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No.465 デュードニーのタイル張りパズル

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数学月間SGK通信 [2023.03.14] No.465
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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先週は、京都大学の教育数学研究集会3/6-9に参加しました.そこで,ChatGPTとDuolingoの話がでました.
皆様はご存じだったかもしれませんが、私はこれらを知りませんでした.
ウエブで探して使ってみるとどちらも非常に面白い.
ChatGPTとは対話型のAI,Duolingoはゲーム感覚で英語の学習ができます.

さて,今回のメルマガで取り上げるのは,デュードニーのタイル張りパズルです.これは;

正3角形を多角形に分割してそれらの全部品を組み合わせて正方形が作れます.このようなことのできる最小の分割数はいくつですか?
この問題は、1905 年 2 月 1 日と 8 日の問題で Henry Dudeney によって Daily Mail の読者に提示されました。
寄せられた何百もの回答の中で、正解は 1 つだけでした。4 つの部分で十分です。

https://etudes.ru/models/dudeney-dissection/
上記のリンクにあるアニメーションを見ると正解がわかります.しかし,この解の仕組みを見つけるのはなかなか難しいので,解説用の図を以下に2つ作りました.重ねた図形の2回回転対称性に注目すれば,非常に簡単に解けます.

Fig.1 正方形と正3角形は同一の面積です.2つ並んだ正方形と2つ並べた正3角形を,それぞれの中点の上で重ね合わせます.この点は2回回転対称軸があります.これだけでは,重ね方にまだ任意性がありますから,正3角形を連ねて作った帯の上側の辺,下側の辺が,それぞれ,2つ並べた正方形の右側の正方形の右側の縦の辺の中点,および,左側の正方形の左側の縦の辺の中点を通過するようにします.これらの条件は同時に満たされることは,2回回転対称性から明らかです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fig.1



 

 

 

 

 

 

Fig.2

 

 

 


Fig.2を見ると,正方形の中は、赤,黄,緑,青のパーツで構成されることがわかります.一方,正3角形は,赤,黄,グレーのパーツで構成され,正3角形と正方形は面積が等しいから,部品の面積について,グレー=緑+青 の等式が成立します.従って,正3角形も赤,黄,緑,青のパーツで構成できることがわかります.

四角い穴をあける

 

 

 

 

 

 

 

 

ビデオ⁠⁠「回転するルーロー3角形」で、定幅の特性形状について話します。正方形の穴を開けるのに役立つのは、定幅の最も単純な図形,ルーロー3角形です。この「3角形」の中心を特定の経路に沿って移動すると、その頂点はほぼ正方形を描きます。

https://etudes.ru/etudes/drilling-square-holes/

⁠得られた図の境界線は、角の小さな 部分を除いて、厳密にまっすぐになります。 線分を延長しコーナーを追加すると、正確に正方形になります。

 

 

 

 

 

 

上で説明した図形を得るには、ルーロー3角形の中心を、4 つの同一の楕円弧を繋いだ軌道に沿って移動する必要があります。楕円の中心は正方形の頂点にあり、半軸(正方形の辺に対して45°)は、$${k(1+1/\sqrt{3})/2}$$と$${k(1-1/\sqrt{3})/2}$$、ここで$${k}$$は正方形の一辺の長さ。

角を丸くする曲線も、正方形の頂点を中心とする楕円の弧で、その半軸(正方形の辺に対して45°)は、$${k(\sqrt{3}+1)/2}$$と$${k(1/\sqrt{3}-1)/2}$$の長さです。
角が丸まったために減少した面積は正方形の約2%です。
ルーロー3角形のドリルを使い、角がわずかに丸みを帯びた正方形の穴をドリルで開けることができますが、正方形の辺は完全にまっすぐです。

 

 

 

 

 



そのようなドリルを作ることは難しくありません。断面がルーローの三角形に似ていて、刃先はその頂点と一致します。
難点は、前述のように、ドリル中心の軌道が 4 つの楕円の弧で構成されなければならないという事実にあります。視覚的には、この曲線は円に非常に近いが、円ではありません。そして、工学で使用されるすべての中心がずれた異なる半径の円は、厳密に円の中で動きを与えます。

1914 年、英国のエンジニア、ハリー ジェームズ ワットは、そのような掘削する方法を考え出しました。表面的には、彼は、「ドリルが自由に浮いている」状態でカートリッジに挿入された、ドリルが入る正方形の形のスロットを備えたガイドテンプレートがあります。このようなカートリッジの特許は、1916 年にワット ドリルの製造を開始した会社が保有していました。

 

 

 

 

 



四角いガイド枠に配置されたルーロー三角形にドリルをしっかりと取り付けます。フレーム自体はドリルに固定されています。ドリル チャックの回転をルーローの3角形に伝える必要があります。
この技術的な問題を解決するのに役立つのは、通りを通過するトラックの底でおそらく何度も見たことがあるデザイン、カルダン シャフトです。このプログラムは、ジェロラモ・カルダノに敬意を表してその名前が付けられました。

ジェロラモ・カルダノ1501年~1576年
1541 年、皇帝カール 5 世が勝利を収めて征服したミラノに入ったとき、カルダノ医科大学の学長が天蓋の横を歩いていました。示された名誉に応えて、彼は王室の馬車に2本のシャフトのサスペンションを供給することを提案しました。そのようなシステムのアイデアは古代にまでさかのぼり、少なくともレオナルド・ダ・ヴィンチのコーデックス・アトランティックスには、ジンバルを備えた船のコンパスの図があります。このようなコンパスは、明らかにカルダノの影響なしに、16 世紀前半に広く普及しました。Гиндикин С. Г.「物理学者と数学者についての物語」

 

 

 

 

 


これでドリル​​の準備が整いました。合板のシートを取り、... 四角い穴を開けます!すでに述べたように、正方形の辺は厳密にまっすぐで、角だけがわずかに丸みを帯びています。必要に応じて、すりで修正できます。

文献
・Weisstein E. Reuleaux Triangle.
・Гиндикин С. Г. Рассказы о физиках и математиках. — М. : МЦНМО, 2006.
・Фигуры постоянной ширины // Математическая составляющая / Ред.-сост. Н. Н. Андреев, С. П. Коновалов, Н. М. Панюнин. — Второе издание, расширенное и дополненное. — М. : Математические этюды, 2019. — С. 84—85, 319—320.

「定幅曲線(図形)」の他の研究

Круглый треугольник Рело / Этюды // Математические этюды Рассмотрим правильный треугольник (с равными сторонами). На к etudes.ru
Изобретая колесо / Этюды // Математические этюды Может ли повозка ехать без тряски по ровной поверхности на не etudes.ru
 

No.466 回転するルーローの3角形

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数学月間SGK通信 [2023.03.21] No.466
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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ルーローの3角形という形があります.これは,正3角形の各頂点で正3角形の辺の長さを半径として円弧を描き,
これら3つの円弧で囲まれた形です.ルーローの3角形は定幅曲線です.
https://etudes.ru/etudes/reuleaux-triangle/ のサイトにあるアニメを見れば,ルーローの3角形の形や
それが定幅曲線であるという意味が理解できるでしょう.

円はもちろん定幅曲線ですが,ルーローの3角形も定幅ですから,
アニメにあるように,どちらもベルトコンベア用のコロに使えます.
ベルトコンベアは地面と平行な動きをしますが,ルーローの3角形のコロの中心の軌跡は波を打ちます.

奇数の正多角形からも同様な定幅曲線を作れ,定幅曲線の外周の長さは同じという性質があります.
また,非対称な定幅曲線も作ることができます.

最も単純な定幅曲線であるルーローの3角形をガイドに沿って運動させることで,いろいろな装置を作ることができます.
このアニメでは,マツダのロータリーエンジンと映写機の機構に使われていることが紹介されていて興味深い.
(注)ルーロー・フランツ(1829—1905)は、ドイツの科学者.幾何学図形と運動機構を研究しました.


ルーローの3角形は,正方形の穴をあけるドリルの歯にも利用されています.
1914年,英国のエンジニア,ハリー ジェームズ ワットは,そのようなドリルを考案し特許をとりました.
https://etudes.ru/etudes/drilling-square-holes/ のサイトにあるアニメを見れば,その仕組みをよく理解できるでしょう.

今回の記事は,幾何学概念である図形の運動(軌跡)が,色々な機械を作り出す例を紹介することでした.

今回の記事の内容の詳細や図は,数学月間の会のHPをご覧ください.
https://sgk2005.org/bbses/bbs_articles/view/232/98ee6233dfe52dd32de7602e9b3f82c0?frame_id=328
https://sgk2005.org/bbses/bbs_articles/view/232/d2d592f20b8032d1c0af70aea42240ed?frame_id=328

以下のサイトもとても参考になります:
http://ikuro-kotaro.sakura.ne.jp/koramu2/16479_t8.htm

 

 

No.467 円による反転を作図する機械

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ジェームズ・ワットの蒸気機関の発明以来,円の動きを直線の動きに変換するヒンジ機構を構築することが課題でした.
色々なヒンジ機構を組み合わせてできる運動の軌跡の問題は,私の特に好きな分野です.円による反転を作図できるヒンジ機構は,
最も興味のあるものです.
この装置の仕組みは,https://etudes.ru/etudes/lipkin-inversor/?ref=calso にある動画を見れば理解されるでしょう.
証明は2つのペン先と反転円の中心は常に一直線上に乗りますから,この時出来る2つの相似な三角形に注目すれば容易です.

■説明が遅れましたが,円による反転の定義を以下に示します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引用:美しい幾何学

■1864 年に、フランス軍の工兵部隊の将校であるポセリエ (Charles Nicolas Peaucellier, 1823-1913) の個人的な手紙で、反転円機構は初めて報告されましたが、彼はメカニズムの詳細を提供しませんでした。1868 年、P. L. Chebyshev の学生、Lipman リプキン (1846-1876) が、反転円機構を発明しました。彼の詳細な記事は 1870 年に出版され、1873 年になってようやく、リプキンの研究を引用したポセリエの記事が登場しました。

反転円機構(その美しさと優れた機械的特性をもつ特別なヒンジ機構)は、エンジニアリングで多くの用途が見出されています。
引用: https://etudes.ru/etudes/lipkin-inversor/?ref=calso

No.468 チェブシェフの歩く機械

チェビシェフは色々な機械のヒンジ機構の動作軌跡の研究をした。彼は初の歩行機械の発明を行った。宇宙ロケットの制御でも、ソ連はコンピュータは遅れているが、機械的制御が進んでいると言われた時代があった。これは、チェビシェフ以来の伝統によるものだ。
歩行機械の仕組みがどのようなものか、以下のサイトにある動画を見ると良くわかります.
円運動をキノコの帽子型(歩行する足の軌跡)に変換する「ラムダ・メカニズム」がミソです.キノコの帽子型の軌跡をたどる足をつければできる.

https://sgk2005.org/bbses/bbs_articles/view/26/a8442c2c249394d42c8ad839c315e51a?frame_id=76