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星型多面体

https://i1.wp.com/vectorfield.net/wp/wp-content/uploads/2017/11/PB180047.jpg?resize=880%2C1024

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都庭園美術館,姫宮の部屋

 

 

 

 

 

 

 

■ 星型正多角形(ダ・ビンチの星型)
 下の青や緑の図形は,星型正多角形の例で星型5角形(五芒星)と星型8角
形(ダ・ビンチの星型)です.頂点同士を結んだ赤い輪郭線は,それぞれ正5
角形と正8角形になり,凸多角形(凹所のない多角形)です.星型自体は,星状凸集合(領域内の点で,領域内の任意の点と結ぶ線分が領域内にあるよう点が存在する図形)ではあるが,凸多角形ではありません.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  青い星型5角形について詳しくみていきましょう.頂点Aから辺をA→C→E→B→D→A
と1周りたどると,辺の向き(→)が2回転することがわかります.あるいは,「5角形の頂点
を1つ飛ばしでたどって,2周して始めの頂点に戻る」という言い方もできます.このような
星形を { 5/2 } と表記します.
 星型8角形(ダ・ビンチの星型)でも同様で,右の図形は { 8/3 } です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星型5角形を 5/2 と書くのは,2×360˚/5=360˚/(5/2) だからです.この星型5角形が頂
点で5つずつ集まる { 5/2, 5 } は,星型小12面体になります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■星型正多面体(ケプラーの星形正多面体より)
(1)正12面体をコア(芯)にしてできる星型「星型小12面体」
 右の写真の星型は,東京都庭園美術館,旧朝香宮邸,姫宮の部屋の照明器具にも使われています.
コアになるのは正12面体で,その12個の正5角形の面の上に,それぞれ正5角錘を取り付けた形
をしています.正5角錐の頂点は,それぞれ,芯となる正12面体の面に対応していますから,頂
点を結んでできる図形(赤の多面体)は,正12面体に双対な正20面体です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正5角錐の頂点(例えばA)の周りに,星型正5角形 { 5/2 } が5個集まっている立体です.
芯に正5角形の穴のある五芒星の板を,各頂点で5枚ずつ組み合わせると,この立体になりま
す.したがって,この星型正多面体はシュレーフリの記号で { 5/2, 5 } となります.
 さて,この星型小12面体 { 5/2, 5 } は,プラトンの正多面体(正12面体)を芯にして,その
正5角形の面に正5角錐を貼りつけた形でした.同様に,プラトンの正多面体(正20面体)を
芯にして,その正3角形の面に正3角錘(正4面体)を貼り付けてできる形は, 星型大12面体
{ 5/2, 3 } と呼ばれます.これら2つの星型は,ケプラーの星型多面体とも呼ばれます.序に,
この2つの星型に双対な,{ 5, 5/2 },{ 3, 5/2 } は ポアンソの星型と呼ばれます.
 星型小12面体は,五芒星の面F が12枚,稜の数E が30,頂点の数V が12ですので,
F−E+V= −6( 私たちの知っているオイラーの多面体定理では2)となります.これは星型
小12面体の空間が,球の位相と異なり,穴が4つ空いた浮輪と同じ位相であるためです.
(穴が1つ開くごとにF-E+Vは2づつ減ります)

 美しい幾何学,p152-154

 

 

エッシャー視覚の魔術師

この記事は,SGK通信No298(2019.12.24)をリメイクしたものです.
その時の感想の抜粋をシネマジャーナルに掲載いただきました.
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/escher-review.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が,映画「エッシャー 視覚の魔術師」を見たのは,アップリンク渋谷で(2019.12.20),
まだ新型コロナウイルスを知らなかったころです.
最近は,新型コロナウイルスの流行で,私たちは映画館から足がすっかり遠のいてしまいました.

『エッシャー 視覚の魔術師』6/28-7/4(土)深谷シネマにて上映決定!!という情報をお聞きしました.
遠出をしないで済む地元の方々は,ご覧になる良い機会かもしれません.

http://fukayacinema.jp/

http://pan-dora.co.jp/escher/

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■エッシャーは数学者といえる
エッシャー(オランダ,2018)の版画作品を見たことのある方は多いでしょう.
エッシャーの作品はどれも数学的でありますが,いくつかの幾何学分野に分類できます.

・錯視や空間認識,
・パズルやテッセレーション,
・非ユークリッド幾何学,
・周期的壁紙模様(2次元結晶学)
などの分野に分類できます.

数学を駆使したエッシャーの作品は良く知っていましたが,
エッシャーがどんな生活をした人物かはあまり気にしたことがありませんでした.

映画では,エッシャーの息子たちへの取材が面白い.
作品にまつわるエピソードの証言があります:
1955年作「表皮」から1956年作「婚姻のきづな」に作品が発展した状況がよくわかります.
ムッソリーニ時代の全体主義に息子が染められるのを嫌い,イタリアからスイスに移住します.
エッシャーの人物像がよくわかる,とても良い映画でした.

■映画の最後の方で,エッシャーが国際結晶学会の講演に呼ばれて行くところがありました.
私の専門は結晶学で,結晶学会では昔からエッシャーの周期的版画を,2次元結晶の教材にしており,
2次元のブラベー格子や,平面群(壁紙模様)に親しむことができます.
結晶学者には,エッシャー作品は馴染み深いものです.

アルハンブラのモザイクには平面群の17種のすべてがあるという説と1種類欠けているという都市伝説があります.
どちらでしょうか?それとも....? 実際にアルハンブラには行って調べて見たいものです.
ペンローズ・タイリングを発見したペンローズも,アルハンブラのタイルからヒントを得たと聞きます.
エッシャーの周期的版画の原点はアルハンブラのモザイク・タイルにあります.
私も,局所的に高い対称性の星型ロゼットをちりばめた,あたかも高次元宇宙からさす影を思わせる
イスラームのデザインに興味をもっています.

映画のエンドロールにスナップ映像が流れますが,その映像の一つに,大道絵師の光景が写りました.
2018年夏,たまたま行ったニューカッスルの通りで見かけた,エッシャー作品ばかり道に描いていた大道絵師のようです.

■エッシャー作品の生まれるまで
コクセターとエッシャーはオランダで開催された1954年の国際数学者会議で出会いました.
1958年にコクセターはこの分割を掲載した論文*をエッシャーに送り,
これがエッシャーの「極限としての円」の作品群を生むことになります.
http://sgk2005.saloon.jp/blogs/blog_entries/view/46/a655be2fc4e933a93af15e269d8b684e?frame_id=54

極限としての円の数学については,以下のブログを参照ください.
http://sgk2005.saloon.jp/blogs/blog_entries/view/46/2e340c06148db50daae618a772629e15?frame_id=54

(参考)美しい幾何学,p142~143

 

美しい幾何学 
谷克彦   2019-09
ものを見て「美しい」と思ったことは誰しもあることでしょう。本書は美しい図形や不思議な図形を取り上げます。まずは眺めて、鑑賞してみてください。どうして美しいと感じ ...

STXMによる有機材料のマッピング

STXM(走査型透過X線顕微鏡)は,有機材料の化学状態のマッピングができる重要な評価技術です.実験を計画されている方々のお役に立つように,私たちの過去の実験(2000年10月)を紹介しましょう.

■私たちは,1粒のトナーの中に練り込まれている有機物分子の分布状態を知る必要がありました.高精細のトナー1粒のサイズは5~10μmです.その1粒のトナー中には,種々の有機材料(レジン,ワックス,色素,電荷制御剤,など)の分子を練り込んでいます.それらの分子がどのように分布しているか観察したいものです.特徴的な元素を含む分子の分布をみることはさして困難な課題ではありません.蛍光X線を用いれば元素分布のマップを簡単に得ることができます.電子顕微鏡でもエネルギーロスEELSで見ることができます.しかし,トナーの場合は,分布しているのがすべて有機物(炭素原子Cが主体の分子)ですから,蛍光X線分析は役に立ちません.
分子内の炭素Cの結合状態の違いで有機材料を見分ける必要があります.分子のC原子の結合状態(1重結合か,2重結合が,π電子系か,どんな官能基が付いているか)で,炭素の1s電子の吸収端近傍のスペクトルの形がわずかにことなることが手掛かりです.炭素1s電子の吸収端は285eV程度ですので,この付近の吸収スペクトルは,軟X線領域(真空中で測定)になり,この実験のできる装置は,2000年当時は,Hitchcock(McMaster大)教授が,米国バークレイの放射光施設ALSに作ったBL5.3.2とBL7.0でした.エネルギー分解能0.1eV,ビームの空間分解能35nmという素晴らしい性能です(aXis2000という解析ソフトも完成していました).これを用いて2000年から数年間共同実験をしました.

 

(写真)左からDr. Araki,Dr. Kilcoyne,Dr. Hitchcock

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吸収端のちょっと上の50eV~1000eV程度までの範囲に現れるスペクトをEXAFSといい,吸収原子周囲の配位構造の解析に使えることはご存じかもしれません.一方,吸収端近傍のせいぜい50eVまでは,XANESとかNEXAFSと呼ばれます.原子は吸収端のエネルギーを吸収して,光電子波を発しますが,吸収端近傍では電子波の持つエネルギーが小さく波長が長いため多重反射が起こり,周囲の配位原子に反射され吸収原子の位置に作る電場は非常に複雑なので,EXAFSのように配位構造の解析には使えません.しかし,吸収原子周囲の化学状態に特徴的な吸収スペクトルになり,分子を知る手がかり(指紋のような)になります.

■ここで初期の結果(2000年10月)を紹介しましょう.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2次元にスライスした試料の1点1点ごとに,Cの吸収端付近でX線の波長をスキャンすると,その点に存在する物質分子(一般的に,数種の分子が重畳されている)に特徴的な吸収端に対応して透過X線のコントラストが変化しますから,画面を見ていると物質の分布状態がわかります.上の写真では,エネルギーをスキャンしていくと,赤や青でマークした部分のコントラストが逆転したりして,違う物質が分布していることがわかります.

 

 

 

■用いる数学について

このデータ処理のための数学は特異値分解といいaXis2000で実行します.
X線のエネルギーEのときの,サンプルの点(x,y)のコントラストは,
Σμ_i(E)・t_i(E) ,iは分子の種類,μ_iとt_iは分子iの吸収率と存在量です.
各点(x,y)でΣμ_i・t_iのデータを測定しますが,1画面の測定ができると,エネルギーをΔEスキャンしまた画面の各点を測定するので,Eのステップ数分の各点(x,y)の吸収データが得られます.結局,各点(x,y)でスペクトルが得られたことになります.各点でi種類の分子をどのような比率で混ぜると観測したスペクトルと同じにできるかという問題を解くことになり特異値分解を用います.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究のまとめは,トナー1粒内の立体的な分布の再現です.各スライス断面で測定し解析した分布を積み重ねて3D像を再現しました.

J.Phys.Ⅳ France 104(2003)509, A.P.Hitchcock, et al.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ この装置のゾーンプレートの光学系の仕組みはとても面白いのですが,今回はここまでにします.

X線の微小ビームを作る

 

X線は光(電磁波)の仲間です.次の図をご覧ください.波長で言うと左の長い方にはラジオ波,マイクロ波,などの電波があります.われわれの目に見える可視光線はvisibleと記載したほんのわずかな領域です.波長がさらに短くなっていくと,ultrvaiolet,softXrays,hardXraysの領域になります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて,X線を集光する凸レンズは作れません.その理由は,X線に対する物質の屈折率(n=1-δ-iβ)が,真空中(n=1)とほとんど同じ[わずかに1より小さい(δ~10^-6,従って,n≒1)]だからです.

物質による電磁波の散乱現象は,電場中に置かれた物質中の電子(それぞれの原子核に束縛されて存在)が,電場と同じ周波数で振動子し,振動する双極子(原子核と電子)から同じ周波数の電磁波が放射されることです.
原子核に束縛されながら振動している電子の周波数(原子の種類jにより固有の値)ω_jが,入射した電波の周波数ωに比べて,可視光線の場合はω<<ω_j,X線領域ではω_j<<ωの違いがあり,これが,物質の光に対する屈折率が1より大きく,X線に対する屈折率が1より小さく(ほとんど1)なる原因です.

■X線に対する物質の屈折率はほとんど1でしたから,物資に入射したX線は屈折せず直進します.しかし,物質の屈折率が,1より小さいので,物質表面で全反射させることはできます.これを利用して,X線を集光する反射光学系がいろいろ作られています.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■もう一つのX線を集光する素子はゾーンプレート

2種類のX線顕微鏡の光学系を上に掲載しました.トロイダル・ミラーやシュワルツシルト光学系が使われる例と,ゾーンプレートが使われる例です.

Hichcock教授のSTXMでもゾーンプレートが用いられています.
以下で,ゾーンプレートの仕組みを解説します.ゾーンプレートは光に対しても,X線にたいしても効果がありますが,光源は単色光(波長λ)である必要があります.

ゾーンプレートは,下図のような同心の輪帯環よりなります.図の黒い輪帯環はX線をストップする金属膜がある輪帯環で,白い輪帯環はX線が通過できる輪帯環です.ゾーンプレート前面に入射するX線は,単色(波長λ)である必要があります.最初の白い輪帯環を通過したX線と,次の白い輪帯環を通過したX線の行路差は,焦点位置でちょうど波長分λだけ異なるようします.他の白い輪帯環でも同様で,すべての白い輪帯環を通り抜けたX線は,焦点までの行路で波長λの整数倍だけずれるようにするので,焦点位置で位相が全部そろい強め合います.こうして,単色(波長λ)のX線が焦点に集光できることになります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝統文様で5つのブラベー格子を探そう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周期的な2次元平面では,互いに独立な並進ベクトルを2方向とれます.
これら2本の並進ベクトルが挟む平行4辺形を単位胞といいます.
並進ベクトルの組み(単位胞の形)を対称性で分類したものがブラベー格子です.
2次元のブラベー格子には,図に示す5種類があります.
そして,それぞれに対応する格子の図も掲載しておきました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■さて,以下に伝統文様を10種挙げました.
図中に赤色ベクトルで,並進の周期を描き込んであります.
図中に描き込んだ並進ベクトルの位置はいろいろ可能で,図示したものは一例です.赤色ベクトルの選び方もいろいろ可能ですが,
単位胞の形(赤色ベクトルで囲まれた平行4辺形)が
(A)正方形,(B)長方形,(C)120°の菱形,(D)任意角度の菱形, 
の4種類のどれかにあてはめるようにとれます.
2次元のブラベー格子の5種類のうち,(E)一般形の平行4辺形に属する伝統文様は,ここの例には挙げていません.
Q.それぞれの伝統文様は,A,B,C,Dのどのタイプに属するでしょうか.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詳しくは,美しい幾何学,p86~88

 

 

 

 

 

 

 

 

10回(5回)対称タイルを繰り返し並べる


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


■10回(5回)対称のタイルを周期的に並べる

10回(5回)対称は,周期的に並ぶことができません.周期的に並べることが可能な回転対称軸は,2回,3回,4回,6回対称に限られます.
10回(5回)対称タイルを周期的に配列したイスラームの繰り返しパターンを調べましょう.もちろん,5回対称軸が周期的に並んでいるはずはありませんので,自然に並べるのにうまい工夫があるはずです.このようなパターンはイスラームに特徴的で,ジャーミイのいろいろな所で見かけます.

10回(5回)対称は周期性と矛盾しますから,それぞれの10回(5回)対称が支配するのはタイルの内部だけです.

 

 

このタイルの描き方を習得するのにだいぶ工夫をしました.
作図手順の足跡として,赤色の作図補助線を残しておきましたから,
皆さんも工夫してこの図を描いてみてください.

まず,中心にある円の円周を10等分することから始めます.
円周の10等分は中心角が36°の作図で,前回に正五角形(中心角72°)の作図をやりましたから,それを応用して円周の10等分を作図してください.

 

 

 

 

 

 

この長方形のタイルが単位胞になり,これを並べることにより繰り返しパターンが作れます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この繰り返しパターンの平面群はP2mmです.

10mmという対称性の高い部分(正10角形)があります.もし,そのような対称性が全域に作用するなら,繰り返し(周期性)ができるわけがありません.10mmという点群の作用はそれぞれの赤い円内の領域に限られるので,周期性と両立できるのです.このようなイスラーム・パターンは色々な所に見受けられます.

次に,この繰り返しパターンを3つの部品によるタイル貼りと解釈してみましょう.つまり,図に示したように正10角形タイルと,ピンクのタイルと黄緑色のタイルの3種類です.
今日は,この3種類のタイルで平面が隙間なくタイル貼りされていることを確認してください.

■応用例

 

 

X線に対する物質の屈折率

X線に対する物質の屈折率が$$n<1$$になること

古典的原子モデル(原子核を中心に電子が公転している)を考え,
Lorentz振動子モデル(原子核+と電子ーが互いに束縛されて振動している)を適用する.
X線電場により,原子核に束縛された電子が振動する運動方程式:
電子の電荷:$$-q$$, X線電場: $$E=E_{0}exp\left( i\omega t \right) $$
$$\ddot{r}=-\mit\Gamma \dot{r}-\omega _{0}^{2}r+\left( \displaystyle \frac{-q}{m} \right) E_{0}exp\left( i\omega t \right) $$
$$r=\displaystyle \frac{(q/m)}{\omega ^{2}-\omega ^{2}_{0}-i\mit\Gamma \omega }E_{0}exp\left( i\omega t \right) $$


分極$$P$$,分極率$$\chi ,j$$は電子の番号(単位体積に$$N$$個あるとする)
$$P \equiv \chi E=(-q)\displaystyle \sum_{unit vol}^{N}r_{j}=-\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) \displaystyle \sum_{unit vol}^{N}f_{j}E_{0}exp\left( i\omega t \right) $$
ただし,
$$f_{j}=\displaystyle \frac{\omega ^{2 } }{\omega ^{2}-\omega _{0j}^{2}-i\mit\Gamma _{j}\omega }=\displaystyle \frac{\omega ^{2}\left( \omega ^{2}-\omega _{0j}^{2} \right) }{\left( \omega ^{2}-\omega _{0j}^{2} \right) ^{2}+\mit\Gamma _{j}^{2}\omega ^{2 } }+\displaystyle \frac{\mit\Gamma _{j}\omega ^{3 } }{\left( \omega ^{2}-\omega _{0j}^{2} \right) ^{2}+\mit\Gamma _{j}^{2}\omega ^{2 } }i$$

原子散乱因子(atomic scattering factor)の定義:
$$a$$原子の原子散乱因子$$f$$とは,$$a$$原子に属する$$n$$個の電子に対して$$f_{j}$$を総和したものである.
$$f=\displaystyle \sum_{an atom}^{n}f_{j}=f_{0}+\mit\Delta f ' +i\mit\Delta f '' $$
$$f_{0}$$は,原子中の電子数$$n$$(原子番号);$$\mit\Delta f ' $$,$$\mit\Delta f '' $$は,異常分散項という.

マクロな光学定数の定義: 屈折率$$n$$,誘電率$$\varepsilon $$,分極率$$\chi $$
$$n=(1-\delta )-i\beta $$,    $$\delta , \beta \sim 10^{-6}$$,   $$\delta ( \sim 10^{-6}) \propto N$$
$$\varepsilon =\varepsilon _{1}+i\varepsilon _{2}$$
$$D=\varepsilon E=E+4\pi P=\left[ 1+4\pi \chi \right] E$$
$$\varepsilon =n^{2} \approx (1-2\delta )-2i\beta $$
$$\chi =-\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) \displaystyle \sum_{unit vol}^{N}f_{j}$$

原子内の電子はそれぞれの$$\mit\Gamma _{j}(\omega ), \omega _{0j}(\omega )$$を持ち,$$\omega _{0j}<<\omega $$の電磁場追従ではそれぞれの位相遅れを生じる[特に,原子核に強く束縛されるK殻電子は顕著].これが$$\omega \approx \omega _{0j}$$近傍で,”異常分散”を起こす.$$j$$個の電子は吸収端の振動数$$\omega _{0j}$$から高振動数側に分布する多数の振動子の集まりと見なせる.
(1)$$\omega <<\omega _{0}$$ 光と物質
$$n^{2}=\varepsilon =1-4\pi \left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) \displaystyle \sum_{in unit vol}^{N}\displaystyle \frac{\omega ^{2 } }{\omega ^{2}-\omega ^{2}_{0j}-i\mit\Gamma _{j}\omega } \cong 1+4\pi \displaystyle \sum_{in unit vol}^{N}\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega _{0j}^{2 } } \right) $$
$$n \approx 1+2\pi \displaystyle \sum_{in unit vol}^{N}\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega _{0j}^{2 } } \right) >1$$
(2)$$\omega _{0}<<\omega $$ X線と物質
$$n^{2}=\varepsilon =1-4\pi \left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) \displaystyle \sum_{in unit vol}^{N}\displaystyle \frac{\omega ^{2 } }{\omega ^{2}-\omega ^{2}_{0j}-i\mit\Gamma _{j}\omega } \cong 1-4\pi N\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) $$
$$n \approx 1-2\pi N\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) <1$$ $$N$$: (電子数 $$ \textrm{in unit volume)=} $$電子密度

 

 

単位体積中の電子数 $$N$$
Fig. X線電場により,原子核に束縛された電子が振動する.
振動ゆらぎ分だけ分極し双極子が生じる.

複素屈折率の物理

異なる媒質間の界面をよぎつて進行する電磁波は,運動量保存則が成り立たない.運動量保存則は,一様な媒質中で成り立つからである.この場合,運動量の界面接線成分は保存されるが,界面法線成分は変化する.このため,界面で屈折が起こる.屈折の法則とは,運動量の界面接線成分の保存の表現である: 

 $$p_{0t}=p_{1t}$$  → $$p_{0}cos\theta _{0}=p_{1}cos\theta _{1}$$

X線で用いる入射角(grazing angle)$$\theta _{0}$$,屈折角$$\theta _{1}$$の定義は,それぞれ,界面と光線のなす角である[光学で,一般に用いられているのは,”界面の法線”と光線のなす角なので,特に注意を要する].

$$n_{1} \equiv \displaystyle \frac{p_{1 } }{p_{0 } }=\displaystyle \frac{hk_{1 } }{hk_{0 } }=\displaystyle \frac{cos\theta _{0 } }{cos\theta _{1 } }$$
物質1の屈折率は,真空に対するものとして定義され: \\
$$n_{1}=\displaystyle \frac{p_{1 } }{p_{0 } }=\displaystyle \frac{hk_{1 } }{hk_{0 } }=\displaystyle \frac{\lambda _{0 } }{\lambda _{1 } }=\displaystyle \frac{c}{v_{1 } }$$
$$v_{1}=\displaystyle \frac{c}{n_{1 } }$$であることがわかる.$$v_{1}$$は,物質1中の電磁波の位相速度.
$$E=E_{0}exp\left[ i\left( \omega t-2\pi kz \right) \right] =E_{0}exp\left[ i\omega \left( t-\displaystyle \frac{2\pi k}{\omega }z \right) \right] =E_{0}exp\left[ i\omega \left( t-\displaystyle \frac{n}{c}z \right) \right] $$
$$n$$を複素数にすると:$$n=(1-\delta )-i\beta $$ 
$$E=E_{0}exp\left[ i\omega \left( t-\displaystyle \frac{1-\delta }{c}z \right) \right] exp\left( -\displaystyle \frac{\omega \beta }{c}z \right) $$
$$\displaystyle \frac{\left| E \right| ^{2 } }{\left| E_{0} \right| ^{2 } } \equiv exp\left( -\mu z \right) =exp\left( -\displaystyle \frac{2\omega \beta }{c}z \right) $$
1)虚数部$$-\beta $$は,線吸収係数$$\mu $$に比例:
$$\mu =\displaystyle \frac{2\omega \beta }{c}=\displaystyle \frac{4\pi \beta }{\lambda }$$ $$ln\displaystyle \frac{\left| E_{0} \right| ^{2 } }{\left| E \right| ^{2 } }=\mu z$$ をoptical density という.
2)実数部$$1-\delta $$は,位相速度$$v$$と関係がある.$$\delta $$が正で大きくなれば,位相速度は増加: 
$$v \equiv \displaystyle \frac{\omega }{2\pi k}=\displaystyle \frac{c}{1-\delta }$$

 

フィボナッチと反射経路数

Fibonacci  and Lucas Numbers with Applications, Koshy,p.37-38より

フィボナッチ数は,いろいろな分野に現れます.
面を密着させた2枚のガラス板(スタックと呼びます)は,図に示すように,4つの反射面を備ています.
[訳注)表面反射;2の裏側,4の裏側は考慮しないようだ]



 

 

 

 

 

 

光線がスタックに入射し,$$n$$回反射$$n \ge 0$$をするときの異なる反射経路の数$$a_{n}$$を求めたい. (L.Moser and W.Wyman,1963年) 

$$n=0$$なら反射は起こらない.図3.26に示すように光はガラス板を通り抜けるだけであり,$$A_{0}=1$$. 
図3.26

 

 

 

 

 



反射が1回あるものは,2つの異なる経路があるので$$a_{1}=2$$;図3.27. 
[訳注)表面反射は数えていない]

 

 

 

 

 



2回反射が起こる場合には,3つの可能な経路がある;$$a_{2}=3$$;図3.28.
3回反射するなら,5つの可能な反射経路があり,$$a_{3}=5$$;図3.29.
同様に,$$a_{4}=8$$;図3.30.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


一般的に,光線が$$n$$回反射されたとして,最後の反射が面1または面3で起こるなら,その前の反射は面2か4で起こらなければならない;図3.31.

 

 

 

 

 

 

 

面1上で$$n$$番目の反射が起こる経路の数は,$$n-1$$回の反射後に面1に到達する経路の数に等しい.
このようなパスは$$a_{n-1}$$個ある.
$$n$$番目の反射が面3で起こったとすると,$$(n-1)$$番目の反射が面4で起こらなければならない.
このような光線は面4に達する前に既に$$n-2$$回の反射をしていなければならず,
そのような経路は,定義により$$a_{n-2}$$個である.
したがって,加算原理により,$$a_{n}=a_{n-1}+a_{n-2}$$,$$a_{1}=2$$および$$a_{2}=3$$である.
ゆえに, $$a_{n}=F_{n+2}$$. 

 

 

 

クバンチクの問題4

ロビンソンは,円形の無人島に流れ着きました.ロビンソンが海岸の小屋を出て,西に3 km,南に4 km移動した後,彼は海岸に出ました(その日は小屋に戻りました.).翌日は,ロビンソンは小屋を出て南西に10 km行くと海岸に出ました.1日後,ロビンソンは海岸沿いに島を一周することにしました.彼が歩く一周の距離はどのくらいありますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A.約16 km
B.約31 km
C.約63 km
D.約113 km
E.正解は異なります。

 

■解答です.図を描いて考えましょう.

最初の日は,AからBに行きます.(その日はまたAに戻ります)次の日は,AからCに行きます.A,B,Cは海岸にある点ですから,この3点を通る円の中心を求めれば円の半径rがわかり,島の全周囲は2πrとなります.

解答は,Dです.

この問題で紛らわしいのは,最初の日はAの小屋にもどると書いていないところです.(小屋にもどる)というのは私が補足しました.次の日の出発点をBとすると,非常に大きな円になります.半径51kmで全円周320kmになります.無人島の探検なのだから,小屋はAしかないのでしょうが,紛らわしいのではっきり出発点に戻ることを書いてほしかったです.

 

 

 

 

 

 

 

この問題は作図で解くのが良いと思いますが,座標を用いて計算で解くこともできます.西,南の方向を+にした座標で書くと,A(0,0),B(3,4),C(10/√2,10/√2)で,円の中心(a,b),半径rの円の方程式(x-a)^2+(y-b)^2=r^2

に,A,B,Cの座標を入れた3つの式を連立させて解き,半径rを知ればよいのです.