定の用語が、非数学者にとってはまったく異なるものを意味する可能性があることを発見しました。これらは、「対応」、「表現」、「構成」、「ループ」、「多様性」、「理論」などの用語です。そのような誤解が生じる可能性がある場合はいつでも、私は追加の説明を提供しました. また、可能な限り、いくつかの数学用語を他のより理解しやすい定義に置き換えようとしました。単語が理解できないと思われる場合は、本の最後にある用語集をいつでも見ることができます。

私のウェブサイトhttp://edwardfrenkel.comにアクセスしてください。ここには追加の資料があります。また、この本の印象を共有したい場合は、私にメッセージを送信することもできます (私のメール アドレスはサイトに記載されています)。私はあなたのフィードバックに感謝します。

 

No.456 ゴールドバッハ問題

 

2より大きい偶数は、2つの素数の和として表すことができます。

https://old.elementy.ru/trefil/21143/Problema_Goldbakha

Проблема Гольдбаха
old.elementy.ru


最も単純な数学的ステートメントが、証明するのが最も難しい場合があります。フェルマーの最終定理が最終的に証明されたのは、定式化から数百年後の 20 世紀の終わりになってからのことです。数学者がこれまで証明できなかった、フェルマーの定理にいくぶん似た別のステートメントがあります。これはゴールドバッハ問題と呼ばれ、このステートメントの定式化は非常に簡単です。2 より大きいすべての偶数は 2 つの素数の和として表現できるということです。(素数 とは、1および自分自身以外では割り切れない数です。したがって、2、3、5、7 は素数ですが、4 (2 x 2)、6 (3 x 2)、9 (3 x 3) はそうではありません。) このステートメントは、1742 年に Christian Goldbach によって最初に提唱されました。このことから、偶数 10は、7 + 3 の和として書くことができます。ここで、7 と 3 は素数です。あまり知られていないゴールドバッハの主張のもう 1 つの定式化は、9 以上の奇数は 3 つの素数の和として表すことができるというものです (たとえば、13 = 7 + 3 + 3 = 5 + 5 + 3)。
ゴールドバッハがこの予想を提唱して以来、数学者は、フェルマーの最終定理と同様に、この予想が正しいことを疑いませんでした。しかし、フェルマーの定理とは異なり、誰もそれを証明できたと主張したことはありません。この問題を解決するための正面からのアプローチがあります - 長い間、このステートメントをより大きな偶数で順番にチェックするコンピュータープログラムを実行することです。このようにして、定理が間違っていたとしても、その定理を反証することができます。でも、プログラムが次のステップでテストする数が規則の最初の例外になるかも知れないという単純な理由で証明できていません。実際、ゴールドバッハの問題は、少なくとも 100,000 までのすべての偶数に対して真であることがわかっています。
1930 年代に、ロシアの数学者のグループが、任意の偶数をn以下の素数項の和として表すことができるような有限のnが存在すること、およびゴールドバッハ予想が偶数の大規模なクラスに当てはまることを確立しました。しかし、定理の証明はまだ見つかっていません。
なぜ数学者はフェルマーの最終定理やゴールドバッハの問題のような問題を解くのに多くの時間を費やすのでしょうか? 結局のところ、これには実際的な意味はなく、彼らの決定から利益を引き出すことはできません。私の意見では、これは非常に古く、人間の活動の非常に特徴的なものであり、自明で議論の余地のない真実の探求です。哲学者たちは何千年もの間、真実を探し求めてきました。数学者は、純粋な論理に基づくシステムを操作することで、そのような真実を発見したいと考えています。そして、これらの証明を達成するのが非常に困難であるという事実は、おそらく、数学自体の特性ではなく、論理の性質そのもの、つまりこの信頼できず、変化しやすい世界で真実を見つけることが不可能であることによって説明されます.

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10=3+7
12=1+11=5+7
14=1+13=3+11=7+7
16=3+13=5+11
18=1+17=5+13=7+11
20=1+19=3+17=7+13
22=3+19=5+17=11+11

9=3+3+3=1+3+5
11=3+3+5=1+5+5
13=3+3+7=3+5+5
15=3+5+7=5+5+5=1+7+7
17=5+5+7=3+7+7=1+3+13=1+5+11=3+3+11
19=1+1+17=1+5+13=3+3+13=1+7+11=3+5+11=5+7+7


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クリスチャン・ゴールドバッハ、1690-1764

ドイツの数学者。プロイセンのケーニヒスベルク(現ロシア・カリーニングラード)生まれ。1725 年に彼はサンクトペテルブルクで数学の教授になり、3 年後には将来の皇帝ピョートル 2 世の家庭教師としてモスクワに来ました。ヨーロッパ旅行中、ゴールドバッハは、ゴットフリート ライプニッツ、アブラハム ド モアヴル、ベルヌーイ家など、当時の主要な数学者の多くに会いました。彼の論文の多くは、スイスの偉大な数学者レオンハルト・オイラー (1707–83) とのやり取りから生まれました。私たちが現在ゴールドバッハの問題と呼んでいる主張は、1742 年にゴールドバッハからオイラーへの手紙の中で最初に提起されました。

No.457 軌跡を求める問題

数学の醍醐味は、次の2点にあります;
①現象を支配する数学を見出す.これは物理学に近い
②数学の論理を展開する.
軌跡を求める問題の着眼点も,この2点にあります.特に,物理や機械に近い着眼点①は興味深いもので,私は軌跡を求める問題は特に好きです.
代表例として,単純な 問題1を作りました.挑戦してください.

■問題1
円A,Bの半径をそれぞれ1とし,2つの円の間は1/2だけ離れているとします(つまり,ABの距離は3/2です).円Aの円周上の点P,円Bの円周上の点をQとし,P,Qは,長さ1のジョイントPQで結合されています.つまり,この構造は, 

$${AP=PQ=QB=1AP=PQ=QB=1}$$ 
の3セグメントからなります.点A,Bは固定点ですが,A,P,Q,Bのジョイントはピボットです.PQの中点Rの軌跡を調べなさい.

 

 

 

 

 

 

 

 

問題1の構造と思考実験

ヒント
この問題を方程式やベクトルで解き,軌跡を式で表すのは,なかなか困難ですが,見ただけで直感でわかる軌跡の性質がいくつかあります:
この解の軌跡は,上下対称、左右対称であるはずです.
A円上の点Pは限られた範囲(円弧)上しか移動できません.B円上の点Qに関しても同様です.ただし,ABの距離とセグメントPQの長さによりだいぶ様相が変わります.

■実験してみましょう.
図2に実験結果を掲載します.軌跡の曲線はリボンのような形です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図22円が重ならない場合の実験結果

■円A,Bが一部重なる場合の例

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図32つの円が部分的に重なる場合の軌跡の例


これらのリボンのような軌跡は,単純な式では表現できません.どなたか挑戦してみては如何でしょうか.

■下図は2つの円の距離をパラメータにして軌跡の曲線の変化を示した一例です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ 拡大縮小に使われる仕組みーパンタグラフ

 


点Oは固定点.Oを含む4つのピボットがあり,辺は平行4辺形を保ったまま自由に変形できる.このとき常に,O,P,Qは一直線上にある.
Pの描く図形とQの描く図形は相似であり,相似比は,OP:OQである.

No.458 群論ことはじめ

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数学月間SGK通信 [2023.01.24] No.458
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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群の概念の発見で,まず第一に名前が出てくるのはガロアです。
しかしながら、ガロアが群概念を突然発見したわけではありません。
5次方程式の解の代数的な公式を作ろうと探し求めた何百年もの課題があり
どうやらそのような解を代数的に記述するのは不可能らしいと思いはじめ,
不可能の証明に取り組み始めた時代になりました。

5次方程式が解けないという表現は,誤解されがちですが,正確に言うと;
一般の5次方程式には、5つの複素数解が存在し,それらの数値はいくらでも正確に求められるのですが,
方程式の係数の間の四則演算とベキ乗根を求める演算を用いて,解を記述することができない
(代数解がない,あるいは,解の公式がない)という意味です。

ガロアが突然群の概念を発見したわけではありません。
ガロアの前の研究に,ラグランジュ,アーベルの伏線がありました。そして,ガロアの発見に至ります。

さらに,ガロアの遺稿の価値を見出し数学的に検証したリウヴィルの研究1846年は重要です。
リウヴィルは,統計物理学のリウヴィルの定理やエルゴード理論の人だと思っていましたが
ガロアの概念の発見では大変な貢献者です。
(注)統計物理学のリウヴィルの定理とは,相空間(数学の位相空間と混乱するので,
ガンマ空間と呼んだ方が良いかもしれない.粒子数Nでは6N次元の空間)を,
運動する粒子の分布関数の体積は保存されるということ。

ガロア以降の群概念の発展は,我々には重要です。
特に,これらはジョルダン,ヘルダーの貢献によります.
結晶空間群が含む並進群が正規部分群であることを利用して,商群を作り,
結晶点群に準同型に対応させる仕組みの基礎は,ジョルダン1869,ヘルダー1889が作りました。
こうして,様々な科学の分野に群論が適用されるようになりました。
これらの詳細について,イアン・スチュアートの著書を引用して
https://note.com/sgk2005/n/n9c9c98cb2344
に書きましたので,ぜひご覧ください。

No.459 無限集合の枢機卿(Cantorには聖歌隊先唱者の意味がある):ゲオルグ・カントー...

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数学月間SGK通信 [2023.01.31] No.459
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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無限大とは非常に大きな数ではありません.無限大は特定の数よりも大きく,つまり,自分自身よりも大きいのです.
それゆえに,アリストテレスは,これを無限に続くプロセスと見なしました.
しかし,カントールは,無限にも大きさ(濃度)があることを証明しました.
可算無限(有理数の集合が例)と非可算無限(実数の集合が例)があります.

今回のメルマガでは,
イアン・スチュアート著; 偉大な数学者の生涯と発見
(Ian Stewart. Significant Figures: The Lives and Work of Great Mathematicians)
(ロシア語訳)出版社「アルピナ ノンフィクション」、2019年
が,カントールの章だけ以下のサイトに公開されています.
https://old.elementy.ru/bookclub/chapters/434568/Znachimye_figury_Glava_iz_knigi

これを抜粋し訳したものを,以下のサイトに置きます.
長くなりますので,以下のサイトに移動してお読みください.
https://note.com/sgk2005/n/n49deb1f56903

No.460 フォノニクスとは何か

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数学月間SGK通信 [2023.02.07] No.460
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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◆お知らせ
数学月間の会のウエブサイトhttps://sgk2005.saloon.jpは12月にリニューアルし,お陰様で多くの方々がアクセスされています.
さらに,2月初め(先週)に,新しいURLのサイトhttps://sagk2005.orgの開設も行いました.
現在は,これら両方のサイトを見ることができる状態です.今後は,旧サイトの更新は行わず,新サイトのみ更新します.
どうぞ,新サイトにご訪問ください.現在、旧サイトへのアクセスは日に千件程度,新サイトへのアクセスはゼロです.
(新サイトのURLをお知らせするのは、今回が初めてですので当然ですね)どうぞ新サイトをご利用ください.
引っ越し先の新サイトURLが十分に周知されれば,旧サイトは閉鎖する予定です.

◆今回のメルマガのテーマは,フォノニクスという科学技術についてです.
音波は,空気や物質中の振動の伝播のことで,熱振動も物質原子の振動ですから音波の仲間に入ります.
量子化された音波をフォノンと言いますが,フォノニクスで,音波を一方向だけに伝える物質や,
熱を一方向だけに伝える物質を作れます.
弾性率の異なる素材の交互積層の超格子(周期構造はバンドギャップを生む)や,ナノチューブが材料に利用できそうです.

超音波を集束させたり,一方向だけに流す超音波ダイオード,超音波整流器.
コヒーレントな熱波を作ったり,熱流ダイオードなどが実現可能なようです.
これらは医学や精密機械分野に有用ですが,
光学的な不可視マント(ステルス航空機)のような超音波の不可視マント(ステルス潜水艦)
のような軍事利用と結びつきそうな技術でもあります。

フォノニクスは音波を操る技術分野で,これはフォトン(光子)を操る技術分野をフォトニクスという
ことに倣って作られた述語です.
物質の振動(音,熱)の量子がフォノンで,振動周波数の高い熱振動までもフォノニクスに含まれます.
フォノニクス(フォノン)の分類は,次のように振動の周波数で行われ,
(1)超低周波音域;15Hz未満,
(2)可聴音域;15Hz~20kHz,
(3)超音波音域;20kHz~100MHz,
(4)極超音波音域;100MHz~100GHz,
(5)テラヘルツ熱振動音域;100GHz~100THz
の領域にわたります.これらの分類がなされる所以は,フォノンの周波数は,励起される物質のサイズに関係があり,
それぞれのフォノンの特性が異なるからであります.

この先の詳細は,https://note.com/sgk2005/n/n6c1624e3ffbf
に書きましたので,noteのサイトに移動してお読みください.

No.461 複雑適応系

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数学月間SGK通信 [2023.02.14] No.461
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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地震、大規模停電、原発事故などの複雑系は、些細な原因により生じた故障が次々と雪崩を起こし、系全体に広がり大規模な災害を生みます。
複雑系には、予期できない特性があり、そのような特性の出現を予測することは非常に困難です。

複雑系の研究は、現代科学の最も重要な分野の 1 つです。複雑系は、多くの独立した要素からなり、それぞれが他の要素と相互作用する系として定義されます。たとえば、砂の山は複雑系で、1粒の砂を押すと、山を構成する他のすべての砂粒に圧力が伝わり、これらの砂粒が応答してわずかに変位します。証券取引所は、買い手と売り手の行動が変化するにつれて、買い手と売り手が行動を変える複雑系です。他の要素の動作の結果として要素の動作が変化する系は、複雑適応系または自己調整系と呼ばれ、証券取引所はこの例です。

高速電子計算機が登場する前は、複雑系を研究することは不可能でした。これらの系は、通常の数学で扱うには大きすぎ、複雑すぎます。複雑適応系のコンピューターでの研究の最も重要な結果は、予期しない特性という概念でした。砂山を例に取ると、砂粒を積み上げていくと、遅かれ早かれ新しいタイプの行動が突然現れます。山全体の100 万分の 1 の砂粒を追加すると雪崩が発生するとします。この動作は、雪崩前に起こっていた圧力伝達現象とは根本的に異なります。つまり、この100万個目の砂粒1つで、「より多く」という概念ではなく、「別」の特性出現に変わります。

予期せぬ特性の重要な特徴は、それが徐々に現れるのではないことです。言い換えれば、1 粒の砂が雪崩の 100 万分の 1 の部分を形成することはなく、そ1粒を同様の部分に追加して、100 万粒の砂の山に雪崩を発生させることができます。100 万分の 1 の砂粒に到達するまでは雪崩はまったく見られず、1粒追加後突然雪崩が発生します。

意識や内省などの心の特性は、多くのニューロンの系の予期しない特性であり、多くの砂粒で発生する雪崩のようなものであるというのは興味深いことです。もしこれが本当なら、神経系の進化は「より多く」から「別」の特性になるポイントに近づいています。

今日の科学が直面している大きな課題の 1 つは、個々の要素の特性に基づいて、系の予期できない特性の出現を予測できるかということです。現時点ではそれは不可能です。結局、予測は不可能なことかもしれませんが、複雑系の研究が進み、その特性発現の解明ができる可能性もあります。

引用:百科事典「科学の性質.宇宙の200の法則」,ジェームズ・トレフィル

No.464 「数学の弁明Апология математики」ウラジミール・ウスペンスキー...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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数学月間SGK通信 [2023.03.07] No.464
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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「数学の弁明」.原題「Апология математики」(初版2007),2017年に第2版が出版されています.著者はウラジミール・ウスペンスキー(Владимир A. Успенский).著名な数学者A.N.コルモゴロフの弟子で数学者,言語学者,1966 年から 2018 年まで,モスクワ大学の数理論理およびアルゴリズム理論の学部長.
この出版物は読者から高く評価され,2007 年の「新世界」賞を受賞しました.数学と人文科学の間の障壁を克服し,非数学者が数学の基本的な概念と問題のいくつかに親しむことができます.

■先行する似た題名の本に,次のものがあります.そちらの本は,英国の数学者G.H.ハーディが1940年に出版したもので,全く異なる内容です.
そちらの本の内容もnoteの別の記事として取り上げていますので,そちらをご覧いただければ幸いです.https://note.com/sgk2005/n/n9fbb5b7fd9de


■ウラジミール・ウスペンスキーの本Апология математикиの内容に触れましょう:

第 1 章 ワトソン対ホームズ
第 2 章 ピタゴラスの定理とフェルマーの定理
第 3 章 未解決の問題と解決不可能な問題
第 4 章 長さと数
第 5 章 円と正方形
第 6 章 質量の問題とアルゴリズム
第 7 章 ガリレオのパラドックス、コルタザール効果、および量の概念
第 8 章 神話における平行線現実と数学
第9章 100万ドル問題
第10章 計量幾何学から位置の 幾何学へ
第11章 位置の幾何学からトポロジーへ
第12章 私たちの宇宙はどのようなものになるでしょうか?
第1章の付録 読者の意見
第3章の付録ゴールドバッハ問題の歴史について
「集合」「順序組」「対応」「関数」「関係」 の概念について

以下のサイトで公開されている内容から抜粋します:

Читать онлайн «Апология математики (сборник статей)», В. А. Успенский – Литрес
Читать онлайн книгу «Апология математики (сборник статей)» ав
www.litres.ru
現代社会では,どんな専門分野にも数学が係わっています.「数理物理学」を筆頭に,「数理生物学」,「数理言語学」,「数理経済学」,「数理心理学」等々.今や数学は流行の職業になっています.

これは,数学の応用の計り知れない可能性のためです.数学は,人文科学と見なされてきた分野にも浸透しています.

数学は,現実に適合した一般的でかなり明確なモデルを提供します.これは,他の科学によって提供される一般的でなく漠然としたモデルとは対照的です.

自然科学と人文科学の区分がいつまでも続くとは限りません.数学が自然科学に帰属することの反省が起こっています.数学は物理学の一部であると言われますが,物理の世界の特性記述に数学が成功したからで,人文科学の他の分野でも同じ成功を収めるに違いありません.

数学の人文科学への係わりについて

列車の乗客は窓越しに無数の白い羊の群れを見ています.そして,彼らは
電車に横向きに黒い羊がいるのに気づく.「ぁぁ,ここにも黒い羊が!」と 一人が叫ぶ.「片面の黒い羊が少なくとも 1 頭はいる」と,別の数学者が彼を訂正します.
この逸話は,過度の正確さが有害であり,適切な内容認識を妨げる可能性があることの例です.ここには,人文科学と数学の間の双方にとって有益な対話の基礎が​​あります.この対話では,数学者が(人文科学)非数学者に教えたりしませんが,構文構造の構築の正確さがいかに重要であるかの共有がなされます.数学者は,論理的枠組みを理解する能力を非数学者に伝えようとしています. 一方,非数学者は,不正確さの重要性の考えを数学者と共有します.非数学者は数学に対して,その論理的枠組みを包み込む肉付けと文脈の両方が,言及された枠組みと同じくらい重要であると示しています. 非数学者は,周囲の世界は不定形で曖昧であるため,数学的に正確な文言よりも,不正確で曖昧な文言の方が適切に反映されると思っています.
数学者と(人文科学)非数学者は異なる思考スタイルを持っており,異なるスタイルに触れることで両者が豊かになります.たとえば,「公理に明示的に記録された情報のみ推論に使用できる」という数学で広く普及している公理的方法の研究は,厳密な思考の習慣を植え付けます.そして,「無限集合の性質」を知ることは想像力を育みます.歴史家は公理的方法や無限集合を必要としないと思うかもしれません.しかし,思考と想像力の厳しさは彼の思考の妨げにはなりしません.
一方,数学の方にも学ぶべきことがたくさんあります.
人文科学者は数学者より他人の意見に寛容です.数学的な概念は明確に定義されていますが,人文科学的な概念は曖昧です. それゆえ,私たちの曖昧な世界を説明するのに適しています.
私たちは,情報を冷静に伝達する機能に関心があります.それは文言に具現化されます.国内プログラミングの創始者の一人であるアンドレイ・ペトロヴィッチ・エルショフは,これを「ビジネス散文Деловая проза」と呼びました. ビジネス散文には,特に,自然科学のテキスト (主に数学),法律のテキスト,事務のテキストおよび指示(マニュアル)が含まれます.ビジネス散文は私たちの生活の中でますます重要な位置を占めるため,母国語のレッスンや,感情を伴わない純粋な情報に特化した特別クラスで教えられる可能性があります.
ビジネス散文を教えることは,ビジネステキストの正しい編集と正しい認識のスキル,つまり,言葉で考えを正しく表現し,言葉で表現された考えを正しく解釈する能力を養成します.

(私のコメント)
数学は物理学の一部であるという思いは,私も同様に実感しています.
しかし,人文科学にも,数学の浸透が進んでいるのは事実です.
むろん,以前から数学の人文科学との係わりはありました.A.A.Баpсов(モスクワ大,数学)は,ロシア語文法,正書法の提案を行いました(1755).
数学の論理は,自然科学も人文科学も係わります.数学を人文科学に帰属させても不思議ではありません.
ブラックボックスとしてAIが用いられる現代では,現象の数学モデルを作ったり,得られた解析結果を解釈するのは,正しい読解力が必要であると思います.解釈次第でとんでもない結果も恣意的に導くことが可能ですから.

 

No.463 偽科学的YouTube動画

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数学月間SGK通信 [2023.02.28] No.463
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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YouTube動画で色々な発明開発の動画があり,製作過程の面白さに惹かれてつい見てしまいますが,そのほとんどが時間の無駄です。
永久機関もあれば,まわりくどく原理がなんだかなぁとがっかりするものです。このようなものには次の2つのタイプがあります:
①投稿者自身が,意図的にトリックがある(詐欺,マジックの部類)ことを自覚している。
②投稿者自身が発明と信じていて,改良を進めればものになると思ってい
る。

①は詐欺の部類です。これはアイディアが面白ければ,受け狙いと割り切て,マジックのように楽しめばよいのです。しかし,かなりの人が騙されるようです(見る人の知識不足が原因です)。
ここで,私が気になるのは②の場合です。
視聴者のコメントを見ると大部分(9割)は肯定的で賞賛さえしています。その一方,正しい批判的コメントや親切なアドバイスも少数(1割程度)だがあるのは救いです(他人が一所懸命にやっていることへの否定や批判は言い難いし,そのようなコメントへの返信を見ると,発明者当人は聞く耳を持たないようです)。

当人は真摯に取り組んでいるとしても,このような動画は,多くの人を発明者と同じ泥沼に引き込むし,無駄な投資をさせたりするでしょう。
このようなことが起こる原因は,発明者の物理のその分野の知識不足にあります。発明品の不思議に見える動作原理は,生半可な知識の混沌とした状態の利用です。よく利用される現象の例は,ファラディやマックスウェルをはじめとする多くの科学者により既に解明された電磁誘導;コイルの周りで磁場が変化すればコイルに電流が生じ,電流が変化すれば磁場が変化するという現象です。この現象は,広大な応用分野をもち,モーター,電子レンジ,リレー,トランス,回路まで含めればほとんどの電子デバイスを作り出しました。ワイヤレス給電などもこの現象の利用です。抵抗に電流が流れれば加熱されるのは、既知の別の現象です。
「配管のそばで磁石をモーターで回転させて,配管に誘導電流を発生させ加熱する」という暖房装置のYouTube 動画があります。見世物として面白いと思う多数の視聴者がいます。これが石油の節約だと信じている人もいます。私はモーターを回転する電力で抵抗過熱をした方がよほど良いと思います。
開発を続けエネルギー変換効率の改良を進めれば,シンプルな現存装置に帰着してしまうことが見えています。

原子炉をボイラーの熱源代わりにする原子力発電もこの部類に入ります。100万kWの原発を1日稼働すると約3.7kgのウラン235が核分裂し,引き取り手のないおびただしい放射性核種が生じるというのに。

No.462 数学月間の考え方1

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数学月間SGK通信 [2023.02.21] No.462
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■数学月間とは                 (たに・かつひこ/NPO数学月間の会)
米国のMAM(数学月間)は,上院の共同決議「1986年4月14~20日を数学週間とする」に基づくレーガン大統領宣言で1986年にスタートした.レーガン宣言は格調高く,「およそ5千年前に始まった数学的叡智は進歩を遂げ,今日の社会を支えている」と述べ,すべてのアメリカ人に対し,数学と数学的教育の重要性を実証する活動への参加を要請している.米国が国家的行事のMAMを決断した背景には,国民の数学力の低下で,産業力も低下するとの焦りがあったといわれる(小林昭七「顔をなくした数学者」).1950年代の日本は,Dr. Demingの品質管理手法を,TQCやQCサークルに発展させ,生産性向上を達成していた.1980年NBC放送はIf Japan Can, Why Can’t We?と呼びかけ,Dr. Demingのセミナーが米国で展開されたが,さらにこれを数学全般の啓蒙MAMへと発展させたのは米国の叡智であった(竹内淳実).バークレーの地域数学サークルなどの学校外活動も効果を上げている(小林昭七).米国MAMは,数学系学協会が参加するJPBM(Joint Policy Board for Maths)が,毎年,社会を反映した数学テーマを選定し,4月に種々の数学イベントが展開される.国民からの事後評価も受ける.時局の数学を,種々のレベルで学習できるウエブ・サイトが充実し,そこにエッセイや論文が集積され,数学を基礎から最先端まで,学生が独習できる優れたガイドになる.日本の数学月間(7/22-8/22)は,片瀬豊(表紙写真)の日本数学協会への提案(2005年)でスタートした.片瀬豊は,日本版JPBMが国家的行事として数学月間を展開すべきだと考えていた.「数学月間」活動は,数学同好者の内部にとどまらず,数学が係わるあらゆる分野を横断し,一般市民に働きかけ,数学(論理)が社会を支えている事例を踏まえ,数学への共感を獲得することを目的としている.
■孤高な数学では共感を得られない
理系でも数学と結びつきの薄い分野に生徒が流れる傾向がある.数学まつりを実施しても,教材の基礎にある数学へ言及することは少ない.「数学によってのみ外界(森羅万象の法則の起源)が認識できる(デカルト,ホッブス)」のだが,数学はこのように避けられ嫌われている.数学への共感が得られない原因を考えるに,数学の孤高姿勢にある.完成した数学体系を学べというのではなく,相手の現場に立ち入り数学論理を見出し適用して見せることで共感が得られる.教育数学においても各学科分野にふさわしい数学を提供するのが良い.マーフィーの法則で,「言葉が通じなければそれは数学」と揶揄的に定義されるようではいけない.完成された数学体系は美しいが,それぞれに,その数学概念が生まれた源泉があり,その過程を見せること,および,その数学の適用現場を見せることが共感に繋がる.数学者でない一般社会人の共感を得るには,地に足がついているという意味から,数学は物理学の一部であると考えた方が良い.(クーラン&ヒルベルト「数理物理学の方法」,イアン・スチュアート「無限をつかむ」).

No.455 愛と数学-隠された現実の心 Edward Frenkel (著)-続き

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数学月間SGK通信 [2023.01.03] No.455
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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2023年になりました。新年おめでとうございます。
今回のメルマガは、前回の続きで、数学者Edward Frenkel著の「愛と数学」-隠された現実の心 の紹介です。
歳を跨ぐ形になりましたが、この本の主張は、「数学者ではない一般の人に数学への共感を広げようという数学月間の趣旨」と一致します。
数学月間の考え方は、この本のどこに共感するのかをまとめてみましょう:
数学は、社会のあらゆる分野を支えて(いろいろな分野で登場します)いますが、一般の人は数学を嫌って避けようとします。
それは、数学が孤高で孤立しているからです。マーフィーの法則で、「言葉が通じなければそれは数学」と揶揄されたりします。
数学者は、出来上がった論理体系の数学を教えるだけでなく、相手のいろいろな分野に入り込みその分野の数学を組み立てて
見せる必要があります。数学科への数学があるように、工学、薬学、医学、経済、などにはそれぞれの数学があります。
ユークリッドやニュートン、ライプニッツの数学に留まらず、それ以降発展した数学分野をどんどん取り入れる必要があります。
定義、定理、証明の形式を軽視するものではありませんが、その繰り返しの簡潔な数学ではなく、その数学の適用分野や
その数学の発生現場も十分に言及してほしいと思います。
数学者には論理としての抽象的な数学が醍醐味でしょうが、一般の共感を得て普及するには、
数学は物理学の一部であると見た方が良いのです。この本の著者もそのように述べていたと思います。
前回の趣旨を数学月間流に解釈すると以上のようです。


次に、今回の趣旨を述べるのですが、素粒子の例がほとんどで冗長です。数学月間の会ホームページに移ってお読みください。
https://sgk2005.saloon.jp/bbses/bbs_articles/edit/232/d86e61800257d893cd1018ad509a8e1f?frame_id=328
https://sgk2005.saloon.jp/ は、年末にリホームしたいへん読み易くなりましたので、ぜひご訪問ください。

今回の部分の趣旨を一言で述べると、Edwardがなぜ数学を好きになったかが述べられています。
それは、優れた指導者に巡り合ったことから始まり、幸運な特殊なケースです。
素粒子物理に興味を持っていた子供が、良き数学指導者に会い、SU(3)群の学習へと導かれるわけです。
これは、Edwardの場合の例で、人によって必要とするものはそれぞれ異なり、数学のどの分野の話でもあり得ますので
これ以上の言及は避けます。
(注)SU(3)群とは、3次のユニタリー行列の作る群 

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第1章
どうやって数学者になるの?方法や手段はいろいろあると思います。これが私(Edward Frenkel)にどのように起こったかをお話ししましょう。

驚かれるかもしれませんが、学校では数学が嫌いでした。いいえ、「嫌われている」という言葉は強すぎるかもしれません。数学があまり好きではなかった。数学はつまらないと思いました。すべてのタスクを熱心に完了しましたが、なぜこれを行っているのかわかりませんでした。クラスで話し合った資料は、私には無意味で役に立たないように思えました。私は物理学、特に量子物理学に魅了されました。私は、この主題に関するすべてのノンフィクションの本をむさぼり食いました。私はロシアで育ちましたが、そのような文献を入手することは問題ではありませんでした。

量子の世界に魅了されました!古代から、科学者や哲学者は、宇宙の基本的な性質を説明することを夢見てきました。すべての物質は原子と呼ばれる小さな粒子で構成されている。原子の存在は 20 世紀初頭に証明され、ほぼ同時期に、科学者は各原子がその構成要素に分解できることを発見しました。原子は原子核であり、その周りを電子が回っていることがわかりました。原子核自体は、図のように陽子と中性子からできています。
-----------略-------------------

ゲルマンによれば、クォークには「アップ」と「ダウン」の 2 種類があります。中性子と陽子は、アップ クォークとダウン クォークのさまざまな組み合わせによって形成されます。中性子は 2 つのダウン クォークと 1 つのアップ クォークで構成され (図 1.2)、陽子は 2 つのアップ クォークと 1 つのダウン クォークで構成されます (図 1.3)。

 

図1.3.陽子のクォーク構造

 

 

 

 

これはすべて非常に明確でした。しかし、陽子と中性子が不可分の粒子ではなく、さらに小さな粒子で構成されていることを物理学者がどのように推測できたのかは、私には謎のままでした。

1950 年代後半、科学者たちはハドロンと呼ばれる多数の素粒子を発見しました。中性子と陽子はハドロンのクラスに属し、物質の構成要素であり、日常生活で大きな役割を果たしています。残りのハドロンについては、その目的は明らかではありませんでした。科学者たちは、それらが何のためにあるのか(または、研究者の一人が言ったように、「誰がそれらを注文したのか」)をまったく理解していませんでした。宇宙には非常に多くの種類のハドロンが存在するため、影響力のある物理学者であるヴォルフガング パウリは、物理学が植物学に変わりつつあると冗談を言ったことさえあります。科学者たちは、ハドロンの分類に秩序をもたらし、ハドロンの振る舞いを支配し、この驚異的な多様性を説明できる根底にある原理を突き止めようと必死に努力しました。

ゲルマンと独立したユヴァル・ネーマンは、素粒子の革新的な分類を提案しました。どちらも、ハドロンが自然に小さなファミリーに分類され、それぞれが 8 ~ 10 個の粒子であることを示しました。これらのファミリは、オクテットおよびデキュプレットと呼ばれます。同じファミリーに属する粒子は、似たような性質を持っています。

私が当時好きだった人気の本では、オクテットは図を使って描かれていました (図 1.4)。

 

 

 

図1.4.オクテッドのダイアグラム

 

 

 

図では、陽子はp + (プラス記号は正の電荷を示す)、中性子はn 0 (ゼロはこの粒子が電荷を持たないことを意味する) で表され、ギリシャ文字の奇妙な名前を持つ残りの 6 つの粒子があります。

しかし、なぜ 7 と 11 ではなく、8 と 10 の粒子なのでしょうか? 私が自由に使える本では、この現象の首尾一貫した説明を見つけることができませんでした。それは、ゲルマンによって開発された神秘的な理論に言及しています - ある種の「八正道」(仏教の聖なる八正道に似ています)。しかし、この理論が何であるかはどこにも述べられていませんでした。

この誤解は私を悲しくさせました。物語の重要な部分は、私の目から隠されたままでした。この謎を解明したかったのですが、方法がわかりませんでした。

幸いなことに、私たちの家族の古くからの友人から助けがありました。私は約 15 万人が住むコロムナという小さな工業都市で育ちました。コロムナはモスクワから約 115 キロ、電車で 2 時間強の場所にあります。私の両親は大規模な重工作機械工場でエンジニアとして働いていました。

コロムナは、2 つの川の合流地点に建設された古代都市です。それは1177年に設立されました(モスクワの設立からわずか30年後)。コロムナの建築遺産にはいくつかの美しい古い教会があり、コロムナ クレムリンの壁は今でも過去の歴史を思い起こさせます。しかし、コロムナは教育的または知的センターとは言えません。当時、市内には学校の教師を養成する小さな研究所が 1 つしかありませんでした。この教育機関の教授の 1 人である数学者の エフゲニー・エフゲニエビッチ・ペトロフは、私の両親の親友でした。ある日、母は通りで彼に会いました。彼らは長い間お互いに会っていなかったので、当然のことながら、彼らには多くの話題がありました。ママはいつも友達に私のことを話すのが好きだったので、彼らも私を無視して会話をすることはありませんでした。科学に興味があると聞いて、

- 私は彼に会わなければなりません。それを数学に置き換えてみます。
母は反対しました。彼は量子物理学を勉強したいと思っています。
「心配しないで」とエフゲニー・エフゲニエビッチは答えた。

彼らは会うことに同意した。私はあまり楽観的ではありませんでしたが、それでもエフゲニー・エフゲニエビッチと一緒に仕事をしました。

私はもうすぐ 15 歳になり、最後から 2 番目の 9 年生を終えようとしていました (1 年生をスキップしたため、クラスメートより 1 歳年下でした)。40代のエフゲニー・エフゲニエビッチは、フレンドリーで気取らない人物の印象を与えました。眼鏡をかけて無精ひげを生やした彼は、数学者という私の考えを具現化したものでしたが、彼の大きく開いた目の鑑定的な表情には、すぐに注目を集める何かがありました。彼らは好奇心を放ちました-彼は彼の周りで起こったことすべてに興味を持っていました。

エフゲニー・エフゲニエビッチは私を数学信仰に改宗させる狡猾な計画を本当に持っていました。私が彼のオフィスに入るとすぐに、彼は次の質問で私を驚かせました。

— 量子物理学が好きだと聞きました。ゲルマンの八正道とクォークモデルについて聞いたことがありますか?
はい、私はいくつかのポピュラー本で読んだことがあります.
しかし、このモデルが何に基づいているか知っていますか?
科学者はどのようにしてこれらのアイデアを思いつきましたか?
SU (3)群って何か知っていますか?
 SU (3) 群に精通していない場合、どのようにクォークモデルを理解できますか?
*****************訳者注)*************
SU(3)群とは3次のユニタリー行列の作る群です。2次の行列が,パウリの4つの行列の線形結合で表現できるように,3次のユニタリー行列は8つのゲルマン行列の線形結合で表現できます。ここで登場する8という数字はSU(3)を生成する 8 つのゲルマン行列とかかわっています。
*****************************************

彼は本棚から数冊の本を取り出し、それらを開き、数式で満たされたページを見せてくれました。上記のようなおなじみのオクテット図に気付きましたが、それらは単なる美しい写真ではありませんでした。図は、一貫性のある詳細なプレゼンテーションの一部でした。

もちろん、式自体は何も理解していませんでしたが、これらのページで、私を真剣に悩ませていた質問への答えを見つけることができることがすぐにわかりました。気づきの瞬間でした。公式と言葉に魅了され、言葉では言い表せない、これまでなじみのない感覚に襲われました。エネルギー、インスピレーションが沸き起こるのを感じました。これは、音楽を聴いたり、なじみのない写真を見たりして、印象に残っているときに感じる方法です。「うわー!」という一つの考えが頭の中で渦巻いていた。

- 数学は学校で教えてくれるものだと思っていたでしょう - エフゲニー・エフゲニエビッチは続けました。彼は頭を振った。「いいえ、ここです」と彼は本の「真の数学」の公式を指さした。量子物理学を真に理解したい場合は、ここから始めるべきです。ゲルマンは美しい数学的理論でクォークの存在を予言しました。実際、それは数学的発見でした。
――でも、なかなか難しいですよね…。
式は本当に威圧的に見えました。
- 心配しないでください。最初に学ぶべきことは「対称群」です。ここからすべてが始まります。数学や理論物理学の大部分は、この概念に基づいています。私はあなたにいくつかの教科書をあげます。それらを読み始め、理解できない文に印を付けます。週に一度、あなたと会って、読んだ内容について話し合うことができます。

彼は私に対称群に関する本と数冊の本をくれました。彼らは、いわゆるp -進数 (私たちが子供の頃からよく知っている通常の数とはまったく異なる数体系) とトポロジー (基本的な幾何学的形状の科学) について話しました。エフゲニー・エフゲニエビッチは非の打ちどころのない趣味を持っていることが判明しました。彼はトピックの完璧な組み合わせを見つけたので、私はこの神秘的な怪物 -数学 -をまったく新しい視点から見て、恋に落ちました。

学校では、2次方程式、初歩の微分、基本的なユークリッド幾何学、三角法などを学びました。私には、すべての数学がどういうわけかこれを中心に展開しているように思えました-問題は時間の経過とともにより複雑になる可能性がありますが、それらは常に、私がすでに慣れ親しんでいるすべての同じ一般概念の枠組み内にとどまります。しかし、エフゲニー・エフゲニエビッチの本は、私にとってまったく異なる世界を開きました。

私はこの瞬間に転向しました。

回転するルーローの3角形(幾何学概念が、日常生活にどのように応用されているか)

 

 

 

 

 

 

 

 

https://etudes.ru/etudes/reuleaux-triangle/

円以外に,定幅曲線はあるでしょうか?
上記のリンクの動画をみるとわかります。

ルーロー・フランツ(1829—1905)は、ドイツの科学者で、初めて(1875年)、機構の構造と運動学の主な問題を明確に定式化しました。工学的物体の美学の問題をとりあげました。
正3角形を考えましょう。各頂点で、辺の長さに等しい半径の円弧を描きます。この曲線はルーロー3角形と呼ばれます。これは定幅曲線であることがわかります。円の場合と同様に、2 つの接線を描画し、それらの間の距離を固定して回転を開始します。ルーローの3角形は常に両方の線に接しています。実際に、1 つの接点は常にルーローの三角形の「角」の 1 つにあり、もう 1 つは円の反対側の弧にあります。これは、この曲線図形の幅が常に円の半径、つまり元の正3角形の辺の長さに等しいことを意味します。

 

 

 

 

 

 

 

ルーローの3角形で作ったコンベア

 

 

 

 

 

 

 

奇数の正多角形で定幅曲線図形を作る

 

 

 

 

 

 

 

非対称の定幅曲線図形

 

 

 

 

 

 

 

マツダのロータリーエンジン

 

 

 

 

 

 

 

映写機の機構への応用


定幅曲線は無限に作れます
頂点の数が奇数の任意の正 n 角形は、ルーロー3角形が構築されたのと同様な方法で,定幅曲線を構築できます。イギリスの 20 ペンス硬貨は、7 角形の上に定幅曲線が描かれています。

非対称曲線も作れます。交差する線の任意のセットを考えてみましょう。セクターの1つを考えてみましょう。この扇形を定義する線の交点を中心として、任意の半径の円の弧を描きましょう。隣接するセクターを取り、それを定義する線の交点を中心にして、円を描きましょう。半径は、曲線の既に描かれた部分と連続して続くようにします。次々と続けていくと、この構造は、曲線が閉じて定幅になることがわかります。要証明

定幅曲線はすべて、周囲が同じです。同じ定幅の円とルーローの3角形を比べると、円は最大面積、ルーロー3角形は最小面積。周囲の長さは円でもルーロー3角形でも同じです。要証明

■ルーローの3角形は、数学界でよく研究されます。この幾何学図形は、力学で興味深い用途があることがわかりました。
マツダ RX-7です。ほとんどの量産車とは異なり、(RX-8 モデルと同様に)ヴァンケルのロータリーエンジンを使っています。内部の配置をみると、ローターに使われているのはルーローの3角形。これと壁の間に3つの部屋が形成され、それぞれが燃焼室になります。ここで青いガソリン混合物が飛散し、ローターの動きにより圧縮され、点火され、ローターを回転させます。ロータリーエンジンには、ピストンの場合にあるいくつかの欠点がありません。回転が直接軸に伝達され、クランクシャフトを使用する必要はありません。

■これが映写機に使われているクラムシェル機構です。モーター軸は均一に回転します。スクリーン上に鮮明な画像を表示するには、フィルムをレンズに 1 フレーム通過させ、止まり、再び急激に引き抜く、という作業を 1 秒間に 18 回行う必要があります。 . クラムシェル 機構が解決するのは、この動きです。これは、正方形に内接するルーロー3角形と、正方形が側面に傾かないようにする二重平行4辺形を使います。反対側の長さが等しいので、すべての動きの間、中央のリンクは底面と平行のままで、正方形の辺は常に中央のリンクと平行です。グラブの爪の動きは正方形です。

文献
Болтянский В. Г., Яглом И. М. Выпуклые фигуры. — М.—Л.: ГТТИ, 1951.
Радемахер Г., Теплиц О. Числа и фигуры: Опыты математического мышления. — М.: ОНТИ, 1936. — (Библиотека математического кружка; Вып. 10). — [Переиздания: 1938, 1962, 1966, 2020].

Фигуры постоянной ширины // Математическая составляющая / Ред.-сост. Н. Н. Андреев, С. П. Коновалов, Н. М. Панюнин. — Второе издание, расширенное и дополненное. — М. : Математические этюды, 2019. — С. 84—85, 319—320.

「定幅曲線」の他の研究

https://etudes.ru/etudes/drilling-square-holes/?ref=calso

https://etudes.ru/etudes/wheel-inventing/?ref=calso

 

No.465 デュードニーのタイル張りパズル

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数学月間SGK通信 [2023.03.14] No.465
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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先週は、京都大学の教育数学研究集会3/6-9に参加しました.そこで,ChatGPTとDuolingoの話がでました.
皆様はご存じだったかもしれませんが、私はこれらを知りませんでした.
ウエブで探して使ってみるとどちらも非常に面白い.
ChatGPTとは対話型のAI,Duolingoはゲーム感覚で英語の学習ができます.

さて,今回のメルマガで取り上げるのは,デュードニーのタイル張りパズルです.これは;

正3角形を多角形に分割してそれらの全部品を組み合わせて正方形が作れます.このようなことのできる最小の分割数はいくつですか?
この問題は、1905 年 2 月 1 日と 8 日の問題で Henry Dudeney によって Daily Mail の読者に提示されました。
寄せられた何百もの回答の中で、正解は 1 つだけでした。4 つの部分で十分です。

https://etudes.ru/models/dudeney-dissection/
上記のリンクにあるアニメーションを見ると正解がわかります.しかし,この解の仕組みを見つけるのはなかなか難しいので,解説用の図を以下に2つ作りました.重ねた図形の2回回転対称性に注目すれば,非常に簡単に解けます.

Fig.1 正方形と正3角形は同一の面積です.2つ並んだ正方形と2つ並べた正3角形を,それぞれの中点の上で重ね合わせます.この点は2回回転対称軸があります.これだけでは,重ね方にまだ任意性がありますから,正3角形を連ねて作った帯の上側の辺,下側の辺が,それぞれ,2つ並べた正方形の右側の正方形の右側の縦の辺の中点,および,左側の正方形の左側の縦の辺の中点を通過するようにします.これらの条件は同時に満たされることは,2回回転対称性から明らかです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fig.1



 

 

 

 

 

 

Fig.2

 

 

 


Fig.2を見ると,正方形の中は、赤,黄,緑,青のパーツで構成されることがわかります.一方,正3角形は,赤,黄,グレーのパーツで構成され,正3角形と正方形は面積が等しいから,部品の面積について,グレー=緑+青 の等式が成立します.従って,正3角形も赤,黄,緑,青のパーツで構成できることがわかります.

四角い穴をあける

 

 

 

 

 

 

 

 

ビデオ⁠⁠「回転するルーロー3角形」で、定幅の特性形状について話します。正方形の穴を開けるのに役立つのは、定幅の最も単純な図形,ルーロー3角形です。この「3角形」の中心を特定の経路に沿って移動すると、その頂点はほぼ正方形を描きます。

https://etudes.ru/etudes/drilling-square-holes/

⁠得られた図の境界線は、角の小さな 部分を除いて、厳密にまっすぐになります。 線分を延長しコーナーを追加すると、正確に正方形になります。

 

 

 

 

 

 

上で説明した図形を得るには、ルーロー3角形の中心を、4 つの同一の楕円弧を繋いだ軌道に沿って移動する必要があります。楕円の中心は正方形の頂点にあり、半軸(正方形の辺に対して45°)は、$${k(1+1/\sqrt{3})/2}$$と$${k(1-1/\sqrt{3})/2}$$、ここで$${k}$$は正方形の一辺の長さ。

角を丸くする曲線も、正方形の頂点を中心とする楕円の弧で、その半軸(正方形の辺に対して45°)は、$${k(\sqrt{3}+1)/2}$$と$${k(1/\sqrt{3}-1)/2}$$の長さです。
角が丸まったために減少した面積は正方形の約2%です。
ルーロー3角形のドリルを使い、角がわずかに丸みを帯びた正方形の穴をドリルで開けることができますが、正方形の辺は完全にまっすぐです。

 

 

 

 

 



そのようなドリルを作ることは難しくありません。断面がルーローの三角形に似ていて、刃先はその頂点と一致します。
難点は、前述のように、ドリル中心の軌道が 4 つの楕円の弧で構成されなければならないという事実にあります。視覚的には、この曲線は円に非常に近いが、円ではありません。そして、工学で使用されるすべての中心がずれた異なる半径の円は、厳密に円の中で動きを与えます。

1914 年、英国のエンジニア、ハリー ジェームズ ワットは、そのような掘削する方法を考え出しました。表面的には、彼は、「ドリルが自由に浮いている」状態でカートリッジに挿入された、ドリルが入る正方形の形のスロットを備えたガイドテンプレートがあります。このようなカートリッジの特許は、1916 年にワット ドリルの製造を開始した会社が保有していました。

 

 

 

 

 



四角いガイド枠に配置されたルーロー三角形にドリルをしっかりと取り付けます。フレーム自体はドリルに固定されています。ドリル チャックの回転をルーローの3角形に伝える必要があります。
この技術的な問題を解決するのに役立つのは、通りを通過するトラックの底でおそらく何度も見たことがあるデザイン、カルダン シャフトです。このプログラムは、ジェロラモ・カルダノに敬意を表してその名前が付けられました。

ジェロラモ・カルダノ1501年~1576年
1541 年、皇帝カール 5 世が勝利を収めて征服したミラノに入ったとき、カルダノ医科大学の学長が天蓋の横を歩いていました。示された名誉に応えて、彼は王室の馬車に2本のシャフトのサスペンションを供給することを提案しました。そのようなシステムのアイデアは古代にまでさかのぼり、少なくともレオナルド・ダ・ヴィンチのコーデックス・アトランティックスには、ジンバルを備えた船のコンパスの図があります。このようなコンパスは、明らかにカルダノの影響なしに、16 世紀前半に広く普及しました。Гиндикин С. Г.「物理学者と数学者についての物語」

 

 

 

 

 


これでドリル​​の準備が整いました。合板のシートを取り、... 四角い穴を開けます!すでに述べたように、正方形の辺は厳密にまっすぐで、角だけがわずかに丸みを帯びています。必要に応じて、すりで修正できます。

文献
・Weisstein E. Reuleaux Triangle.
・Гиндикин С. Г. Рассказы о физиках и математиках. — М. : МЦНМО, 2006.
・Фигуры постоянной ширины // Математическая составляющая / Ред.-сост. Н. Н. Андреев, С. П. Коновалов, Н. М. Панюнин. — Второе издание, расширенное и дополненное. — М. : Математические этюды, 2019. — С. 84—85, 319—320.

「定幅曲線(図形)」の他の研究

Круглый треугольник Рело / Этюды // Математические этюды Рассмотрим правильный треугольник (с равными сторонами). На к etudes.ru
Изобретая колесо / Этюды // Математические этюды Может ли повозка ехать без тряски по ровной поверхности на не etudes.ru
 

No.466 回転するルーローの3角形

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数学月間SGK通信 [2023.03.21] No.466
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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ルーローの3角形という形があります.これは,正3角形の各頂点で正3角形の辺の長さを半径として円弧を描き,
これら3つの円弧で囲まれた形です.ルーローの3角形は定幅曲線です.
https://etudes.ru/etudes/reuleaux-triangle/ のサイトにあるアニメを見れば,ルーローの3角形の形や
それが定幅曲線であるという意味が理解できるでしょう.

円はもちろん定幅曲線ですが,ルーローの3角形も定幅ですから,
アニメにあるように,どちらもベルトコンベア用のコロに使えます.
ベルトコンベアは地面と平行な動きをしますが,ルーローの3角形のコロの中心の軌跡は波を打ちます.

奇数の正多角形からも同様な定幅曲線を作れ,定幅曲線の外周の長さは同じという性質があります.
また,非対称な定幅曲線も作ることができます.

最も単純な定幅曲線であるルーローの3角形をガイドに沿って運動させることで,いろいろな装置を作ることができます.
このアニメでは,マツダのロータリーエンジンと映写機の機構に使われていることが紹介されていて興味深い.
(注)ルーロー・フランツ(1829—1905)は、ドイツの科学者.幾何学図形と運動機構を研究しました.


ルーローの3角形は,正方形の穴をあけるドリルの歯にも利用されています.
1914年,英国のエンジニア,ハリー ジェームズ ワットは,そのようなドリルを考案し特許をとりました.
https://etudes.ru/etudes/drilling-square-holes/ のサイトにあるアニメを見れば,その仕組みをよく理解できるでしょう.

今回の記事は,幾何学概念である図形の運動(軌跡)が,色々な機械を作り出す例を紹介することでした.

今回の記事の内容の詳細や図は,数学月間の会のHPをご覧ください.
https://sgk2005.org/bbses/bbs_articles/view/232/98ee6233dfe52dd32de7602e9b3f82c0?frame_id=328
https://sgk2005.org/bbses/bbs_articles/view/232/d2d592f20b8032d1c0af70aea42240ed?frame_id=328

以下のサイトもとても参考になります:
http://ikuro-kotaro.sakura.ne.jp/koramu2/16479_t8.htm

 

 

No.467 円による反転を作図する機械

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ジェームズ・ワットの蒸気機関の発明以来,円の動きを直線の動きに変換するヒンジ機構を構築することが課題でした.
色々なヒンジ機構を組み合わせてできる運動の軌跡の問題は,私の特に好きな分野です.円による反転を作図できるヒンジ機構は,
最も興味のあるものです.
この装置の仕組みは,https://etudes.ru/etudes/lipkin-inversor/?ref=calso にある動画を見れば理解されるでしょう.
証明は2つのペン先と反転円の中心は常に一直線上に乗りますから,この時出来る2つの相似な三角形に注目すれば容易です.

■説明が遅れましたが,円による反転の定義を以下に示します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引用:美しい幾何学

■1864 年に、フランス軍の工兵部隊の将校であるポセリエ (Charles Nicolas Peaucellier, 1823-1913) の個人的な手紙で、反転円機構は初めて報告されましたが、彼はメカニズムの詳細を提供しませんでした。1868 年、P. L. Chebyshev の学生、Lipman リプキン (1846-1876) が、反転円機構を発明しました。彼の詳細な記事は 1870 年に出版され、1873 年になってようやく、リプキンの研究を引用したポセリエの記事が登場しました。

反転円機構(その美しさと優れた機械的特性をもつ特別なヒンジ機構)は、エンジニアリングで多くの用途が見出されています。
引用: https://etudes.ru/etudes/lipkin-inversor/?ref=calso

No.468 チェブシェフの歩く機械

チェビシェフは色々な機械のヒンジ機構の動作軌跡の研究をした。彼は初の歩行機械の発明を行った。宇宙ロケットの制御でも、ソ連はコンピュータは遅れているが、機械的制御が進んでいると言われた時代があった。これは、チェビシェフ以来の伝統によるものだ。
歩行機械の仕組みがどのようなものか、以下のサイトにある動画を見ると良くわかります.
円運動をキノコの帽子型(歩行する足の軌跡)に変換する「ラムダ・メカニズム」がミソです.キノコの帽子型の軌跡をたどる足をつければできる.

https://sgk2005.org/bbses/bbs_articles/view/26/a8442c2c249394d42c8ad839c315e51a?frame_id=76