掲示板

SGK通信2014年

事故の雪崩が大事故になる複雑系

■2014/05/01------------------------------------------------------------------------------------------

 事故のなだれが大事故になる複雑系
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 数学月間SGK通信第2号[2014.05.21]
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■「複雑系とは何か」は,別号で取り上げるとして,大規模送電網や原発は複雑系です.
2011年7月の数学月間懇話会(第7回)では,これを取り上げました.
2011年4月の米国MAMのテーマは「複雑系」でした.
米国で何度か起きた大規模停電の仕組みを解析しています.
ほんのささいな原因(多分,樹木が送電線に触れスパーク)により,
送電網に局所的停電が起きた.⇒送電網の残りの部分に過剰な負荷がかかり,健全だった部分の電線が切れる.⇒
⇒あっという間に,次々と送電網全体に停電が拡がる.

「小さな事故が雪崩となり,大きな事故を生む」という複雑系での事故の特徴です.

2011.3.11の日本の原発事故でも、同じようなことになりました.
今回の事故の引き金は地震・津波だったかも知れませんが,引き金になるのは,地震・津波だけではありません.
組織やエージェントを含め、何処に発端があるか予測できません.
複雑系は,<バタフライ・エフェクト>が起こり得る世界です.     image1

  複雑系の特徴
送電網ネットワーク中にある節点の次数(=その節点に集まる経路の数)の頻度分布図を作ったとき,節点の次数の高いものも残っているような(べき乗則分布)ネットワークですと,次数の高い節点が攻撃されると故障の雪崩につながります.         image2     image3

●べき乗則
大規模停電,巨大地震,所得の分布,.... いろいろな頻度分布に<べき乗則分布>が見られます.正規分布,ポアソン分布,ワイブル分布など,中心値のまわりに釣鐘型の分布を作りますが,べき乗則分布では,規模の大きい事象が起こる確率もいつまでも残っています.
被害コストの期待値は,被害コストと確率の積であり,巨大地震は巨大な被害コストをもたらすので,巨大地震の確率が小さいと言って無視することは間違いです.原発事故も同様です.

(引用文献)ーーーーー
1.2011MAM、http://www.mathaware.org/mam/2011/essays/
Cascading Failures: Extreme Properties of Large Blackouts in the Electric Grid
2.数学文化(2011),16,p113-127
今年の米国MAMの話題と日本の原発事故
3.SGK通信(2011-06)数学月間懇話会報告
http://www.sugaku-bunka.org/modules/journal/journal_main.php?block_id=514&journal_id=22&page_no=2#514

 

化学の日について

■2014/10/01---------------------------------------------------------------------------------------------- 

化学の日について 
「化学の日」10月23日は,化学4団体が昨年制定しましたが, アボガドロ数$$6.02×10^{23}$$に因んでいます.これもやはり米国が 先でNational Mole Foundationが10月23日をMole Dayと定め盛んな活動が行われているそうです.

以下は,化学と工業,Vol67-9,2014,玉尾皓平氏(日 本化学会前会長)の記事からの抜粋です・・・・・・・
◆2年前の会長就任時に提案した2つの具体的提案を紹介します。
「全国一斉オープンキャンパス」:これが 「化学の日」と直結する提案です。各大学. 研究機関や化学企業で独自に行っているオープンキャンパスやオー プンファクトリーを,「化学の日」「化学週間」にできるだけ 曰程を合わせて一斉に実施いただくことで,国民的イベントとして 認知度を高めようとの取組みです。
「『夢・化学-21』の全国統一ブランド化」: 「夢・化学-21」キャンペーンの強化策として,そのロゴマークを意匠登録し,上で述ベたようなこれまでの すべての化学啓発活動にロゴマークを付してビジビリティの向上を 目指すものです。

いずれもいわば全国区の活動ですが,期間限定型で集中的に盛り上 げる企画と,通年活動型で全国津々浦々いつでも「夢・化学-21 」ロゴマーク付きのイベントが行わ れている,という性格の異なる活動を2つ準備し,足並みをそろえ て最大の効果を狙おうとする点が特徴です。提案4団体だけではな く,経済産業省や文部科学省,さらにはマスコミ関係者の賛同も得 ており,産学官一体となった初めての本格的な取組みで,化学の啓 発活動,市民権獲得にとっての決め手となるものと期待しています 。

◆「化学の日」「化学週間」のイベントは?
「化学の日」を長く定着させるためには. 活動現場に新たなロードを課さないことが 重要と考えます。新たに企画するのではな くて,現在行われているイベントの開催日 をできるだけ「化学の日」「化学週間」の 日程に合わせていただくことで.最大の効 果を上げようとの考えです。すでに,各支 部や産業界に対して,日程調整のご協力を お願いしています。
ただ,初年度の今年は,「化学の日@開成学園」「化学週間@東京 大 学」「子ども実験ショー@近畿」などのキックオフイベントを企画 中です。
また,各種一般紙や月刊誌「ニュートン」「化学」「現代化学」「 子供の科学」などへのPR記事掲載の企画も進んでいます。

 

数学が映画に入る

■2014/06/30-------------------------------------------------------------------------------------------

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数学月間SGK通信 [2014.07.01] No.018
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今回も,MMP,plusマガジン42号の翻訳です.
(2007年の数学月間懇話会で配布したものです)
017号のHTML形式が正しく表示されなかったので,少し長くなりますが,018号は全文通しで掲載します.
数学が映画に入る
http://www.plus.maths.org/issue42/features/lasenby/index.html
Joan Lasenby
ポップコーンは手に入れたか?よい席は選んだか?座り心地は良いか?
それではタイトルロール....
◆数学が誇らしげにプレゼント....
映画の中の信じられないほど真に迫ったコンピュータで作られた映像に皆な驚く.ジュラシック・パークの恐竜,ロード・オブ・ザ・リングズの不思議 ---- 特に,ガーラムの出演者 --- は,数学なしではできなかったということを知らない人が何と多いことか.どのようにして,これらの驚くべき映像が作られるのだろう?  
コンピュータ・グラフィックス,コンピュータ・ビションは大きな課題だ.
この記事では,完成作品に使われる数学のいくつかを簡単に概観する.
最初に映画の世界を創造し,次にそれを生活へ持ち来たそう.
◆場面を作る
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/trianglesurface_web.jpg
最初の対象物は,三角形のような単純多角形よりなる針金骨格として作られる.
コンピュータ生成映画を作る第一ステップは,物語中のキャラクターや,それらが棲む世界を創造することだ.これら対象物のそれぞれは,接続された多角形(通常は三角形)で構成された表面として作られる.
各三角形の頂点は, コンピュータメモリにストアされる.
どの三角形のどちらの面が,物体やキャラクターの外側であるかを知ることは重要だ.この情報は, ストアされている頂点の順番として,右ネジの規則に従い記号化される.これで,どちらが外か一意に決まる.
[頂点の順番に従い,三角形の周りを右手の指を, 人差し指,中指,..と回したとき]
諸君の親指が向いているのが三角形の外側だ.例でやってみよう.
三角形(A,B,C)の外側方向(外側法線)は,三角形(A,C,B)の外側方向と反対であることがわかるだろう.
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/rhrule_web.jpg
右ネジ規則で定義された(A,B,C)の外側法線は(A,C,B)とは反対方向
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/rayfacet.jpg
諸君の視点からファセット面までの光線を追跡しよう.光線は反射して光源を通過するか?
いまや対象物の表面は三角形の針金網で,網のコンポーネントのそれぞれを彩色する準備ができた.
我々がモデル化している光景のライティングを,実際と同じにすることが重要である.
これは光線追跡と呼ばれるプロセスを用いなされる.
視点から物体へと遡り光線追跡し,反射させる.もし,目から出た光線がファセット面(針金網三角形の中の一つ)で反射され,光源を通過するなら,そのファセット面は光源に照らされ明るい色,もし,反射された光線が,光源を通過しないなら,そのファセット面は暗い色の影付をする.
光線を特定のファセット面まで追跡するには,表面を数学的に記述し,光線とファセット面の平面とが係わる幾何学方程式を解くことが必要になる.
これはベクトルを用いなされる.光景の3次元座標系に,視点となる原点(0,0,0)を加える.
ベクトル$$v=(a, b, c)$$は,原点から発し座標 $$ a, b, c$$で終わる矢である.
例えば,$$v$$にスカラー2を乗ずるのは,規則 $$2v=2(a,b,c)=(2a,2b,2c)$$のように行う.
$$2v$$は$$v$$と同じ方向で2倍長い矢だ.表現$$λv$$を見よう.$$λ$$は変数(言い換えれば,任意の実数).
これはもはや,ある長さの矢ではない.  長さが変数になったのだから,矢の方向だけを表している.別の言葉でいえば,この表現はベクトルvを含む直線を表す.それは我々の視点からベクトルvの方向に発する光線を記述する.
三角形のファセット面で定義される平面は,3つの情報で表現される:
3頂点のうちの1つの位置頂点$$a_1$$と,$$a_1$$から$$a_2$$へのベクトルと,
$$a_1$$から$$a_3$$へのベクトルである.
下の囲みの中に,目とファセットで決定される面から発する一本の光線の方程式を与えた.光線がファセットをよぎるか否か,何処でよぎるかを知り,反射された光線の方程式を計算するには,これらの2式を解かねばならぬ.
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光線の表現 $$ r=λv $$
頂点  $$ a_{1},a_{2},a_{3} $$のファセットが定義する平面の式
$$ r=a_1+μ_1(a_2-a_1)+μ_2(a_3-a_1) $$
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(光線追跡の数学の詳細は,Turner Whittedの革新的な論文
”影付け表示のための改良された照明モデル”,Communication of the ACM,Vol.23,Isuue6に見ることができる.)
光線追跡は現実味ある光景を作り出すことができるが,たいへん遅い.
これはコンピュータが作る映画の製作には用いることができるが,コンピュータゲームのようにリアルタイムで照明を変化させることが必要な場合問題である.
影や火線束(コースティク)[収差による回り込みでできる光像],多重反射のような複雑な現象は,モデル化が困難で,動的あるいはもっと巧妙な数学的な手法,事前計算放射輝度伝搬(PRT)やラジオシティ(R)が使われる.
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/doom3_web.jpg
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/neverwinter_web.jpg
コンピュータゲームDOOM3,Neverwinter nights はダイナミックライティングが必要だ.
◆必要なのは若干の想像力
光景,照明が出来てしまえば,監督が”アクション!”と叫び,キャラクターが動き出すのを待っばかりだ.
いまや,数学がイメージに命を吹き込むのを確かめよう.
最も基本的な物体の動きの一つは,与えられた軸の回りの与えられた角度の回転である.
座標幾何学は,回転後の物体各点各点の位置を計算するツールを提供する.
だがこれらのツールは効率的で高速であることが重要だ.
これらのツールを見るにあたり,数学授業に一寸立ち寄って見る....
[訳注:この後に,複素平面のこと,複素数に虚数 $$ i$$ を乗じると反時計回りの90度回転になること,などの説明が続くのだが略]........
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/complexplane.gif
1806年にアマチュア数学者Jean Ribert Argandは複素数と $$ i$$ に幾何学的な解釈を与えた.
複素数を乗ずることは,幾何学的には回転を表す.
◆3Dへ
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/plaque.jpg
Broone橋にある記念プレート,
Hamiltonが4元数を発明したときこの橋の下を散歩していた.
数学者William Rowan Hamilton卿はDublinのTrinity学寮の最も著名な息子であろう.
彼は最後の20年,複素数が2次元の回転を表すのと同様な3次元の回転の表現を捜し求めた.
人生の最後にHamiltonは,4元数という答えを見出した.
$$ q=a_{0}+a_{1}i+a_{2}j+a_{3}k $$
ここで,$$i^2=j^2=k^2=ijk=-1$$,   $$a_0, a_1, a_2, a_3$$は実数.
複素数でしたように,4元数を幾何学的に記述し,回転の表現に用いよう.
今度は2次元でなく3次元の回転だ.
$$i, j, k$$は,3次元内の基本平面:$$i$$はyz平面,$$j$$はxz平面,$$k$$はxy平面で,
外側向き法線はそれぞれ  x,-y,z方向である.
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/planes_web.jpg
$$i, j, k$$は,3次元空間の基本平面という幾何学的解釈ができる.

点$$a=(a_1,a_2,a_3)$$を,角$$β$$だけ原点を通る$$b=(b_1,b_2,b_3)$$軸の回りに
回転してみよう.2つの4元数$$q_1,q_2$$を$$b,β$$から作る.
$$ q_1=cos(β/2)+sin(β/2)(b_{1}i+b_{2}j+b_{3}k) $$
$$ q_2=cos(β/2)-sin(β/2)(b_{1}i+b_{2}j+b_{3}k) $$
a(x,y,z方向の単位ベクトルの線形結合)に,これら2つの4元数を乗じて
$$a'=q_1aq_2$$
この積で得られる点$$a'$$は,$$a$$を与えられた軸の回りに角度$$β$$だけ回転したものだ.
複素数は平面内の回転記述,4元数は3次元空間内の回転記述に用いられる.
ダブリンの橋の下を通りかかったとき,Hamiltonのひらめきは,3次元で物体を回転させる最も効率の良い方法であることがわかった.だが彼の新しい乗法で,だれも幸福にならなかった.
物理学者Kelvin卿は4元数のことを:”....美しく巧妙だが,とにかく,これに触れるものには,純粋邪悪である...と評した.とりわけ厄介なのは,2つの4元数を掛け合わせるとき,答えがかける順番で変わることだ.
この特性を非可換という.Hamiltonの積則をみれば,$$ij=k, ji=-k$$が示せる.
もし,$$i, j, k$$を単位平面のように扱えば,Kelvinや彼の同時代の人々を困らせた特性は,直接導ける.
◆映像を生活へ
Hamiltonの発明はいまや多数の物体を動かしたり,運動の創出へのグラフィック応用に使われる.コンピュータグラフィックで最も重要なツールの2つは,変形と補間である.
補間とキーフレーミング技術は,物体の初めと終わりの形と位置の特定と,その間の様子をコンピュータに計算させることだ.以下に示す映像のように:
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/teapots_web.jpg
一連のフレームにわたって徐々に変形するティーポットの形
諸君は,未発達のへびのアニメーション(Richard Wareham製作)を見ることができる.
ここではへび全体が,いくつかの特定な点の運動から,補間を用いてコンピュータで作られた.
[訳注:ファイルのダウンロード先は略]
変形は単純なものから複雑なものを作り出す方法だ.
下の映像のように,変形球を覆っている布は,普通の球面で起こる同じ光景を数学的な変形をして得られる.
変形も補間も速くて安定な数学的技術を必要とし,4元数関連の手法がこれを提供する.
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/sphere.png
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/deformed_sphere.png
◆ガーラムを信じさせる
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/motioncapture1.jpg
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/dots.jpg
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/skeleton.jpg
データは体の色々な部分に付属しているリフレクターの運動からキャプチャーされる.....
....骨格は,データに数学的にフィットさせる.
上で記述したテクニークは古典的なアニメーションでも基本的なツールである.
漫画キャラクターでは,我々はその結果が信じられるのはとても幸せだ.
しかし,人間のアニメーションでは,たちまち偽者とわかってしまう.
現実味ある動きを作り出すにはモーションキャプチャーが必要になる.
ロードオブザリングズのフィルムバーションから,ガーラムのような多数のキャラクターを作るにはモーションキャプチャーによる.これらは,身体,頭,肩,ひじ,ひざなどの回転点に,本当の人のリフレクターを付加して作られる.それぞれは,多重のカメラによってフィルム化されリフレクターの位置の変化をコンピュータに記録する.
骨格は3次元データでフィットされる.
最後に,上に記述された技術はすべて,骨格上に具体化し,生活し,呼吸し,動くキャラクターを作り出す.
もしまだ諸君がタイトルロールを完全に見るために留まっているなら,首尾よい映画作製で使われた種々の製作タレントに気づくだろう.
作者,ディレクタ,俳優,衣装デザィナー,プロップビルダー,....これらのクレジットリストが続々流れる.
しかし一つの名前がしばしばタイトルロールから忘れられている?数学だ.
今日の映画の多くは,光線追跡の幾何学,4元数による空間内の回転なくしてはできない.
次回は,あなたの映画シートで,CGスペクタクルを楽しむために,数学に対してポップコーンを掲げよう.ショーの隠れたスターへ.(訳:谷 克彦)
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著者
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/jl_small.jpg
Joan  Lasenbyはケンブリッジ,トリニティカレッジで数学を専攻し,電波天文学グループ物理学科のPhDをとった.
マルコーニの企業で短期間働いた後に,大学に戻り,現在,ケンブリッジ大学工学部の信号処理グループの講師や
トリニティカレッジの研究のディレクター,研究員である.
彼女の興味は,コンピュータビジョン,コンピュータグラフィックス,画像処理,モーションキャプチャと幾何代数の分野にある.

 

 

トランスサイエンスの時代に数学月間が必要

■2014/05/01--------------------------------------------------------------------------------------------

 数学月間SGK通信No002
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 数学月間SGK通信 [2014.05.03] No.002
 <<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■お知らせ
数学月間とは
2014年数学月間懇話会(第10回)

 

■大規模データの解析困難さ!
 2012年の米国MAMのテーマは,<数学,統計学とデータの洪水>でした.
統計学は,品質管理,医療・創薬・臨床,経済金融,統計調査,データマイニングなどの分野に係わり,現在ますます必要性が増しています..
 大規模データ(データの洪水)といっても,被験者1人から大量(P個)の特性データを採集できるのだが,解析する特性数より被験者の数(N個)がはるかに少ない(N<<P)という状態で,推論を行うのはとても困難である.
これを「新NP 問題」という.
 つまり,大規模データがあっても,データがむしろ不足している状況で,このような状態に適用できる統計的推論の新手法が必要とされています.

■不確かさで満ち溢れた世界!
私達は,観測データからモデル(現象を起こす仕組み)を推定する.
このモデルが,全ての観測データをよく説明したとしても,このモデル(サイバー世界)が真実であるがどうか誰にもわからない.将来,このモデルで説明できないデータが観測される可能性は消せないのだから.
かように私達の世界は,不確かなことで満ち溢れています.

■■編集後記 
 私達は,yes/noのデジタル思考に毒されているので,数学や科学は,yes/noの答えを出せるはずと思い込んでいます.あるいは,判断できないと知りつつ「専門家の判断」と言って責任転嫁に利用するのは政治の常套手段です.
真実はあるのだが,yesでもnoでもないのが真実.それを,「yes/noに2値化」するのは科学ではない.まことに理不尽な要求です.このようなグレーゾーンを,自分に都合の良いように2値化するのは,似非科学.
これを報道する大手メディアの数学リテラシーの欠如を憂います.論理に忠実に,不確かなものは不確かと言うのが正しいのです.
例えば,安全/危険のデジタル区分は何処にありますか?
これは,数学や科学で答えを出せません.その判断は,国民がどのような価値を選択するかの問題です.
これは,科学を超えて判断する<トランス・サイエンス>の課題になります.
数学や科学の結果を恣意的に利用されて,科学の信用を落とすことが心配です.
数学月間が今ほど必要な時代はありません.

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数学月間の会(SGK)
sgktani@gmail.com
http://sgk2005.org/
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数学月間の原点レーガン宣言

 ■2014/05/01----------------------------------------------------------------------------------------------

SGK通信No001
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 数学月間SGK通信 [2014.05.03] No.001
 <<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■■数学月間を知っていますか
7月22日?8月22日は数学月間です.
日本数学協会は,2005年に,7月22日?8月22日を数学月間と定めました.
この期間は,数学の基礎定数 π(22/7=3.142..) とe(22/8=2.7..) に因みます.
「数学が社会を支えていることを知り,逆に,社会の課題を数学が知る」機会です.この期間に,数学への関心を高めるイベントが各地で開催されるよう応援しています.SGK通信に情報をお寄せください.
毎年,月間初日の7月22日には,数学月間懇話会を開催しています.

■■お知らせ
数学月間懇話会(第10回)
日時●7月22日,14:00-17:10
プログラム●
1.人口の集合関数としての「民力指数」
 松原望(東京大学名誉教授,聖学院大学)
2.スパゲッテイを巡る旅,
 中西達夫(株・モーション)
3.数学月間の狙と効用,今年の米国MAM
 片瀬豊,谷克彦(日本数学協会)
会場●東京大学(駒場)数理科学研究科棟,002号室
最寄り駅●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ先●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
一般の方が対象ですご参加お待ちしています.直接会場においでください..
17:30からは,構内で各自払いの懇親会も予定しています.
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■■数学に関心を(第1回)

■米国MAMはレーガン宣言から始まった
連載第1回目は,米国MAMのスタートとなったレーガン宣言です.
全文を掲載します.
どなたの草稿か知りませんが,格調高く今日でも心を打ちます.
米国MAMのスタート時は月間行事ではなく,週間行事MAWでした.
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アメリカ合衆国大統領による宣言5461
 「国家的数学週間」1986年4月17日

宣言(National Mathematics Awareness Week)

 およそ5000年前,エジプトやメソポタミアで始まった数学的英知は,
科学・通商・芸術発展の重要な要素である.
ピタゴラスの定理からゲオルグ・カントールの集合論に至る迄,目覚ましい進歩を遂げ,さらに,コンピュータ時代の到来で,我々の発展するハイテク社会にとって,数学的知識と理論は益々本質的になった.
 社会と経済の進歩にとって,数学が益々重要であるにも拘わらず,数学に関する学課が米国教育システムのすべての段階で低下する傾向にある.
しかし依然として,数学の応用が医薬,コンビュータ・サイエンス,宇宙探究,ハイテク商業,ビジネス,防衛や行政などの様々な分野で不可欠である.
数学の研究と応用を奨励するために,すべてのアメリカ人が,日常生活において,この科学の基礎分野の重要性を想起する事が肝要である.
 上院の共同決議261で,国会が1986年4月14日から4月20日の週を,国家的な数学週間に制定し,この行事に注目する宣言を出す事を大統領に要請した.
 今日,アメリカ大統領,私ロナルド・レーガンは,
1986年4月14日から4月20日の週を国家的数学週間とする事を,ここに宣言する.
私はすべてのアメリカ人に対して,合衆国における数学と数学的教育の重要性を実証する適切な行事や活動に参加する事を勧告する.
その証拠として,アメリカ合衆国の独立から210年の西暦1986年の4月17日,ここに署名する.ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)
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米国MAM活動の様子(2006年当時の記事)

 各地の大学を中心に,講演会,講習会,展示会等が展開される.
婦人向け数学講習会,女性数学者の伝記奨励,数学に関する優れた記事を書いたジャーナリストの表彰,教え方の優秀な高校の数学教師と大統領が食事を共にする等々の行事が報告されています.[いかにも米国らしい]
 毎年,国家的に統一テーマが選定され,開発されたテーマ用素材は,電気自動車[2006年当時は先端だった]を使って配られる.
活動の総括と結果集計は、毎年,春に行い,次年度への企画の検討に入る.

力を結集し参加を奨励するために,AMS,MAA,SIAMのリーダー,部門長,選ばれた高校の先生,公共政策の代表者,関係する団体のリーダー達へ,その年のMAMの小包が送付される.これには,カラーポスター,はがき,現地の活動に役立つ素材のリスト,特別なMAM行事を行うにあたりメディア報道等を含んでいる.
 MAMの活動は,学部,先生,諸学年の生徒,両親,他の公共社会のメンバー,公的政策リーダーやビジネスマン達の幾千人もの意見で評価される.
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■MAMの年度別テーマ

1986数学----基礎的訓練
1987美と数学の挑戦
1988米国数学の100年
1989発見のパターン
1990通信数学
1991数学----それが基本
1992数学と環境
1993数学と製造業
1994数学と医学
1995数学と対称性
1996数学と意思決定
1997数学とインターネット
1998数学と画像処理
--MAWからMAMへ------
1999数学と生物学
2000数学は全次元に
2001数学と海洋
2002数学と遺伝子
2003数学と芸術
2004ネットワークの数学
2005数学と宇宙
2006数学とインターネット保全
2007数学と脳
2008数学と投票
2009数学と気候2013持続可能性の数学
2010数学とスポーツ
2011解明進む複雑系
2012統計学とデータの洪水
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注)略語表
MAM:Mathematics Awareness Week
MAM: Mathematics Awareness Month(4月)
AMS:American Mathematical Society米国数学会
MAA: Mathematical Association of America米国数学協会
SIAM: Society for Industrial and Applied Mathematics工業応用数学会
ASA: American Statistical Association米国統計学協会
JPMB: Joint Policy Board for Mathematics米国連結政策協議会
*)2006年から、ASAが加盟することになった.

■■編集後記
 数学月間は数学者のものではなく,一般人が対象です.
数学は,ものごとの本質を追求し,装飾を剥ぎとり,その本質をあぶりだします.
出来上がった抽象化された概念体系(定理)を,数学者は美しいと感じます.
数学とは,そのような理論体系であるべきことは確かです.
しかし,このようにして出来上がった抽象的な数学を見せられても,一般人は興味が湧かない.そこで,数学月間は<数学と社会の架け橋>として,数学が実際の課題に使われていることを示して行こうと考えています.

 大学の数学では,完成され抽象化された数学を,数学科の先生が教えます.
これは,数学科の学生に対する教程としてはオーソドックスなものですが,数学科でない学生には不親切であります.工学,薬学,経済学など,それぞれの専門に適した内容の数学が必要であると考えられ始めました.
このような議論は,英国のMMPや日本の「教育数学の構築」などで見られます.

20014年の数学月間懇話会プログラムの狙い

■2014/05/01---------------------------------------------------------------------------------------------

数学月間SGK通信
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数学月間SGK通信 [2014.05.01] No.000
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■■数学月間を知っていますか
7月22日~8月22日は数学月間です.日本数学協会は,2005年に,7月22日?8月22日を数学月間と定めました.
この期間は,数学の基礎定数 π(22/7=3.142..) とe(22/8=2.7..) に因んでいます.
「数学が社会を支えているのを知るとともに,逆に,社会の課題を数学が知る」機会でもあります.この期間に,数学への関心を高めるイベントが各地で開催されるよう応援しています.月間初日の7月22日には,数学月間懇話会を開催します.

■■お知らせ
数学月間懇話会(第10回)
日時●7月22日,14:00-17:10
プログラム●
1.人口の集合関数としての「民力指数」
 松原望(東京大学名誉教授,聖学院大学)
2.スパゲッテイを巡る旅,
 中西達夫(株・モーション)
3.数学月間の狙と効用,今年の米国MAM
 片瀬豊,谷克彦(日本数学協会)
会場●東京大学(駒場)数理科学研究科棟,002号室
最寄り駅●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ先●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
直接会場においでください.ご参加お待ちしています.
17:30より構内で各自払いの懇親会も予定しています.

■■数学に関心をもとう(連載)
米国MAMの紹介,英国MMPの紹介,日本の数学月間,数学まつりの紹介などを予定4月は,米国Mathematics Awareness Month(MAM)の実施月でした.
今年は,マーティン・ガードナー(サイエンス誌で長期にわたり数学コラムを連載)の生誕百年に当たるため,Maths, Magic and Mysteryがテーマでした.
米国MAMは,1986年4月18日のレーガン宣言により始まったもので,数学への関心を喚起し産業や社会への数学の融合を狙っています.米国MAMは毎年統一テーマを決めて国家を上げて実施されます.
選ばれるテーマは,複雑系,べき乗則,大量データの解析,など現代社会にタイムリーなもので,これらは,次号から順次紹介して行く予定です.
英国でも同じような活動 Millennium Maths Project (MMP)が実施され,生徒や学生,一般人への数学の啓蒙が行われています.これらも紹介しましょう.我々の数学月間や数学まつりの話題も紹介します.

■■編集後記
「漢字が読めないのは恥だが,数学は出来なくても構わない」と平気で語る大人たちのいる社会は問題です.
そのような両親では子供は数学嫌いになります.論理を軽視する社会では正義が成り立ちません.
私たちの世界は不確かで危うい.今,皆が信じている科学法則でも例外が発見されないとは限りません.
yes/noの答えを求めてもかないません.私たちは,デジタル思考ではなく確率を正しく理解し判断する必要があります.


数学月間の会(SGK)片瀬豊・谷克彦
sgktani@gmail.com
https://sgk2005.org/

化学の日

■2014/09/30--------------------------------------------------------------------------------------------

化学の日
「化学の日」に関する情報を数学月間応援者から頂きました:
日本化学会,化学工学会,日本化学工業協会,新化学技術推進協会の4団体が,
10月23日を「化学の日」,その日を含む月曜日から日曜日までの1週間を
「化学週間」と昨年制定しました.
早速今年は産官学一体となって,化学の普及活動が国民亭イベントとなるように
呼びかけています.数学月間でもこのような取り組みが必要です.

*今年の「化学の日」活動記事はCCI_67_787(1).pdf
イベント一例
*「化学週間」君たちの将来と化学の未来@東京大学
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/info.html?id=4165
の高校生向きの催しの情報もあります.

数学月間懇話会(10)

2014/07/23
数学月間懇話会(10)
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◆数学月間懇話会(第10回)
日時●7月22日,14:00-17:10

1.人口の集合関数としての「民力指数」

 松原望(東京大学名誉教授,聖学院大学)
 14:10-15:10
2.スパゲッテイを巡る旅,
 中西達夫(株・モーション)
 15:20-16:20
3.数学月間の狙と効用,今年の米国MAM
 片瀬豊,谷克彦(日本数学協会)
 16:30-17:10
ーーーー
会場●東京大学(駒場)数理科学研究科棟,002号室
最寄り駅●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ先●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
直接会場においでください(開場13:30).ご参加お待ちしています.
17:30より構内で各自払いの懇親会も予定しています.

2014/04/13 Globe朝日新聞記事「0」を教えない罪

2014/04/13
Globe朝日新聞記事

http://globe.asahi.com/feature/100201/memo/06.html

「0」を教えない罪


算数や数学を教える「遠山真学塾」を主宰する小笠毅(69)は、いまの学校での算数教育を嘆く。
小笠が例に挙げるのは、小学1年生の教科書の最初に出てくる数字だ。海外では、0(ゼロ)、1、……9と教えることが多い。しかし日本の教科書には、1、2、…9、10と並ぶ。
算数教育で最初に子どもがつまずくのが「位取り」の概念だが、「0」を教えずに「10」を示す。だから「じゅういちを書いてごらん」と言うと、「101」と書いてしまう子もいる。「0」を教わらずに、「10」を一つの数字として教わるから、「20」や「100」など、「0」が出てくる数字をどう理解したらよいのか戸惑ってしまうのだという。


本来、ものの仕組みを調べ、実態に迫ろうとするのが、数学だ。いまの教育は、理屈も説明せずに覚えさせる。覚えられなかったり、なぜそうなるのか躊躇したりしていると置いていかれる。
小笠は言う。「本当は、数は楽しい『数楽(すうがく)』。現状は、『数が苦』になってしまっている」

2014/04/13 Globe朝日新聞記事

2014/04/13
Globe朝日新聞記事

http://globe.asahi.com/feature/100201/memo/05.html
友愛は無限か

数をめぐっては、未解決の問題がたくさんある。


(1)「双子素数」は無限に存在するか
双子素数とは、11と13、857と859など、差が2の素数の組のこと。「素数が無限個ある」ことは、紀元前から証明されているが、双子素数が無限に存在するのかは、今もわかっていない。


(2)4以上のすべての偶数は、2つの素数の和で表すことができる
ゴールドバッハ予想と呼ばれる未解決問題だ。6=3+3、8=3+5、10=3+7…というように、4以外の偶数は、2つの素数の和で表されることが、コンピュータにより、20桁ぐらいまでのすべての偶数について成り立つことは確認されている。


(3)「友愛数」は無限に存在するか
友愛数は、小川洋子の小説『博士の愛した数式』にも登場する。異なる自然数の組で、自分自身を除いた約数の和が、相互に等しくなる数の組をいう。
一番小さな友愛数は、220と284。220の自分自身を除いた約数は、1、2、4、5、10、11、20、22、44、55、110で、足すと284。一方、284の自分自身を除いた約数は、1、2、4、71、142で、その和は220となる。友愛数の組が無限に存在するのかは、証明されていない。

2014/04/13 Globe朝日新聞記事ヒマワリとダビンチ

2014/04/13
Globe朝日新聞記事
 
http://globe.asahi.com/feature/100201/memo/04.html

ヒマワリとダビンチ

自然界には、多くの「数学」が潜む。
例えば「フィボナッチ数」。0、1、1、2、3、5、8、13、21……。1+2=3、2+3=5というように、隣り合った数の和が次の数になる数列だ。実は、このフィボナッチ数が、ヒマワリに姿を現す。ヒマワリの種は、中心に向かってらせん(渦巻き)状に並ぶが、このらせんの本数は決まってフィボナッチ数のどれかに一致すると言われている。
梅や桜の花びらは5枚、コスモスの多くは8枚だ。あたかも植物が数学を知っているかのようだ。


このフィボナッチ数の隣り合う比をとると、数が大きくなるにつれ、1.618に近づく。1対1.618…は黄金比と呼ばれ、「もっとも美しく見える比」として、レオナルド・ダビンチの絵画など、芸術の世界に頻繁に登場する。人間の「美的感覚」にも数学が潜んでいる

2014/04/13 Globe朝日新聞記事

2014/04/13
Globe朝日新聞記事
 
http://globe.asahi.com/feature/100201/memo/03.html

数学と社会/「数学の誤用」 監視も必要

産業と数学の急接近を、数学界全体が歓迎しているわけではない。特に、美や真理に魅せられた数学者にとっては「数学は実社会に役立たないからこそ、純粋で美しい」との美意識が根強い。

近代日本の代表的な数学者、高木貞治は、数学の社会への貢献の必要性を説きつつ、「『実用』と言っても、本当には実用にはならない。実用的というのは、つまり融通が利かないということだ」と語った。目先の実利で「応用」を考えた数学は、大成しないというわけだ。

コンピューターの原理を考案した数学者フォン・ノイマンは、原爆開発のマンハッタン計画で中心的役割を果たした。一方で、同時期に活躍した数学者、ノーバート・ウィナーは戦後、「もし研究が無責任な軍関係者の手に渡れば、必ず害になる」として、軍や兵器開発への協力を拒絶し、医療分野などへの応用を望んだとされる。

数学者で哲学者のバートランド・ラッセルは反核・反戦運動を展開。「ラッセル・アインシュタイン宣言」を出した。これには湯川秀樹も参加した。学生時代に物理を専攻した応用数学者の津田一郎・北大教授は「核分裂を自然現象として記述するのはいいが、爆弾に使うといった瞬間に悪魔になる。数学や科学が持つ『美意識』とは違うモラルが要求される」と話す。

数学者の遠山啓はかつて「数学の役割の増大に伴い、数学者の社会的役割も増大する。社会的にどのような責任をとるべきか、議論せねばならない」と主張。「数学の誤用がいかに大きな害を社会に及ぼしうるかも知っておかねばならない」と指摘した。

Globe朝日新聞記事 数学と社会/他分野との連携模索

2014/04/13
Globe朝日新聞記事

http://globe.asahi.com/feature/100201/memo/02.html

数学と社会/他分野との連携模索

日本の文部科学省科学技術研究所も06年、「忘れられた科学―数学」という報告書で、産業分野における数学を「構図や構造を支配する原理を見いだすための強力なツール」と位置づけた。

大学での取り組みも始まっている。

九州大は06年、数学科の博士課程の一部で、企業での実習を義務づける「インターンシップ制」を導入。当初、260社に案内したが、「何をさせたらいいのかわからない」と受け入れはゼロ。しかし徐々に浸透するうち、特許や共同研究にも発展する成果も生まれている。若山正人・数理学府長は「企業側にもようやく、社会インフラとして数学に注目しようという風潮が芽生えてきた」と語る。

文科省から委託を受けた九大、東大と日本数学会、新日鉄は、人文系も含めた国立大学の研究者5000人(数学、物理は除く)に、「数学と科学・産業」の問題意識を探るアンケートを実施。回答者の約3分の2が「自分の研究に数学の力を借りたい」と答えたという。

北大では、数年前から「数学質問箱」を設け、学内の他分野の研究者からの相談に乗っている。社会紛争を研究する経済学者、たんぱく質の結晶構造の生物科学者、一票の格差を検証しようとする法学者などが訪れた。08年には「数学連携研究センター」を設置した。

日本数学会では「様々な科学を縦糸とすれば、数学は横糸。同じような壁にぶつかっている課題に、横のネットワークで連携する仕組みを作りたい」(坪井俊・理事長)と、他分野や産業界と連携する枠組みを検討しているという。

2014/04/09 SGK通信(2014-16)数学月間について_片瀬

2014/04/09
SGK通信(2014-16)数学月間について_片瀬

片瀬豊氏から,「数学月間」について以下の投稿がありました.
数学月間の栞.docx
〈数学月間)の狙いと効用.docx
クリックしてお読みください.

プレセンテーションs-数学月間の狙いと効用_片瀬豊.pdf

資料 日・米数学月間物語_片瀬.pdf

2014/03/26 SGK通信(2014-08)公開シンポジウム報告

2014/03/26
SGK通信(2014-08)公開シンポジウム報告

「数理モデリング(数学と諸科学・産業)との連携の観点から)」
3月26日(13:00-15:30)日本学術会議にて,以下の5つのプレゼンテーションがあった.
楠岡成雄(東大),高田章(旭ガラス),山本昌宏(東大),長松昭男(キャテック),三村昌泰(明大).[このあと引き続きパネルディスカッションが行われたが報告は略]

**** これらをまとめて,その要点を以下に報告する(谷) ****

諸科学分野の研究者(モデリング発案)と数理解析の連携が望まれる.
連携で生れるのは,「現象数理科学」と呼べるような分野である.

工業(産業界)では,現場で使えるシミュレータを望んでいる.
これは,オーダー評価ができることが重要で,真実追求とも違う筋書のようである.
このためのモデリングは,経験則と第一原理(=物理や数学理論)でもなく,この両極端の中間にある.
少しでも現実に合った単純化されたモデリングは,その分野の研究者と数理解析者との連携でできる.
◆示された実例
・ガラスの結晶化のシミュレーションに結晶化を加速するために,変換されたポテンシャル地形を用いた.
・高炉の熱伝達のシミュレーション.数十か所のモニター・センサーのデータから,異常な温度変動の事前予知ができる.
・粉じん拡散のシミュレーション.セシウム137の拡散シミュレーション.実データを説明できる.

2014/02/23 SGK通信(2014-06)公開シンポジウム情報

2014/02/23
SGK通信(2014-06)公開シンポジウム情報

3月には数学連携のいくつかの公開シンポジウムがあります.
以下の情報は, 出口隆之さんからです.
???
◆情報環境と人
-「突き抜ける」さきがけ研究の成果から- 
http://www.human.jst.go.jp/index.html
日時:3月1日(土)14:00?17:15
場所:7階 みらい館HALL(デモ展示は、1Fのインタラククティブ発表と連携)
主催:独立行政法人 科学技術振興機構振興機構(JST)
問い合わせ:さきがけ「情報環境と人」研究領域 領域事務所
e-mail: sympo@human.jst.go.jp TEL:075-315-5261
事前登録制となっておりますが当日参加も受け付けます。
こちらの詳細ページhttp://www.human.jst.go.jp/index.html から登録をお願いします。

◆数学連携ワークショップ
---生命科学、材料科学における数理---
日時3月16日(日)9:30-12:00
会場学習院大学北1号館201教室
主催文部科学省、統計数理研究所
共催日本数学会

プログラム
9:30--12:00 背景説明(文部科学省)
9:40--10:10 発表1「転写機構解明のための数理モデルとシミュレーション」
(大田佳宏 東京大学大学院 数理科学研究科 数理科学連携基盤センター/生命動態システム科学推進拠点/特任准教授)
10:10--10:20 質疑応答
10:20--10:50 発表2「Mixing time of molecules inside of nanoporous gold」
(Daniel M. Packwood 東北大学 原子分子材料科学高等研究 機構 助教)
10:50--11:00 質疑応答
11:00--11:30 発表3「生物と数学とロボットと」
(小林亮 広島大学大学院理学研究科 数理分子生命理学専攻/生命動態システム科学推進拠点/教授)
10:30--10:40 質疑応答
11:40--12:00 総合討論
参加費無料 事前予約不要
http://mathsoc.jp/meeting/gakushuin14mar/renkeiWS.html

◆日本学術会議公開シンポジウム
「数理モデリング(数学と諸科学・産業との連携の観点から)」が開催されます。
会場は日本学術会議講堂で、13時開催です。事前申し込み等は不要ですので、参加を希望される方は直接会場へお越し下さい。

公開シンポジウム
「数理モデリング(数学と諸科学・産業との連携の観点から)」
日時:2014年3月26日(水)13:00?17:30
会場:日本学術会議講堂
主催:日本学術会議
共催:日本応用数理学会、日本統計学会、日本数学会 
参加費無料 事前申し込み不要
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/184-s-3-1.pdf
ーーー以上

2014/02/20 SGK通信(2014-05)サイエンスカフェ情報

2014/02/20
SGK通信(2014-05)サイエンスカフェ情報

「サイエンスカフェみたか」の以下の情報を岡崎昌史さんから頂きました:
?????
日本の伝統的な文化である折り紙は数学でも研究されています。太陽電池パネルを小さく畳み、宇宙で広げる際に折り紙の手法が使われている他、産業界やファッションでも採用されています。折り紙が意外なところで使われていることや「折り畳みの数学」について、石田さんからわかりやすく話していただきます。また、いろいろな試作品を持って来られますのでご覧ください。最後に、折り紙で簡単なフラワーポットを作ってみましょう。コーヒーなどソフトドリンクとクッキーを食べながら気楽に話をお聞きいただき、自由に質問をしてください。ご参加をお待ちしています。
 折り紙の手法を使った試作品は石田さんの下記のサイトで見ることができます。
  http://sachi7.webnode.jp/
 ◆期日:3月6日(木)午後6時半?8時半
 ◆場所:三鷹ネットワーク大学 三鷹駅南口徒歩2分 三鷹駅前協同ビル3階        0422?40?0313
 ◆ゲスト:石田祥子(いしだ・さちこ)さん
明治大学先端数理科学インスティテュート研究員。2004年京都大学大学院航空宇宙工学専攻修士課程修了。数値流体力学と流体の安定性を学ぶ。民間企業で振動と騒音を研究。東京工業大学大学院機械物理工学専攻研究員を経て、12年4月より現職。折り紙の数理に基づいた構造設計と折り紙構造物の振動音響解析を研究。
 ◆定員:25人(先着順) ネットワーク大学事務局(0422?40?0313、
  E-mail:info@mitaka-univ.jp)へお申込みください
 ◆参加費:800円(茶菓子代を含みます)

Globe朝日新聞記事 数学と社会/「数学力」が国力を左右

2014/02/16
Globe朝日新聞記事
 
http://globe.asahi.com/feature/100201/memo/01.html
数学と社会/「数学力」が国力を左右

「数学が戦争に勝たせた。数学者が日本軍の暗号を解き、原子爆弾を作った。君らもその数学者だ。アメリカの未来は、君らの手の中にある」。映画「ビューティフル・マインド」の一幕。第2次世界大戦直後、数学者の卵たちを前に、大学教授が語った言葉だ。

国家と数学の密かなかかわり。そして、数学が新分野を切り開き、「産業の核」になるのではないか。ここ数年、産業界は「数学の実用化」への期待感を、にわかに高めている。

経済協力開発機構(OECD)は2007年、ワークショップ「産業における数学」を初めて開いた。翌年にまとめた報告書では、産業界が直面している問題の多くに数学的要素が含まれている、と指摘。数学と産業が協力することが双方の利益になり、国家経済にもメリットがあると強調している。

米国でも06年、ブッシュ大統領(当時)が、国際競争力の強化策として、数学教育の向上を一般教書演説で打ち上げた。これは98年に「米国での数学研究が欧州に後れを取っている」と危機感をあらわにした全米研究会議の報告書が出たのがきっかけだ。

ドイツでは08年、ダイムラーやルフトハンザなど様々な分野の企業トップらが数学の有用性を語った『数学が経済を動かす』(邦訳はシュプリンガー・ジャパン)という本を出版。前書きで、教育・研究相は「数学は私たちの日常生活にどれだけ浸透しているか。数学によって、現在住む世界をよりよく理解できる」と熱っぽく語る。

同じく数学の「先進国」であるフランスの高等科学研究所も09年、「産業と数学」に関するシンポジウムを開いた。

2014/02/15 SGK通信(2014-03)RIMS研究集会の様子

2014/02/15
SGK通信(2014-03)RIMS研究集会の様子

 

 

 

 

 

 

◆教育数学の一側面?“高等教育における数学の規格とは”
RIMS研究集会,研究代表者:岡本和夫(2014.2.12?2.14,京都大学RIMSにて)が開催されました.
最終日は雪でしたが,3日間熱心な議論が行われました.
プログラム→program pdf
主に学習の質保証・参照基準の観点から,教育数学への意見交換がなされました.
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◆以下は,数学月間の会(SGK)から見た感想です:
工学部においても数学科で教える内容の数学で間に合わせるのではなく,それぞれの専門に必要なレベルにあった教育数学が望ましい.非数学系に対しての数学も同様に必要である.
数学月間の視点からは,工学や社会の課題に直面して既成の数学を学習せよという姿勢ではなく,数学者の方が入り込み,ニーズに合った数学を示し解いて見せることが,数学の信頼獲得に非常に重要であると考える.今回の教育数学の提案の中にもそのような方向性がうかがえる議論が多かった.
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