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平面群

繰り返し模様$$p6$$と$$p6mm$$★

■第16の類は国際記号で$$p6$$,ロシア式記号で$$(a/a):6$$です.

以下のペルシャのパターン(Owen Jones)の例では,黒い6角形の内の花は厳密には6回対称ではありませんが,これを6回対称とみなすと,周りに風車がまわっているような6回軸の配列のパターンが見えます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6回回転軸が通る点を頂点とする平行4辺形が単位胞.非対称要素モチーフが6個で単位胞を埋めます.

 エッシャー作品の例

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■第17の類は国際記号で$$p6mm$$,ロシア式記号で$$(a/a)・m・6$$,あるいは$$(a・a):m・6$$です.

$$p6$$の対称性に鏡映面が加わりますが,並進軸に平行な鏡映面も,垂直な鏡映面もあります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非対称要素である直角3角形が12個で単位胞を埋めます.

 

 対称性の法則をもっと利用すると,アーティストがデザインパターンのモチーフを変形するのが容易になる.

繰り返し模様$$p3m1$$と$$p31m$$★

■第14の類は,国際記号で$$p3m1$$,ロシア式記号で$$(a/a):m・3$$と記述します.対称性$$3・m$$の図形を60°で交差する等価な2つの軸$$(a/a)$$に沿って並進させて得られますが,鏡映面(赤色)の入り方が,並進軸(青色)に直交している.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非対称要素(黄色)が6個で単位胞を埋める.

■第15の類は,国際記号で$$p31m$$,ロシア式記号で$$(a/a)・m・3$$と記述します.並進の格子$$(a/a)$$は同じですが,鏡映面の入り方が,並進軸方向に平行である.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の図で鏡映面は格子に重なっている.非対称要素(黄色)が6つで単位胞を埋めている.

■この両者の区別は多くの書物で混乱がみられます.分かりにくいので,もう少し詳しく説明を加えましょう:

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美しい幾何学,p.100,p.110より引用

 

繰り返し模様$$p3$$★

壁紙模様の対称性の第13番目の類は,対称性3の図形を,60°で交差する2つの等価な並進軸$$(a/a)$$で並進して得られる.

国際記号で$$p3$$,ロシア式記号で$$(a/a):3$$です.今回から始まる残り5つの対称性の類(第13~17)は,正3角形のメッシュに属します.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

等価な図形が隙間なく平面を充填しているこの対称性のパターンを以下に示します.モチーフ(非対称要素)は,正3角形メッシュ座標を作っている頂点に集まる曲線で囲まれた形です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非対称要素(モチーフ)3つで,単位胞の面積に等しくなります.鏡映対称はありません.

以下の例は,アルハンブラの有名なモザイクです.これは対称性$$p3$$の例です.ただし,色の区別はしていません.

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考)以下の「千鳥」のパターンの対称性は$$p3$$ではありません.何故でしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(解答)上図の「ちどり」のパターンは,単位胞の菱形の頂点に6回軸がありますので,$$p3$$ではありません.このパターンは,後ででてくる$$p6$$の対称性です.単位胞の中を,2つの千鳥図形で埋まますが,この千鳥の形は,等価なモチーフにさらに3分割できますから,非対称要素は,千鳥を3分割したものになります.

17table

\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|}
\hline
\textgt{国際記号} & p1 & p2 & pm & pg & cm & pmm2 & pmg2 & pgg2 & cmm2 \\[0mm]
\hline
\textgt{ロシア式記号} & \left( b/a \right) 1 & \left( b/a \right) :2 & \left( b:a \right) :m & \left( b:a \right) \tilde{b} & \left( a/a \right) /m & \left( b:a \right) :2m & \left( b:a \right) :m:\tilde{a} & \left( b:a \right) :\tilde{b}:\tilde{a} & \left( a/a \right) :2m \\[0mm]
\hline
& & & & & \left( c/b:a \right) :m & & \left( b:a \right) :2\tilde{a} & \left( b:a \right) :2 \odot \tilde{a} & \left( c/b:a \right) :2m \\[0mm]
\hline
\textgt{対称要素} & \begin{minipage}[b][95pt]{130pt}
\includegraphics[width=130pt,height=95pt]{tex17tplaneable_001.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][86pt]{121pt}
\includegraphics[width=121pt,height=86pt]{tex17tplaneable_002.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][85pt]{93pt}
\includegraphics[width=93pt,height=85pt]{tex17tplaneable_003.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][86pt]{97pt}
\includegraphics[width=97pt,height=86pt]{tex17tplaneable_004.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][80pt]{97pt}
\includegraphics[width=97pt,height=80pt]{tex17tplaneable_005.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][88pt]{103pt}
\includegraphics[width=103pt,height=88pt]{tex17tplaneable_006.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][112pt]{141pt}
\includegraphics[width=141pt,height=112pt]{tex17tplaneable_007.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][113pt]{132pt}
\includegraphics[width=132pt,height=113pt]{tex17tplaneable_008.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][113pt]{131pt}
\includegraphics[width=131pt,height=113pt]{tex17tplaneable_009.bmp}
\end{minipage}
\\[0mm]
\hline
\end{array}
\ \\
\ \\
\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|c|}
\hline
\textgt{国際記号} & p4 & p4mm & p4gm & p3 & p3m1 & p31m & p6 & p6mm \\[0mm]
\hline
\textgt{ロシア式記号} & \left( a:a \right) :4 & \left( a:a \right) :4m & \left( a:a \right) :4 \odot \tilde{a} & \left( a/a \right) :3 & \left( a/a \right) :m & \left( a/a \right) m & \left( a/a \right) :6 & \left( a/a \right) :m \\[0mm]
\hline
& & & & & & & & \\[0mm]
\hline
\textgt{対称要素} & \begin{minipage}[b][116pt]{121pt}
\includegraphics[width=121pt,height=116pt]{tex17tplaneable_010.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][116pt]{115pt}
\includegraphics[width=115pt,height=116pt]{tex17tplaneable_011.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][114pt]{119pt}
\includegraphics[width=119pt,height=114pt]{tex17tplaneable_012.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][109pt]{147pt}
\includegraphics[width=147pt,height=109pt]{tex17tplaneable_013.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][98pt]{145pt}
\includegraphics[width=145pt,height=98pt]{tex17tplaneable_014.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][99pt]{143pt}
\includegraphics[width=143pt,height=99pt]{tex17tplaneable_015.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][98pt]{145pt}
\includegraphics[width=145pt,height=98pt]{tex17tplaneable_016.bmp}
\end{minipage}
& \begin{minipage}[b][98pt]{147pt}
\includegraphics[width=147pt,height=98pt]{tex17tplaneable_017.bmp}
\end{minipage}
\\[0mm]
\hline
\end{array}

繰り返し模様$$p4mm$$★

繰り返し模様の対称性の第12類は,$$4・m$$の図形を正方形単純格子$$(a:a)$$で並進させて得られる.

この対称性は,国際記号で$$p4mm$$,ロシア式記号で$$(a:a):4・m$$と記述される.
この対称性のパターンの例は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非対称要素(モチーフ・タイル)は,単位胞の1/8です.

この対称性の日本の伝統模様はたくさんあります.
例えば,以下の七宝つなぎなどです.イスラムの模様との交流もあったと思われます.

 

 

 

 

 

繰り返し模様$$p4gm$$★

対称性の第11類です.国際記号$$p4gm$$,ロシア式記号$$(a:a):4・\tilde{a}$$

このパターンは,4回対称の単位胞を,2つの等価な互いに直交する映進面で繰り返し広げて得られる.
縦,横の映進面$$\tilde{a}$$は,群$$4・m$$に同型な,法による点群$$4・\tilde{a}$$の4回軸を通る.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上の図はこの対称性のエジプトのパターンと言いたいが,厳密に見ると4回軸はなく2回軸になっている.
(間違い探し:4回対称性を破っているところを探しなさい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 縦,横の太い赤線は鏡映面.細い赤線は映進面.映進面の交点に4回回転軸がある.太い線の交点には2回回転軸が生じている.

単位胞の面積は,非対称要素(モチーフ)が8個で出来ている面積に等しい.

 

 

 

 

 

以下の図は,pngtreeのサイトから借用したもので,今回の対称性の図の例です.

繰り返し模様$$p4$$★

繰り返し模様の対称性の第10類は,国際記号で$$p4$$,ロシア式記号で$$(a:a):4$$.単位胞の図形の対称性$$4$$を,直交する軸(従って,正方形のメッシュが格子)に沿って並進して得られるパターンで,$$(a:a):4$$で記述される.以下の2つのエジプト模様の例は,ちょっと見るとこの対称性のようですが,厳密には,この対称性を満たしません.

 どこがいけないのか間違い探しをしましょう.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 解答

左のパターンでは,背景にストライプがありますので,4回対称軸は2回対称軸に低下します.そして,格子は直交している必要がなくなり,対称性は$$(a:a):2=(b/a):2$$になります.
右のパターンでは,コイルの渦巻きは2回回転対称のようですし,花は花弁が10枚のようですから,単位胞の中身は全体として4回回転対称になりません.

 

等価なパーツが隙間なく平面を充填するパターンの例
この対称性のパターンは,正方形の格子並進,4回軸がありますが,鏡映面はありません.モチーフ(非対称要素)は単位胞の1/4(例えば薄桃色)です.パターン全体を見ると,それぞれのパターンには対掌体(風車の回り方が逆なもの:chiral,enantiomorphs)が存在します.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この対称性のエッシャー作品の例を以下に示します. 

 

 

   

美しい幾何学p.99より

 

 

 

 

繰り返し模様$$pmm2$$★

今回は壁紙模様の第9類で,国際記号で$$pmm2$$,ロシア式記号で$$(b:a):2・m$$です.

対称性$$2・m$$の単位胞図形を長方形の格子$$a$$軸,$$b$$軸で並進してパターンができます.
以下の図は,この対称性のパターンとはわずかに違うのですが,どこが違うかわかりますか?
間違い個所を見つけてください.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 例えば,ダイアモンドを頂点とする長方形が単位胞ですが,この単位胞の中身の対称性は,どうでしょうか.中心に2回回転軸はありますか?確かに,垂直に鏡映面はあります.よく見ると,コイルの巻き方は鏡映対称を満たしていますが,2回回転対称とは矛盾します.従って,厳密に言うと単位胞の対称性は$$2:m$$でなく$$m$$ですので,パターンの対称性は,$$(b:a):m$$,国際記号では$$pm$$の繰り返し模様になっています.
それでは,厳密にこの対称性$$(b:a):2・m$$である別の例を探してお知らせください.日本やイスラムの伝統模様で見つかると良いのですが.不思議なことになかなか見つかりません.自分で作った方が速いかもしれません.

もし,先に掲載した例を修正するなら,渦巻きコイルでなく同心円に変更します.蔓の重なり方も紙面上下の立体感を失くして平面内にある様に変更します.表紙の図のようになります.ただし,蔦の重なり方を修正していないので,2回対称を満たしますが,鏡映対称に矛盾します.両者を満たすには,蔦の重なりが,平面上にある様に修正する必要があります.しかし,あまり面白いデザインではないので,もっと良いデザインに皆様ご挑戦ください.

繰り返し模様$$cmm2$$★

17種類の壁紙模様の対称性の第8類は,
国際記号で$$cmm2$$,ロシア式記号で$$(a/a):2・m$$ です.

点群$$2・m$$の図形を,並進の大きさは等しいが対称面(赤線)には斜交する軸(青線)$$(a/a)$$に沿って並進させて得られるので,$$(a/a):2・m$$と記述できる.
あるいは,面心格子$$c$$[黒いダイヤに注目すると面心格子が見えてきます]で,同じ点群$$2・m$$の図形を並進させると得られる.
菱形格子[単純格子]$$(a/a)$$の単位胞の面積は,面心格子[2格子点を含むものが単位胞]$$(c/b:a)$$の単位胞の面積の1/2です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

$$(c/b:a):2・m$$
$$(c/b:a)$$が面心格子を表し,$$m$$は赤い鏡映面を表し,鏡映面の交点には紙面に垂直に2回軸がある.

$$(a/a):2・m$$
菱形格子(単純格子)$$(a/a)$$を採用すると,このように記述できる.
これら両者の記号は同じ対称性を表現している.$$(c/b:a):2・m=(a/a):2・m$$

このような対称性で,等価なパーツだけで平面を隙間なく(重なることもなく)充填するパターンは次のようなものです.釣鐘の形が非対称要素(モチーフ・タイル)で菱形の単位胞(単純格子)は2つの釣鐘型からなり,面心格子の単位胞は,4つの釣鐘型からなります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の例は,この対称性の日本の伝統文様「菱文(ひしもん)」です.この図はネットからお借りしました.

 

 

 

 

 

 

 

 

■平面群の記号,$$(c/b:a):2・m$$や$$(a/a):2・m$$の記述に使うのは,群を定義する最小の対称要素[群の生成元]だけ記載します.下図を見てください.完成した平面群の対称要素のなかには,生成元だけでなく,細い赤い線[映進面]や白抜きの赤い2回軸が生じています.

菱形格子と,面心格子のそれぞれの単位胞を下図に着色して置きました.

 

繰り返し模様$$pm$$★

第7類の壁紙模様の対称性は,国際記号で$$pm$$,ロシア式記号で$$(b:a):m$$です.この対称性の模様は分かりやすく非常に単純なものになります.

表紙の画像(pngtreeの無料画像サイトからお借りたイスラム模様)は,この対称性に分類できます.以下の画像は,ちょっと見るとこの対称性のようですが,反S字のコイルになっているので鏡映面$$m$$はありません.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下の模様も,$$(b:a):m$$の対称性の例です.日本の伝統模様のサイトからお借りしました.釘抜繋ぎという模様らしい.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一般的な,パターンは,上の図のようです.
長方形の単位胞の半分が非対称領域のタイルになります.