掲示板

米国の数学月間

★数学と環境_MAM1992

MAM1992

数学強調週間 ( MAW )――4月26日〜5月2日, 1992年

「MATHEMATICS & THE ENVIRONMENT/ 数学と環境」

我々は,日常の経験から波の多様性を知っている.電磁波は,テレビやラジオ放送を家庭に届け,超音波は,母の子宮の赤ちゃんの成長をモニターするのに使われる.川面,湖水,海洋には,沿岸の環境に影響を与えるような種々の波が立つ.数学的モデルはこれら全然異なる種々の現象を理解するのに役立っている.
多くの波動現象は,手振り挨拶のような単振動により特徴づけられる.フットボールスタジアムの反対側から見た場合,人体で作り出されたこのような波動はスタジアムを回って伝わって来るように見える.部屋をよぎって音波が諸君の声を伝えるのと同じだ.他の波動現象は,しばしば非線形の相互作用が関与しもっと複雑である.
大幅な減衰なく長距離を伝播できる特別な波動 Solitary wave(孤立波)は,1844年に始めてScott Russellによって,海峡の表面上で観察された.この種の波動はしばしば大洋の真ん中での地震によって始まり,又人間の誤りによっても生起され易いもので,ジェット飛行機の速さで大洋を横切って伝わる.そして波動が硬い海岸にぶつかった時は惨禍をもたらす.地震の破壊的影響と向かい合わねばならない日本人によって津波と名付けられたこの種の波動は大きな波長と小さい振幅のために検知されないままに伝わっていく.
しかしながら海岸線近くの水深が浅い場合は,この波動は海岸地域を水浸しにする程巨大な波動に変わっていく.Solitary waveは,1895年Kortewegとde Vriesによって方程式を用いて解析出来るようになった.驚く事ではないが,この解析モデルは 数学モデルとして万能性を反映して光ファイバ−・ケ−ブルとか注水式反応炉のプラズマを含め他の媒体の波動に対しても当てはまる事が発見されている.この方程式の注目すべき特質は,純粋数学の分野に深く連結している事である.
最近まで その方程式の解法の存在有無に関する数学理論について,批判的な疑問が解かれないままであった.そしてこの方程式の解法には,もっとも強力な完成者の資源が精一杯投入された.しかしながら今や数学的進歩によって,解法は通常的になされ波動進展の正確な予測も可能となっている.当初の方程式を解くための数学技法は手間がかかり そして扱い難いものであった.しかし現在は数種の効果的な技法があって信頼性のある結果を得る事が出来る.
水の波動の数学理論は,環境の理解と保全に役立つのみならず,その洞察は工業発展に意義深い衝撃力を持っている.Solitary waveは今では良く理解されているが,その他の水の波動は環境に対して尚未知の影響を秘めており,活きた数学の研究課題として残されている.

★数学と製造業_MAM1993

MAM1993

数学強調週間 ( MAW )――4月25日〜5月1日, 1993

 「 Mathematics and Manufacturing / 数学と製造業 」

今日 世界経済の中で,製造業製品は世界取引の60%,米国取引の75%を占めている.製造業は速いペ−スで増加して国際的競合関係にある.新製品は数ヶ月で陳腐化する.更に競争するために多くの製造プロセスは1〜2年で改造されねばならない.これらの圧力に直面する時米国の製造業は継続的に更なる生産性と競争力をもつ必要がある.この様な改良は主として数学とコンピュ−タ科学による計量的方法に基礎づけられた組織的アプロ−チからもたらされる.
数理科学は製造業に多くの貢献をして来た.その範囲は,非常に具体的な製品になる材料から,非常に抽象的な情報処理にわたる.例えば統計解析は製造プロセスやシステムから,デ−タ−を意味のある形に集約する.類型化(モデリング)は製造問題をアルゴリズム法で処理できる数量的関係や方程式に結びつける.数学的アルゴリズムは数値計算に適する形式に数量的関係や方程式を表現する.
数理科学は製造業に使われる材料に関して劇的な衝撃を与えて来た.数学的モデルは形状記憶合金,高強度セラミックス,重合体システムや非線形光学材料を含む先進的材料の設計やプロセスを援助する.
製造プロセスは計量的解析,数学的類型化(モデリング),コンピュ−タ・シミュレーションにより改良され得る.この様なプロセスは,マイクロ・エレクトロニクス,金型,結晶成長,鋳物,接続,キュアリング,コ−ティングを含んでいる.これらプロセスのための数学的モデルは,微分,積分,離散方程式である.
 数学的な制御理論の進歩により,製造プロセス制御が改良された.応用は、化学プロセス製造や金属プロセス製造に見られる.
今日の製造業における多くの分野は,速い革新の目にあっている.知的製造業や固体モデリングは,他に現れる製造技術を支える基礎的な技術である.速い原型づくり,分子製造業,生物製造業は10年前には存在しなかった.これらは今後10年,製造業の主要な要素になると期待される.
数学とコンピュ−タ科学は,製造業における経営の意志を決定するツールの発達に,更に深く係わっていく.これらの計量的方法は経営の意志決定に対する伝統的,人間的な処理を補足すると共に,作業に基づく仕事の評価,コンピュ−タに基づく情報管理,柔軟な製造システム,柔軟さのための資本予算や総合的な製造法を含んでいる.
 コンピュ−タ容量の急速な増大と問題解決への計量的接近の増加は,製造業の世界を変貌させる.高価で時間のかかる伝統的な製造サイクルは,その製品が初めから正しく製造される可能性の高いより計量的な方法に置き換えられていく.

★数学と医薬 _MAM1994

MAM1994

数学強調週間 ( MAW )――4月24日〜4月30日, 1994

    「 Mathematics and Medicine / 数学と医薬 」

数理科学は生物資源学から生理学に至る医薬に多くの貢献をしている.例えば数学者達は心臓の現実的な3次元モデルをつくっている.実用的には,数百の閉じた曲線による筋繊維に沿って弾性力が心臓に働き,流体力学の方程式で血液が流れるような模倣である.
心臓は,CAT(computerized axial tomography),MRI (magnetic resonance imaging), PET(positron emission tomography)などで,医学的イメ−ジをつくる数学的な再現技術を用い見ることができる.これらの技術を使って,数千の分離測定を数学的に連結して,心臓を見たのと同様に,脳髄,肺臓,腎臓の腫瘍や他の非正常を見出すことが可能な単一画像をつくれる.
数学研究者は,生物学者や内科医と一緒に,多くの心臓発作が予見し得るのか疑問に思っている.別の言い方をすれば,心臓はあたかも決定論的なカオス・システム--例えば非線形力学理論--であるかの様に振舞っているかも知れない.疑わしいパターンが,もっと容易に検出され認識されるなら,高リスク患者を心電図を用いもっと容易に識別できることを示す数学的研究が進行中だ.
心臓の理解が深まったもう一つの例は,流体力学を通してで,方程式の解はコンピュータ近似でのみ解くことができる.血流中で解かねばならぬ未解決問題中に,心臓壁の動きが残されている。
複雑な階層システムの解析は近代医学の研究で,もう一つの重要な領域だ.数学的モデリングは,ネットワーク理論,情報統合,ランダム・グラフが基本的なツールである神経科学で非常に役立ってきた.
この様なシステム概念は、膨大な数の細胞やそれらの相互作用を観察し解析する免疫学で,非常に貴重である事が立証されて来た.この領域では,制御理論同様,常微分方程式や分岐過程を含む数学応用が利用される.HIV伝染の動力学や免疫システムへの効果に関する理解は数学的研究のもう一つの焦点である.計量的分析や免疫の確率評価に加えて,伝染病学モデルはワクチン戦略を発展させるのに必要である.
数学的シミュレ−ションとモデリングは,組み換えDNA技術の視覚化と理解への鍵でもある.事例は1994 MAWのテ−マ・ポスタ−に見られるであろう。DNAの撚線は位相数学と微分幾何学の技術を使い調べられる.人ゲノム情報のデ−タ・ベ−スは,拡張され複雑となり,組合せ,パタ−ン識別,順序比較の様な数学的アプローチが要求される.
製薬工業では分子構造のコンピュ−タ・モデルが開発されつつある.新薬は,新しい数学アルゴリズムが見つかるとすぐ設計される.
健康統計学は,長期間蓄積され,るコスト管理,公共政策研究,人口統計,環境要因の様な他の変数と関連す病気傾向などの多様な目的のために解析されている.
医薬に対する数学のその他の貢献は,非常に具体的な――医薬製品になる材料を設計する――から,非常に抽象的な――情報経営までにわたる.数学的モデルは先端材料――記憶合金,高強度セラミックス,重合体システムや非線形光学材料などの設計やプロセスを支援する.統計的解析は,デ−タを臨床段階から更に有用で意味のある形にする.数学的モデリングは,解析的課題をアルゴリズム法で着手できる定量関係や方程式へと帰結させる.数学的アルゴリズムは,定量関係と方程式を,コンピュータ数値計算に適する形に表現する.

2006/06/14 SGK通信(2006-06)MAM紹介

2006/06/14
SGK通信(2006-06)MAM紹介

MAM/MAW資料公開のご挨拶

米国MAMの各年度の広報の紹介を順次SKG通信に載せていきます.
これらは片瀬氏が収集翻訳してありましたが,今回,公開にあたり谷がレビューを行いました(誤訳等あれば,谷の責任です).可能な限り,ウエブサイトの原文をチェックしましたが,すでに見当たらないものもあります.また,種々の科学領域や数学分野の話題が扱われており,私だけでは力不足で,まだ不完全です.ぜひSGKにご協力お願いいたします.誤訳や誤解等お気づきになりましたら,掲示板等を利用しお知らせください.みんなで議論する良い場になると思います.

各年度のMAMの翻訳文中には,簡略し情報源ウエブサイトをいちいち記載しませんでしたが,ご利用される場合は,著作権にご注意ください.

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以下の順で掲載いたします.
2006年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年

★数学と意志決定_MAM1996

MAM1996

数学強調週間 ( MAW )――4月21〜27日, 1996

  「 Mathematics and Decision Making/ 数学と意志決定 」

数学連合政策会議 ( JPBM )は,諸君を数学強調週間4月21〜27日,1996年の期間に,数学の広がりと深さの祝典に御招待する.1996年のMAWのテ−マは「数学と意志決定」で,その話題の広さと範囲は,多くの聴衆に対し数学の力と多様性を伝える一つの焦点として有用である.
我々は毎日多くの意志決定をしている.天気予報に従って,出掛けるル−トに合う服を決める.更に多くの意志決定が,商品やサ−ビスの提供者や公共政策の立案者に求められる.数学は多くの意志決定に対して,重要な役割を演じる.用いられる数学に対するよりよい理解は,我々を感動させるよりよい意志決定や理解力を助けるであろう.
数学と意志決定は,確率.危険.不確実や予言の様な概念を含んでいる.財務上の意志決定は,ポ−トフォリオ最適化.選択過程や危機管理の様な手法を組み入れる.オペレ−ション・リサ−チ ( OR:作戦計画 )――ある実際的行動を最適化する数学モデル――は政府や工業界で広く利用される.危機評価や管理は公共政策――特に健康と環境政策――をつくるのに重要な意味をもっており.通常の研究では容易に研究され得ない極端な状況へ如何に外挿するかというより広い論点を示唆する.
ここにより多くの聴衆を数学にさらす一つの機会がある.――新しい数学の創造と発見から意志決定に使える多くの方法を示す.我々は諸君に諸君の同僚と共に MAW 1996のために直接,計画を始めることをお薦めする.諸君は諸君の学園.会社.あるいはその地区の学校で特有なプログラムによる MAW 1996を観察することが出来る.アイデア発想のために祝典MAW 1995年に選ばれた活動の添付要約を見て下さい.

 エッセイ ( 試論 )」:数学と意志決定――
Paul Davis, Worcester Polytechnic Institute.17人の顧問団からの意見を編集した.

意志決定が我々の生活を形づくる.数学は,いかなる意志決定においても,情報をふるいわけ選択肢の比較を合理的に行う.数学的モデルが,コンピュ−タが生みだすデ−タの圧倒的流れを制御し理解して,意思決定を支援するコンピュ−タ・プログラムの基礎となっている.数学は,不確かさに直面して,情報の質を評価改良し,選択肢を明確に提示し,役立つ選択とその結果を示し,大きな目標に到達するのに必要な,小さな意志決定を制御しさえもする. 統計.最適化.確率.待合せ理論.制御.ゲ−ム理論.モデリングやオペレ−ションズ・リサ−チの様な数学――意志決定に用いる数学応用分野――は,公共政策,健康,ビジネス,製造業,財務,法律,その他の多くの人間の企てにおいて、難しい選択をするのに欠くことはできない.数学は,経済的な発電,金融市場での利益,有効な新薬の認可,法的証拠の優劣,航空機の安全,複合建設プロジェクトの管理や新ビジネス戦略の選択などの多くの意志決定における心臓部である. Tani/Katase