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Tex練習: 反応拡散方程式の解の安定性(数学的追補)

■連立線形微分方程式を解く

例えば,次の連立線形微分方程式は,行列を使って表現できます.

{ddtx=yddty=x

 ddt[xy]=[0110][xy]   ddtx=Mx

このような微分方程式の解は,初期値を x0=x(t0) として,

x(t)=x0+tt0Mx(τ)dτ  となります.

これの計算は,逐次近似で無限の関数列を作れば実行できます.

x1(t)=x0+Mx0(tt0)

x2(t)=x0+tt0Mx1(τ)dτ=x0+Mx0(tt0)+M2x0(tt0)22

xn(t)=n0Mnx0(tt0)nn!

ここで,nとすると収束して,次の指数関数の解が得られます.

x(t)=eM(tt0)x0 ただし,eMtの定義は  eMt=01n!(Mt)n

この解は確かに, ddteMt=MeMtを満たします.

■線形化

現実の連立微分方程式は非線形がほとんどです.

平衡点の近傍でテーラー展開し,局所的に方程式を線形化します.

例えば,一般的な反応拡散系の方程式でf(u,v)g(u,v)は線形とは限りません.

{ut=Du2ux2+f(u,v)vt=Dv2vx2+g(u,v)

u(x,t),v(x,t)(それぞれ2種類の物質の濃度)を,平衡点のまわりでテーラー展開し,線形近似します.ただし,平衡点を(0,0)とする(このようにしても一般性を失わない).

1次の偏微分係数が作る行列(ヤコビアン)Jを定義し,次のように線形化する.

   J[fufvgugv][fufvgugv],  [f(u,v)g(u,v)]=[fufvgugv][uv]

fu,fv,gu,gvは,平衡点(0,0)での偏微分係数です.

線形化された反応拡散方程式を以下に示します.Du,Dvはそれぞれの拡散係数(常に正).

{ut=Du2ux2+fuu+fvvvt=Dv2vx2+guu+gvv

 

u(x,t)=ueσtsinαxv(x,t)=veσtsinαx と置くと

{σu=α2Duu+fuu+fvvσv=α2Dvv+guu+gvv

行列形式で書くと,

[uv]=1σ[fuα2Dufvgugvα2Dv][uv]

A[fuα2Dufvgugvα2Dv]

は平衡点(0,0)におけるヤコビアン.

■解の安定性

[uv]=1σA[uv]P[uv]=1σPAP1P[uv]

PAP1=[λ100λ2]

が対角化されると,固有値 λ1,λ2,固有ベクトルは P[uv]

平衡点 (0,0) の解が安定であるためには,すべての固有値が負でなければならない.

λ1<0,λ2<0 が必要十分であり,λ1+λ2<0では少しゆるい条件になる.

Aの固有値を求めるのは面倒なので,対角化によりTrは変わらないTr[A]=Tr[PAP1]を利用し,ゆるく評価すると,Tr[A]=fu+gvα2(Du+Dv)<0

拡散項がない(Du=Dv=0)時の安定性から fu+gv<0が成立するので,

例えば, fu>0,gv<0|fu|<|gv|が得られます.

uは加速剤,vは阻害剤として働き,互いの解が安定化することがわかります.