数学月間の会SGKのURLは,https://sgk2005.org/
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■連立線形微分方程式を解く
例えば,次の連立線形微分方程式は,行列を使って表現できます.
{ddtx=yddty=−x
ddt[xy]=[01−10][xy] ⟺ ddt→x=M→x
このような微分方程式の解は,初期値を →x0=→x(t0) として,
→x(t)=→x0+∫tt0M→x(τ)dτ となります.
これの計算は,逐次近似で無限の関数列を作れば実行できます.
→x1(t)=→x0+M→x0(t−t0)
→x2(t)=→x0+∫tt0M→x1(τ)dτ=→x0+M→x0(t−t0)+M2→x0(t−t0)22
→xn(t)=n∑0Mn→x0(t−t0)nn!
ここで,n⟶∞とすると収束して,次の指数関数の解が得られます.
→x(t)=eM(t−t0)→x0 ただし,eMtの定義は eMt=∞∑01n!(Mt)n
この解は確かに, ddteMt=MeMtを満たします.
■線形化
現実の連立微分方程式は非線形がほとんどです.
平衡点の近傍でテーラー展開し,局所的に方程式を線形化します.
例えば,一般的な反応拡散系の方程式でf(u,v),g(u,v)は線形とは限りません.
{∂u∂t=Du∂2u∂x2+f(u,v)∂v∂t=Dv∂2v∂x2+g(u,v)
u(x,t),v(x,t)(それぞれ2種類の物質の濃度)を,平衡点のまわりでテーラー展開し,線形近似します.ただし,平衡点を(0,0)とする(このようにしても一般性を失わない).
1次の偏微分係数が作る行列(ヤコビアン)Jを定義し,次のように線形化する.
J≡[∂f∂u∂f∂v∂g∂u∂g∂v]≡[fufvgugv], [f(u,v)g(u,v)]=[fufvgugv][uv]
fu,fv,gu,gvは,平衡点(0,0)での偏微分係数です.
線形化された反応拡散方程式を以下に示します.Du,Dvはそれぞれの拡散係数(常に正).
{∂u∂t=Du∂2u∂x2+fuu+fvv∂v∂t=Dv∂2v∂x2+guu+gvv
u(x,t)=u∗eσtsinαx, v(x,t)=v∗eσtsinαx と置くと
{σu∗=−α2Duu∗+fuu∗+fvv∗σv∗=−α2Dvv∗+guu∗+gvv∗
行列形式で書くと,
[u∗v∗]=1σ[fu−α2Dufvgugv−α2Dv][u∗v∗]
A≡[fu−α2Dufvgugv−α2Dv]
は平衡点(0,0)におけるヤコビアン.
■解の安定性
[u∗v∗]=1σA[u∗v∗]⟹P[u∗v∗]=1σPAP−1P[u∗v∗]
PAP−1=[λ100λ2]
が対角化されると,固有値 λ1,λ2,固有ベクトルは P[u∗v∗]
平衡点 (0,0) の解が安定であるためには,すべての固有値が負でなければならない.
λ1<0,λ2<0 が必要十分であり,λ1+λ2<0では少しゆるい条件になる.
Aの固有値を求めるのは面倒なので,対角化によりTrは変わらないTr[A]=Tr[PAP−1]を利用し,ゆるく評価すると,Tr[A]=fu+gv−α2(Du+Dv)<0
拡散項がない(Du=Dv=0)時の安定性から fu+gv<0が成立するので,
例えば, fu>0,gv<0,|fu|<|gv|が得られます.
uは加速剤,vは阻害剤として働き,互いの解が安定化することがわかります.