数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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DNAの2重らせん構造が解明されて,ノーベル賞を受賞したのは1962年のことです.
受賞者の一人ワトソン博士は,後に本(二重らせん,講談社文庫(1986))を出版し話題になりました.
もう旧聞に属しますが,今回はこの二重らせんがテーマです.
カバーのDNAの図はlivedoorblog美惑星フィロソフィアからお借りしました.
このブログの主は存じ上げませんが,SARS,MERSが同定されてまもないころ(2015年6月)に,コロナ・ウイルスは,一本鎖のRNAリボ核酸でアビガンか効きであることに言及されています.
DNAの2重らせんの話がしたくなりました.
■Rosalind Franklin,ロザリンドは,ロンドン大学のキングス・カレッジに職を得て,X線結晶学者としてDNA結晶の構造解析を行っていた.DNAには水分含量の差によって2タイプ(A型とB型)があることを明らかにし,それらを別々に結晶化し,X線回折写真撮影に成功した(1952年).X線構造解析では単結晶をつくることがとても大事で,難しい仕事です.物質によっては方法をいろいろ変えてもどうしても結晶が育たない(微細な沈殿になってしまう)ので,私もずいぶん苦労し断念したことがあります.
撮影したX線回折写真を見れば,X線結晶学者なら,らせん構造があることはすぐわかります.
らせんのピッチや周期はすぐ計算できます.
しかし,彼女のまとめた非公開研究データのレポートは,予算権限を持つクリックの指導教官のマックス・ペルーツが入手し,クリックの手に渡ってしまいます.一方,ウイルキンス(彼女が赴任する前からDNAの研究をしていた)は,
ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所のワトソンとクリックに彼女の撮影した写真を内緒で見せてしまいます.
ワトソンは,複製の能力のあるDNAのモデルを考えていたので,彼女の写真を見て2重らせん構造モデルを確信します.
■ワトソン,クリックの論文は,Nature(1953.4.25)に掲載されます.同じ号に,ロザリンド・フランクリンらの論文,
ウイルキンスらの論文を,同号に同時掲載の体裁(合わせて3篇)をとっています.
ワトソン,クリック,ウイルキンスがノーベル賞を受賞したとき(1962),
フランクリンはその4年前に37歳で亡くなっています.
■X線構造解析の定石は,回折像の逆Fourier計算し,DNAの詳しい構造を見つけることです.ロザリンドの時代にはコンピュータはなく,Fourier合成の計算は,数表Beevers-Lipson短冊を用いて行う手計算(多分機械式のタイガー計算機でしょう)でありました.また,試料たんぱく質の結晶化も不十分で,回折像のスポットもぼんやりしている写真しか撮影できませんでした.
良い結晶を作製して,X線自動回折系で6,000個もの反射スポットを得て,コンピュータで計算し精密な構造を得るのは1981年になってからです.
◆Matt Parker:エジンバラ・フェスティバルでは切符完売のコメディ・ショーを持ち,ロンドン数学会の人気講師という権威ある肩書きも持つのは,マット・パーカーただ一人だろう.
彼は,数学とコメディという彼の2つの情熱の混合に没頭している.
オーストラリアの数学教師であったが,今はロンドンに住み,コメディと数学コミュニケータをしている.
彼は,数学への情熱を,著書,ラジオ,TVショー,新聞,学校訪問,ライヴ・コメディ・ショー,そして時折の街頭パフォーマンスで広めている.
彼には,ロンドンのクイーン・メリー大学の数学フェローという公的契約もある.
⇒ http://www.standupmaths.com/
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◆マット・パーカーが鮮やかに演じる「27枚のカード・トリック」の背景には3進法がある.しかし,見ているとそんな背景は思いもつかず,楽しくも不思議である.
ビデオの後半で,マットがトリックの仕組みに3進法が使われていることを解説するので納得できる.この27枚のカードトリックはマーチン・ガードナーが1956年に発表したものだ.マットはこの発展として47枚カードのトリックを演じるが,7進法を使うものであってマットの発明である.
Martin Gardner; Mathematics, Magic and Mystery(ドーバー,1956)
27枚カードのトリックは次のように演技される:
観客に任意のカード1枚(例えば,スペードA)を選ばせ,27以下の数字(例えば18)を選ばせる.演技者は,選んだカードが何んであるか知らない.選ばれたカードを含む27枚のカードは十分に混ぜられ,裏向きの束に積み上げられている.演技の最後には,27枚のカード束の上から18番目の位置に,選ばれたカードを移動しておく必要がある.つまり,スペードAの上に17枚のカードがあるようにしたい.
この演技のプロセスに,3進法が利用されている.
3進法で17を表すと17=2x3^0+2x3^1+1x3^2で,221と表記される (ここでは,1の位から先に表記していて,慣れている表記と逆順なのに注意せよ).
演技者は,27枚のカードを,3つの山に,1枚づつ配り分けていく.選ばれたカードがどの山に入っているか聞いてから,出来上がった3つの山を,さりげなく重ね合わせる.
再度,同じ操作を繰り返し,結局全部で,操作が3セット繰り返されて,得られた3つの山を1つの束に重ね合わせると,不思議なことに求めるカードは,上から18番目に置かれている.
このトリックのミソは,3つの山を重ねる順番にある.重ねる機会は3回あるのだが,各回,どの山を上(Top=0),中(Middle=1),下(Bottom=2) の何処に置いたら良いか?
さりげなく手際が良いので見分け難いが,マットの仕組み説明で良くわかる.18番目に置くには,17の3進法表記221を使い,求めたいカードの入っている山の位置を,1回目は底(Bottom),2回目は底(Bottom),3回目は中(Middle)になるように積み上げるのだ.もし,10番目の位置に置きたければ,9=0x3^0+0x3^1+2x3^2 で,3進法表記では 001なので,1回目,2回目,3回目の積み上げでは,Top,Top,Middleの位置に置くようにすれば,求めるカードは10番目の位置になる.
国立数学博物館MoMath(National Museum of Maths)は,米国唯一の数学博物館で,
ニューヨークのマディソン・スクエアに,2012年12月15日オープンしました.
ここには30以上の対話型の展示があります.
ホールの展示で目立つのは,正方形の車輪の3輪車が滑らかに走る光景(動画の2分半経過ごろ)です.
たいへん興味深いので,床面の曲線がどのような形であるかを計算してみました.
ここに掲載する結果(Fig.1)は,2013年7月22日の数学月間懇話会(第9回)で
谷が発表したものです.
■Fig.1 四角い車輪
床の形状
ついでに,応用問題として計算した3角形の車輪の結果を(Fig.2)に掲載します.
■Fig.2 三角の車輪
床の形状
注)2013年10月2日に開設された東京理科大学「数学体験館」にも,同じような4角い車輪の車の展示があります.
今年の「とっとりサイエンスワールド」は,新型コロナウイルスのため急遽中止になりました.残念です.
とっとりサイエンスワールド---美しい数学・楽しい算数---は,鳥取大学,地域学部,矢部敏昭教授(現副学長)が中心になって2007年にスタートし,今年で第14回でした.発足時は,東部(鳥取市)だけの開催でしたが,すぐに西部(米子市)と東部の2か所で開催するようになり,4年目からは,西部,東部,中部(倉吉市)の3会場で開催に広がりました.鳥取県,鳥取県数学教育会が主催,鳥取県教育委員会,各地区教育委員会が後援し,小・中学校の先生方が活動の中心になっています.多数の高校生,短大生のバランティア参加もあり頼もしい.いまやすっかり地域から愛されるイベントになり,子供,両親から老人までが楽しみに集まる数学フェスティバルとなっています.
この13年の間に,豪雪被害の年も,台風被害の年も,倉吉地震の年もありましたが,乗り越えて毎年開催することができました.2020年は中止せざるを得ない状況は残念なことです.
とっとりサイエンスワールドは,毎年夏休みの日曜日に開催(無料のイベント)されます.昨年の例では,鳥取(7/28),米子(8/4),倉吉(8/25)に開催され,各会場に1,000人程度の参加者があります.私も万華鏡のワークショップで参加しています.万華鏡作りの参加者は3会場で400人ほどの子供や大人です.
■数学まつり
多くの人々が数学に関心をもつようになるイベントを数学月間では応援しています.講演会,講習会,数学カフェ,ワークショップ,様々な活動形態がありますが,子供たちが楽しめて数学感覚が身に着く”数学まつり(フェスティバル)”というのがあり,英国のMMPでも米国のMAMでも大変人気があります.
国立数学博物館MoMath(National Museum of Maths)は,米国唯一の数学博物館で,ニューヨークのマディソン・スクエアに,2012年12月15日オープンしました.ここには30以上の対話型の展示があります.
東京でもMoMathのような常設の数学展示のあるものは,科学技術館,リスーピア,東京理科大「数学体験館」(2013年オープン)などがあります.一度見学されると良いでしょう.
Do Math 同志社中学校数学博物館www.facebook.com
■同志社中学校数学博物館 Do★Math
同志社中学校数学博物館 Do★Mathは,2016年6月にオープンしました.Do★Mathは,生徒以外にも,一般市民にも公開されています.
一つの学校の教育の場で実現した,米国のMoMath(数学フェスティバル)や,米国の地域の数学サークル活動を思わせる意欲的な活動です.今年の数学月間懇話会(ZOOMによるリモート開催の計画.詳細が決まり次第http://sgk2005.saloon.jpに掲載します)のテーマの一つとして,Do★Mathを園田毅先生(同志社中)にご案内いただく予定です.