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現代の標準時計

 

 

 

 

 

 

特定方位に切り出した水晶Quartzの両側の面に電圧をかけると結晶は変形します.逆に両側から力をかけると両端に電圧(分極)を生じます.この性質を圧電効果といいます.圧電効果は,結晶構造に対称心がある場合には生じません.なぜなら,結晶中のいかなる方向に電圧(分極)ベクトルが生じたとしても,対称心に矛盾するからです.

所定の方位で所定の厚さに切り出した水晶片の両面に交流を印加すれば,水晶片は振動します.水晶片の共振の起こる周波数で安定な発振器を作ることができます.水晶振動子(通常32.768kHz=2^15Hzの水晶音叉)を用い,精度の高いクォーツ時計が作られており,実際の標準時計もこれです.
現在の時間標準は,セシウム(133Cs)の原子時計と定められました.原子時計とは,水晶時計を含む総合システムで,水晶発振器の周波数の校正標準に原子の状態遷移の周波数を用います.
セシウム原子は,最外殻の電子が1つ(水素原子型)なので,解析的にエネルギー準位の計算ができます.磁場を印加して縮退している準位を分離させた状態で,基底状態から励起状態への遷移を起こさせると,マイクロ波領域の9.192631770GHzのエネルギーで遷移します.そこで,水晶発振器により,この近傍のマイクロ波を発生させ,セシウム原子による吸収が最大になったときの水晶発振器の周波数を,9.192631770GHzであると校正しています.
ちなみに,GPS衛星は,ルビジュウムの原子時計を積載しています.最近はMEMS(Micro Electric Mechanical Systems)技術により,ルビジュウムの腕時計の開発も進んでいるそうです.
長さの標準は,地球の経線の1/4を10,000mと定めたのが始まりでした.しかし,1983年に,真空中の光速でこれを定義することになりました.1mの定義は「光が真空中を1/299,792,458秒間に進む長さ」です.長さの標準も時間に基礎を置くことになったのです.
数学と基礎科学,谷克彦(数学文化15号P82より抜粋)

シュロ縄の結び方

シュロ縄で柵の竹竿を結びました.庭師は男結びと言う方法で結ぶそうですが,私は簡単にランニング・ノットという方法で結びました.実は,シュロ縄の扱いが大変だったので,一番作業の楽な結び方をして,後でこの結び方の名前を調べたら,ランニング・ノットという方法であることがわかりました.
ランニング・ノット(あるいは,スリップ・ノット)と言われる所以は,竹竿を通してから紐を引っ張って締めると結節ノットが移動して,自然に竹竿の周りの輪が締まるからです.結節になる輪から紐の両端が同じ方向に出ていますから,竹竿を通してから紐の一端を引っ張ると,輪が締り結節になると同時に,他端も同方向に引かれるので,両側から輪を締め,自分自身を締め緩みを防止しする一番シンプルな結び方になります.
ランニング・ノットの結び方で紐の両側を引っ張ると,輪の中に竹竿がなければ手品のように紐は結び目が出来ずに解けてしまいます.比較のために,もやい結びを見てみると,結びの両側を引っ張ると結節ノットは移動せず輪が出来てしまい,竹竿の周りを締める結び方にはなりませんし,竹竿がない状態で,もやい結びの紐の両側を引っ張ると解けずに固定した輪を残して結び目が出来てしまいます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紐の始まりを竹竿の周りのランニング・ノットから始めて,柵を組んだ竹竿に巻きつけ固定し,紐の最後もランニング・ノットで収めようとするとなかなか難しい.巻いてきたひもが緩まないように締めながら出口の結節になる結び目を作る必要があるからです.
シュロ縄は水に湿らせた方がしなやかでよく締まります.シュロ縄を繰り返ししごいていると,縄に毛玉のような塊や細い箇所ができますから注意しましょう.

今回は,紐の両端をそれぞれ別の場所で固定したので,使いませんでしたが”かます結び”という方法もあります.これは紐の両端を結ぶ結び方です.

アラビア文字のアブジャド数

アラビア文字の各文字は数を割りあてられています.このシステムのことはアブジャドabjadと呼ばれ,十進法のインド数字が採用される以前は数値を表現するのに使われていました.また,単語や文章の数値はシンボリックな意味があります.
例えば,「アッラー」は66,このアナグラムの「ラーレ(チューリップ)」も66で,同じ数値ですので,チューリップ模様はジャーミイの装飾に使われます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クンデカリを構成するピースの数も意味があります.例えば,ドアの文様を構成するセグメント数の165ピースは,「アッラーのほかに神はいない」,
66ピースは,「アッラー」を意味するそうです.

■私はアブジャドのことは聞きかじっただけで,正確な記述ではないかもしれません(アブジャドのことをご存知の方教えてください).
私の理解した考え方だけおおざっぱに述べると,アラビア語でも,アルファベット(英語)で計算する数秘術のように,単語(スペル)の文字の数値を総計し,その単語の数値が決まります.ただし,数値を対応させるのはアブジャドに対してで,アラビア文字そのものに対してではないそうです.

(注)世界には,ギリシャ文字(ラテン文字,キリル文字,...),漢字,アラビア文字,などいろいろありますが,アラビア文字は子音を表記する文字に母音も含めるようで,文字も独立の場合と単語の中に使われる場合で異なるようです.漢字や速記文字なども記号全体で一定の意味もつのに似ています.単純なアルファベットではなくアブジャドという文字体系に数字を対応させます.

■クンデカリ技術で作られたドアを構成するピース数の意味

以下の写真のドアの文様の数値227は,次のようにして数えるそうです.この数値のシンボリックな意味は知りません.

 

 

 

面積1の正方形の数14個 →1x14=14
面積2の長方形の数11個 →2x11=22
面積3の長方形の数13個 →3x13=39
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
   (全図形数)38個     75(全面積)
         x4
      -----
 (枠のピース数)152 +(面積数)75 =227(全ピース数)

クンデカリ

 

 

 

 

 

 

 

 

クンデカリKundekariという技術は,接着剤も釘も使わず木のピースを組み立てていく技術です.イスラム模様の装飾のある説教壇(minbar),ドア,家具に用いられます.12世紀にアナトリア地区で生まれたこの技術は,その地のセルジューク帝国,オスマン帝国時代に洗練されました.杉,薔薇,梨,クルミ,黒檀,リンゴなどの木材が使われます.木材ピースを溝とホゾで組み立てるので.各ピース間は2~3mmのギャップがあり,それぞれのピースの膨張伸縮で歪みが生じることがありません.接着剤や釘で固定された作り方よりも,湿気などに対する耐久性があり,ひびが入らず700年持つといわれます.ジャーミイのドアは,5cm位の多くのパーツをクンデカリの技術で組み立てています.そしてさらに,このドアーを構成する木材ピースの総数は,数秘術的な意味があるそうです.
⇒数秘術的な意味については,アラビア文字のアブジャド数に続く.
(参考文献)クンデカリについては,Mugla Journal of Science and Technology, Vol2,No2,2016,110を引用

ダイヤモンドのブリリアン・カットの数学

 

 

 

 

 

 

 

 

■ダイヤモンドの価値は,4C[Carat重量,Color色,Cralityキズ,Cutカット]で評価されます.ここでは,数学的に興味のあるカットのプロポーションについて述べました.ラウンド・ブリリアン・カットのダイヤモンドが最も輝くようにしたプロポーションを理想カットといいます.理想カットは1919年にベルギーのMarcel Tolkowsky(数学者でダイヤモンドのカッター)が計算しました.今なら,コンピュータもあるし,光線追跡のソフトウエアもある時代で,理想カットの形(プロポーション)を見つけることは容易でしょうが.1919年にどのように計算したのか,興味深いことです.多分,閉じ込められた光線が全反射を繰り返す光路に注目したのでしょう.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤモンドのブリリアン・カットの各部の名称を図に記載してあります.正面の平らな面をテーブル面,上半分をクラウン,下半分をパビリオンと呼びます.真ん中のガードル面に対してクラウン斜面のなす角度をβ,パビリオン斜面のなす角度をαとしました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テーブル面の左隅Aに入った光線(赤色)が,ダイヤモンド内部を進み,後方の左パビリオン斜面で全反射され,次に,右パビリオン斜面で全反射され,テーブル面右隅Bに戻り,前方に出て行く光線もありますが,テーブル面右隅Bで一部は反射され内部に戻る光線(青色)になります.この光線は全反射を繰り返し内部に閉じ込められることになります(青色).
この図で追跡した光線は,テーブル面の左隅Aから出て,テーブル面の右隅Bに達する左右対称の光路です.ダイヤモンドの屈折率n≒2.417を用いて,この光路のテーブル面での入射角φ,屈折角γに対する屈折の式,sinφ=n・sinγ から,左右対称になる入射角φ(テーブル面の垂線と入射光線のなす角)を求めると,21°になります.というのは,左右のパビリオン間でテーブル面と平行になる光路ですから,左のパビリオン斜面での反射の法則(反射角αはパビリオン角αに等しい)から,γ=90°ー2α=8.5°となることが決まるからです.ここで,パビリオン角α=40.75°を用いました.

■屈折率の高い媒質中に光が閉じ込められるのは,全反射を起こし易いからで,ダイヤモンドの全反射の臨界角θ(入射角でいうと)は,sinθ=1/nだから,θ=24.4°(反射面から測った反射角で言うと,65.6°)です.
テーブル面の出口で反射されて内部に戻った一部の光線は,パビリオン面とクラウン面で全反射を繰り返し内部に閉じ込められます.パビリオン角α=40.75°,クラウン角β=34.50°というのは実によくできた設計です.
全反射によりブリリアン・カット内に閉じ込められた光線の経路は,一周すると,これに平行な経路に戻ることを証明するために,次の作図をしてみました.BC(赤色)の直線はダイヤモンド内部で全反射を繰り返す光線(青色)を外に引き伸ばしたものです.その代わりに,ダイヤモンドも反射面を共通にしてつないで並べました.結局,全反射を4回繰り返すと光線が平行になるということは,このように配置したダイヤモンドが4つで回転角が0に戻る(初めの向きと同じ)ことからわかります.

 

 

 

 

 

■カットの形を評価するには,そのカットの形を磨き直して理想カットにするとしたら,重量がどれだけ減るか(カット減点%)で表します.カット減点5%までは理想カットと見做されます.さて最後になりましたが,トルコフスキーの理想カットのプロポーションを表紙の図に示しました.トルコフスキーはガードル厚には言及せず,ナイフ・エッヂだったそうですが,現実にはナイフ・エッヂは作れず,ガードル厚は必要です.
■(注)ラウンド・ブリリアン・カットとは,58のファセット面を磨き上げた形(キューレットも1面と数えます)です.ダイヤモンドは立方晶系の結晶ですから,複屈折はありません.また,光の分散もそれほど強くなく上品です.虹色にぎらぎらするようならキュービック・ジルコニアなどの疑いがあります.
クラウン面の高さや,パビリオンの深さが最適でないと,テーブル面の中が暗くなります.