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万華鏡と市松模様(平面群)

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数学月間SGK通信 [2015.11.03] No.087
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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秋が深まりました.皆様お変わりありませんか.一寸,万華鏡の数学の話をしましょう.
万華鏡映像の美しさが我々の心をとらえるのは,空間の完全な対称性だけではありません.
時間の流れとともに映し出される「千変万化だが一度きり」の映像に,
生命を感じるからでもありましょう.
ワンドの中を降り行くすべてのガラス屑の運命は,運動方程式ですべて定まっているとはいえ,
ときおりカオスの起こる期待で目が離せません.
万華鏡は,対称性(秩序)とカオス(乱れ)の混在が魅力なのです.そして,
合わせ鏡が生みだす完全な秩序は,無限に繰り返される“結晶世界”に入り込んだようでもあります.
万華鏡 “カレイドスコープ”は,物理学者ブリュースター卿の特許(1817)[発明は1816年]
が起源です.特許には,2枚の合わせ鏡の交差角θ°が,360°を
偶数で割り切る角度にするということが書かれています.
今日はこの数学についてさらに考えて見ましょう.
■平面群と市松模様
本来の市松模様はチェス盤のように正方格子が交互に塗り分けられたものですが,
3角格子などの場合でも交互に塗り分けられていれば市松模様と呼ぶことにします.
Fig1 http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556602/27/17073327/img_7_m?1446474652 
これらは皆,市松模様と呼ぶことになります.
万華鏡は鏡(位数2の対称操作)の組み合わせだけで作られます.
1回鏡で反射すると鏡像の向きは裏返っています.しかし,2回反射すると
鏡像の鏡像になり始めの向きと同じになります.
市松模様の黒-白は,物体のある鏡室タイル(グレイ色)と同じ向き="正置像”を黒;
“裏返像”を白に塗り分けています.

■正方形の鏡室の万華鏡がつくる市松模様
Fig2 http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556602/27/17073327/img_8_m?1446474652
図(1)万華鏡の鏡室タイルをグレイの正方形とします.
鏡室のフチの赤線は鏡(4枚)です.
図(2)1回の反射で4個のタイルの裏返像(黄色)が生まれます.
図(3)2回の反射で,その外側に8個のタイルの正置像(緑色)が生まれます.
図(4)3回の反射で,その外側に12個のタイルの裏返像(黄色)が生まれます.
このようにして,鏡室タイルはその鏡像を全平面に広げて行き,
平面を市松模様で塗りつぶします.

■3角形の鏡室の万華鏡は市松模様をつくるか?
Fig3 http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556602/27/17073327/img_9_m?1446474652
1.左図の鏡室3角形ABCは90°30°60°の3角形です.
各頂点で3角形が偶数個集まっています.3つの頂点のまわりはどれも市松模様ができており,
全平面が市松模様であることがわかります.
2.右図の鏡室3角形ABCは45°60°75°の3角形で,
AおよびBのまわりは3角形が偶数個集まりますが,Cのまわりでは偶数個あつまりません.
そのため,全平面では市松模様が出来ないことがわかります.
3.鏡映操作の集合が平面群を作っている場合は,全平面が市松模様になりますが,
逆に,市松模様が何処かで乱れているなら,その鏡の組み合わせは平面群が作れない場合です.
そのような万華鏡のもう一つの例を(Fig4)に示します.
Fig4 http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556602/27/17073327/img_2_m?1446474652