掲示板

平面群

★平行多辺形の分割で平面群を導く

230の結晶空間群を数え上げた一人にフェドロフがいます.フェドロフはどのようにして空間群の数え上げを行ったのでしょうか.

注)
230種の3次元の結晶空間群の数え上げの研究は,フェドロフ(露,ぺテルスブルグ大,鉱物学教授),シェンフリーズ(独,フランクフルト大,数学教授),バーロウ(英,ロンドンの実業家)により,1890-1895の間に,それぞれ互いに独立に完成しました.フェドロフの結果が完璧であったことは,3者の認めるところであり,3次元結晶空間群はフェドロフ群とも呼ばれています.

3次元の結晶空間を対象とする前に,2次元の結晶空間を対象にして,結晶空間(=離散的な周期空間,デジタル化された空間)の構造を記述する群論を十分に理解するのが良いと思います.それは,3次元やそれ以上の高次元にも対応できる応用力となります.

2次元の結晶空間で,同一の平行多辺形タイルで平面をタイル張りする(重なりもなく隙間もない)ことが,この課題のスタートとなります.

 

 

 

 

 

次に,1つのタイルを同価な部分に分割します.この分割は,タイルの対称性を使って,そのタイルの非対称要素と言われる同価部分に分割します.
1つのタイルを分割できる同価部分の数は,タイルの点群の位数に等しい数です.こうして分割された部分の形には対称性がなく,非対称要素と呼ばれます.表紙に掲載した平面のタイル張りができる8つの平行多辺形から出発します.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平行多辺形の同価部分への分割方法
これら80種類のタイルは,それぞれ,並進だけで平面を張り詰めることのできる平行多辺形です.着色した部分はそれぞれの平行多辺形の非対称部分で,1つの例外(15番)を除いて,そのタイルの点群の対称操作を非対称部分に作用させ,そのタイルの全体を作ることができます.

 

 

 

 

 

このタイル張りで生じる平面群は$$p2 \tilde{a}\tilde{b} $$

 

15番のタイルの場合には,濃い黄緑色に着色した非対称要素に,タイルの点群$$2mm$$の対称操作を作用させても,薄い黄緑色に着色した部分へ移動し重ねることができません.この移動には映進操作$$\tilde{a}$$が必要です.
今,タイルの並進で無限に広い2次元平面を張り詰めるので,映進操作も対称操作に含めることができます.

これらの図形の点群を調べると,点群が重複しているものがたくさんあります.全部で17種類の平面群に整理することができます.
注)15番のタイル張りは,以下の$$p2gg$$⑧に対応.
3次元結晶空間への発展を見る

 

▲群論基礎テキスト3

[定義]部分群subgroup: 
$$H$$が群$$G$$の部分群であるとは,次の条件1°,2°を満たすものである.
$$1 ^\circ $$ $$G \supset H$$

$$2 ^\circ $$ 群$$G$$の2項演算$$ \circ $$で,$$H$$が群をなす.

■$$H$$が群をなす条件は,次のどちらかと同値である:
$$2 ^\circ -1$$: $$a, b \in H$$$$ \to $$$$a \circ b \in H$$かつ$$b^{-1} \in H$$($$G$$が有限群ならば後者は不要) 
$$2 ^\circ -2$$: $$a, b \in H$$$$ \to $$$$a \circ b^{-1} \in H$$

[演習]条件$$2 ^\circ -1$$と$$2 ^\circ -2$$は同値であることを証明せよ.
■$$2 ^\circ -2$$$$ \to $$$$2 ^\circ -1$$の証明 
$$a, b \in H$$の条件は,$$b=a$$を選ぶと,$$a \circ a^{-1}=e \in H$$が成立つ.単位元が存在.
次に,$$e, b \in H$$から出発すると,$$e \circ b^{-1}=b^{-1} \in H$$が導かれる.$$b$$の逆元の存在.
最後に,$$a, b^{-1} \in H$$から出発すると,$$a \circ b \in H$$.
■$$2 ^\circ -1$$$$ \to $$$$2 ^\circ -2$$の証明
$$a, b \in H$$の条件から,$$b^{-1} \in H$$が成立つので,
次に,$$a, b^{-1} \in H$$から出発すると,$$a ^\circ b^{-1} \in H$$.
----- 
[定義]商群
商群に関する定理
----------------------------------------
準同型写像とは

---------------------------------------------- \\

 

 

 

 

 

 

 


写像$$\phi $$は,群$$\left( G, \circ , e, x^{-1} \right) $$から群$$\left( G', \bullet , e', x'^{-1} \right) $$の中への準同型写像とします.
[準同型定理]
(1) $$G$$の像$$\textrm{Im}\phi $$は,$$G'$$の部分群になる.
(2) $$\phi ^{-1}(e') \equiv \textrm{Ker}\phi $$は,$$G$$の正規部分群になる.これを写像$$\phi $$の核kernelとよぶ. 
(3) $$G$$の各元$$x$$の$$\textrm{Ker}\phi $$を法とする剰余類を$$\bar{x}$$とすると,剰余類$$\bar{x}$$ $$\to $$$$\phi (x)$$の写像は,
    商群$$G/\textrm{Ker}\phi $$から群$$G'$$中の$$\textrm{Im}\phi $$への同型写像になる.
(証明)
(1) $$^{ \forall }a', ^{ \forall }b' \in \textrm{Im}\phi $$ $$\to$$ $$(a')^{-1}b' \in \textrm{Im}\phi $$を証明する.
    $$^{ \exists }a, ^{ \exists }b \in G:a'=\phi (a), b'=\phi (b)$$
$$(a')^{-1}b'=\phi (a)^{-1}\phi (b)=\phi (a^{-1}b)$$
しかるに,$$a^{-1}b \in G$$であるから,$$(a')^{-1}b' \in \textrm{Im}\phi $$
(2) $$^{ \forall }u, ^{ \forall }v \in \textrm{Ker}\phi $$ $$\to$$ $$\phi (u)=\phi (v)=e'$$
$$\phi (u^{-1}v)=\phi (u)^{-1}\phi (v)=e'$$, ゆえに,$$u^{-1}v \in \textrm{Ker}\phi $$
よって,$$\textrm{Ker}\phi $$は$$G$$の部分群である.

$$^{ \forall }a \in G$$に対して,$$\phi \left( aua^{-1} \right) =\phi (a)\phi (u)\phi (a)^{-1}=e'$$
ゆえに,$$aua^{-1} \in \textrm{Ker}\phi $$
よって,$$\textrm{Ker}\phi $$は$$G$$の正規部分群である. 
(3)  $$^{ \forall }x_{1} \in \bar{x}$$に対して,$$^{ \exists }u \in \textrm{Ker}\phi $$があり,$$x_{1}=xu$$
$$\phi (x_{1})=\phi (x)\phi (u)=\phi (x)e'=\phi (x)$$
    一つの剰余類に属する$$G$$の元の写像の行先は同一
$$^{ \forall }\bar{x}, ^{ \forall }\bar{y} \in G/\textrm{Ker}\phi $$(群)
$$\mit\Phi (\bar{x})\mit\Phi (\bar{y})=\mit\Phi (\bar{xy})=\phi (xy)=\phi (x)\phi (y)$$
$$\mit\Phi $$ は,$$G/\textrm{Ker}\phi$$ $$ \to $$$$\textrm{Im}\phi $$の準同型写像であることがわかったので,
     これが,同型写像であることを証明するには.単射であること:
     $$\mit\Phi (\bar{x})=\mit\Phi (\bar{y})$$ $$\to$$ $$\bar{x}=\bar{y}$$であることをいう.
$$\phi (x^{-1}y)=\phi (x)^{-1}\phi (y)=e'$$ ($$ \because \phi (x)=\phi (y)$$)
ゆえに,$$x^{-1}y \in \textrm{Ker}\phi $$,つまり,$$y=x \cdot \textrm{Ker}\phi $$ , $$\bar{y}=\bar{x}$$


[同型定理]
群$$G$$において,$$H$$を部分群とし,$$N$$を正規部分群とする.
このとき,
(1) $$HN(=NH)$$は$$G$$の部分群をなす.
(2) $$N$$は$$HN$$の正規部分群になり,
    $$H \cap N \equiv D$$は$$H$$の正規部分群となる.
(3) $$HN$$中の$$N$$に関する剰余類は,$$hN$$の形に書かれる.
  そして,これを$$H$$中の$$D$$に関する剰余類$$hD$$に写すとき,
 商群$$HN/N$$から,商群$$H/D$$の上への同型が得られる:
 $$HN/N \cong H/D$$
(証明)
( 1) $$(HN)^{-1}(HN)=N^{-1}H^{-1}HN=NHN=HNN=HN$$,$$HN \subset G$$は群.
$$N, H$$はそれぞれ群であるので$$N^{-1}=N, H^{-1}H=H$$,および,$$N \vartriangleleft G$$を用いた.
( 2) $$HN \vartriangleright N$$は自明.2つの部分群の共通集合は群をなすので$$D$$は群.
$$hDh^{-1} \subset hHh^{-1}=H$$,かつ,$$hDh^{-1} \subset hNh^{-1}=N$$
ゆえに,$$hDh^{-1} \subset D$$,$$H \vartriangleright D$$である.
( 3)剰余類の型$$hN$$は自明.
$$h_{1}N=h_{2}N \Longleftrightarrow h_{1}^{-1}h_{2}N=N \Longleftrightarrow \left. \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }
& h_{1}^{-1}h_{2} \in N \\[0mm]
& h_{1}^{-1}h_{2} \in H
\end{array} \right\}  \Longleftrightarrow h_{1}^{-1}h_{2} \in D \Longleftrightarrow h_{1}D=h_{2}D$$
同型写像: $$h_{i}N \longrightarrow h_{i}D$$

 

▲群論基礎テキスト2

[定義]剰余類 
群$$G$$とその部分群$$H$$があるとき,
$$a \in G$$に対し,$$aH=\left\{ ah;h \in H \right\} $$を,$$H$$に関する$$a$$の左剰余類という.
$$H$$が正規部分群であれば,左剰余類と右剰余類は一致する:$$aH=Ha$$
群$$G$$がAbel群なら,そのすべての部分群は正規部分群であり,左剰余類と右剰余類は一致する.
-------------------------------------------------------
[定義]同値関係
群$$G$$と部分群$$H$$があり,$$a, b \in G$$のとき,$$a^{-1}b \in H$$ならば,$$a,b$$は同値$$a$$~$$b$$とする.
この同値関係で,類別を行ったものが,左剰余類$$b \in aH$$である.
集合$$M$$の元に,同値関係$$ \sim $$があれば,$$M$$の同値類別$$M/ \sim $$(直和分割)がただ一つの方法でできる.
同値関係とは,次の同値律を満たす関係である:

1° 反射律,$$a \sim a$$
2° 対称律,$$a \sim b$$ → $$b \sim a$$
3° 推移律,$$a \sim b$$,かつ,$$b \sim c$$ → $$a \sim c$$
-------------------------------------------------------
[定理1] 
$$a, b \in G$$のとき,群$$G$$の部分群$$H$$の左剰余類が$$aH=bH$$であることと,$$a^{-1}b \in H$$とは同値である.
(証明)
$$b \in bH=aH$$であるから,$$a^{-1}b \in H$$
逆に,$$a^{-1}b=h_{1} \in H$$であるなら,$$b=ah_{1} \in aH$$
もし,$$^{ \forall }b' \in bH$$をとれば,$$b'=bh$$となる$$^{ \exists }h \in H$$がある.
ゆえに,$$b'=ah_{1}h \in aH$$である.従って,$$bH \subset aH$$.
$$H$$は群であるから,$$a^{-1}b \in H$$なら,$$\left( a^{-1}b \right) ^{-1}=b^{-1}a \in H$$である.
ゆえに,$$^{ \exists }h_{1} \in H$$が存在し,$$b^{-1}a=h_{1}$$,$$a=bh_{1}$$.
もし,$$^{ \forall }a' \in aH$$をとれば,$$a'=ah$$となる$$^{ \exists }h \in H$$がある.
ゆえに,$$a'=bh_{1}h \in bH$$である.従って,$$aH \subset bH$$.
$$aH=bH$$が結論される.

[定理2]
$$aH \neq bH$$ならば,$$aH \cap bH= \phi $$
(証明)
$$c \in aH \cap bH$$とする.
$$c=ah_{1}=bh_{2}$$となる適当な$$^{ \exists }h_{1}, ^{ \exists }h_{2} \in H$$が存在する.ゆえに,$$a^{-1}b=h_{1}h_{2}^{-1}$$
$$H$$は群であるから,$$a^{-1}b \in H$$となる.定理1により,$$aH=bH$$.

[定理3]
$$G=a_{1}H \cup a_{2}H \cup \cdots \cdots \cup a_{n}H$$, $$^{ \forall }a_{i} \in G$$, ($$i=1,2, \cdots ,n$$)$$n$$は$$G$$の位数.
しかし,適当な$$a_{i}$$を$$r$$個選び,$$r$$個の直和で表現できる.$$r$$は一意に決まる. 
$$G=a_{1}H+a_{2}H+ \cdots \cdots +a_{r}H$$

[演習] 
■定理3で,直和分解の数$$r$$は一意であることを証明せよ.
■$$G=Ha_{1}+Ha_{2}+ \cdots \cdots +Ha_{r}$$ならば,$$G=a_{1}^{-1}H+a_{2}^{-1}H+ \cdots \cdots +a_{r}^{-1}H$$であることを証明せよ.
(証明)
$$^{ \forall }c \in G$$をとると,$$^{ \exists }a_{i}$$があり,$$c^{-1} \in Ha_{i}$$.すなわち,$$^{ \exists }h_{1}$$があり,$$c^{-1}=h_{1}a_{i}$$
$$c=a_{i}^{-1}h_{1}^{-1} \in a_{i}^{-1}H$$. ゆえに,このような$$r$$個の剰余類で表現できる.
次に,$$Ha_{i} \cap Ha_{j}= \phi $$ → $$a_{i}^{-1}H \cap a_{j}^{-1}H= \phi $$を証明する.
対偶の証明:
$$a_{i}^{-1}H \cap a_{j}^{-1} \neq \phi $$ならば,定理2により,$$a_{i}^{-1}H=a_{j}^{-1}H$$と完全に重なる.
$$ \forall c \in a^{-1}_{i}H=a_{j}^{-1}H$$なので,$$c=a_{i}^{-1}h_{3}=a_{j}^{-1}h_{4}$$と表現でき,$$c^{-1}=h_{3}^{-1}a_{i}=h^{-1}_{4}a_{j}$$
ゆえに,$$c^{-1} \in Ha_{i}=Ha_{j}$$

[定義]部分群の指数
群$$G$$の位数を$$g$$,部分群$$H$$の位数を$$h$$とする.$$g/h=r$$.(直和分解の剰余類の数)
部分群$$H$$の位数は群$$G$$の位数の約数である[Lagrangeの定理].
$$r$$を部分群$$H$$の群$$G$$における指数という.

[定義] 正規部分群
$$^{ \forall }a \in G$$に対して,$$aHa^{-1}=H$$(あるいは,$$aH=Ha$$)であるとき,部分群$$H$$は正規であるという.$$H$$が群$$G$$の正規部分群であることを,$$G \vartriangleright H$$と標記する.
・群$$G$$がAbel群ならば,すべての部分群は正規である.
[定義]2つの自明な正規部分群(自分自身および,$$\left\{ e \right\} $$)以外に,正規部分群を持たない群を,「単純群」という.

2つの左剰余類の積に関して,$$aH \cdot bH=abH$$が成立する.
[演習]剰余類の代表元が異なっても,$$aH=a'H, bH=b'H$$ → $$abH=a'b'H$$が成立する.
(証明)
$$abH=a(bH)=a(b'H)=aHb'=a'Hb'=a'b'H$$
-------

[定義]剰余群(商群)factor group $$G/H$$
$$G \vartriangleright H$$のときに,剰余類全体は,$$H$$を法とする群$$G/H$$をなす.
[演習]$$G/H$$は群をなすこと(以下の条件)を確認せよ.
1°$$\left( aH \cdot bH \right) \cdot cH=aH \cdot \left( bH \cdot cH \right) $$
2°$$eH=H$$が単位元
3°$$aH$$の逆元は,$$a^{-1}H$$

[定義]中心化群
群$$G$$の部分群$$S$$があり,$$S$$のすべての元と可換な$$G$$の元の集合を$$Z(S)$$と標記し,$$S$$の中心化群という.$$S=G$$のときは,$$Z(G)$$を$$G$$の中心という.$$Z(G)$$は可換群である.
[定理]$$Z(S)$$は$$G$$の部分群である.
(証明)
$$x, y \in Z(S)$$ $$\Rightarrow$$ $$xy^{-1} \in Z(S)$$を証明する.
$$^{ \forall }s \in S$$(部分群)に対して,$$xs=sx$$と$$s^{-1}y=ys^{-1}$$すなわち,$$y^{-1}s=sy^{-1}$$から出発する.
$$xy^{-1}s=xsy^{-1}=sxy^{-1}$$,ゆえに,$$xy^{-1} \in Z(S)$$.

[定義]共役部分群,共役元
群$$G$$の部分群$$H$$があり,$$^{ \exists }a \in G$$に対して得られる$$a^{-1}Ha$$を$$H$$の共役部分群という.
[演習]$$H$$が部分群であるとき,$$a^{-1}Ha$$は群となることを証明せよ.
(証明) $$a^{-1}h_{1}a, a^{-1}h_{2}a \in a^{-1}Ha$$のときに,
$$\left( a^{-1}h_{1}a \right) \left( a^{-1}h_{2}a \right) ^{-1}=a^{-1}h_{1}aa^{-1}h_{2}^{-1}a=a^{-1}h_{1}h_{2}a \in a^{-1}Ha$$
単位元$$(a^{-1}h_{1}a)(a^{-1}ea)=a^{-1}h_{1}a$$,逆元$$(a^{-1}h_{1}a)(a^{-1}h_{1}^{-1}a)=a^{1}ea$$も存在することは,$$H$$が群であるから当然である.

[定義]共役集合

群$$G$$の部分集合$$S$$に対して,$$a \in G$$で変形した$$S$$の共役集合$$a^{-1}Sa$$が,自分自身に等しい$$a^{-1}Sa=S$$(自己共役のとき),$$G$$の元$$a$$からなる集合$$N(S)=\left\{ a \in G:a^{-1}Sa=S \right\} $$は,$$G$$の部分群をなす.
[演習]$$S$$の自己共役集合を作る$$N(S)$$は群をなすことを証明せよ.
(証明)
$$a \in N(S)$$ならば,$$a^{-1} \in N(S)$$となる.従って,$$a, b \in N(S)$$なら,$$ab^{-1} \in N(S)$$となり群の条件を満たす.

[定義]正規化群
$$H$$が$$G$$の部分群であるとき,$$H$$の自己同型を作る$$N(H)$$を正規化群[すべての代表元系の作る群]という.

正規化群$$N(H)$$のなかで,$$H$$は正規部分群である:$$N(H) \vartriangleright H$$と言えるか.

 これを証明せよ.

▲群論基礎テキスト1

 

第1章 群の概念

[定義]
$$G=\left\{ a, b, c, \cdots \right\} $$ 集合$$G$$が群groupと呼ばれるのは,次の公理を満たす場合である: 
0) $$a, b \in G$$,  $$a \circ b \in G$$ 2項演算が定義される
1) $$\left( a \circ b \right) \circ c=a \circ \left( b \circ c \right) $$ 結合律
2) $$(a \circ e=)e \circ a=a$$        $$e$$:単位元,左単位元
ある元$$e$$(ただ一つ)が存在し,すべての$$ \forall a \in G$$に対して$$e \circ a=a$$が成り立つ.
3) $$ \forall a \in G$$に対して, $$(a \circ x=)x \circ a=e$$となる$$x$$が(ただ一つ)存在する.
$$x$$:$$a$$の逆元,左逆元
1)~3)を群の公理という.

[演習]群の公理の中で,”ただ一つ”というのは公理に含めなくてもよい(導くことができる).
■単位元が2つあったとし,それらを$$e, f \in G$$とする.
$$ \forall a \in G$$, $$a \circ f=f \circ a=a$$  ①
$$a \circ e=e \circ a=a$$ ②
$$e=f \circ e=e \circ f=f$$
①      ② 
■$$a$$の逆元が2つあったとし,それらを$$x, y \in G$$とする.
$$y \circ a=a \circ y=e$$, $$x \circ a=a \circ x=e$$
$$\left( y \circ a \right) \circ x=e \circ x=x$$
$$y \circ \left( a \circ x \right) =y \circ e=y$$
(注)これらの証明で,左単位元と右単位元(左逆元と右逆元)は同一ということが使われている.

[演習]
■  $$(a^{-1})^{-1}=a$$
(証明) $$a \circ a^{-1}=a^{-1} \circ a=e$$
$$(a^{-1}) \circ (a^{-1})^{-1}=(a^{-1})^{-1} \circ (a^{-1})=e$$
$$(a^{-1})$$の逆元は一意であるから,$$(a^{-1})^{-1}=a$$
■ $$\left( a \circ b \right) ^{-1}=b^{-1} \circ a^{-1}$$
(証明) $$(a \circ b)^{-1} \circ (a \circ b)=e$$
$$(b^{-1} \circ a^{-1}) \circ (a \circ b)=e$$

[定義]
$$G$$が可換群(Abel群) $$ \forall a, \forall b \in G$$, $$a \circ b=b \circ a$$
このときの演算$$ \circ $$は,乗法と呼ばずに加法$$+$$と呼ぶ.加法の単位元は”$$0$$”と呼ぶ.
無限群と有限群: 群$$G$$の元の数[群の位数]が無限か有限かによる.

[演習]
群の左単位元はまた右単位元でもある. $$^{ \exists }e, ^{ \forall }a$$: $$e \cdot a=a$$ → $$a \cdot e=a$$
元$$a$$の左逆元はまた右逆元でもある.  $$^{ \exists }x, ^{ \forall }a$$: $$x \cdot a=e$$ → $$a \cdot x=e$$
(証明) 
$$e \cdot e=e$$ → $$e$$は$$e$$の左逆元であり,かつ,右逆元であることを意味する.
$$a \cdot e=a \cdot (e \cdot a) \cdot a^{-1}=a \cdot a \cdot a^{-1}=a$$

★群の例

1. 整数$$Z=\left\{ 0, \pm 1, \pm 2, \cdots \right\} $$: 加法群をなす.
2. 実数$$R$$: 加法で群
3. $$R-{0}$$: 乗法で群

4. 正3角形の3次の対称群(置換群)

 

 

 

 

対称操作の表

 



■乗積表
鏡映面$$\sigma _{1}, \sigma _{2}, \sigma _{3}$$は,図形のそれぞれの頂点に固定されて変換されるとして,群の乗積表を作りなさい.

 

 

 

 

 

 


乗積表

乗積表からわかること:
・群を作る$$ \longrightarrow $$ 3次の対称群(有限群,位数は6) 
・可換群(Abel群)ではない. 

5.$$n$$次正則行列の集合
6. $$n$$次直交行列 $$O(n)$$
$$A \in O(n)$$のとき,$$\left| \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
A
\end{array} \right| $$を求めよ.$$\left| \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
A
\end{array} \right| =\textrm{det}A$$は行列式の記号
$$\left| \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
^{t}AA
\end{array} \right| =\left| \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
E
\end{array} \right| $$ $$\Longrightarrow$$ $$\left| \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
A
\end{array} \right| ^{2}=1$$ $$\Longrightarrow$$ $$A= \pm 1$$
これを回転群と呼ぶ. 

■$$A \in SO(2)$$のとき,適当に$$\theta $$をとって,
$$A=\left( \begin{array}{@{\,} cc @{\, } }
\textrm{cos}\theta & -\textrm{sin}\theta \\[0mm]
\textrm{sin}\theta & \textrm{cos}\theta
\end{array} \right) $$ と書くことができる.

[定義] 元の位数$$r$$
元$$a$$の位数$$r$$とは,$$a^{r}=e$$となる最小の自然数である.
このような$$r$$がないときは,元$$a$$は自由元である. 

----------------------------- 
集合の2元間に或る2項演算$$ \circ $$が定義され,その演算$$ \circ $$に関して,或る「構造」を持つ集合を代数系といいます.
演算$$ \circ $$は結合法則 $$\left( x \circ y \right) \circ z=x \circ \left( y \circ z \right) $$が成立つ.
演算$$ \circ $$について,結合法則だけが存在する代数系を「半群」という.
-----------------------ーーーーーー 
[定義]群の軌道

群$$\mit\Gamma $$を,集合$$X$$上に作用する「変換群」とします.
群$$\mit\Gamma $$による$$a \in X$$の軌道とは,$$\mit\Gamma (a)=\left\{ \sigma (a)|\sigma \in \mit\Gamma \right\} $$.
$$X \ni a, b$$に対して,$$b$$が$$a$$の軌道に含まれるという関係は,$$X$$における同値関係になる.
軌道は同値類である.集合$$X$$を軌道で類別できる.
$$X$$の中に軌道がただ一つしかない場合:
つまり,$$^{ \forall }x, ^{ \forall }y \in X$$に対して,$$^{ \exists }\sigma \in \mit\Gamma $$があり,$$\sigma (x)=y$$のとき,$$\mit\Gamma $$は推移的という.
[演習]軌道に属するという関係は,同値関係であることを確認せよ.
$$a$$に軌道に$$b$$が含まれるとせよ:$$b \in \left\{ \sigma (a)|\sigma \in \mit\Gamma \right\} $$であるから,$$b=\sigma _{i}(a)$$となる$$^{ \exists }\sigma _{i} \in \mit\Gamma $$がある.$$\mit\Gamma $$は群であるから,$$\sigma _{i}^{-1} \in \mit\Gamma $$があり,$$\sigma _{i}^{-1}(b)=a$$となり,$$b$$の軌道に$$a$$が含まれる.
ゆえに,$$\mit\Gamma (a)=\mit\Gamma (b)$$.これは,対称律を保証する.反射律,推移率も同様に成立する.






 

 

▲群論基礎

■群という代数系
---------------------------- 
[定義] 集合$$G$$が次の4つを満足するとき,集合$$G$$は群と呼ばれる.
1° 2項演算の存在: $$^{ \forall }a, ^{ \forall }b \in G \to a \circ b \in G$$
2° 結合法則: $$a \circ (b \circ c)=(a \circ b) \circ c$$
3° 単位元の存在: ある元 $$e \in G$$(ただ一つ)が存在し,
  $$a \circ e=e \circ a=a$$が,すべての $$a \in G$$に対して成り立つ.
4° 逆元の存在: 各 $$a \in G$$に対して,
  $$x \circ a=a \circ x=e$$となる $$x \in G$$が,いつも(一意に)存在する.

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ある集合を考える.この集合の元間に,ある演算$$ \circ $$(2項演算)が定義されて,その演算について,ある"構造"を持つ集合を,代数系($$ \circ $$系)という.群は一つの代数系の例である.
演算$$ \circ $$について結合的(1°,2°のみ成り立つ)である代数系は半群という.
(例題)正3角形に対する対称操作の乗積表を完成せよ.
ただし,$$ \bigtriangleup 123$$を動かしても,$$\sigma _{1},\sigma _{2},\sigma _{3}$$の位置は変わらないとする.

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

[定義] 元の数を群の位数(order)という.
元$$a$$の位数(order)とは,$$a^{n}=e$$となる最小の$$n$$のことである.
[定義] 部分群: $$H$$は$$G$$の部分群であるとは,
$$H \subseteq G$$で,$$H$$は$$G$$と同じ演算で群を作る.

群$$G$$の部分群$$H$$には,群$$G$$と単位元のみが作る群$$E$$が必ずある.
特に,$$E \subset H \subset G$$なら$$H$$を真部分群という.
剰余類分解
$$G$$を部分群$$H=\left\{ E,\sigma _{1} \right\} $$の剰余類で展開しよう.