掲示板

平面群

結晶学用語集(3)ー空間群の拡張ー

20. ヘルマン=モーガンの記号 [Hemann-Mauguin notation: символы Германа — Могена]
 結晶の点群,空間群,ならびにそれらに含まれる対称要素の記述に用いられる記号. 点群の対称要素は次のように記される.回転軸;回反軸は,その次数に応じて,$$1,2,3,4,6$$; $$\bar{1},\bar{3},\bar{4},\bar{6}$$と記される. ただし,回反軸$$\bar{2}$$は鏡映面になるので$$m$$と記される.また,$$\bar{1}$$は対称心と呼ばれる. さらに,上記の対称要素のうちのただ一つから生成される点群にもその生成元と同一の記号が用いられる.複数の対称要素の組み合わせにより生成される点群の記述は,生成元となった対称要素を列記して行なうのが基本方針であるが,わかり易くするために生成元以外の対称要素を付け加えることがある.回転軸$$n$$ に対し垂直な鏡映面$$m$$がある場合は$$n/m$$,回転軸$$n$$を含む鏡映面$$m$$がある場合は$$nm$$と記される. また,主軸となる回転軸を第1項に,これに直交する副軸を第2項に記す. これら2本の回転軸により生成される対称軸が新たな類を作るなら,これを第3項に記す. 例えば,点群$$222$$の第1項は$$c$$軸方向の2回軸,第2項は$$a$$軸方向の2回軸,第3項はこれらから生成された$$b$$軸方向の2回軸である.点群$$422$$も同様で,第1項は$$c$$軸方向の主軸,第2項は$$a$$軸方向の2回軸,第3項はこれから生成された$$\left[ 1,1,0 \right] $$方向に生じた2回軸である.点群$$32$$では,$$c$$軸方向の主軸とこれに直交する副軸としての2回軸が示されているが,これらから生成される3本の2回軸は,すべて副軸と同一の類に属するので,第3項は記入しないのである.点群$$4/m2/m2/m$$の例では,各回転軸に垂直な鏡映面が存在することが示されている(この点群は簡単に$$4/mmm$$と書かれることが多 い).立方晶系の点群の表示では,第1項と第2項の対称要素は互いに直交していないこ とに注意せよ. 空間群の記述では,空間格子の型を点群記号の前に表示する. また,空間群では,点群要素中の回転軸や鏡映面をらせん軸や映進面に拡張したものも現れる.例えば,空間群$$P2_{1}/c$$は,$$P$$格子をもち,2回らせん軸とそれに垂直な$$C$$映進面が存在す ることを表示している.

21. シェンフリースの記号[Schoenflies' symbols: символы Шёнфлиса]
  結晶の点群,空間群,それらの対称要素の記述に用いられる記号. 結晶点群の記述は次のように行なう. 
(1) $$n$$回軸のみにより生成される巡回群を$$C_{n}$$と記す.
(2) 主軸の$n$回軸と,これと直交する2回軸の副軸とにより生成される4元群$$D_{2}$$2は$$V$$と記されることもある.
(3 ) 正4面体群を$$T$$,正8面体群を$$O$$と記す .
(4) 対称心を有する群には,添え字$$i$$をつけ$$C_{ni}, D_{ni}$$などと記す.特に,対称心の みから生成される反転群は$$C_{1i}$$ではなく$$C_{i}$$と記す.
(5) 主軸と直交する鏡映面を有す る群は$$h$$ (horizontalの意)を添えて$$C_{nh} , D_{nh}$$などと記す.特に,鏡映面のみから生成される点群は$$C_{s}$$と記す.
(6 ) 主軸を含む鏡映面を有する群は$$v$$ (verticalの意)を添えて$$C_{nv}$$と記す.
(7) 主軸と副軸を含む鏡映面を有する群は$$D_{nv}$$,主軸を含みかつ副軸間を2等分するような鏡映面を有するものは$$d$$(diagonalの意)を添えて$$D_{nd}$$と記す.
(8 ) 4回回映軸を有する群は$$S_{4}$$と記す.
(1)~(8 )の規則に従って結晶点群を記すと重複するものがでてくる.例えば,対称心を含む群にうち$$C_{2i}=C_{2h}$$,$$C_{4i}=C_{4h}$$,$$C_{6i}=C_{6h}$$,$$D_{2i}=D_{2v}$$,$$D_{3i}=D_{3d}$$,$$D_{4i}=D_{4v}$$,$$D_{6i}=D_{6v}$$,となるので,$$i$$を添えて記述するものは$$C_{i}$$と$$C_{3i}$$だけで他は使われない.結晶点群ではないが,分子の対称性で 重要な点群に$$C_{ \infty v} , C_{ \infty h}$$などがある. 
  空間群の記述では,同一の点群から導かれた空間群は,その点群の右肩に番号を付け区別する.例えば,$$O_{h}^{1} , O_{h}^{2} , \cdots , O_{h}^{10}$$などである. Schoenfliesの記号は点群の記述 としては簡明であるので,分子の対称性や分光学などでは広く用いられている. しかし,空間群の記述としては十分な情報が得られないため,結晶学ではヘルマン=モーガンの記号から発展した国際記号が広く用いられている. 

22. 回転群 [rotation group: группа вращений]
  1点のまわりの回転操作の全体が作る群.これは,運動群の部分群でもある.1点のまわりの回転は直交行列$$A$$で表現される. 3次の直交行列全体の集合は直交群$$O_{3}$$をなしている.純粋な回転は,$$\left| \begin{array}{@{\,} c @{\, } }A\end{array} \right| =+1$$なる直交行列$$A$$で表現され,反転や鏡映は,$$\left| \begin{array}{@{\,} c @{\, } }A
\end{array} \right| =-1$$なる直交行列$$A$$で表現される.普通,回転群と呼ばれるものは,純粋回転のみからなり,反転や鏡映も含めたものは広義の回転群と呼ばれる.結晶点群や正多面体群(プラ トンの正多面体=正4, 6, 8,12, 20面体での合同変換群)は,広義の回転群の離散な部分群である.

23. 点群 [point group: точечная группа]
 結晶点群[crystallographic point group: кристаллографическая точечная группа]
  空間群の一点を不動にするような対称操作の組み合わせが作る群である.空間の一点 が不動となるためには,全ての回転軸はこの点で交差する必要がある. さらに,回転軸が鏡映面をよぎる場合も交点はこの不動点でなければならない.空間群は無限に繰り返される周期構造での対称操作の組み合わせが作る群であるので,空間群には並進操作が存在するが,点群には並進操作はない. 点群は分子などの有限図形の対称性の記述に用いられる.点群では$$ \infty $$次までのすべての次数の回転軸が存在し得る. たとえば,プラトンの正多面 体の1つ正20面体を記述する点群では5回軸が現れる. しかし,結晶のように空間に周期をもつ構造で許される回転軸の次数は,1,2 , 3 , 4, 6に限られる. 準結晶には巨視的な5回対称軸など現れるが,準結晶(ペンローズの空間タイリング)は,正則ではあるが,周期 的な構造ではない.回転軸にこのような制限を設けて得た点群は,結晶点群といわれ32種 (3次元空間で)存在する.空間群$$\mit\Phi $$中の並進群$$T$$は,正規部分群であるので,商群$$\mit\Phi /T$$ が作れるが,これは結晶点群$$G$$と同型になる.点群はHermann-Mauguinの記号か ら発達した国際記号や,Schoenfliesの記号で記述される. 
  結晶点群での対称操作は幾何学的空間での変換であるが,幾何学的変換と同時に図形の超幾何学的性質(例えば“色”)をも変換するような対称操作を導入すると,黒白結晶点群,色付結晶点群などが得られる. これらに対して,結晶点群のことを,特に,古典結晶点群ということがある.

24. クリプト•シンメトリー[crypto-symetry: xpiOTOcniteTpiii]
  crypto-というのは“隠れた”という意味の接頭語で,幾何学的空間には現れない図形の超幾何学的性質("色''と呼ぶことにする)の対称性まで含めたものをクリプト・ シンンメ トリーという.結晶構造の対称性を記述する空間群は幾何学的空間の対称操作が作る群である.結晶構造のもつ超幾何学的性質(スピン座標等で,それらを代表して”色”と呼んでいる)の変換も幾何学的変換と同時に行なうような,拡張された対称操作は, 一般化された空間群[ザモルザエフ群,黒白空間群,色付空間群]を与える.

25. 色付空間群[colored-symmetry space groups:npocrpaicTBeHiHe rpynis UBRTHQ頁 cineTpis, SenoBciHe rpynnw]

  結晶構造のように空間に周期をもつ構造の対称性は,空間群の一つ$$\mit\Phi $$で記述される. 結晶空間の各点に一つの超幾何学的な性質(これを''色’'と呼んでいる)を付加し,幾何学的変換(空間群の対称操作)と同時にその空間の超幾何学的な性質をも変換するような 一般化された対称操作,$$g^{(\varepsilon )}=\varepsilon \cdot g=g \cdot \varepsilon $$を導入する. ここで,$$g$$は空間群の対称操作,$$\varepsilon $$は性質空間にのみ作用する変換である.このような一般化された対称操作が作る群を色付空間群という. 結晶空間の各点に付加する性質のとり得る状態の数は$$P$$で記す. 特に,$$P=2$$(例えば,結晶空間に$$+, -$$の符号を付加する)のときには,黒白空間群(シュブニコフ群)と呼ばれる. 一般に,$$P$$色の色付空間群(ベーロフ群)は次のようにして得ら れる. 色付空間群の一つ$$ \textsl{Б}^{(P)}$$で記述される構造は,もし,色の区別ができないフィルタ ーを通して見るとすれば,何らかの空間群で記述されるべきである.これは,と同 型な$$\mit\Phi $$が存在するということである.次に,$$ \textsl{Б}^{(P)}$$中の色を変えない対称操作の集合$$A$$は,$$ \textsl{Б}^{(P)}$$,$$\mit\Phi $$の共通の部分群で,かつ正規部分群($$A$$の指数は$$P$$である)でなければならな い. ここで,商群$$\mit\Phi /A \cong \left\{ 1, g_{2}, \cdots , g_{P} \right\} =G$$が定義されるが,この$$G$$と同型な色置換群$$\left\{ 1, \varepsilon _{2}, \cdots , \varepsilon _{P} \right\} $$を見いだし,$$g$$に結合し,$$\left\{ 1, g_{2}^{(\varepsilon 2)}, \cdots ,g_{P}^{(\varepsilon P)} \right\} =G^{(P)}$$を得て,$$ \textsl{Б}^{(P)}\textsl{/A} \cong G^{(P)}$$となるように,$$A$$を$$G^{(P)}$$により拡大すれば,$$\texttt{\textsl{ } }^{\texttt{\textsl{(P) } } }$$が得 られる. こうして,与えられた空間群$$\mit\Phi $$と同型な色付空間群$$\texttt{\textsl{ } }^{\texttt{\textsl{(P) } } }$$はすべて導くことがで きる.

26.  反対称 [antisynetiry: ainciioieTpiff]
  反対称空間というのは,3次元幾何学的空間に,超幾何学的性質(色または符号と呼 ぶ)の2値(黒白:$$+-$$:など)を付与した4次元空間のことである.この空間での対称性は,反対称点群,反対称空間群(WybHHKOB群)で記述される.時間反転の概念はランダウ(/I•エ HaH.aay)により導入され,反対称群はシュブニコフ(A.B. IBybHHKOB)により研究された. 
反対称演算(反恒等演算)$$1'$$というのは,幾何学的空間内での位置を変えずに色だ け反転する演算である. 幾何学的空間内での変換$$g$$の位数が偶数のときには,変換$$g$$と同 時に色の反転$$1'$$を行なう結合された演算$$g \cdot 1'=1' \cdot g=g'$$が定義でき,黒白群が 得られるが,$$1'$$そのものを対称演算にもつ群は,幾何学的空間内での位置を変えずに色 の反転がおこるので中性群(灰色群)になる. 

27. 結晶群[crystallographic groups: rpiCTajuorpaiqeciHe rpynia]
  空間群の部分群は,すべて結晶群と呼ばれる.空間群自身も,並進を全く含まない結晶点群も結晶群である. この他に,$$n$$次元空間群の結晶群としては,$$k(<n)$$次元の部分空間内にのみ並進周期をもつような結晶群がある. 空間の次元の他に性質空間の次元を追加した一般空間群(クリプト・シンンメトリー)での部分群を指すように拡張することもできる. これらの結晶群の記述には記号$$G_{n}^{t}(l)$$が用いられる. ここで,$$n, t, l$$は,それぞれ,空間の次数,並進ベクトルの張る部分空間の次元,性質空間での反対称の次数である.例えば,$$G^{3}_{3}(0), G_{3}^{2}(0), G_{3}^{1}(0), G_{3}^{0}(0)$$は,それ ぞれ,3次元の空間群,層の対称性,帯の対称性,結晶点群を示す.結局,空間的に何らかの周期をもつた(結晶学的)構造の対称性を記述するということから,これらはすべて結晶群と呼ばれている.図はNeronova(HepoHOBa)(1966)のものに,Wondratshek et.al. (1971)による$$G_{4}^{4}(0)$$の数を追加し修正したもので,結晶群間の相互関係が示され ている.
$${\ttfamily \textrm{\textsl{P } } }$$

28. 4次元空間群 [four-dimensional space groups: {\textless}ieTHpevepHiie npocrpaicTBeHiHe rpyniw] 
  空間的4次元の結晶構造(4次元空間に並進周期をもつ構造)での対称操作が作る群. 高次元における空間群の研究は,1910年BieberbachやFrobeniusが,Hilbertの問題 に関連して,《n次元空間では空間群型は有限種類である》ことを証明して以来,多くの 学者により手がけられ,その一部は導かれていた.最終的な,4次元空間群の全リストは, H. Wondratshek, R. Bulow, J. Neubuser, H. Zassenhaus, H. Brown らにより1973 年 までに導かれた. それによると,4次元の空間群型は,enantiomorph (対掌体)を区別しない立場に立つと,4783種類(3次元の場合は219)あり,enantiomorphを区別する立場 に立つと,4895種類(3次元の場合は230)になる. 4次元空間群の対称操作では,3次元では存在しなかった位数5, 8,10,12などのものも可能となる.

 

(2)⇐続く➡(1)
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※この解説は,物理学辞典/培風館(1984)の著者の分担執筆項目より抜粋編集し,専門技術研修「物性と評価技術(中級)」の講座テキスト(©RICOH CO.,LTD.1993)の付録に用いたものを再録した.

結晶学用語集(2)ー結晶の幾何学的諸量ー

8.  異方性 [anisotropy: aissoTponifl] 
  測定の方位によって,物理的性質が変化するような媒質または場の状態をいう. 結晶構造における原子の配列は,明らかに異方性をもっている. このため結晶で観測される種々の物理現象には異方性を示すものが多い. 例えば,結晶の光学的特性に関係のある誘電率,力学特性に関係のある弾性スティフネス,その他,導電率, 熱膨張率などはテンソル量である.結晶構造の対称性を考慮すると,物理現象を測定する方向を減じることができる. すなわち,結晶点群の位数が$$n$$であれば,測定は全立体角の$$1/n$$を占める対称的に独立な領域のみで行なえば良い. また,結晶構造の対称性から,テンソル中の独立な成分を導くことができる. 

9. 結晶方位 [direction in crystal: HanpaBuenie rpicrajua]
  結晶で観測される物理現象は,その測定方向により変化する. 結晶空間での方位$$\overrightarrow{P}$$は ,結晶軸$$\overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}$$を座標軸(格子定数$$a_{0}, b_{0}, c_{0}$$が各座標軸の単位)にとり,方位ベクトル$$\overrightarrow{P}$$の成分$$\left[ U, V, W \right]$$で記述される: $$\overrightarrow{P}=U\overrightarrow{a}+V\overrightarrow{b}+W\overrightarrow{c}$$. 結晶構造の点群の対称操作を$$\overrightarrow{P}$$に作用さ せて生じた$$\overrightarrow{P}$$と同価な方位を,まとめて表示するためには$$<U, V, W>$$とする.結晶面 $$\left( h, k, l \right) $$に垂直な方位は,逆格子ベクトル$$\overrightarrow{a}*, \overrightarrow{b}*, \overrightarrow{c}*$$を用い$$h\overrightarrow{a}*+k\overrightarrow{b}*+l\overrightarrow{c}*$$とすると簡単に表示できる. 
単結晶の方位の決定には,X線回折,光軸の測定,蝕像などの手段がある.

10. 格子面(格子網面)[lattice plane, net plane: mocrocTH ysnosiie]
  結晶は3次元空間に周期をもち,原子・分子が規則正しく繰り返す内部構造をしてい る. 結晶のこのような内部構造の周期性は,代数的には並進群(幾何学的には空間格子) として表現される. 一直線上にない任意の3格子点$$A_{0}, B_{0}, C_{0}$$を含む平面を考えると,この平面にはベクトル 
$$\overrightarrow{a}_{1}=A_{0} \to A_{1}, \overrightarrow{a}_{2}=A_{0} \to A_{2}$$の1次結合で生成される無数の格子点$$n\overrightarrow{a}_{1}+m\overrightarrow{a}_{2}$$($$n, m$$は整数)が含まれている. このような平面を格子面(あるいは、格子網面)という. 格子面は結晶面と同様にミラー(Miller)指数$$\left( h, k, l \right) $$で表示できる. 結晶の内部構造の周期性により,格子面$$\left( h, k, l \right) $$は結晶内部で無限に繰り返し配列しており,その間隔を格子面$$(h, k, l)$$の面間隔と呼ぶ. 結晶構造の格子点は,無限に繰 り返すこのような格子面の集合上にすべて載ってしまう. 結晶構造中には,さまざまな格子面を考えることができる. 

11. 面間隔 [spacing of lattice planes: MeiiiiocxocTioe paccTOfiHie]
結晶は3次元の周期をもって規則正しく繰り返す内部構造をしている. 従って,結晶面$$\left( h, k, l \right) $$も周期的に繰り返している. $$\left( h, k, l \right) $$面の面間隔とは,この周期のことであり$$d_{\left( h, k, l \right) }$$と記す.
格子定数を$$a_{0}, b_{0}, c_{0}; \alpha , \beta , \gamma $$とすると,
$$1/d_{(h,k,l)}^{2}=\left( h^{2}\sigma _{11}+k^{2}\sigma _{22}+l^{2}\sigma _{33}+kl\sigma _{23}+lh\sigma _{31}+hk\sigma _{12} \right) /V^{2}$$ となる.
ここで,$$\sigma _{11}=b^{2}c^{2}\textrm{sin}^{2}\alpha , \sigma _{22}=c^{2}a^{2}\textrm{sin}^{2}\beta , \sigma _{33}=a^{2}b^{2}\textrm{sin}^{2}\gamma $$
$$\sigma _{23}=a^{2}bc\left( \textrm{cos}\beta \textrm{cos}\gamma -\textrm{cos}\alpha \right) , \sigma _{31}=ab^{2}c\left( \textrm{cos}\gamma \textrm{cos}\alpha -\textrm{cos}\beta \right) , \sigma _{12}=abc^{2}\left( \textrm{cos}\alpha \textrm{cos}\beta -\textrm{cos}\gamma \right) $$
単位胞の体積: $$V=abc\left( 1-\textrm{cos}^{2}\alpha -\textrm{cos}^{2}\beta -\textrm{cos}^{2}\gamma +2\textrm{cos}\alpha \textrm{cos}\beta \textrm{cos}\gamma \right) ^{1/2}$$
結晶系の対称性が高くなると,これらの関係式は非常に簡単になる.

12. 晶帯 [zone: 30Ha]
2つの結晶面$$\left( h_{1}, k_{1}, l_{1} \right) , \left( h_{2}, k_{2}, l_{2} \right) $$の交線の方向をベクトル$$\left[ U,V,W \right] $$で表示し,これを2つの結晶面が属する晶帯軸の方向という.ただし, 
$$U=\left| \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }
k_{1} & l_{1} \\[0mm]
k_{2} & l_{2}
\end{array} \right|$$ , $$V=\left| \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }
l_{1} & h_{1} \\[0mm]
l_{2} & h_{2}
\end{array} \right|$$ , $$W=\left| \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }
h_{1} & k_{1} \\[0mm]
h_{2} & k_{2}
\end{array} \right| $$
で与えられる.同一の方向を晶帯軸に持つような結晶面の集合は同一の晶帯に属している という.

13. 有理指数の法則 
[law of simple rational indices; MKOH pamoiajbiHX uapa・eTpoB, Fani 3acoH]
  結晶を3次元の周期をもって配列した格子点の集合とみると,結晶の外形に現れる面は格子点を通る種々の平面である.そのような面は整数比のミラー指数$$\left( h, k, l \right) $$で記 述する事ができる. 特に結晶の外形によく現れる面は,小さな整数比のミラー指数で表現 できる. これを有理指数の法則,あるいは,アウイ(Hauy)の法則という. その理由は,格子点密度の大きな面ほど現れやすいことにある.

14. 結晶形 [crystal foms; ipocTHe]
  自由な空間内で,液相や気相から成長した結晶は,平坦な結晶面で囲まれ,多面体の形をとる. 実際の結晶では,同価な結晶面とはいえ,発達の程度がさまざまで晶癖がある. しかし,全く等方的な環境で成長が行なわれるならば,同価な結晶面はすべて同じ大き さに発達するはずである. 実際の結晶は単一の同価面ばかりで囲まれているわけではなく,何種類かの同価面が組み合わさってできており(同価面どうしは同じ大きさ),これを理想形という.
  結晶の外形には内部構造の対称性が反映されているはずである. 点群の対称操作を,結晶の$$\left( h, k, l \right) $$面に作用させ,得られた同価な面の集合$$\left\{ h, k, l \right\} $$により囲ま れる多面体を結晶形という. 結晶形は理想形とはことなり一種類の同価面でできている. 結晶形は完面像,半面像,等々,全部で4 7種ある.

15. 完面像 [holohedry: rojioanpo]
  各結晶系で最も対称性の高い(最高位数の)結晶点群は格子の対称性を示す点群でもある. このような点群を完面像という. このような点群を結晶の$$\left( h, k, l \right) $$面に作用させ,得られた同価面$$\left\{ h, k, l \right\} $$の数は,$$\left( h, k, l \right) $$が一般面である場合に は,点群の位数に等しい. そのような数の同価面で囲まれた結晶形が完面像である.
もし$$\left( h, k, l \right) $$面が一般面でなく,点群中のある対称操作の特殊点(対称操作で不変となる位置)にあれば,生じる同価面の数は半減し,半面像,四半面像などが得られる.

16. 晶癖 [crystal habit: pas Bine]
  完全に等方的な環境で成長した結晶では,同価な結晶面はすべて同じ大きさに発達す るはずである. しかし,実際の環境では,特定の結晶面だけが大きく発達した偏倚結晶が生じることが多い. このような偏倚結晶は晶癖があるといわれる. 三角平板状のダイヤモ ンド結晶,ひげ結晶などはその例である. 
  同価な結晶面は同じ大きさに発達しているのだが,現れる結晶面の組み合わせが変化 したために生じた外形の違いは晶相の変化という. ダイヤモンド結晶に正8面体や正6面体の外形のものがあるなどがこの例である.晶相の変化の原因は,結晶の成長温度や成長過程にある.

17.  軸率 [axial retio :zoTHoneaie oceBia eninm]
  結晶の格子定数$$a_{0}, b_{0}, c_{0}\left[ \mbox{\AA} \right] $$の絶対測定がX線回折により可能となる以前は 相対比$a_{0}:b_{0}:c_{0}$が推定できるのみであった.斜方晶系などでは$b_{0}$が最大の格子定数であるから,これで規格化した$$a_{0}/b_{0}:1:c_{0}/b_{0}$$を軸率と呼んでいる. 結晶の形態の対称性,および,大きく発達している結晶面は低指数の面であるというBravaisの法則等 を考慮し,結晶面に面指数をつじつまの合うように配当する. こうして,X線回折を用いずに,ほぼ正確な軸率$$a_{0}/b_{0}:1:c_{0}/b_{0}$$,および,結晶軸間の角度$$\alpha , \beta , \gamma $$を推定することができた. 

18. 面角一定の法則(面角不変の法則)
[law oftheconstancyofinterfacialangles:ョaxon iDCTOflicTBa " KPICTSJUIOB]
  ニコラス・ステノ(Nicolaus Steno: Niels Stensen,1699)は,さまざまな産地の水晶の形態を研究し, 面の発達の様相は個体ごとに違うが,対応する面どうしのなす角は,常に一定であること を発見した.その後,Rome Delisle ( Rone de 1'Isle,1772)により,この法則は,他の鉱物結晶でも成り立っている一般的な法則であることが見いだされ,面角一定の法則と呼 ばれている.

19. 結晶面 [crystal face: rpaub EpKCTama]
  自由な空間内で成長した結晶は,平坦な面で囲まれた多面体の外形をしている.これ らの面を結晶面という.結晶面の記述にはミラー指数が用いられ,面角一定の法則,有理 指数の法則などが成り立ことが古くから知られている. ときおり微斜面という高指数が付 けられる小さな結晶面が見られるが,これは成長丘の側面である.その他,結晶面には條線などが観察されることがある.結晶面の微細構造は結晶成長機構の方面から興味が持たれている.位相差顕微鏡や多重光束干渉法などを用いると,気相や液相から成長した結晶の結晶面には,渦巻成長層が観察される.また,結晶の方位の決定のために結晶面に生じ た蝕像の対称性を利用することもある. 

 

(1)⇐続く➡(3)

結晶学用語集(1)ー結晶空間群早わかりー

1.空間群[space groups: Пространственные (федоровские) группы]
  結晶構造における対称操作の集合が作る群を空間群という. 3次元の空間群が230 種類あることは,1880年代に,フェドロフ,シェンフリーズ,バーロー(Fedorov, Schoenfles, Barlow)らにより,それぞれ独立に導かれた. 
空間群$$\mit\Phi $$には,並進群$$T$$ [並進操作の集合が作る群: ねじれのないアーベル(Abel)群]が, 正規部分群[$$T \vartriangleleft \mit\Phi $$]として必ず含まれている. 従って,商群$$\mit\Phi /T$$が存在し,これは 結晶点群の一つ$$G$$と同型(isomorphism)[$$\mit\Phi /T \cong G$$]になる. つまり,空間群$$\mit\Phi $$は, 並進群$$T$$を,結晶点群$$G$$ [または,$$G$$中の回転軸,鏡映面の一部あるいは全部を,それぞれ,らせん軸,映進面でおきかえて得た$$G$$と同型な群$$G^{T}(\textrm{mod}T)$$]により,拡大して得られる.らせん軸や映進面を全く含まぬ点群$$G$$で拡大して得た空間群は,共型(symmorphic)群といわれ7 3種類, らせん軸や映進面を含む群$$G^{T}(\textrm{mod}T)$$により拡大 て得られた空間群は,非共型(nonsymmorphic)群といわれ15 7種類ある.
空間群の対称操作の記述には,ザイツ(Seitz)演算子$$\left[ A|t \right] $$が用いられる. これによると ,位置ベクトル$$r$$に対称操作$$\left[ A|t \right] $$を作用させた結果は,$$\left[ A|t \right] r=Ar+t$$と定義される.
空間群の記述には,ヘルマン=モーガン(Hermann=Mauguin)の記号から発展した国際記号が広く用いられて いる.

2.結晶系[syngonies, crystal system: сингонии, кристаллические системы]
  結晶構造の対称性は,230種の空間群のうちの一つで記述できる. 結晶構造の特徴 は,3次元空間の周期性(=結晶空間)にあるのだから,どの空間群にも並進群が部分群(正確には正規部分群)として含まれている. この並進群の具体化(幾何学的表現)が結晶格子である. 結晶格子を,格子点のまわりの対称性(点群)で分類すると,$$\bar{1}$$(三斜格子), $$2/m$$(単斜格子), $$mmm$$(斜方格子), $$4/mmm$$(正方格子), $$\bar{3}m$$(三方格子 ), $$6/mmm$$(六方格子), $$m3m$$(立方格子)の7種になる.
一般に,結晶構造の点群は,その結晶構造がもつ結晶格子の点群よりも高い対称性をもつことはない. 従って,結晶構造の対称性を記述する32種の結晶点群を,その結晶点群が部分群として含まれるような格子の点群のうちの位数が最小なものに帰属させることができる. このような分類が結晶系である. 各結晶系で最も対称性の高い点群は,格子の点群で,これは完面像[holohedry, ]である. 7つの晶系の名称は,格子の名称と同じで,(表1)に各晶系に属する結晶点群をリストアップしておく.
  各結晶系の結晶軸$$a, b, c$$のとり方は,単位胞の3本の稜の方向で,格子定数$$a_{0}, b_{0}, c_{0}; \alpha , \beta , \gamma $$と(表2)の関係にある.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              (表1)                       (表2)

 

3.ブラベー格子[Bravais lattices : Решетки Бравэ]
  結晶は3次元空間に周期をもって規則正しく繰り返される内部構造を特徴とする. 従 って,結晶構造を自分自身に重ね合せる(合同変換)対称操作には並進操作があり,これらは並進群を作る.並進群に従って,代表点(“格子点”となるモチーフ)を配列させて得られる並進群の具体化は結晶格子と呼ばれる. 結晶のすべての並進群は,抽象群の立場からは同 型であるが,得られた結晶格子の空間的な対称性(空間群)で分類すると,3次元の結晶格子は14の異なる型になることがブラベー(Bravais) (1849)により導かれた. これをBravais格子という. 格子点における点群を調べると,14種のBravais格子は,$$\bar{1}, 2/m, mmm, 4/mmm, 3m, 6/mmm, m3m$$の7種の点群に帰属できる. これらは ,三斜,単斜,斜方, 正方, 三方, 六方, 立方の各格子に対応する. 単位胞中に一つの 格子点を含むものは$$P$$(単純)格子, 複数の格子点を含むものは複合格子といい,$$I$$(体心)格子, $$F$$(面心)格子, $$C, A, B$$(底面心)格子, および,$$R_{\textrm{hex } }$$:(六方から導い た菱面体)格子がある. 14のBravais格子 の内訳を図示する. 
図挿入

3.1. 体心格子[body-centered lattice: решетка объемно-центрированная ] 
  結晶格子(空間格子)の一つ. 斜方, 正方, 立方のブラベー格子に存在する複合格子.単位胞となる平行6面体の各頂点の他に,その中心にも格子点が存在するもの. 記号は$I$で示す. 単斜格子での体心格子は底面心格子と見なすことができる. 

3.2. 底面心格子[base-centered lattice: решетка базоцентрированная ]
  結晶格子(空間格子)の一つ. 単斜, 斜方のブラベー格子に存在する複合格子. 単位胞となる平行6面体の各頂点の他に,向かい合った一組の面の中心にも格子点が存在する もの. 格子点を追加した面を重ね合わせる並進方向が$$a$$軸のものを$$A$$面心, $$b$$軸のものを$$B$$面心, $$c$$軸のものを$$C$$面心という.

3.3. 面心格子[face-centered lattice: решетка гранецентрированная]
  結晶格子(空間格子)の一つ. 斜方, 立方のブラベー格子に存在する複合格子. 単位胞となる平行6面体の各頂点の他に,それぞれの面の中心にも格子点が存在するもの. 記 号は$$F$$で示す.

3. 4. 単純格子[primitive lattice: решетка примитивная]
  結晶格子(空間格子)の一つ. 複合格子(体心, 面心, 底面心)に対立する用語. 平行6面体の頂点のみに格子点を持つようにとったブラベー格子. どの晶系にも単純格子が一つづつ存在する.ただし,三方晶系では,単純格子$$R$$を用いずに,六方晶系の単純格子に2つの格子点を追加した複合格子$$R_{\textrm{hex } }$$を用いることが多い. その他の単純格子は$$P$$で示される.
  格子の対称性が一目でわかるように,ブラベー格子では複合格子がいくつか用いられているが,複合格子は,適当な平行6面体を採用すれば,すべて単純格子に直すことができる(格子の定義から明らか).

4.実格子[lattice in realspace: решетка пространственная (кристаллическая) ]
  結晶は3次元空間に周期をもつ構造である. 各周期を表す互いに独立な3本の並進べ クトル$$a_{1}, a_{2}, a_{3}$$は並進群を生成する. 代表点をこの並進群に従い分布させると結晶 格子(空間格子)が得られる. 結晶空間(実空間)とそのフーリエ(Fourier)変換である逆空間は, 互いに双対な空間であるので,逆格子に対する概念として結晶格子をとらえ,実格子と呼ぶことがある. 

5.ラウエ群[Laue groups: Группы Лауэ, лауэвские классы ]
  単結晶のX線回折強度像の対称性を表わす点群のことである. ピエール・キューリー(Pierre Curie)の原理(あるいは,NMC原理)として知られる因果律によると,「結晶で観測される物理現象の対称性(結果 )には,その舞台となる結晶構造の対称性(原因)がすべて反映されるはずである」. 従って,結晶構造の点群を$$G_{\textrm{cryst } }$$,この結晶によるX線回折強度像の点群を$$G_{\textrm{X } }$$とすると,$$G_{\textrm{cryst } } \subseteq G_{\textrm{X } }$$とな る. これは,結晶構造に存在しない対称要素でも,その結晶のX線回折強度像の対称性に出現することがあることを示している. 実際,結晶構造が特別な条件を満たせば,X線回折強度対称が,上昇することが知られている. しかし,どのような結晶構造であろうとも,異常分散がない限り,X線回折強度像の対称性には,必ず$$\bar{1}$$ (対称心)が存在することは,フリーデル(Friedel)則として知られているから, X線回折強度像の対称性は,結晶点群のうち$$\bar{1}$$を部分群として含む11の点群
$$\bar{1}, 2/m, mmm, 4/m, 4/mmm, \bar{3}, \bar{3}m, 6/m, 6/mmm, m\bar{3}, m\bar{3}m$$のどれかに限られる.これらをLaue群という. ある結晶によるX線回折強度像の対称性が,Laue群$$G_{\textrm{X } }$$であれば,その結晶の構造は$$G_{\textrm{X } }$$の部分群であるはずである.

6. 単位胞[unit cell:элементарная ячейка]
  結晶は,ある構造単位が3次元空間に周期をもって繰り返す構造をしている. こ の構造単位(内部の原子分布まで含めて)を単位胞という. 単位胞の形は,その結晶構造 のプラベー格子に対応した平行6面体である. プラベー格子に複合格子があるので,単位胞は必ずしも結晶構造中の最小の繰り返し単位とは限らない. 

6.1. 格子定数[lattice constants, cell dinensions: константы решетки, параметры единичные ]
  結晶構造の単位胞の寸法(ブラベー格子の寸法)を記述する数値の組. 三斜晶系の単位胞の寸法を記述するには,平行6面体の3つの稜の長さ$$a_{0}, b_{0}, c_{0} [Å] $$,および ,それらの稜のなす角度$$\alpha , \beta , \gamma $$の独立な6つのパラメータが必要である. ブラベー格子の対称性が高くなると,記述に必要なパラメータの数は少くなくなり,立方晶系では$$a_{0}[Å] $$のみとなる.

7.対称要素[symetry elements: элементы симметрии ]
  点群や空間群の要素となっている個々の対称操作のこと. ただし,ある物体の対称操作とは その物体を自分自身に重ね合わせる合同変換のことである. 結晶点群の対称要素には,回転軸, 鏡映面, 回映軸, 回反軸, 対称心がある.空間群になると並進があるので,この他に,らせん軸, 映進面が加わる.
対称要素の記述には,ヘルマン=モーガン(Hermann = Mauguin)の記号が用いられる.また,図面中に対称の要素を記入するには,定められたシンボルをもちいるが,詳細は,International Tableに掲載されている. 

7.1. らせん軸[screw axis: винтовая ось ]
  一つの軸のまわりの回転$$C$$と,その軸に沿っての並進$$\tau $$を連続して行なう空間群の対 称操作.回転とその回転軸方向の並進はどちらを先に行なっても結果は同じである.ザイツ(Seitz)記号で表すと$$\left[ C|\tau \right] $$. 回転操作$$C$$の位数を$$n, \left( C^{n}=1 \right) $$とすると,$$\left[ C|\tau \right] ^{n}=\left[ 1|n\tau \right] $$であるので,らせん軸が空間群の対称操作であるためには,$$n\tau $$が回転軸方向の基本並進$$T$$の整数倍となる必要がある. このため,$$\tau =\left( m/n \right) T $$ [$$m$$は,$$m<n$$なる自然数]という制限が生じる. $$n$$回回転操作から生じるものを$$n$$回ら せん軸と呼び,$$n_{m}$$と記す.例えば,$$3$$回回転軸(位数3)からは,$$3_{1}, 3_{2}$$らせん軸が生じる.

7.2. 回映軸[mirror-rotation axis: ось зеркального вращения]
点群,および空間群の対称操作の一つ. ある直線のまわりの回転とその直線に垂直な 平面での鏡映とを引続き行なう対称操作. このとき,回転成分の軸となる直線が回映軸である. 回映軸は回転成分が$$360 ^\circ /n$$のとき,Hermann = Mauguinの記号で,$$\tilde{n}$$と記す.
結晶構造で許される回映軸は,$$\tilde{1},\tilde{2},\tilde{3},\tilde{4},\tilde{6}$$であるが,それぞれの回映軸が 生成する巡回群(生成元となった回映軸と同じ記号を用いる)を調べると,$$\tilde{1}=m, \tilde{2}=\bar{1}, \tilde{3}=3 \otimes m, \tilde{6}=3 \otimes \bar{1}$$となり,回映群$$\tilde{4}$$以外のものは,他の対称操作により生成する巡回群やそれ らの直積に分解できる. 従って,$$\tilde{4}$$だけが回映軸として独立なものである. 

7.3. 回反軸[roto-inversion axis: рото-инверсионная ось]
  点群,および空間群の対称操作の一つ. ある直線のまわりの回転とその直線上にある 一点での反転とを引続き行なう対称操作. このとき,回転成分に関する直線を回反軸とい う. 回反軸は回転成分が$$360 ^\circ /n$$のとき,Hermann = Mauguinの記号で,$$\bar{n}$$と記される.
  結晶構造で許される回反軸は,$$\bar{1}, \bar{2}, \bar{3}, \bar{4}, \bar{6}$$であるが,それぞれの回反軸が 生成する巡回群(生成元となった回反軸と同一の記号が用いられる)を調べると,$$\bar{2}=m, \bar{3}=3 \otimes \bar{1}, \bar{6}=3 \otimes m$$となり,他の対称要素により生成される巡回群やそれらの直積に分解される.また,$$\bar{1}$$は対称心そのものである.回反軸として独立なものは,$$\bar{4}$$のみであるが,回反軸$$\bar{4}$$が生成した巡回群と,回映軸$$\tilde{4}$$が生成した巡回群は同一になる.


7.4. 映進面 [glide-reflection plane:плоскость скольжения-отражения ]
  空間群で存在する対称操作の一つ. 平面での鏡映$$m$$と,その平面内の特定な方向(周 期$$\tau $$)に沿って$$\tau /2$$だけの並進を続けて行なう対称操作. この平面を映進面という. また,映進演算は$$\left[ m|\tau /2 \right] $$で表される. 結晶格子を生成する並進ベクトルを$$a, b, c$$とすると,$$a/2$$の並進成分をもつ映進面を$$a$$映進面; $$\left( a+b \right) /2$$や$$\left( a+b+c \right) /2$$などの並進成分をもつ映進面を$$n$$映進面; $$\left( a+b \right) /4$$や$$\left( a+b+c \right) /4$$などの並進成分をもつ映進面を$$d$$映進面という. 単純格子では,$$a, b, c$$,および$$n$$映進面のみが可能で あるが,面心格子や体心格子では,$$d$$映進面も可能になる.

7.5. 並進対称 [translational symmetry: симметрия трансляции]
  空間内のある一定の方向に,周期的に同一の基本構造が繰り返し配列しているような 状態. そのような周期をベクトル$$a$$で表示すると,並進対称をもつ構造$$F\left( r \right) $$では, $$F(n-na)=F(r)$$,($$n$$は整数)が成り立つ. あるいは,基本構造を$$A(r)$$とす ると,
$$F(r)=\displaystyle \int_{- \infty }^{ + \infty }A(r-r')\displaystyle \sum_{n=- \infty }^{ + \infty }\delta (r'-na)dV_{r'}$$  ただし,$$\delta \left( r'-na \right) $$はデルタ関数
と表す事のできる構造$$F(r)$$は,周期$$a$$の並進対称をもつ. 1次元の周期をもつ構造は ,列(array) , 2次元の周期をもつ構造は網(net) , 3次元の周期をもつ構造は格子( lattice)と呼ばれる. 結晶中の3次元の周期は,結晶格子を作る. 

7.6. 鏡映面 [mirror plane: зеркальная плоскость ]
  点群,および空間群に存在する対称操作の一つ. 物体と鏡に写った像の関係にあ る状態が鏡映対称であり,その鏡を鏡映面という. 鏡映面は,Hermann-Mauguinの記号で は$$m$$と表示される. 
$$\left[ m_{x}|0 \right] $$は,$$x$$の符号を変える鏡映面($$x$$軸に垂直な平面)である.

7.7. 対称心 [center of symmetry, inversion: инверсия]
  点群,空間群における合同変換(対称操作)の一つ. 構造内の分布状態を$$F(r)$$と し,$$F(-r)=F(r)$$が成り立つように位置ベクトルの原点がとれるならば,この原点を対称心(対称中心)といい$$\bar{1}$$で示す. 対称心が存在するような構造を点対称という. 

7.8. 回転対称軸 [rotation axis: ось вращения ]
  点群,および空間群の対称操作の一つ. ある直線のまわりに$$360 ^\circ /n$$だけ構造全体を回転しても,始めの状態と完全に合同になる場合に,この構造には$$n$$回回転対称軸($$n$$回回転軸,または単に$$n$$回軸)が存在するという. このような直線が回転軸である. 結晶構造で可能な回転軸の種類は,$$1$$(恒等変換),$$2$$,$$3$$, $$4$$, $$6$$の各回転軸に限られる.

続く➡(2)

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 ※この結晶学用語集シリーズは,辞典形式の独立項目の集合よりなる.その理由は,「物理学辞典」培風館(1984)の私の分担執筆項目より抜粋し,専門技術研修「物性と評価技術(中級)」の講座テキスト(©RICOH CO.,LTD.1993)の付録に用いたためである.結晶学用語の背景を正確に解説している書物は現時点でもほとんどないため,再度編集し直してここに掲載する.

 

XXkoptsik-ch10-4

  ある共型群で,群$$G$$を$$T$$を法とする群$$G^{T}$$で置き換え,導かれる非共型群$$\mit\Phi _{nsym}=T \bigcirc G^{T}$$は,商群が同一の結晶点群に同型である類縁の群の系列を形成する.$$2/m$$の系列を考察に選ぶとすれば,非共型群$$P2_{1}/m, P2/b, P2_{1}/b$$の剰余類による標準的分解は,次のようになる(ここでは,剰余類が$$P2_{1}$$,等々と標記されている.空間群の場合も同じ標記をしたので混乱しないように注意せよ!) 
$$P2_{1}/m=P1+P2_{1}+P\overline{1} +Pm$$
$$P2/b=P1+P2+P\overline{1} +Pb$$
$$P2_{1}/b=P1+P2_{1}+P\overline{1} +Pb$$
これらの群の並進部分群に関する商群,すなわち$$P2_{1}/m/P,   P2/b/P,   P2_{1}/b/P$$の乗積表

$$ \begin{array}{c|cccc} & P1 & P2_{1} & P\overline{1} & Pm \\[0mm] \hline P1 & P1 & P2_{1} & P\overline{1} & Pm \\[0mm] P2_{1} & P2_{1} & P1 & Pm & P\overline{1} \\[0mm] P\overline{1} & P\overline{1} & Pm & P1 & P2_{1} \\[0mm] Pm & Pm & P\overline{1} & P2_{1} & P1 \end{array} $$ $$ \leftrightarrow $$

$$ \begin{array}{c|cccc} & P1 & P2 & P\overline{1} & Pb \\[0mm] \hline P1 & P1 & P2 & P\overline{1} & Pb \\[0mm] P2 & P2 & P1 & Pb & P\overline{1} \\[0mm] P\overline{1} & P\overline{1} & Pb & P1 & P2 \\[0mm] Pb & Pb & P\overline{1} & P2 & P1 \end{array} \leftrightarrow $$

$$ \begin{array}{c|cccc} & P1 & P2_{1} & P\overline{1} & Pb \\[0mm] \hline P1 & P1 & P2_{1} & P\overline{1} & Pb \\[0mm] P2_{1} & P2_{1} & P1 & Pb & P\overline{1} \\[0mm] P\overline{1} & P\overline{1} & Pb & P1 & P2_{1} \\[0mm] Pb & Pb & P\overline{1} & P2_{1} & P1 \end{array} $$

は,実際に,点群\$$2/m$$の乗積表と同一の構造を持つ.証明には,群$$\mit\Phi $$の標準分解で,固定した単位胞に属する各対称元要素が,剰余類$$Tg_{i}$$の代表元となる演算子$$g_{i}$$に対応していることに注意しよう.共型群$$P2/m$$では,標準のセットは,例えば,点群$$2/m$$の単位胞の左上角(原点とする)を通過する対称要素(元)を含んでいる.非共型群$$P2_{1}/m, P2/b, P2_{1}/b$$では,これらの元は,一般には単一点を通過しないので,できるだけ原点に近いもの(これらの群の投影は,図214ですべての対称元が同一色であれば,それらと同型な色群に一致する)を選ぶと都合が良い.このように,非共型群の分解における,代表元$$g_{j}^{T}$$の選出法を固定し,それらの演算子$$[D_{j}|\alpha _{j}]=[E|\alpha _{j}][D_{j}|0]$$を比較しよう.
共型群$$P2/m$$の標準セットの演算子$$[D_{j}|0]$$に一致するようにこれらの"基底"演算子の直交部分$$[D_{j}|0]$$を選ぶ.言い換えると,非共型群では,実あるいは虚の対称面と軸が,共型群でと同様,非共型胞で同一位置を占めるとし直交変換$$[D_{j}|0]$$を実行するが,引き続き次に,これらを変換$$[E|\alpha _{j}]$$で補う.簡潔に言えば,演算子$$[D_{j}|\alpha _{j}]$$中で記号$$D_{j}$$を$$g_{j}$$で置き換え,展開をあらわな演算子の形式で,剰余類$$Pg_{j}^{T}=\left\{ [E|\tau _{i}] \right\} [D_{j}|\alpha _{j}]$$書ける:
$$P1=P\left[ 1|0 \right] , P2_{1}=P\left[ 2|\displaystyle \frac{c}{2} \right] , P\overline{1}=P\left[ \overline{1}|0 \right] , Pm=P\left[ m|\displaystyle \frac{c}{2} \right]$$  for $$P2_{1}/m$$
$$P1=P\left[ 1|0 \right] , P2=P\left[ 2|\displaystyle \frac{b}{2} \right] , P\overline{1}=P\left[ \overline{1}|0 \right] , Pb=P\left[ m|\displaystyle \frac{b}{2} \right] $$  for $$P2/b$$
$$P1=P\left[ 1|0 \right] , P2_{1}=P\left[ 2|\displaystyle \frac{b+c}{2} \right] , P\overline{1}=P\left[ \overline{1}|0 \right] , Pb=P\left[ m|\displaystyle \frac{b+c}{2} \right] $$   for $$P2_{1}/b$$
ここで,$$a,b,c$$は並進群$$P$$の基底ベクトルを示す. 基底演算子のあらわな形$$[D_{j}|\alpha _{j}]=[E|\alpha _{j}][D_{j}|0]$$は第1系の合同式の法となる係数の特定な集合セット$$[E|\alpha _{j}]$$を作る.(15),(16)を用い,法則(3)による剰余類のクロス積を行うと,
$$P[D_{j}|\alpha _{j}] \cdot P[D_{l}|\alpha _{l}]=P[D_{j}|\alpha _{j}][D_{l}|\alpha _{l}]$$
$$=P[D_{j}D_{l}|D_{j}\alpha _{l}+\alpha _{j}]=P[E|\tau _{jl,n}][D_{n}|\alpha _{n}]$$     (17)
商群の乗積表と,それと同時に合同式の法の第2系$$[E|\tau _{jl,n}]$$の正当性とが納得できる.例えば,2つの剰余類の積$$P2_{1} \cdot Pb$$,これは商群$$P2_{1}/b/P$$の元が,
$$P2_{1} \cdot Pb=P\left[ 2 \mid \displaystyle \frac{b+c}{2} \right] \cdot P\left[ m|\displaystyle \frac{b+c}{2} \right] =P\left[ 2m|\overline{2} \cdot \left( \displaystyle \frac{b+c}{2} \right) +\displaystyle \frac{b+c}{2} \right] $$
$$=P\left[ \overline{1}|\displaystyle \frac{-b+c}{2}+\displaystyle \frac{b+c}{2} \right] =P[\overline{1}|c]=P[1|c][\overline{1}|0]=P\overline{1}$$
などであることを見出す. ここで,$$c$$軸の周りの180°の回転はベクトル$$c$$を保存するがベクトル$$b$$は逆になるので,$$\hat{2} \cdot \left( \left( b+c \right) /2 \right) =\left( -b+c \right) /2$$である.積$$\hat{2}_{1} \cdot b=\left[ \overline{1}|c \right] $$は剰余類の代表系を構成する.
$$\left\{ 1,2_{1},\overline{1},b \right\} =\left\{ \left[0\right] ,\left[ 2|\left(b+c \right) /2 \right] ,\left[ \overline{1}|0\right] ,\left[ m|\left(b+c\right) /2 \right] \right\} $$
演算子の基底セットには属さず,これは(16)のために,係数の系$$\left[ 1|c \right] $$を用い: 
$$ [\overline{1}|c]=\left[ 1|c \right] [\overline{1}|0] \equiv [\overline{1}|0]\left( \textrm{mod}[1|c] \right) $$
しかし,我々の特殊な場合は,$$j=2_{1}, l=b, n=\overline{1}$$
$$[E|\tau _{jl,n}]=[E|\tau _{2_{1}b,\overline{1 } }]=[1|c]$$
同様に,合同式の法の第2の系数を見つけることが出来る.別の表にcongruence合同関係の法$$[E|\tau _{jl,n}]$$の並進部分を書き出すことが出来る.それらに(16)を用い,係数$$2_{1}/b=\left\{ 1,2_{1},\overline{1},b\right\} $$により,群の乗積表を見出し,群$$2_{1}/b$$は群$$2/m$$に同型であることを確認できる.
$$ \begin{array}{c|cccc} \tau _{jl,n} & 1 & 2_{1} & \overline{1} & b\\[0mm] \hline 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm] 2_{1} & 0 & c & 0 & c \\[0mm] \overline{1} & 0 & -(b+c) & 0 & -(b+c) \\[0mm] b & 0 & b & 0 & b \end{array} $$
$$ \begin{array}{c|cccc} 2_{1}/b & 1 & 2_{1} & \overline{1} & b \\[0mm] \hline 1 & 1 & 2_{1} & \overline{1} & b\\[0mm] 2_{1} & 2_{1} & 1 & b & \overline{1} \\[0mm] \overline{1} & \overline{1} & b & 1 & 2_{1} \\[0mm] b & b & \overline{1} & 2_{1} & 1 \end{array} $$ $$\leftrightarrow$$ $$ \begin{array}{c|cccc} 2/m & 1 & 2 & \overline{1} & m \\[0mm] \hline 1 & 1 & 2 & \overline{1} & m \\[0mm] 2 & 2 & 1 & m & \overline{1} \\[0mm] \overline{1} & \overline{1} & m & 1 & 2 \\[0mm] m & m & \overline{1} & 2 & 1 \end{array} $$
既知の群の合同式の法を見出すことは,それほど困難な課題ではないことがわかるだろう.逆問題―与えられた生成群$$T$$と$$G$$から非共型群を作る-では,種々の可能なバリエーションから一つ選ぶことが要求される.例えば,$$ G=2/m=\left\{1,2,\overline{1},m \right\} $$で,保存される部分群$$ G_{1}^{*}=\left\{1,\overline{1} \right\} $$を固定すると,残りの演算子$$2$$と$$m$$を用いこれらの係数に結び付け$$[E|\alpha ]$$元$$[D|0]$$の位数だけ乗倍すると群$$T$$の最小並進与える.この条件は,ただ3つの非同価結合により満たされ,次のようである: 
$$\left( \left[ 2|\displaystyle \frac{c}{2} \right] ,\left[ m|\displaystyle \frac{c }{2} \right] \right) , \left( \left[ 2|\displaystyle \frac{b }{2} \right] ,\left[ m|\displaystyle \frac{b }{2} \right] \right) , \left( \left[ 2|\displaystyle \frac{b +c} {2} \right] ,\left[ m|\displaystyle \frac{b+c}{2} \right] \right) $$
これらは,それぞれ群$$P2_{1}/m$$, $$P2/b$$, $$P2_{1}/b$$において実現される.
演算子$$[D_{j}|\alpha _{j}]$$のあらわな形は,係数
$$2_{1}/m=\left\{ 1,2_{1},\overline{1},m \right\} $$, $$2/b=\left\{ 1,2,\overline{1},b \right\} $$, $$2_{1}/m=\left\{ 1,2_{1},\overline{1},b \right\} $$


による群の基本セットを確立することを可能にする(図214参照).これらの群と群$$2/m$$間の同型性に基づき,対応する係数の体系$$[E|\tau _{jl,n}]$$を選べる.アナロジーを使って157の非共型空間群のすべてが見出せる.60シリーズ以上に分布している(参照、表12)(230群は73シリーズに属する)*.
任意の1シリーズにある群は,密接な関係があるが,(11の対掌対を除き)互いに同型ではない.これは,積則(15)において,(12)に従って書かれた,第2の系の係数$$[E|\tau _{jl,n}]$$を見いだすことが出来る:
$$\left( [E|\tau _{i}][D_{j}|\alpha_{j}] \right) \bigcirc \left( [E|\tau_{k}][D_{l}|\alpha_{l}] \right) =[E|\tau_{i}][E|\tau_{k}]^{[D_{j}|\alpha _{j}]}[E|\tau_{jl,n}][D_{n}|\alpha_{n}]$$
共型群($$\alpha _{j}=\alpha_{l}=\alpha_{n}=0$$)では,すべての量$$[E|\tau_{jl,n}] \equiv [E|0]$$(参照p.208)であるが;非共型群では,対応する元$$[D_{n}|\alpha_{n}]$$のすべての係数が$$[E|0]$$に変換される訳ではない.それらは,群シリーズごとに異なる.
同じ演算子の還元積の新しい演算を次のように定義する; 
$$[D_{l}|\alpha_{l}^{(i)}][D_{l}|\alpha_{l}^{(j)}]=[D_{l}|\alpha_{l}^{(i)} + \alpha_{l}^{(j)}]$$
$$=[E|\tau_{l}^{(ij,k)}][D_{l}|\alpha_{l}^{(k)}] \equiv [D_{l}|\alpha_{l}^{(k)}]\left( mod[E|\tau_{l}^{(ij,k)}] \right) $$
同一シリーズの任意の2つの非共型空間群$$\mit\Phi_{nsym}^{(i)}, \mit\Phi _{nsym}^{(j)}$$を同一系列の$$\mit\Phi _{nsym}^{(k)}$$に対し:$$\mit\Phi_{nsym}^{(k)}=\mit\Phi _{nsym}^{(i)} \cdot \mit\Phi _{nsym}^{(j)}$$
導入された演算が結合則を満たすことを,自分で調べるのは容易である.演算子の逆元は関係$$[D_{l}|\alpha _{l}]^{-1}=[D_{l}|-\alpha _{l}]$$により定義される;恒等演算は共型シリーズの頭の群$$\mit\Phi _{sym}^{(1)}$$演算子$$[D_{l}|0][D_{l}|\alpha_{l}]=[D_{l}|\alpha_{l}]$$
群$$\mit\Phi_{sym}^{(1)}=T \ominus G$$,$$\mit\Phi _{nsym}^{(2)}=T \bigcirc G^{T}$$などは,群$$G \leftrightarrow G^{T}$$同型な法によるある群の元とみなすことも出来る.例えば,
$$ \begin{array}{c|cccc} & P2/m & P2_{1}/m & P2/b & P2_{1}/b \\[0mm] \hline P2/m & P2/m & P2_{1}/m & P2/b & P2_{1}/b \\[0mm] P2_{1}/m & P2_{1}/m & P2/m & P2_{1}/b & P2/b \\[0mm] P2/b & P2/b & P2_{1}/b & P2/m & P2_{1}/m \\[0mm] P2_{1}/b & P2_{1}/b & P2/b & P2_{1}/m & P2/m \end{array} $$ $$\leftrightarrow$$ $$2/m$$
$$ \begin{array}{c|cccc} & Pmm2 & Pmn2_{1} & Pma2 & Pmn2_{1} \\[0mm] \hline Pmm2 & Pmm2 & Pmc2_{1} & Pma2 & Pmn2_{1} \\[0mm] Pmc2_{1} & Pmc2_{1} & Pmm 2 & Pmc2_{1} & Pma2 \\[0mm] Pma2 & Pma2 & Pmc2_{1} & Pmm2 & Pmc2_{1} \\[0mm] Pmn2_{1} & Pmn2_{1} & Pma2 & Pmc2_{1} & Pmm2 \end{array} $$ $$\leftrightarrow$$ $$2/m $$

1面帯,2面帯,ロッドなどの対称性を記述する1次元空間群や,ネットワークパターン,層などの対称性を記述する2次元空間群も,点群$$G$$あるいはこれに同型な法$$T$$による群$$G^{T}$$で,対応する並進群$$T$$を拡大したものとみなすことができる.対称記号には,群の型を特定できるすべての必要情報$$T, G, G^{T}$$が含まれているので,この問題の詳細はここまでにしよう.